辛いワンタン麺   作:元祖決闘者狩り(征竜好き)

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名作が無料で読める、いい時代ですね。


真の原作主人公

あの頃、自分は世界で一番不幸な人間だと思っていた。

家庭環境に学校どれをとっても苦痛で仕方なかった。

 

そんな自分の癒しであったのは遊戯王デュエルモンスターズ。

近所のカードショップでは繰り返し遊戯王GXのアニメが流されていた。

主人公の活躍に胸を踊らされ、ワクワクをいつも感じさせる。

ろくに小遣いも貰えなかった僕は監視カメラと店員の目を掻い潜りコソコソとカードを拝借してデッキ作るためのカードを集めたものだ。

 

そしてついに40枚のカードが揃った。自分もあの少年たちのようになれる。あの頃は信じていた。それが裏切られることも知らずに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラッキーカードだ、コイツの元に行きたがっている。」

 

 

とろ牛は木の陰で目の前の光景を拳を握りしめながら見つめていた。

ヒトデのような髪型をした小柄な男性がカードをクラゲのような髪型をしている少年に手渡している。

 

 

(ここだ!)

 

 

不審な男との出会いから数日、とろ牛は見たことがあるようでない街中を彷徨うことになった。

しかし流離いのプロ決闘者は急に別世界に来たぐらいでは動じない。

海馬コーポレーションにデュエルアカデミア、自分の状況を察することはすぐにできた。

 

 

そして幸運にもこの瞬間にここに来た。これは運命である。

 

 

「しっ!」

 

 

「がぁっ!?」

 

 

「ぎゃっ!?」

 

 

気合いともにヒトデの髪型の男の後頭部にレンガを持った手を勢いよく振り落とし、その勢いのままサイドキックをクラゲの髪型をした少年の首に捩じ込むように繰り出した。

 

肉がコンクリートに叩きつけられる音と首がへし折れる音が同時に響いた。

 

 

「……ハネクリボーか…」

 

 

亡骸を見向きもせずに地面に落ちたカードを拾い上げる。

脳裏に少年時代の淡い記憶が蘇る。しかし過去は既に乗り越えている。彼には必要のないカードでしかない。

 

 

「しゃあっ」

 

 

親指で弾いたハネクリボーのカードを手刀で真っ二つに切り裂く。

確かな手応え。カードだけでなく声無き断末魔をとろ牛を感じ取った。

 

デュエルモンスターズの精霊等、彼にとっては障害にすらならない。

 

彼の動きには無駄がなかった。二つの亡骸を折り重ねた後に二つの試験管を取り出した。無色無臭の液体が入っている。

その2つをゆっくりと亡骸に降り注ぐ。するとチョコレートのような甘い臭いがあたりに広がり炭酸が抜けるような音をたてて亡骸が溶けていく。

2秒もすると衣類は勿論のことだが亡骸もドロドロに溶けあっという間に骨だけになり、その骨も10秒後に溶けて地面には紫色の泡だけが残った。

 

今回使用したのはとある超心理学者から買い取った万物溶解液の失敗作だ。使用したのは今回で6度目だがその効果にとろ牛は淡い笑みを溢した。

 

チョコレートのような死臭を鼻からゆっくりと吸い込む。

全ての死臭がとろ牛の身体に染み渡った。目を開けるとそこにはクラゲのような髪型をした少年……遊城十代が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「おい今回の受験者、偽造カード使う奴多くないか?」

 

 

「何か白いカードやら黒いカード使ってるやつがいたよな…」

 

 

 

会場は非常事態で騒然となっていた。

未知のカードを使う決闘者が何人も失格になり、実技最高責任者であるクロノス・メ・ディチは緊急事態で慌てふためき、他の教師陣も浮き足立っている。

 

そんな光景を十代は骨付きのフライドチキンを食べながら興味深そうに眺めていた。

 

 

