サイヤマンユニバースAF グレートサイヤマンVSダーク・サイヤマン   作:無敵のカイロ・レン(邪悪な願い)

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〈ズーン……ポコピー!


ダーク・サイヤマンとピッコロ大魔王

 

「悟飯、仙豆だ。食え」

 

 腹を貫かれた悟飯を介抱し、地上に降下したピッコロは彼の身体を慎重に横たわらせながらその口に一粒の豆を捩じ込む。

 悟飯は朦朧とした意識を振り絞りながら辛うじてそれを飲み込むと、大穴が空いていた筈の傷口は塞がり、消耗した筈の体力までも一瞬にして回復した。

 視力が戻り、ムクリと起き上がった悟飯は自身を死の淵から救い出してくれた救い主の姿を認め、歓声を上げるようにその名を呼んだ。

 

「ピッコロさん!」

 

 悟飯が幼少の頃から父親のように慕ってきた師にして、共に幾度となく死線を潜り抜けてきた頼もしき戦友──ピッコロ。

 彼の登場は悟飯にとって何よりも心強い援軍となった。

 

 そんな彼らのやりとりを見下ろしながら、どこか懐かしむような口ぶりでザイコーが呟く。

 

「仙豆……? ああ、そんな便利なのもあったな」

「何者だ、貴様。何故俺たちのことを知っている? それに、その姿は……」

 

 仙豆による悟飯の蘇生を見届けたピッコロは、振り返ってザイコーの姿を睨み、問い掛ける。

 ナメック星人として持ち合わせた優れた聴覚と地球の元神として備えていた能力から、彼は悟飯と戦っていた時のザイコーの発言を全て聞き取っていた。

 今の彼が瀕死の悟飯を一粒で全快にした仙豆に対して見せたのも未知に対する驚きではなく、見知った物に対する反応であり、これまでの振る舞いも含めてザイコーという男は明らかに地球の戦士たちの事情に精通していた。

 

 ──考えられる可能性の一つとしては、やはりこの第七宇宙とは別の宇宙から来た存在であるということか。

 

 彼がキャベのような別の宇宙のサイヤ人だとするならば、先の力の大会での第七宇宙の活躍から自分たちの存在に興味を抱き、入念に調べてきたとしても不思議ではなかった。

 その思考をピッコロが浮かべた瞬間、彼は答えた。

 

「その推測は部分的には正解だ。確かに俺は、この宇宙とは別の宇宙から来た」

「……! 貴様、心を読めるのか?」

「まあな」

 

 今のピッコロは自分の思考を口に出していないし、もちろん念話も飛ばしていない。にも関わらず当たり前のように思考を読み取って的確な言葉を返してきた目の前の敵に、ピッコロはかつて相対した界王神と似た力を感じた。

 

 ……しかし、本当に別の宇宙からやって来たのならば尚のこと、ピッコロはザイコーという男のことを警戒せずにはいられない。

 

「何が……何が目的だ?」

 

 自らの弟子である孫悟飯と似た姿をしているのも気掛かりだが、何よりこの星の守護者としてピッコロは訊ねた。

 究極の力を解放した今の悟飯さえも圧倒し、その気になれば銀河の一つや二つ訳なく滅ぼすことができる存在を野放しにしておくことなど、とても許容することはできない。

 そんなピッコロに対して、ザイコーは皮肉げな笑みを薄く浮かべながら言った。

 

「試練だよ。この世界の孫悟飯が、どれほどのものか試しに来た……神がよくやるような奴さ」

 

 「試練を与える神」としてピッコロの頭に思い浮かんだのは、人間レベルの低い宇宙を対象に力の大会を開催し、勝者となった人間がどのような願いを口にするか試していた全宇宙の神、全王様の姿である。

 しかしザイコーがそんな彼の思考を読み取ると露骨に不機嫌そうな顔を浮かべ、忌々しげに唾を吐き捨てた。

 

「ピッコロ大魔王ともあろう者が、あんなクソガキに敬意を払うとはな……どうやら神と合体してから、あんたはすっかり牙が抜けてしまったらしい」

「む……」

「この世界の孫悟飯ほどじゃないが、これでも俺はストイックなピッコロ大魔王を尊敬していたんだがな。あんたは自分の運命を呪っても、最後まで守りたい者の為に戦い抜いた……誇り高い戦士だった」

「貴様……」

 

