ホラゲーの世界に効果エフェクトが追加されました。 作:ulo-uno
新月……月明りすらもない宵の一時。
そこは人の世にあらず。物の怪の世である。
最も宵の国に近い時間、そこはあの世とこの世が最も入り乱れる時間でもある。
そしてそれは人ならざるものがこの世に跋扈すると同意義である。
「
「ちょっとマイ。そんなに大きな声を出したら
そんな夜に一際人気のない廃アパートに二人の影が見える。
二人ともこの近くの市立高校の制服を着ているため学生だと言う事が伺える。
「あちゃ~、ごめんね小百合」
「ほんとに反省してる?」
「してるってば~。でも、小百合のくれた
そう言って後ろで髪を結いポニーテールにしている女子学生、真衣が手首にまかれた木製の数珠をちらつかせる。
「いくら霊具があるからって慢心していい理由にはならないんだよ?それだって私の作った物だから母さんが作るものに比べたら全然な物なんだから」
“霊具”
それは契約霊や守護霊を数珠や紙を器として現界させる法具・呪具の事だ。
「またまた~ 稀代の天才陰陽師様のくせに~♪」
「もうッ、そうやって━━━ッ!!」
ふと足元にひんやりとしたものが漂う。
「マイ……」
「……うん分かってる。これは本当にヤバイってやつだよネ?」
周りを伺うがあるのは冷たい霧。
まるで冷蔵庫の中に居るとでも錯覚しそうなほどの寒気に冷や汗を流す。
「これほどまでの霊気……京都の霊宝と同等?でも今の時代にそんなの居る訳が……」
━━━カツン……
「「!!」」
視界の悪い霧の先。
ほんの少し先のそれも建物の中。その先が見通せない程に濃い霧が流れてくる。
「肝試しの夜にしてはいささか物騒ではないか?」
霧の中から人型の影が表れる。
かすんでいるせいで顔は見えないがその体躯から男であると思われる。
「……貴方は、何?」
「はて……何に見える?」
それは心底不思議だとで言いたそうに大袈裟に肩をすくめる。
「まぁ、おおよその事は分かっているだろう?」
おおよそこんな霧の中から出てきた時点でまともな人間ではないだろう。いや、そもそも人であるかすら怪しい。
よって彼女らが次にとる行動は必然であった。
「マイ、私の後ろに!!『誉れ高き霊蛇よ我を囲え』」
薄桃色に染めたショートボブの少女小百合がとっさにマイを後ろに庇い腕に巻かれた数珠を掲げる。祝詞を唱えた小百合の周りに薄っすらと青白い光を伴った大蛇が表れ大蛇はマイと小百合を囲い己の尻尾を飲み込んだ。大蛇に囲われた範囲は先程よりも霊気が抑えられむしろ温かみすら感じるほどだ。
━━━と言うのが本来の効果であった。
「うそ……霊具が
本来霊気を伴う存在……鬼と呼ばれる物の怪の類は数少ない例外を除いてこの結解をまたぐことができない。
もしその例外があるのだとすればそれは霊具の制作者と物の怪の力量が離れすぎていると言う事。
そしてそれはつまり天才陰陽師と謡われた小百合の力量を遥かに超えていると言う事。
それを証明するように男……鬼は悠々とマイが張った結解を超えてきた。
「そのようなものは元より我には効かぬ。……さぁ、夜遊びの時間はとっくに終わっている。早く帰るんだな」
そう言う鬼は小百合のすぐ横まで着て通り過ぎようとしていた。
そしてそれを分かっていて何もできない。
鬼の気分一つではもう既にこの首はなくなっているのだから。
「では達者でな。精々気を付けることだ。物の怪にも人にも」
それだけ言い放って鬼はどこかへと消えていく。
鬼が去った後に残ったのは未だ二人を守るように己の尻尾を咥える大蛇とすっかり緊張が解けて腰が抜けたマイと小百合の姿だった。
◆◆◆◆
『丑三参り』
俺の前世一時期大学時代に人気を博したホラーゲームだ。
このゲームの特徴はストーリーの選択でゲームのエンドが多岐にわたるというものだ。それはもうほんとに多岐にわたる。その数なんと108。何でこんなにもゲームのエンドが多いかと言うと人間に備わる108の煩悩が関係しているのだとかなんとか。
生憎とそのことに関しては俺もそれほど詳しい訳ではない。
それをすることでこの作品にどんな意味を持たせようとしたのか今となっては分からずしまいだ。
何故かって?
それは俺が死んじまったからさ。
言ったろ?前世って。
つまりはそう言う事さ。
俺は死んで蘇った、そう『丑三参り』の世界に。
効果エフェクト付きで。