サイヤマンユニバースAF グレートサイヤマンVSダーク・サイヤマン   作:無敵のカイロ・レン(邪悪な願い)

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逆襲のダーク・サイヤマン
暗躍するダーク・サイヤマン


 物事が上手く行っている時ほど、邪魔が入ったり思わぬ落とし穴が待ち構えているものだ。「好事魔多し」という人間が考えたその言葉が、ルアリスは好きだった。

 

 特に破壊神である彼女の場合、自らの使命を遂行していた頃は数々の邪魔者たちがいたことを覚えている。

 

 全ては自分の愛する星が破壊されるのを防ぐ為、圧倒的な実力差さえも承知の上、立ち上がって破壊神に立ち向かってきた英雄たち──皆、忘れられぬ人々である。

 破壊神からしてみればそんな彼らの存在は自らの使命を妨害する邪魔者以外の何者でもなかったのだが……彼女にとってはその瞬間こそ何よりも、神になって良かったと、自分の住む宇宙を誇らしく思ったものである。

 

 

『ルアリス! これ以上お前の好きにはさせないぞ!』

 

 

 そしてザイコー……かつての孫悟飯もまた、そんな自分を幾度となく邪魔してきた──誇らしき愚かな英雄の一人だった。

 未来を照らす黄金の光をその目に映したあの時、ルアリスは第十八宇宙もまだ捨てたものではないと希望を抱いたものだ。

 そんな当時のことを、ふと感傷的に思い出したのは今の自分があの時と同じ心情でいるからだろうか。懐かしい感覚に、思わず笑みが溢れた。

 

「味方になると頼もしいね……流石姉さんが導いた最強の戦士だ」

 

 今、ルアリスを取り巻く事態はこれ以上ないほど順調に推移している。

 孫悟空とベジータという、この地球を守り得る「人間」の最高戦力を排除した上で、破壊神ビルスと天使ウイス、そして大神官の殺害に成功したのだ。

 さらに、自身とザイコーが最も気に掛けていた青年までも捕獲できたのである。それは前述の言葉の意味を理解していても尚、思わず浮かれて鼻歌を口ずさまずにはいられない成果だった。

 大神官たちとの戦闘の傷痕が残る宮殿の中で、上機嫌真っ只中のルアリスのもとにザイコーが帰還したのは、その時だった。

 

 

「おかえりー!」

 

 開口一番、満面の笑みで迎え入れたルアリスに対して、しかし彼の顔は対照的な表情を浮かべていた。

 理由はわかっている。ここから離れた荒野で先ほどまで繰り広げられていた光景を、ルアリスは界王神も御用達の「神眼」を使って見ていたのだ。

 故に、破壊神ビルスを殺した彼の戦いぶりも既に彼女の知るところであった。

 

「大変だったね。まさかウイスにあんなガッツがあったなんて」

 

 ウイスは自爆した。

 ザイコーが持つルアリス直伝の「神殺しの力」に気づいた彼は、自分たちではどうやっても敵わないことを悟り、孫悟飯を生かすことに全力を尽くしたのである。

 それは「天使」という生き物の在り方を熟知していたルアリスにとっても予想外な行動であり、彼女の中でほんの少しだけ彼らへの認識を改めることとなった。

 辛辣な言い方をしてしまうと……ルアリスにとっては彼らガイド天使のことなど、いつも傍観者気取りで肝心な時に自分の手も汚せない全王の腰巾着としか考えていなかったからである。

 故に、まるで人間みたいなウイスの最期には心に響くものがあった。率直に言うと今ルアリスは、ほんの少しだけ感動していたのだ。

 

「……破壊神が死ねば、天使も消えると聞いたが?」

 

 予想外な出来事を楽しげに受け止めているルアリスに向かって、ザイコーは憮然とした顔で抗議の眼差しを送ってくる。

 見ればウイス最後の攻撃によって彼の身体は少々傷を負っており、身に纏う白い道着も傷つきところどころが破損していた。

 ザイコーほどの戦士が既に死に体だった筈のウイスに一矢報いられる結果となったのは、何を隠そうルアリスが彼に対して事前に授けていた知識が裏目に出たのが最大の要因だった。

 話が違うじゃねーかと睨むザイコーの視線を、微笑みの裏で申し分ない気持ちを浮かべながらルアリスは返す。

 

「その筈なんだけどねー……オカマって凄い」

 

 ザイコーが抱いた疑問は、ルアリスにとっても興味深い話だった。

 界王神と破壊神の命が連動しているように、破壊神とガイド天使の間にも同じ結びつきがあるのは紛れもない事実である。

 破壊神が死んだ場合、天使は次の破壊神が生まれるまで眠りにつく。その前提知識があったからこそ、ザイコーは破壊神ビルスを殺害した時点でウイスという存在を警戒対象から外していたわけである。

 にもかかわらず、ウイスはビルスが死んでも眠りにつくことなく活動を続け、イタチの最後っ屁を残していった。

 本来ならあり得ない事象に対して真面目に推理したルアリスの頭に、真っ先に浮かび上がってきたのは自らが担当していたかつての宇宙、第十八宇宙のガイド天使のことだった。

 

「もしかしたらこの宇宙では、既に後任の破壊神が決まっていたのかもしれないね。私が前任者を殺して破壊神になった時もガイドは消えなかったし、それと同じパターンだったのかも」

 

 破壊神が死んでも既に後任の破壊神が内定していた場合には、天使は眠りにつくことなく新しい破壊神のガイドとして引き続き付き従うことになる。

 今回ウイスが動けた理由をそれらしく考察してみると、ザイコーは怪訝そうに眉を顰めた。

 

「それは無い。ビルスの後釜になりそうな二人は、先に殺した筈だ」

「ふむ……」

 