 そんなことも知っているのかと……ここまでこちらの事情に詳しいとなると、第七宇宙きっての知恵者であるピッコロには目の前の人物への正体に一つだけ、心当たりを見つけた。

 

「つくづく驚かされる……親父殿だけでなく、俺の世界では人造人間に殺されたあんたまで、当たり前のように生き残っているなんてな」

「……まさか、貴様は……!」

 

 ニヤリと不敵な笑みを浮かべながら、大ヒントとばかりに呟いたザイコーの言葉に、ピッコロは今しがた脳裏に過った疑念に確信を得る。

 

 理解してしまったのだ。彼の正体を。ザイコーという人物の、その存在の本質を。

 

 高い智慧からそれを読み取ったピッコロを襲ったのは、ザイコーによる先制の気合砲だった。

 

「その命もまた、トランクスが救ってくれたものなのだろう。ありがたく思うのだな」

「ッ!」

 

 ほんの挨拶代わりとばかりに放たれた「気」の圧力に対して、踏ん張りながらも後退りをするように吹っ飛ばされたピッコロが、空中に逃れながら体勢を立て直す。

 そして彼は重りとして纏っていたマントとターバンを脱ぎ捨てながら、内なる「潜在能力」を解放していった。

 

「……なに?」

 

 その変貌にザイコーが目を見開いた次の瞬間には、ピッコロの姿はさらにもう一段階、爆発的な「気」の上昇と共に大きく変化していった。

 

「はあああああっ!」

 

 ナメック星人特有の緑の体色は、黄色から橙色へとシームレスに切り替わっていく。

 揺らめく炎のようなオーラを纏ったその姿は、元々強面だったピッコロの顔つきをさらに戦闘的なものへと変貌させた。

 

「一瞬黄ばんだと思ったら、オレンジになった……コイツは驚いた。あんたまで超サイヤ人のように変身できるのか」

「そういうことだ。簡単にはやらせんぞ」

「……ん?」

 

 オレンジピッコロ──数日前、新たな人造人間と繰り広げた激闘の際に辿り着いたピッコロの新たな境地である。

 

 元々大柄だった体格が一回り大きくなり、頭部の二本の触角は横向きから上向きに、顎の骨が隆起した四角い顔付きは鬼を彷彿させる。

 その見た目の変化もさることながら、引き上がった戦闘力も今までとは比較にならない。

 究極の力を解放した悟飯や超サイヤ人ブルーになった孫悟空やベジータにも匹敵するその力の上昇幅はザイコーからしても予想外だったようで、その変貌ぶりには大きく目を見開いていた。

 しかし、その表情はすぐさま別の色を映す。

 

 

「……ドラゴンボールで、おまけしてもらった、力だと……?」

 

 

 ピッコロの心を読み取り、彼がその力を得るまでに至った経緯を知った途端──ザイコーの表情は驚きとは別の種類の感情に固まり、次の瞬間、何かが壊れたように破顔した。

 

 

「くく……はっはははははははははは! はははははははははっ!」

「……!」

 

 

 ザイコーは笑った。

 盛大に、笑った。

 

 腹を抱えて天を仰ぎ、声高らかに哄笑を上げる。

 本気の姿を見せて戦闘体勢に入ったピッコロを前に、緊張感も無く笑い続ける彼の姿はあまりにも隙だらけだったが、脈絡の無い態度はこちらから仕掛けるのを警戒してしまうほど不気味に見えた。

 呆気に取られる悟飯が見つめる中、そんなザイコーの姿をピッコロは冷静に見据えて問い質す。

 

「……何がおかしい?」

「いや……すまない。ただ失ったものの大きさを、改めて思い知っただけだ」

「なに? 何を言っているんだアイツは……」

 

 情緒不安定な姿に対して悟飯が怪訝に眉を顰め、オレンジピッコロがほんの少しだけバツの悪そうな顔を浮かべる。

 それぞれ異なる反応を返す二人を見下ろしながら、ザイコーが溜め息を吐くように呟いた。

 

「いいよなぁ、ドラゴンボールは。それさえあれば、どんな敵が現れても何とでもなった。本当に……あんたが真っ先にくたばりさえしなきゃな……」

 

 そして一頻り笑い終わったザイコーがピッコロたちに向き直って表情を引き締めると、彼の身体から発せられる「気」が、一瞬にして増大した。

 

「!」

「なっ……まだ上がるのか……!」

 

