ホラゲーの世界に効果エフェクトが追加されました。 作:ulo-uno
『百鬼夜行』と同じ捉え方です。
あの後急いで逃げるように帰宅した俺を待っていたのは親父の頭突きだった。
……いや、此処でゲンコツとか平手じゃない時点で何となくわかると思うが今世の俺の親父は少し変わっている。
人はいいんだけどな。
因みに
それが今世の俺の名前だ。
前世でやったゲームには名前すら出てこないモブ。
きっと本当に原作にはいなかったのだろう。
俺が転生したことで初めて認識しただけだ。
ならばそれでいい。その方が下手に原作キャラのイベントに首を突っ込まなくて済むからだ。
昨日の事で何かしらイベントフラグが立ったかもしれないが暫く大人しくしていればそのうち彼女らも気にしなくなるだろう。
下手に介入しすぎて覚醒イベントを潰してこの先主人公たちが敵に負けましたでは目も当てられない。
まぁ、そもそも俺自体が弱いからそんなことになるとは思えないが。
なんせ俺の転生特典は効果エフェクトだからな。
それもゲームとかの必殺技やアニメのキャラの登場シーンだったりと多岐にわたるが所詮種を明かせば相手の五感を騙しているだけ。
そして俺には五感を錯乱させたり騙したりする以外の応用が効かない。
要するに基本スペック以上の覚醒は今のところ兆しすら見えない。
色々と種類はあるが所詮はだましだまし。
そんなピーキーな能力だ。
まぁ、効果エフェクトは鬼にも効果があるからうっかり出くわしてしまった時に使えば逃げ切れるからこの世界においての使い道は中々考えようでもあるが。
「まぁ、でもこれはないよなぁ」
昼休み。学校の屋上。
そこから裏校舎を見下ろす。
其処にはゴミの焼却炉の近くで何やらコソコソと話し込む四人の人影が見える。
うち一人は知っている。
俺と一緒にあの廃アパートで猫を飼っている奴の彼女だったはずだ。
だがそのほかの三人はこの学校の制服を着てはいない。
この近くの進学校に通う奴等と同じ制服。
昨日会った主人公様こと百瀬 小百合とその友人である七森 真衣の二人ともう一人。昨日はあの場に居なかった女性が加わっていた。
この前この近くの教会に新しく来たシスターが美人だと陸上部の奴らが噂していた。彼女がその人物だろう。
聖歌隊所属、シスター・グレーシア。
海外の“協会”から日本に派遣された聖騎士だ。
聖騎士と言っても一見するとクラシックな修道服にしか見えない。
しかし、その下は聖銀と呼ばれる協会の特殊な製法で作られた金属で作られた鎖帷子を着ている。
更には服の至る所に暗器を隠し持っている。対鬼においても主人公といい勝負をするほどの戦闘能力。
対人の戦闘においては主人公以上であると原作では言われていたほどだ。
だがわざわざ彼女を呼ぶほどなのだろうか?
確かに百瀬 小百合の性格からすればどんな些細なことだろうが鬼が関わっていれば彼女は動くだろう。
そしてその付き添いとして七森 真衣も彼女とまた行動を共にすることは容易に想像がつく。
基本原作でもこの二人は最初から最後までほとんど一緒に居たと記憶している。
しかし、グレーシアは別だ。
彼女に関しては彼女自身が百瀬のライバルだと公言しているため彼女と行動を一緒にすることは原作でもほとんどない。彼女が百瀬と組んだのは京都襲撃編などの非常に危険度の高い事件のみ。
ここらでそんな大きな事件が起きたとは噂されていないためなおさら彼女らが行動を共にする理由が分からない。
唯一心当たりがあるとすれば昨日の一件だ。
ないと思いたいが昨日の一件、あんな廃アパートで主人公と偶然バッタリ、とは考えにくい。
となれば昨日の廃アパートは何かしらの依頼で来ていて本来であればその報告をしに来たと考えるのが普通であるがそれはグレーシアが居る時点で考えにくい。
もしもその依頼に彼女もいたのなら昨日会っている筈だ。
「もしかしなくてもこれは俺が原因なのか?━━━ッ!?」
一瞬、グレーシアと目があった?
いや、いくら彼女が対人の戦闘にも慣れているとは言え此処は学校。
そんないきなり警戒されることがあるだろうか?
今はもう先程のような感覚はないがアレはきっと見られたのだろう。
一瞬ではあるが冷や汗が噴き出るほどの威圧を感じた。
危うく効果エフェクトを使いそうになるほどに。
此処で逃げ出してもいいかもしれないがそんなことをすれば俺が何か知っていると公言するようなものだ。そうなれば彼女らに付きまとわられるのは目に見えている。
そんなことになればそのほかの事件にも巻き込まれるだろう。
それこそ俺が物理的に鬼によってくちゃくちゃにされる未来すらもある。
断固としてそんな未来を避けるためにも今はここで彼女らの動向を探ってっておこう。
◆◆◆◆
「見られてますネ」
私達は昨日会ったことを依頼者の女子生徒に伝えるために柴田高校まで来ていた。そんなときに今回同席してもらったグレーシアが突然そうつぶやいた。
「何処から?」
「あの屋上の給水塔の上デス。ゴハンみたいだけどさり気なくこっちの動向を伺い続けてマス」
屋上でのご飯。それならば気のせいではないかとも思ったがどうやらどうやら彼女が言うには違うらしい。
「あれは監視者デス。それもかなりのツワモノだとワタシの勘が言ってマス」
「勘……いや、何でもないわ」
彼女の勘が侮れないことは既に知っている。彼女がツワモノと言うのなら私だけでは到底取り押さえられないだろう。
「と言う事はそいつに問い詰めればもしかしたら昨日の鬼の事も分かるかもしれないってこと?」
「ノ~。マイ、そう簡単にはいかないデス。あそこにいる方はワタシの“殺気”を受けても態度を変えませんでした」
「!!」
かなり本気だったんですけどネ~。
そう言う彼女からは嘘をついてるようには思えない。
となればここで迂闊にあの人物に近づきすぎるのは危険かもしれない。対人慣れしているグレーシアの殺気を受け流して平然にしているなど今の私達ではどうしようもない。
それに万一に抑えられるとしても今ここで霊具を使う訳にはいかない。今ここには大勢の生徒が居るのだからもしこんなところで霊具を使おうものなら被害が出る可能性が高い。
そのため今できる事と言えば……。
「今日はここらで分かれるべきね」
「賛成デス。私としてもあんな得体のしれないものに監視されながら話し合うのは控えたいデスネ」
私の意見にグレーシアも賛同する。いつもはライバルだとか言って中々譲らない彼女だが流石にこういう状況では意見が同じになるか。
「ごめんなさい。この話の続きはどこか別の場所で話し合いましょう。今はここから離れるべきだよ」
そう女子生徒に言う。
元々は彼女の依頼であの廃アパートを調査していたのだ。昨日あの場所で何があったか知る権利が彼女にはある。
そう思い校庭の裏口から出て行こうとする。
去り際にさり気なく屋上の給水塔の上に視線を向ける。
グレーシアが言っていた監視者。
それは未だ私達を見つめ続けていた。