 ビルスの次の破壊神になり得る人材として真っ先に思い浮かぶのは、そのビルスの星で仲良く修行していた二人のサイヤ人──孫悟空とベジータの存在である。

 しかし仮に彼らがそうだとしても、既に二人は死んでいる。故に、ルアリスの考察には当てはまらないように思えた。

 当然の疑問を浮かべる彼に対して、ルアリスはイタズラっぽい笑みを浮かべて告げた。

 

「実はまだ生きているんじゃないの? 死体は確認していないんでしょ?」 

「星ごと消し去り、「気」が消えたことも確認したが……奴らのしぶとさなら、あり得なくもないか……」

「それか、単にウイスが眠るのを気合いで耐えていたのかもしれないね!」

 

 有力そうな仮説を可能性が高い順に並び立てていくルアリスの前で、ザイコーは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 後者ならば良い。「気合いで耐えた」という言い方は身も蓋もないが、実際のところ気合いで解決できる事象はこの世界では案外珍しくないからだ。

 人間だった頃のルアリス自身も……かつては打開不可能と思われた絶望的な状況を、気合いで起こした奇跡によって覆してきた経験があった。

 

 それは、かつてのザイコーも同じである。

 

「気合いなら仕方ないが……前者なら最悪だ」

 

 気合いで解決されただけならばその程度の理不尽、どうと言うこともない。

 しかし、孫悟空とベジータが本当に次期破壊神の座に内定していて、殺したと思っていた彼らが実はまだ生きているのだとすれば──考えただけでもザイコーの全身から激しい「怒り」が黄金色のオーラとなって広がっていった。

 

「クソ親父共が……っ」

 

 猛り狂う「気」の嵐を受けて、大神官たちとの戦いで刻みつけられた傷口がさらに広がっていく宮殿を心配しながら、ルアリスが「壊さないでよ……作り直すの大変なんだから」と、割と切実な思いで宥めていく。

 

「落ち着きなよザイコー、生きているんならもう一度殺せるからお得じゃん。よっぽど二人のことが嫌いなんだね」

 

 この第七宇宙の二人は、第十八宇宙にいた二人ではないのだが……やはり同じ「孫悟空」と「ベジータ」であることが並々ならぬ感情をもたらしているのであろう。

 

 その憎しみが、怒りが彼の力をどこまでも高めてくれる。

 

 怒れば怒るほど無限に強くなっていく彼の性質を思うと、二人にはまだその感情の原動力として生き残ってもらった方が都合が良いかもしれないと、ルアリスは神の視点特有の傲慢な損得勘定からそう思った。

 きっとそれは、最強の戦士を生み出す筈だと。

 

 しかしこのままだと本当にこの宮殿が木っ端微塵になりそうな雰囲気だったので、ルアリスはやむを得ず話題を変えることにする。

 

「ああそうそう、さっき界王神界に行ってきたけど、キビトと悟飯はいなかったよ」

 

 ウイス決死の行動により、何処かへ逃げ延びた二人の行方である。

 この宇宙の星々を一瞬で転移する秘術「カイカイ」だが、同じ術をルアリスと悟飯も習得している。故に地球から遥か遠い彼方の聖域だろうと、二人には容易く追いかけ回すことができた。

 しかしそれで彼らの捜索を行うには、宇宙というステージはあまりにも広すぎた。

 

「……奴らも俺たちを相手に、馬鹿正直にあそこへ逃げるほど間抜けじゃないか」

「宇宙を使ったかくれんぼじゃ、流石に分が悪いよね。一つずつ探し回っていたら日が暮れちゃうよ」

「ちっ」

 

 まんまと逃げられてしまったことに、心底苛立たしげに舌打ちするザイコー。

 仮に悟空とベジータがまだ生きているのだとしたら、この第七宇宙ではまだビルスしかその手で殺せていないことになる。

 戦闘力差で言えば彼らが生き残ろうが、ザイコーの脅威にはなり得ない筈だが……彼は同じくどさくさ紛れに逃げ延びていたピッコロには一切触れることなく、サイヤ人たちに並々ならぬ執着を見せていた。

 ルアリスはこの話題も失敗だったかなと彼の怒りをどうどうと宥めるように、彼の背中に手を添えるとポンッと新しい服を着せてやった。

 彼の纏う白装束は、何色にも染まることを良しとしない真なる神の聖衣である。

 

「まあ切り替えよう。どうせまたあっちから来るだろうし、逃げた連中のことなんて気にしなさんな」

 

 彼らが生きようが死のうが、今回の戦いに勝ったのが自分たちであることに違いはない。

 そう言ってルアリスが振り向いた先には、全王と同じように鎖に囚われた状態で虚空に浮かんでいる──トランクスの姿があった。

 

「邪魔者の排除は手段であって目的じゃない。君のやるべきことを見失わないようにね」

「……わかっている。ああ、わかっているさ」

 

 諭すようなルアリスの言葉を受けたザイコーが彼の姿を一瞥した瞬間、怒りに染まっていたその表情がほんの少しだけ和らぎ、荒れ狂う「気」の奔流が収まる。

 かと思えば、どこか居心地が悪そうに、ザイコーはその場から目を背けた。

 そんな彼の、何とも人間臭い心理をその心から読み取ったルアリスは、慈愛の女神もかくやとばかりの微笑みを浮かべながら彼の肩を気安く叩いて言った。

 

 

「今のところは邪魔者も消えたし、そろそろ探しに行こうか。世界でイットー愉快な奇跡……ドラゴンボールを」

 

 

 気分転換にも丁度いいでしょ? と笑いかけたルアリスの言葉に、ザイコーが溜め息を吐く。

 

 ──それは、彼女らの野望に向けた次なる一手だった。

 

 

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