ホラゲーの世界に効果エフェクトが追加されました。   作:ulo-uno

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始まりの伍

宵の刻。

人の気配が寝静まったころ妖し気な雰囲気を醸し出す廃アパート。光はなく音はなく人の気配もない。

ただそこに何かあるとすれば得体のしれない"ナニカ"。

まっとうな者であれば近づきもしないだろう其処には只々闇が広がっていた。

 

しかしそんな暗闇にわずかな光が差し込む。

それは空に漂うぶ厚いカーテンの間を縫って差し込んだ仄暗い光であった。

 

「月明り、か。今日は随分と明るく感じるな」

 

いや、逆この辺りに何も光がないからなのかもしれない。

ジャングルで見る星空がきれいだというのも星の光に干渉するものがないからだ……と言うのをどこかで聞いたことがある。あれは確か今世の親父の話だったか?

 

時計を見れば午前2時10分。もうとっくに門限を過ぎている。

だが今日に至っては何の心配もいらない。親父は出張で今は北海道だ。あと三日程度は帰ってこないだろう。

しかし帰らないわけにはいかない。俺は別に家出をしている訳ではないのだ。

 

ふと周りを見るとグーちゃん……いつもいる猫が居なくなっていた。

いつもグースカ眠っているのに稀にいなくなる。もしかして鼠でも見つけたのだろうか?猫は夜行性と聞くのでもしかしたら居眠りした俺をほったらかしてどこかに遊びに行ったのかもしれない。

 

ともあれそろそろ帰りたい。

よくこんな時間まで居眠りをしているが実際中々怖いのだ人気のない廃アパートと言うものは。できれば月明かりが出ているうちに外に出たい。

 

ミャー……。

 

廃アパートの廊下の奥からふと鳴き声が聞こえた。

 

「グーちゃん?」

 

ミャー……。

 

鳴き声が近づいてくる。

未だ夏であるはずなのにほんの少しだけひんやりとした空気が頬を打つ。

 

「ッ!!《冷気》、《霧》、《恐怖》!」

 

ミャァー……。

 

とっさに効果エフェクトを使う。

今も足元から伝わるひんやりとした空気の流れ。

 

鬼だ。

 

ミャァァー……。

 

普段と同じであるならばこれでいいはずだ。

鬼は霧により此方を目視できず、放たれる冷気で同胞と思い込み、恐怖により来た道を引き返す。

 

故に此処には……この廃アパートには誰も、何も近づこうとしない、近づかない。

俺が認めた者以外の全てを排する領域。

 

ミャァァァー……。

 

しかし何故だ?鳴き声が近づいてくる。

のそのそと遅いがそれでも確かに此方に来ている。

 

ミャー……。

 

遂に鬼がその姿を現した。

月明りにより白く輝く毛。それを塗りつぶし化のようなどす黒い赤い血。右の耳は何かに食いちぎられたのか既になくその白い体に更に赤を塗りたくっている。()()()()()ピンと張った髭が力なく垂れている。よく見ると数も不ぞろいだ。

 

「ミャー……」

「グーちゃん、だな。しかしこれは……」

 

血塗られた猫がそこに居た。

しかし、俺の知っている姿とはあまりにも違いがあった。

 

満身創痍で血塗られたその姿もそうだが俺の腰辺りまでありそうな体躯、虎のような爪、そして何よりも二つある尻尾。

 

「猫又……いやしかしグーちゃ「ミャー……」ん、だよな。うん」

 

しかしこれはどういう事だろうか?

原作である丑三つ参りにおいて猫又とはかなり強力な鬼として分類されていた。

と言うのも猫と言うものは本来自由な気質である。自由に生き、自由に行き、自由に逝く。それが猫と言うものである。そんな猫が何らかの理由で自分を縛る。そうすることで人の欲望や怨嗟を取り込み形として現れるようになる。それこそが猫又、第二の尾を持つ鬼である。

 

その猫又が此処までやられることになるなんて……。

 

「猫又はこっちに行ったみたいデスネ。霊気が強く成ってマス」

「待ってグレーシア。この先は例の鬼が居るかもしれない。慎重に行きましょう」

 

ああ、なるほど。そう言う事か。

確かに主人公達ならここまで追い込むこともできるか。

 

「ミャー……」

「大丈夫だグーちゃん。俺の後ろに居ろ」

 

そう言ってグーちゃんを後ろにかばう。賢い子だ。俺の言っていることを理解したのか大人しく後ろに身を隠す。

もしくはもう動くことすらできないと悟って本能的にそうしたか。まぁ、ちょうど良かった。

 

効果エフェクト変更、《霧》《冷気》《境道(さかいみち)

 

如何に主人公とは言え少し怖い思いをしてもらおうか。

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

「な、何が起こっタ!?」

「どこ?さ、小百合?これ、どうなって?」

 

何が起きた?

