ホラゲーの世界に効果エフェクトが追加されました。 作:ulo-uno
「眠い」
廃アパートで起こった主人公達との強烈な出会いの後家に戻った俺を待っていたのは親父……ではなくまさかの壱与だった。
家の戸締りはしっかりしている筈なのにいつものことながらどうやって入り込んできているのかさっぱり分からない。とは言え思い返せば先程のアパートで後から説教すると言っていたので俺が家に帰り寝てしまう前に先回りしてうちの玄関前に待機したのだろう。
……正直自分で言っては何だがどういうことかさっぱり分からない状況だった。
それに説教が思いのほか長く続いたせいで正直寝不足だ。なんでも俺の存在を壱与以外にも認知されてしまったとかで後々起こり得る問題に対処しなければいけないことが増えてしまったらしい。本当に頭が上がらないというものだ。このように方々に向かって彼女が色々と調整してくれなければ俺自身も鬼として直ぐに陰陽師に討伐されてしまう事になるだろう。
でもやっぱり眠いものは眠い。
陰陽師やそのほかの対処をいろいろしてくれている俺が言える立場じゃないが流石に朝まで説教されるのは勘弁してほしいものである。
ほんとどの面下げて言えるのかと言われても仕方ない言い分であるが……。だからこれは胸の内深くに留めておこう。別に俺は死にたがりと言う訳じゃないのだ。
そう言ったこともあり絶賛寝不足な俺はいつも通りの学校の屋上、そこにある給水塔の上で優雅に睡眠をとっていると言う訳だ。
「眩しいな。……眠いというのにこんなに明るくては寝るに寝られん」
アイマスクか何か持ってくればよかったな。
「なら永遠の眠りにでもつきますカ?」
ふと給水塔の梯子がある方から声が聞こえる。
寝そべったまま顔だけをそちらに向けるとそこには俺みたいな男子高校生には刺激が強すぎる肢体を持った異邦の美女……グレーシアが居た。
きっと恋愛系の漫画やゲームなんかでは主人公たちはここでいちゃつくんだろうなぁ。むしろそれに影響されたカップル共が……と思いながら一言。
「爆ぜろリア充」
「お前は何を言っていル?」
心底呆れたような物言いで此方を見下ろしてくる。
と言うか此方が未だ寝そべっているのに対して向こうが立っているせいか何がとは言わないが見えそうでギリギリ見えない。なるほどこれが俗に言う絶対領域と言うやつか。
こう言うのを見てしまうとこの世界はやっぱりあの『丑三参り』の世界だなと感じてしまう。
そんな感傷に浸っているといつの間にか喉元をつかまれ何処にしまっていたかもわからない暗器を突きつけてきた。
「次そんな目でワタシを見たら一生その眼が使い物にならないようにしてヤル」
「わ、悪かった。でも結局は見えなかったからノーカウントだ!ノーカウント」
「ついでにそのくだらない雑音しか吐かない口もそぎ落としマス」
怖すぎるだろ。
「口をそぎ落としたらアンタの聞きたいことも聞けなくなっちまうぞ!?いいのか、何か聞きたいことがあるから此処に来たんだろう?」
「確かに。……では貴方が正直にワタシの質問に答えれば今回は許しまショウ」
あっぶねぇ……。
思い返せば眠気で頭回らなさ過ぎて最初の方とかふざけてるようにしか思われない言葉しか話してなかったじゃん。俺が言うのもなんだがよく許す気になれたなコイツ。
「では正直に答えなさい監視者。貴方はいつから"
「霧鬼?」
「とぼけるナ。あの廃アパートに居る鬼の事だ」
なるほど"霧鬼"ねぇ……俺ってそんな風に呼ばれてるんだ。
なんか厨二感あって結構好きかもしれない。
「廃アパートの鬼の事か。悪かった、流石に如何言った名前で呼ばれているのかまでは知らなかったんだ」
その言葉に対して彼女は胸元のロザリオを確認した。
確か原作と同じであるならば彼女の所属する"聖歌隊"には様々な秘密道具がある。その一つがあの"偽炎のロザリオ"。
所持しているものが相手の言葉が真偽かどうか確かめたいときに使う霊装で効果は確か装備者の目の前で嘘をついたものはその身を焼かれるというもの。人や鬼といった区別なくほぼ確実に嘘をついた対象者を焼き殺せる分、効果範囲が2メートル程度と狭いと言った弱点も存在する。使用する際は確実に仕留められる距離を維持しなければならない。
……うん、これ全然許してねぇわ。むしろ本来であればそう言った"聖騎士"や"聖歌隊"の秘密道具に対して無知であるはずの俺に初見殺しのトラップを仕掛けて来るとか……本当に聖職者の方ですよね?