(使うカードには注意した方が良さそうだな…予め現地民から貰ったカードでデッキを作っておいて良かったぜ。)

 

 

リストバンドや襟元など他にもカードを隠しておりどんな状況でも対応できる。あの後事前に連絡も済ませパルクールを駆使し最速最短距離で向かったため彼には本来の自分の試験より余裕を持って着くことができたのだ。

更には今回のトラブルにより試験が予定通りに進んでいない。

 

 

フライドチキンを食べ終えた後も名前を呼ばれることもなく、暇を持て余した十代はデッキのシャッフルやシャカパチの練習をしだした。

 

 

「ずいぶんとリラックスしているね…」

 

 

「……やっぱり材質が違うのかシャカパチの時の音が違うな…」

 

 

彼に話しかける受験生がいたが、反応を返さないため陰鬱とした雰囲気を纏った小柄な少年は半泣きになりながらその場を後にした。

 

『えー大変ながらくオマタセしました…再開します。受験番号110番110番の……』

 

 

拡声器の音が響く頃には既に十代は駆け抜けていた。

立ち上がった時の衝撃で座っていた椅子は凹み、周りの番号待ちの受験者の何人かは踏み台にされ一斉にしりもちをつく。

 

空中で何回転して試験官の前にガニ股で着地する。

唖然とする周りの劣等決闘者を無視し腹から叫び挙げた。

 

 

「受験番号110番!遊城十代!」

 

 

「え、あ、はい」

 

 

「決闘!」

「ちょ、でゅ、決闘!」

 

 

「先行!ドロー!」

 

 

相手が混乱しているうちにプレイを続行する。

居合の達人のようにデッキからカードを抜く。あまりのスピードに彼の正面にいた試験官のサングラスが風圧で吹き飛んだ。

 

 

(相手のデッキは天使パーミッションか)

 

 

十代の右目につけられてる特殊なコンタクトレンズはカードが例え6重スリーブをしていたとしても裏側からどのようなカードか確認することができる特注品だ。

 

(収縮にカウンター罠が3枚に豊穣のアルテミス、なかなかいい手札だな。このデッキのパワーだと手抜きでやったら勝てないな)

 

 

しかし既に手は打っている。十代は冷静に分析しながら最善の動きをしていた。

6枚になった手札はほとんど見ずにカードを決闘盤に挿し込んだ。

 

「メインフェイズ!増援を発動!E・HEROスパークマンを手札に加える」

 

サーチと同時にデッキのカードを16枚程変えてシャッフルして元に戻す。

カットを要求されないあたり、おそらく自由なのだろう。

決闘開始の時も何も言われなかった。つまり合法的に最初の手札は好きに組んでいいことになる。

やりやすくなったと十代は顔を悪辣に歪ませた。

 

「モンスターをセットし、場にカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

 

「…なるほど、中々堅実な手を打ってくるね。それでは私のターンだ」

 

 

小さくドローとつぶやき試験官がカードを引く。

既に十代は引くカードを知っている神の宣告だ。これで相手の手札にはカウンター罠が4枚あることになる。

 

 

「私は場にカードを5枚伏せる。そして豊穣のアルテミスを攻撃表示で召喚!」

 

 

「うぉ、これがソリッドビジョンか…」

 

 

3Dなんてものとは比べ物にならないモンスターの姿に十代は思わず感嘆の声を漏らした。自身はカードを全てセットしているので初のモンスターだ。

 

 

「さて攻撃はしないでおこう、ターンエンドだ」

 

 

「俺のターン!ドロー!スタン、メインフェイズ!サイクロンで左から二番目のカードを破壊する!」

 

 

「何!?ピンポイントで…」

 

 

5枚全てのカードがどこに何を伏せているかコンタクトレンズのおかげで丸わかりであった。狙うのは収縮だ。

 

 

「くっ!リバースカードオープン」

 

 

(思い切りが良いのは流石だ。だけどぬるいぜ)

