廻り廻れ黒い◯子   作:天廻シーカ

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作者の気が向いたら続きます。


1 黒い精子、呪術の世界へ

───ああクソ、なんだ。

身体に響く鈍痛にオレは目を覚ました。

 

そして身体を突いていたらしい目の前の猪を殴殺し、その肉を骨ごと喰らう。

今は考えるためにもまずタンパク質が欲しい。

 

「さて、どうすっかなー?」

「まずは周りの様子の確認しようぜ」

「待て、キングとの戦いはどうなったんだよ」

「というかここ森?理解できねぇ」

「どういう理論でキングとの戦闘は終了したんだ」

 

いやオレも知らねーし。

キングと戦った個体の意識あるか?

 

「ああ、キングとは戦っていたのですが邪魔が入りまして……。

 紛い物に殺されました」

「え、マジで?」

「あの状態からどうやって負けたん?」

「オレらの身体どう使ったの?返答によっちゃ少しキレるぞ?」

「いや考えてみろよ、意識的にはオレらより強いのに文句言っちゃいけねぇぜ」

「それもそうだな」

 

「紛い物、閃光のフラッシュとは比べ物にならない速度になった上にバングよりも武術が上手くなったんですよ。

 それで戦いの後半では押され気味になりましてね……」

 

ああそうか、理屈はわかる。

フラッシュ以上の速度でバングにボコられることを考えたら負けるのは納得だな。

速度に応じてパワーも強くなってるだろうし、アイツの成長がオレらの想定よりバカ早かったってことが1番の計算外だったか。

 

で、オレ。

本題に入るぞ。

今なんで、こんな辺鄙な森の中にいる。

 

「ガロウに吹っ飛ばされて森まで飛んできたんじゃねーのか?」

「いやでも、オレ殺されたって言ってただろうが」

「そうですよ、私はガロウにボコボコにされてコナゴナにされて死にましたから。

 吹き飛ばされたことなんてないはずですよ」

「ここまで来るとお前清々しいな……。オレだから許すが」

「でもそうなるとマジでこの場所なんなのって話になるぞ?」

 

オレの知識不足か、一向に話が纏まらない。

身体にはちょうど50兆のオレがいるのにこれで正解と思える案が一個もねぇとはなんとも情けない。

なんもかんも狂った現実がおかしいのだ。

 

「おいオレ、とりあえず山から降りてみようぜ?文明をまず見つければ今ここにいるのがなんなのかまだわかるかもしれねぇ」

「そうだな。1兆のオレを50体作って下りるとしよう」

「最初に街を見つけたやつは……、どうする?」

「人1匹食うか、それでオレが増えればそのグループが街見つけたって事でいいな?」

「賛成だ。オレの数が変化すれば全体に伝わるからな」

「じゃあ、解散!」

 

 

オレは50の群体で分かれて山を下り始める。

次にオレと出会うのはいつかわからない、今生の別れかもな。

「いや別に死なねぇだろ。

 1兆でも相手できる人間ポンポンいねぇって」

「それもそうだな」

「気楽に行こうぜ」

 

そんな言葉を頭の中で聞きながら、ニヤリと笑って勢いよく崖を飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

 

どうしてこうなった……。

オレは木陰に隠れ、今起きている戦闘をじっと見つめている。

というのも火山頭の怪人を白髪の男がボコボコにボコっているのだ。

火山頭だって強い、レベル竜くらいはあるだろう。

それを吹っ飛ばしながら吹き飛ばす男。

多分アイツも本気なら閃光のフラッシュくらいの速度あるな、やべーとこ来ちまった。

 

「ハズレクジ引いたな、どうする?」

「あの白髪、オレで勝てねーか?」

「10兆以上いれば戦闘になっても勝機はあるが、今の状態だと死ぬと思うぞ」

「やべーじゃねえか、逃げようぜ」

「いや一応見ておきてーだろ。S級ヒーローじゃねぇ男の戦闘力だ、イレギュラーだからといってほっといたらガロウみてぇに強くなるかも」

「オッケー。9999億は別行動、オレ1億でいく」

「わかった。武運を祈る」

「戦わねぇよ、見るだけだ」

 

9999億の群体が森の中に入って行くのを確認して、オレは再び火山頭の方を見やる。

火山頭ももう死にかけだし、情けねぇな。

 

「あの黒い球だけ気になるな、どうやって作ったんだ?」

「知らね。タツマキみたいな超能力かもな」

「となると超能力がこっちだと普通にあるのかも、厄介だ」

「だが白髪の隣に雑魚がいる。最悪人質に出来るぜ」

「フラッシュ並みの速度を掻い潜れたらの話だぞ、それ?」

 

お、なんか来た。

今度は植物の怪人か、しかもコイツも竜下位くらいはありそうだ。

こっちでも怪人協会みてーな怪人のグループがあんのか?

