武装神姫かった   作:ここにしかない

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武装神姫かった

 武装神姫をかった。15万ちょい。高っけぇな〜。

 仕事帰りに家電量販店で、暇潰してた。そしたら棚にあった。あったから買った。そんだけ。

 箱がプラモデルみたいだなーと思って、手に取った。したら、ズッシリ重い。軽く衝撃。後でネットで調べたら、「体長15cmの大きさだが高性能PC程度の機能がある」って書いてたから、まー納得の重量かもなー。

 神姫の種類、っての? 色々あって、よくわからん。テキトーに選んだ。

 説明書……? 読まねーわ。なんで余暇にまで細かい字を読まされなきゃならんのか。最近の家電はフール・プルーフが凄いらしい。から、テキトーにやってりゃ何とかなるだろ〜。

 はい開封〜。

 えーと。箱に神姫と充電器が入ってるから、それを出す。どっちもズッシリ重い。高級感あっていいな。

 充電器の先をPCに繋ぐ。したら、充電器の上に神姫を座らせる。……おっわ。神姫って小人の死体みたいで、不気味さあるな……。

 んで、神姫の胸を開いて……。胸中の3つの穴ぼこに、赤・青・緑の色した、折れた鉛筆の芯を突っ込む。……うへぇ。こんなちっこいの、よく挿れられるな。手先が細かくねーと出来ねーわ。神姫オーナーって凄いな。

 ほんで、蓋を閉じる。これで起動するはず。

 ……神姫の頭部からチキチキ音がする。でも、目は閉じてる。充電器のランプは赤く点いてるから、初期不良じゃあなさそう。

 これ、起動処理中って事か……? なんか長そうだなー。ちょっと便所行ってくるわ。

 

 

 

 ……。

 

 

 

 ウンコから帰ったら、神姫が目ぇ開けてた。

 

「オーナー様。私の名前を登録して下さい」

 

 充電器に座らせた神姫が、俺の方を向いて命令してくる。

 えっ怖い。神姫って喋るの……?

 

「オーナー様。私の名前を登録して下さい。オーナー様。私の名前を」

 

 狂った目覚ましみたいに同じ台詞を繰り返す。こっ、怖すぎる……。これ市販していい奴じゃねぇだろ。早く黙らせたくて、PCの画面を見る。名前の登録ならPC上でできるだろ常考。

 だがモニタには『神姫セットアップ中です。神姫の音声案内に従って登録を完了して下さい』としか、出ていやがらねぇ。……これ、神姫と直接喋って、登録しなきゃいけないって事か?

 人生で初めて直面する試練に、背中がカァっと熱くなり、汗が噴き出し始める。

 可愛い女の子のお人形ちゃんと、今から会話すんのか? 俺が……!?

 

「なぁ、神姫。……さん。名前って、どうすりゃいいんだよ?」

 

 入社面接以来の勇気を振り絞る。俺のTシャツは汗で絞れるほど濡れている。

 

「オーナー様。私の名前を決定して、呼んで下さい。同じ名前を二度、復唱した後、神姫の名前登録を完了します」

 

 名前、名前って……。なんて呼べばいいんだよ。

 神姫がじぃっと俺を見上げる。つぶらな瞳。髪はサラサラ。全身がライダースーツみたいにピチッとテカっとしてる。その中でおっぱいが異様に存在感を放つ。ちっこくなけりゃあ、神姫ってエロ可愛いよな。人の形してるし。

 

「悪い。名前、思い浮かばないからさ。……なんて呼ばれたい?」

 

 俺も今日から神姫オーナーの端くれ。……にしては、最悪の質問だった気がする。起動したばかりの神姫に、己の名前を尋ねるなんて。例えるなら、産まれたての赤ん坊に、母親が「こんにちは赤ちゃん♪ あなたのお名前教えて?」って訊くような……話長くなるなこれ。

 

「承りました。それでは、いくつか名前の候補を読み上げます。その中から選択して決定後、選んだ名前を二度、復唱して、神姫の名前登録を完了して下さい」

 

 極めて事務的な口調で教えてくれる。良かった……。ちゃんと、俺みたいに優柔不断な奴への対応もプログラムされてんだな。神姫が人類を支えるパートナーである事に感謝する。

 んでも、神姫ってずっとこの調子なのか? 事務口調なの。職場の同期かよ。俺、これから毎日、職場の同期と暮らさにゃならんのか? 返品を検討し始める。

 神姫は俯くと、頭部からチキチキ音を発して、俺のPCを操作し始めた。モニタに文書や写真が矢継ぎ早に表示されては消えて行く。どうやら充電器を通じて、PCのデータを神姫にコピーしてるらしい。

 俺のフルチン時代の写真から、家族写真、個人番号、保険証番号、巡回してるエロサイト群に至るまで、俺にまつわる情報が超高速で神姫の小さな頭脳に複製されて行く。……ってこれ、凄まじくヤバい事してるよな?

 

「インプット完了。それでは読み上げます」

 

 オイオイオイ。流石の俺でも、この先は嫌な予感しかしねぇ……。

 

「神姫名、第一候補」

 

 固唾を呑む。

 

「明美。明美」

 

「なるほど、故郷を偲ぶは里心、勘当するのは親心、親の心を子は知らず、子は帰れない実家を想う中々いいネーム……ってそれ、俺のカーチャンの名前じゃねーか!!」

 

 夜中に思わず叫ぶ。

 

「お気に召しませんでしたか? それでは神姫名、第二候補」

 

 もう余計な事すんなよー……。真面目にやれよー……。神姫の神に祈る。

 

「聡美。聡美」

 

「そうそうそう、母から受け継ぐ美しいの一字、しかし性格は美とも聡とも程遠い、兄を追い出し実家を支配、その名は上級者向けの……ってそれ、俺の妹の名前じゃねーか!!」

 

 叫びすぎて吐き気がしてきた。

 

「では次。神姫名、第三候補。たかk……」

「もういい! ストーップ! ストーーーップ!」

 

 神姫の小さな口を指で塞ぐ。神姫はむぐむぐ言って続けようとする。俺を睨む瞳に反抗心が宿る。なんてもの買っちまったんだ俺は……。

 気まぐれに買った神姫が、こんなにきけんなAIだとは知らなかった……。きけんなAIにこれ以上個人情報を暴かれないように、オーナーとして毅然とした態度が求められる。

 

「わかった、わかったから! 神姫。名前は俺が付けるから! おまえの名前は……」

 

 神姫が目を輝かす。俺の指にちょこんと両手を乗せたまま、期待して俺を見上げる。お子様プレートを注文させて貰えたガキみてぇだな。

 名前。名前……? なんでもいいやテキトーで。こういう場合、人間の脳裏に思い当たるのは、たいてい好きな物か、もしくは甘味と相場は決まっていて……。

 

「ワッフル。おまえはワッフルだ」

 

 神姫が小さな瞳をうるうる光らせる。俺の指をはねのけ(意外と馬力がある)、待ってましたと言わんばかりに、事務口調でこう締める。

 

「神姫の名前登録、完了しました。セットアップ完了。神姫、起動します」

 

 いやどう見ても、もうしてるだろ……。

 

 

 

◆

 

 

 

(省略されました。続きを読むには、ワッフル、ワッフルと復唱して、神姫セットアップを完了して下さい)

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