ホラゲーの世界に効果エフェクトが追加されました。 作:ulo-uno
「さて、陰陽師の
ガラガラとエフェクトによって映し出されていた景色が崩れていく。
これも一応は俺のエフェクトなのだが今目の前にいる厄介な存在の前では早いところ違うエフェクトに切り替えたいところだ。
「陰陽師……ッ」
「"陰陽師"などと……寂しいではないかぁ、三上ィィ!」
日本最古の霊媒師……いや陰陽師。壱与。
一応は俺にとっては互いに協力関係を結んでいる存在……のはずだ。
「大おばあ様!何故こんなところに!?」
「百瀬家の小娘か。なぁに、ちと久方ぶりの懐かしい奴を見つけてのぉ。……しかし、"陰陽師"とは。もはや既に余の名前など忘れてしもうたか?」
ニヤリとこちらを睨みつける壱与。
それを見て俺も内心胸をなでおろす。不意打ちや顔がぶつかりそうなくらいまで目前に来ているというのに一向に攻撃してこなかった事から薄々そうだろうとは思っていたが今確信した。彼女に俺を討伐する意思はない。
「……壱与、何故ここに来た……お前ほどの実力者が」
「なんじゃなんじゃ、忘れておらなんだか。ならば最初から余の名前を呼べばよかろうに。"陰陽師"などと他人行儀ではなく、な?」
そう言いつつやや大げさな態度を見せる。
それはつまりこちらの芝居に乗ったという事。色々と聞きたいことはあるだろうが余計な問答は後からでもよいのだろう。
向こうが乗ってくれたのなら後は俺自身のあくまで役に徹するだけだ。
こう言ったことが起こっては欲しくないがいずれ起こる可能性はある。……と言うか今が正にその状況だ。
そんな時ために俺自身の"設定"は考えてある。
「質問に答えろ。何故お前ほどの陰陽師が此処に来た?」
役を演じている間の俺はあくまでも怪異、あくまでも人でなし、あくまでも鬼の類である。
質問を投げかけてからややあって彼女が口を開いた。
「久しく顔を見なかった奴がいきなり余の張った結界に引っかかり更には戦闘中の陰陽師との力量が余りにもかけ離れている。あのままでは手に負えなくなるのが目に見えておった。それにこれを見て見ぬふりをすればこの先どこかで大きな溝ができると思ったまで。納得したか?」
まぁ、嘘は言ってない。
日本中を監視する結界を張っていたとして一度に監視できる物事なんてほんの一握りだ。それなのに俺をずっと監視できる訳もない。だというのにここに来たという事は本当に偶然の可能性が高い……と思う。陰陽師との実力の差に関しては陰陽師側が圧倒的。特に対人戦もこなせるグレーシアが居る時点でエフェクトを見破られればこちらに勝ち目はない。と言うか人生終了のお知らせまであり得る。
と、そんなやり取りをしているうちに如何やら少しは落ち着いたらしい。
各々の"武器"を手に取った少女たちが立ち上がった。
「大おばあ様、援護します……いや、させてください。私たちは決して足手まといにはなりませんッ!」
そう言ってのけるのは小百合。
あくまでも最古にして最強の陰陽師に対して"足手まといにはならない"と言ってのけるその気概は凄いものだ。
更には後ろにいつでも銀製の短剣を投擲できるように待機しているグレーシアが居る。そしてその彼女らを守るように施された結界を維持するマイ。
「なるほど、足手まといにはならないと豪語するだけの力量に見合うだけの鱗片は既にあるか」
流石は主人公とそのライバル。
元の素質からして一般人の精神力からはかけ離れている。それだけ逆境に立ち向かうだけの覚悟があるのか。
「鱗片だけあってもどうにもならんじゃろう……援護はいらぬ。元よりこの鬼とは旧知の仲。それに援護があったところで結果を左右させるだけの物にはならん」
「しかし、大おばあ様」
「要らぬと言った。そもそもこの鬼は悪鬼の類ではない。……おぬしらも分かってはおるのじゃろう、あの狭間での際限なく続く道……あれが如何いうものであるかを」
「っ!?それは……」
壱与の問いかけに対し図星を突かれた様子になる。
「どうやら壱与、お前の言った通りの様子だな」
「それを御主が言うか……。全く後で説教せねばならんの」
それは勘弁願いたい。
そう言えば《境道》に関しては初めて使った相手が壱与だった。
アニメとかで出て来る怪談話とかだと鳥居が何重にも続いた道は演出としてはよくある方だと思う。そのおかげか《境道》に関しては昼や夜、山道や裏路地、空間の明かりの具合までかなり調整の利くエフェクトだったりする。
思い返せばこのエフェクトのおかげゼッコロ状態の壱与となんとか話し合いを行う事が出来た。
そのおかげもあってこうして生存率を上げることに繋がったのだが。
「……もう朝日も昇り始めておる。厄介な物じゃのぉ……口では退治したいとか言っておきながら時間を忘れていたとは。日が昇ってから戦おうものなら無関係の者まで被害が出かねん。どうじゃ、お互いここで一度身を引くというのは?」
もとより戦うつもりなど此方にはない。
それはきっと相手も同じだと思いたい。だからこそ絶好の言い訳を生み出せるこの状況を作り出したのだから。
しかし、退治したいとはよくもまぁすらすらと言えたものだ。俺からしてみれば有難い限りなのだが。
「……妥当な判断だ。だが、それはグーちゃん……猫又も諦めるという事になるが陰陽師としては言いたいことの一つや二つはあるんじゃないか?」
「ない訳なかろう。なんだったら余はおぬしにこそ小言を言ってやりたいわ。……それにそこの猫又は上がってくる報告を見る限り件の男子生徒に関してはそこまで執着心を持っておらん。問題があるとすればその依頼主自身の方にこそあるじゃろう。恋事に一々首を突っ込むのが陰陽師の仕事ではない」
そりゃそうだな。
恋事にアレコレ首を突っ込めば手痛いしっぺ返しが来たときに大変なことになる。ある程度は本人たちにも頑張ってもらう必要があるわけだしな。
此処は気持ちの問題か。
「ならばそこの小娘を連れて帰るのだな。なんとも後味の悪い幕引きだが此方とてグーちゃんの容態も悪い。しばらくは安静にしてやらねばいかんだろう」
とすっかり子猫の姿に戻っているグーちゃんを見つめる。
戦いによる消耗が大きいためか鬼としての姿ではなく猫としての姿に戻ったのだろう。
「三上、気を付けた方が良い。その猫又は件の男子生徒にこそ執着はしてはおらんがおぬしは別じゃ。これでもかと言うほどに執着されておる。精々気を付けよ」
「ゑ?」
「あくまでも今は守護として働いて居るが嫉妬されればマズいことになることも忘れるな。良いな?」
そう言って踵を返す壱与。
それに慌てて付いて行く主人公御一行。
一人と一匹が残された廃アパートに月明りが差し込んできた。
と言う事でようやくこの小説も大体一つの区切りがつきました。
次の話は一話くらい閑話を挟んで次の話に入る予定です。
感想、誤字報告くださった方々誠にありがとうございます。
今回名前の出なかった効果エフェクト
朝日:朝の光、日の出(お気づきになりました?)