 

木陰に隠れるオレに一瞥を加え去っていく植物野郎。

首をネジ切られた火山頭の頭を回収してるあたりコイツも有能なんだろう。

敵に回すとダルそうだ。

 

「というか頭だけ回収してアイツ死んでないのか?」

「レベル竜でも死ぬよな、アレ」

「再生能力すげーのかもな」

 

実際再生能力がすごいんだろう、じゃないとわざわざ拾う必要がない。

あんなフラッシュとタツマキを足して2で割ったような化け物に本当は近づきたくもないだろう。

なんかビーム出してたし。

 

「ねぇ、さっきから見てたよね。

 呪霊でも人間でもないっぽいしなんなの、君?」

 

第2ラウンド、開始。

 

 

 

 

困った、どうするか。

オレの目の前には白髪の男とソイツが連れてきたと思われるガキ。

ガキならオレは勝てるが、この白髪の男には絶対に勝てない。

ここは流石に頭脳勝負に持ち込むか。

 

「呪霊っつーのはわかんねぇが、オレを殺すってんのなら容赦はしねーぞ。

 オレは呪霊じゃねーが怪人だ」

「あー、そういう感じ?悠仁みたいな半分呪霊みたいな」

「え、俺って呪霊なの!?」

「いやー、なんて言ったらいいかなー。

 まあその認識でいいと思うよ」

 

白髪に言われあからさまに落ち込んだ様子のガキ。

チッ、だが白髪は未だにこちらを警戒してるな。厄介だ。

 

「うーん、君、今まで何人殺した?」

「まだこっちでは殺してねぇよ。

 山から降りてすらもいねぇ」

「そうか」

 

考える様子の白髪だが、もう心は決めているだろう。

だけどオレも決めている。

無策でここまで来たわけじゃねぇ。

 

「よし決めた、君死んでね」

「待て。

 今オレを殺すと49兆9999億のオレが殺戮を始めるぞ?

 それでもいいなら殺せばいいがおすすめはしない。

 あとこっちから提案がある、聞く気はないか?」

「───話、聞くだけならいいよ」

 

関門は突破した。

 

 

 

 

 

 

「えーと、じゃあ君は人を皆殺しにするつもりだったけど1人のそのガロウっていう男に止められたってこと?

 ウケる」

「ウケるじゃねぇブチ殺すぞ」

「機嫌悪くしない悪くしない〜。

 ほら君、バカじゃないでしょ?」

「バカではねぇはずだがな」

 

50兆のオレが全国各地に散らばっているという出まかせは吐いた、それなのにコイツ、五条悟という名前らしい、は未だにこの余裕を保っている。

おそらくコイツはバカだ。

バカというか平和ボケしている。

万全状態のタツマキの出力の1割もあのビームで出せていないのに僕最強なんて夢を見ている。

一つの市に人が住めなくなるとか、経験したこともない軟弱者なんだろう。

 

そしてオレがこのアホに言われたのは、おそらくオレは過去の術師の受肉体だということ。

森の中でなんか食って受肉したんじゃないかとかバカなことを口走っている。

いや流石に無理がある、昔にヘリコプターやヒーローが存在してたまるか。

だがこの勘違いはありがたいからその路線で行こう。

 

「でもさ、君森の中で受肉したんだよね?」

「そうだがな、10年以上も前の話だが」

「よくバレなかったねー」

 

ああよくバレなかった、オレがここに飛ばされたのは2時間前だ。

全国にオレが散らばっていることを正当化するにはこれしかなかった、許せオレ。

というかコイツバカすぎるだろ、最強のおかげで脳が最弱になっている。

 

「お前は、人殺すの?」

「別になんの意味もなしに殺しはしねぇよ」

「意味があれば話は別だが」

「それはお前らも同じなんじゃねーの?」

「いつの時代もどんな時も超能力は権力者のオモチャにされる」

「うわ頭増えた、怖いなお前」

 

五条悟の隣にいるこのガキは、虎杖悠仁というらしい。

コイツはなんと雑魚のくせに頭が出来ていなくて、なんでこの世界に生きてるのかマジでわからない。

人のこと、なんならオレのことまで完全に信じるし頭が猿なんじゃないかと疑いたくなる。

 

「確かにそれは正論なんだけどねー、それを悪びれもなく言えるってことに問題があるんだ。

 人を必要があれば殺せるって言われちゃうと僕も殺したくなる」

「今は必要がないから殺すつもりねぇよ。

 そもそもやりたいことも目標もねぇしな。

 ああそうだ、よければ人間の側についてやるよ、悪い話じゃねぇだろ?」

「「マジ?」」

「大マジ」

 

元の場所に戻りたいかといえば、そうじゃない。

ガロウに殺されなかったとしても他のやつに殺される可能性が十分にあるからだ。

それに比べてこの世界はどうだ。

いるのは僕最強を自称する男と、話を聞く限りそこそこ平和な街だ。

この自称最強でさえオレが白金精子になれば勝てるだろうから、敵はいないことになる。

となるとこの世界、極めて安全だ。

 

だけど今は暇だから人族についてやることにした。

オレも死にたくないし。

知識欲しいし。

 

「じゃあ頼むよ、出来れば回収してね、君の分体たち」

「交渉成立だな。それについては努力だけはしてやる。

 散らばってるから無理かも知れねぇからな」

「いいのごじょせん!?」

「というか僕も手詰まりだからね、ばら撒かれてるとか言われちゃうと。

 しかも1億の分体でその呪力っていうんなら兆レベルになると僕もいい勝負を強いられる。

 なら平和的に解決した方がいいかなって思っただけだよ」

「というわけだガキ、理解したか?あくまで協力関係だ、嫌い合うんでもかまわねぇよ」

「あ、ああ。わかったよ」

 

 

聞いてるか、オレ。

オレはこの人間どもと行動を共にすることになった。

せいぜいがんばれ、オレ。




黒い精子……半分呪霊、半分動物の体の仕組みをした特殊な生物となった。体の性質としては虎杖悠仁や腸相に近い。
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