理解が追い付かない。そして反応から察するにマイもグレーシアもそれは同じ。つまりは未知。

私たちは確かに今の今まであの廃アパートに居たはずだ。その記憶を思い返すがハッキリと鮮明に思い出せる。

となれば何かに襲われたという可能性は低いとみていいだろう。

しかし、それならば此処はなんだ?

とても丁寧に敷かれた石畳、その周りにはまるでそこには何もないかと言っている様な真っ白な靄が漂っている。

そして何よりも歪なのが果てが見えない程に並んだ鳥居である。

 

ふと空を見上げるとそこにははっきりと見えるくらいの満月が浮かんであり廃アパートに入るまでの雲がかっている様子もない。

 

「小百合、グレーシア。……あ、あれ。あそこに何か……いる」

 

マイが震える声である方向を指さす。

何重にも並んだ鳥居の先、そこには満身創痍の猫又とそれをかばうかのように位置するあの霧がかかった鬼が居た。

 

「マイ、後ろに。グレーシア」

「無理デス。この鳥居の外へは結界が張られているの出れませんでしタ。攻撃する前にやられマス」

 

くッ……手詰まりか。

この状況から脱するにはどうすれば……せめてマイだけでも如何にか。駄目だ情報が足りない。とにかく情報を吐かせない事には動けない。

 

「貴方は……一体、何」

「はて……一体何に見える?」

 

つい先日と同じ回答。

やはりそう簡単に情報を吐いてはくれない。

 

「アナタは「真ん中だ」……何?」

 

鬼がグレーシアの言葉を途中で遮りゆったりとした動作でグレーシアの立っている地面を指さす。

……?鬼が指を地面に指した瞬間まとわりつくような寒さが消えた。いやな予感がする。鬼が言った真ん中。……まさか!?

 

「鳥居道……その真ん中、人の道に非ず!!」

「横に避けて、グレーシア!!」

 

───ボゥッ!!

 

朱朱とした火柱が立ち上がる。先程までグレーシアが立っていた場所にだ。

鳥居道……その真ん中、人の道に非ず……つまりここは……。

 

「マズいことになった……マイ、グレーシア先に謝っとく。本当にここで死んじゃうかもしれない」

「小百合?」

「私は最初あれをただの厄介な鬼として見てしまった。でも違うの……あれは、此処はそんなものじゃない。人間が決して許しなく立ち入ることのできない場所。……其処へ行くための境界よ」

 

鳥居道……その真ん中、人の道に非ず。

それはこの国において子供のころから教えられるなんてことのない豆知識。

でもここではそれは絶対の法則となる。つまりここは……。

 

「まさかこんなことになるとハ。教えは違えど聖域には変わりはナイ……決してみだりに踏み入ってはならナイ場所」

 

彼女も一介の聖職者である。もう見当は付いたのだろう。

だとしてこの状況自体に何も変わりはない。むしろ相手が動けばすぐにでもこの身が灰となるだろう。

ならば私にできる事は一つ。この命を賭してこの二人を帰すことだ。

 

マジかよあの若作りBBA

 

 

ふと結界が揺れた。

何もない空間に次第に亀裂が入り広がっていく。

数秒もしないうちに亀裂がさらに大きくなりまるで割れたガラスのように空間が崩れだす。

 

ビュンッと崩れた空間の穴から物凄い勢いで一つの影が飛び込んできた。

その影は鬼の目と鼻の先まで行くとこちらに背を向けた状態で停止する。

 

その狩衣を来た小さな背に長い髪。どれ程強大な相手だろうと臆することのない姿勢。

そんな人物私が知る限りこの世に一人しか知らない。京都陰陽師大本山陰陽頭、大おばあ様。

 

「さて、陰陽師の(かしら)としては鬼退治と行きたいがおぬしはどうしたらいいと思う?」

 

気が付けばいつの間にか結界はすでに消えていた。




感想、誤字報告を下さった方誠にありがとうございます。

今回名前の出なかった効果エフェクト。
朱朱とした火柱:火柱エフェクト
空間の亀裂➡崩壊:崩壊エフェクト(イメージ:アンデットアンラックのワープの際の亀裂)
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