 悟空たちのように、超サイヤ人よりも上の変身をしたわけでもない。

 オレンジピッコロのように、外見が変わったわけでもない。

 目に見えるオーラの放出量は一見すると派手さは無く、ほんの必要最小限とばかりに薄く揺らめいているものだったが──ザイコーは依然として超サイヤ人の姿のまま、内包する「気」をさらにもう一段解放したのである。

 

「本当に……可能性に満ちた世界だよ。嫌になるほどな!」

 

 たったそれだけのことで、孫悟飯とピッコロという宇宙史に名を残す達人たちが震え上がるほどの純粋な「力」が、そこにあった。

 

「な……なんだ、この力は……!?」

「……お父さんたちよりも、上かもしれない……」

 

 感じ取れる「気」はあまりにも大きすぎて、これまでに見てきたどの戦士たちとも比較することができない。

 そんな力を自身から引き出したザイコーは、今度は煽りも怒りも見せず、何の感情も宿していないかのような虚無の眼差しで二人の戦士を見下ろして宣告した。

 

 

「試練は終わりだ。やはりお前たちにも、死んでもらう」

「くっ!」

 

 

 ──それが、ザイコーによる殺戮ショーの始まりだった。

 

 

 

 

 

「であああっ!」

 

 荒々しい雄叫びと共に、オレンジピッコロが急迫していく。その大柄な体格に見合わぬ軽快な身のこなしで懐に飛び込むと、一秒間の内に何発かもわからない超速のラッシュを叩き込んでいく。

 それをザイコーは、腕を組んだ姿勢のままその場から微動だにせず棒立ちで受け続けている──いや、そう見えたのはザイコーの動きがピッコロ以上に俊敏かつ洗練されていたからだ。

 彼はピッコロの拳や蹴りが肉体に到達する一瞬にも満たないほんの僅かな時の間だけ寸分の乱れの無い無駄を削ぎ落とした回避行動を行っており、故に悟飯の目さえも棒立ちしているように誤認していたのだ。

 それと似たような動きを、彼らはかつて力の大会で見たことがある。

 

 身勝手の極意──ザイコーの繰り出す武術は、まさしくその境地に近いものがあった。

 

「ドワッ!?」

 

 ほんの一振り。

 猛攻を仕掛けていたピッコロに対してザイコーが虫ケラを払うような動作で右手を押し出すと、ピッコロが呆気なく吹っ飛び引き離されていく。

 しかしその合間に、悟飯は自らの両手に「気」のエネルギーの圧縮を終わらせていた。

 

「波あああ──っ!!」

 

 かめはめ波である。

 魔閃光が効かなかったザイコーと言えど、一発で駄目なら二発でも三発でも大技を喰らわせるまで。ピッコロの加勢によって戦意を向上させていた今の悟飯の目には、未だ闘志の火は消えていなかった。

 

 爆発が巻き起こり、着弾の炎が上がる。

 

 そしてその一撃を目眩ましとするように、無傷で煙の中から現れたザイコーの頭上からオレンジピッコロが果敢に飛び掛かっていった。

 

「ジュゥゥエェンッ! てああァァッ!!」

 

 息つく暇も与えない抜群の連携。

 しかしザイコーはそれさえも読み切っていたかのように、慣れた動きで二対一の攻撃に対応してきた。

 

「っ!?」

 

 ザイコーはピッコロの奇襲に対して視線さえ向けないまま身を捻らせてかわすと、アクロバティックな動作から繰り出される回転蹴りでカウンターを決めていく。

 地面に叩き落としたピッコロに向かって黄金色のオーラを纏いながら追い掛けていくと、悟飯の援護を振り切りながら横たわっていた彼をサッカーボールのように蹴り上げた。

 

「クッ、ソマァァァッ!?」

 

 そして天まで届くかのように打ち上げられたピッコロの身体は、ザイコーがおもむろに右手を振り上げた途端ピタリと静止し、みるみるうちに彼の手元へと引き寄せられていった。

 それはまるで、フリーザの扱う超能力のようだった。

 

「ぐはっ……!」

「…………」

 

 ザイコーは見えざる力によってピッコロを引き寄せると、その首を乱暴に掴み、片手で締め上げていく。

 

「か……はっ……」

 

 もがき苦しむピッコロの顔をただ無言で睨みながら何の感情も見せず、凍り付くような眼差しで見つめているザイコーの姿は、今にでも彼の息の根を止めようとしていた。

 

「ピッコロさん!? やめろー!」

 