 

 

「なっ…なぜ発動しない!?」

 

 

何度も繰り返しスイッチを押す試験官であったがカードがオープンされることは少なくともこの決闘では二度とないだろう。

その原因は十代の最初の大袈裟なドローにあった。

あの瞬間にドローする手に隠し持っていたフライドチキンの骨を相手の決闘盤のリバースカードの開閉スイッチに投擲していたのだ。

的確な力とタイミングとスピードで放たれた消える魔弾は役目を果たし接触不良させている。神技、まさにプロの決闘者のタクティクス。

 

焦る試験官を待たずに決闘は進行される。無慈悲に嵐が収縮のカードを破壊。十代は止まらなかった。遊びじゃないのだ決闘は。

 

「月読命を召喚。そして効果発動、アルテミスには裏側守備表示になってもらうぜ」

 

 

「な、くそ!リバースカードオープン!オープンしろよ!カウンター罠!罠!発動しろよぉ!!」

 

 

「カードの効果理解してないのか?まぁいいや、セットモンスターに抹殺の使徒を発動。除外!」

 

 

「ち、ちくしょう!」

 

 

哀れな天使は何の役目も果たせずにフィールドを去った。

彼に残されたのは永久に開くことのないカードが4枚のみ。

 

「このまま攻めるぜ!反転召喚スケルエンジェル、効果で1枚ドロー…バトルだ!スケルエンジェルで攻撃!」

 

 

ふわりと舞った下級天使が手に持った弓をそのまま叩きつける。

どうやら矢は忘れたらしい。900ポイントのダメージに相応しい演出だ。

 

 

「くぅ……」

 

「さらに続けて月読命で直接攻撃だ、いけぇ!」

 

 

 

大股で月読命が試験官に向かってかけていき、そのまま頭突きを顔面に向かって繰り出した。

魔法使い族らしい頭脳を駆使した攻撃は強烈だ。闇のゲームでもないのに鼻にツンとした痛みが走る。

 

弱小なステータスの攻撃であるのに試験官のライフは既に半分になっていた。あまりの屈辱に口から泡を吹き十代を睨みつけるが、その眼光をポーカーフェイスで跳ね返す。彼はたじろぐことしかできなかった。

 

「バトルフェイズが終わった後はそのまま何もせずにエンド。効果で月読命は手札に戻るぜ。ターンエンド」

 

 

「わたっ、いや僕の、いやあの、某の…ターン……」

 

 

気の抜けたドローだが引いたカードを目にして冷静さを幾分か取り戻した。

 

 

「ま、まだこれなら!魔法カード強欲な壺を発動…」

 

 

「させない!リバースカード、精霊の鏡を発動だ!」

 

 

「そんな…そのカードは…」

 

 

「鏡の中に封印した壺は俺が使わせてもらうぜ!2枚ドロー!」

 

 

「……ターンエンドだ…」

 

 

「これで決める!ドロー!」

 

 

勝利を確信してなお十代は手を緩めない。デッキからひくと見せかけてリストバンドに仕込まれたカードを引き抜く。

ここに勝利のピースは全て揃った。

 

 

「スケルエンジェルを生贄に捧げ、ビックバンドラゴンを召喚だ!」

 

 

スケルエンジェルが天に向かうと二人の決闘者は宇宙に引き込まれた。

暗い空の無効から灼熱の炎とともにビックバンドラゴンが現れる。

 

 

 

「攻撃力2200…」

 

 

「何もなければバトル!決着をつけろ!」

 

 

十代の叫びを聞いたドラゴンが雄叫びをあげ突進する。

距離ゼロにした2つの首を持つドラコンは敗者の飲み込んだ。

 

「対戦ありがとうございました!」

 

LP マイナス200、文句なしの快勝に十代は小さく跳ねてよろこび

舞を踊る。最高のスタートで始まった学園生活を想像していた。

 

 




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