「その鬼の事はもうずいぶんと前から知っている。……そうだな、俺の記憶では少なくとも小学生に入る前には既に知っていた……と思う。すまないが曖昧な答えになってしまった」
しかし抜け穴がないと言う訳でもない。
よくあるだろこういう展開。要するに"嘘"をつかなきゃいい訳だ。重要な部分を隠しただけじゃこのロザリオは発動しない。
原作の話ではあるがこの手法で彼女は一度窮地に陥っている筈だ。
確か京都襲撃編よりも後の話になるから今の段階ではまだそのことに気づいてはないはず。
「チッ……嘘ではないようですネ」
「今、舌打ちしたよね?」
「してません。次の質問デス。あの鬼に関する文献などはこの地方にはありますカ?」
文献って……ある訳ないよな。だって俺だもんその鬼。
「文献……と言うのは見たことがないな。正直言ってその鬼について調べようと思ったことがない。でも"霧鬼"という名前があるのならば(いるかどうかは知らないが俺じゃない別の"霧鬼"についての)文献があるんじゃないか?」
再びロザリオを確認する。何も起こってないことから嘘としてはカウントされていないようだ。
いくら原作の知識があったとしてもこの体の耐久値は一般人そのもの。燃やされれば当然死んでしまうためその恐怖感は表現しがたいものだ。
「次の質問デス。そうですネ……この質問に正直に答えれば質問は終わりとしてあげマス」
最期の質問?これ終わったら殺すとかそう言ったものじゃないよな……。
まぁ、これ以上質問攻めにされてボロが出るよりはましか。決して死んでもいいと言う訳じゃないが。
何がともあれこれで最後だというならいいだろう。よほど厄介な問題じゃない限りはこのまま無事に終わるのだから。
「アナタは……何ダ?」
◆◆◆◆
聖歌隊所属グレーシアにとって目の前の存在は得体のしれない恐怖である。
姿かたちは人そのもの。言動だけ見ればただの変態と唾棄すべき存在。しかしその言動も彼女から放たれる敵意の前で言い放ったのであればそれはよっぽどの狂人かそれとも自身の敵意すら恐怖と思わぬツワモノか。
一見して阿呆に見えるその姿勢は道化か否か。
一度は私の殺気すら平然と受け流した相手だ。ただの人と考えるのは危険だと自身の勘が告げる。
それゆえの質問。お前は一体何なんだという簡単な問いかけ。
「俺が何か、か。……随分と曖昧な質問だな?」
「御託はいい。質問に答えろ」
一貫して最初から変わらぬ態度。
目を貫くと言っても同じ、口をそぎ落とすと脅しても同じ。適当に謝られて結局はつかみどころのない存在。
今迄の質問のうち嘘は含まれては居なかった。このような軽薄そうな人間が嘘をつかないとは正直思いもよらなかった。一度燃やすくらいのことは考えていたのだが……まぁ直す手間が省けたと考えれば有難いか。
「人間だよ」
ロザリオは反応しない。
目の前の存在は真実を示したと言う事だ。
「……分かりましタ。約束通りこれで最後としマス」
今まで掴んでいた男の首元から手を放し開放する。
何かしらの反撃がないか警戒していたが男はそのまま再び横になり眠るようだった。
偽炎のロザリオは反応しなかった。彼は
武器もあり対人戦の心得のある私にとっては無手で寝転がっている男など取るに足りない存在。
そのはずなのに……何故だろう?未だ私には得体のしれぬ恐怖が此方を覗き込んでいるかのように思えた。
感想、誤字報告を下さった方々誠にありがとうございます。
感想に猫又に変化の術的なものがあるのかと言う質問が来ていたので今回の話に居れようかと思ったのですが文章が長くなりすぎてグダった為本作における設定だけでも乗せさせて頂きます。
本作における"鬼”と言うのは妖怪、神霊、怨霊などを現します。
鬼はあの世とこの世の境界が曖昧になる時間『丑三つ時』に本来の力を発揮します。
昼間ただの猫だったものが猫又になっているのがこの例です。(これが一応本作における"変身"の定義です)
逆に日の出は鬼が最も嫌う"現象"で基本この時間帯はよほど強力な鬼でなければ姿を現そうとすらしません。心霊スポットなどの一部の場所を覗いてあの世に帰ります。
また、変化においては特定の鬼は可能となっています。
狐、狸、イタチ等は人やその他動物、鬼の姿に変化することができます。
本来であれば作品内での会話などに乗せたかったのですが筆者の至らぬところ誠に申し訳ありません。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
主人公たち含め設定として他に書いた方がいいのかもしれない……。