 早く助けなければ殺されてしまう。

 悟飯は血相を変えて突進していくが、ザイコーに向かって繰り出したその拳は──彼がもう片方の手をこちらに向けた途端、ピタリと止められてしまった。

 

「ぐっ……くっ……これは、界王神様の……!」

「この力を知っているか。腐っても孫悟飯なだけはある。だが……」

 

 まるで金縛りにあったかのように身動き一つできなくなるその力は、フリーザ──と言うよりも、かつて天下一武道会でスポポビッチとヤムーの拘束を振り解こうとした悟飯を横合いから妨害してきた界王神の超能力と酷似しているように感じた。

 悟飯がそう思った瞬間、ザイコーの眼差しがほんの僅かな変化を見せたが……すぐに無機質なものへと戻り、彼は締め上げたピッコロの姿を冷酷に見つめた。

 

「孫悟飯、お前は何も救えない。今も昔も、何一つ救ってなどいない。だからこそ、俺たちは蘇った」

「な、何を言って……!」

「お前の信じてきた力でお前たちの全てを否定し、俺が終わらせてやる。だから……」

 

 言いながらザイコーは、ピッコロの首を掴んだ右手に力を込め、文字通りその息の根を止めに掛かる。

 

「役立たずの老害は、俺の前から消え失せろ」

「が……ぐああっっ」

 

 ピッコロさんが、死ぬ──。

 

 ザイコーがあまりにも無情な光景に悟飯の心が怒りに染まる、その時だった。

 

 一瞬の光が、空に煌めく。

 突如として上空けら飛来してきた一本の杖がザイコーの足元に突き刺さり、まばゆい閃光と共に爆発を巻き起こしたのである。

 

 一点に集中して解放されたその光の爆発は、ピッコロの首を掴んだままの体勢では確実にザイコーの身を巻き込んでいたところであろう。

 しかし咄嗟に後方へと飛び退いたザイコーは、紙一重のところでその範囲から逃れ、奇襲を回避してみせた。

 

「……! 身体が動く!」

 

 ザイコーの注意が逸れたことで彼が発していた超能力から解放された悟飯は、自由になった身体で振り向き状況を確認する。

 

 すると目の前には、紫色のネコに似たこの宇宙の破壊神の姿があった。

 

「ビルス様……!?」

 

 振り上げた右手には、先ほどの一瞬で救い出されたピッコロの姿があった。

 彼は乱暴な手つきながらもどこか親切に、呼吸を整えている最中のピッコロを悟飯の前へと放り投げる。

 悟飯が驚きに目を見開く中、ザイコーはそんな闖入者の登場を冷めた眼差しで一瞥した後、同時に現れたもう一人の闖入者の姿に目を移してつまらなそうに呟いた。

 

「大神官のお出ましかと思ったが……なんだ、お前たちか」

 

 興醒めだ……と言わんばかりの視線を、ザイコーは現れた二人の人物の姿に向ける。

 そんな彼の前には、爆煙の中から今しがた光を放った自らの杖を回収しながら舞い降りてきた、白髪の天使の姿があった。

 

「我々が相手では不服ですか?」

「生憎俺は、全王のパシリに用は無いんでな」

 

 第七宇宙の破壊神ビルス。

 ビルスのガイド天使ウイス。

 それはこの宇宙の頂点に立つ、神々の降臨だった。

 

 

「君がザイコーかい?」

 

 黄金色の超戦士の姿を真っ直ぐに見据え、ビルスが問い掛ける。

 そんな彼に対してザイコーは視線一つ寄越さず、ただ一人ウイスの行動だけを注視した姿勢で口を開いた。

 

「今更、確認は不要だろう?」

「……ああ、そうだね。わざわざ確認するまでもなかった」

 

 自らの名を訊ねるビルスに対して、煽るような視線を返すザイコー。

 そんな彼を前に、破壊神ビルスは全身から神特有のクリアな「気」を放出すると、その額に怒りの形相を浮かべた。

 それは、彼が初めて地球に来て悟飯たちを相手取った時よりも、激しい殺意を漲らせた姿だった。

 今までに見たことの無いその姿に唖然とする悟飯とピッコロの前で、ビルスは叫んだ。

 

 

「お前、よくも僕の星と……悟空とベジータを殺してくれたな!」

「!?」

「なっ……」

 

 

 ──彼の口から放たれたその言葉に、ザイコーが愉悦の笑みを浮かべた。

 

 

 




 ダーク・サイヤマンはドラゴンボールがあるこの世界への嫉妬をコントロールできない……
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