廻り廻れ黒い◯子   作:天廻シーカ

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人の心は少なめです。


2 呪術は知らんが生きられるなら構わねぇ

「──呪霊はテメーら人間にとっては有害な生物で、お前らはそいつらを殺す職業ってことだな。

 今オレらが向かってる呪術高専ってのはその職業訓練所ってことでいいのか?」

「呪霊は生き物じゃないし、高専は呪術師の仕事を斡旋してるギルドみたいな役割もあるけど、大体はそんな認識でいいよ。

 物分かりいいね」

 

あの後オレらは車に乗り、高速道路を走ってその高専とやらに向かっている。

五条悟からは未だに警戒されてはいるようだが先ほどよりは弱まった。

協力関係を約束した後縛りを結んだからだろうな。

 

縛り。

五条悟によると、呪術という超能力的な力で相手と制約を結ぶことらしい。

端的に言っちゃえば何かしらを賭けた約束事にするっていうことだな。

破ってしまえば罰が科せられる。

 

オレと五条悟が結んだ縛りはこの2つだ。

『1.お互いがお互いのことを殺せるようになるまで互いに相手の仲間と思っている存在を攻撃しない。

 2.お互い相手のことを尊重する』

 

初めての縛りにしちゃマトモな感じで結べたはずだ。

尊重とかもう理屈からしてグダグダだしな。

地味にそれ以外にも楔を打てたし、五条悟のガバガバ具合に救われた。

 

あと隣にいた虎杖悠仁から聞いた話だが、五条悟はやはりこの世界においては冗談じゃなく最強の存在らしい。

というのも普通の術師じゃ無下限とかいうよくわからねぇ超能力のせいで触れることすら出来ねぇんだと。

念の為五条悟に触れようとしてみたがその言葉通り実際に触れることは叶わなかった。

攻撃力はそこまで高くないが、防御性能はクソ高い。こりゃ厄介なおじゃま虫がいたもんだ。

 

車が高速道路を降りたからオレは東京とやらの街の様子を眺める。

ネオンが密集していて、人口密度は非常に高い。だがそれでいて街の規模、面積は元の世界とは馬鹿げたレベルで小せえ。五条悟からこの島の地図はもらったがまさかここまで小せえとはな。

そもそも、オレが今まで生きてきた世界はたった26個の市で全ての土地が網羅されていた。そのうちの半分くらいの市では結構な人口密度で人は住んでいたし、一つの市でも人口はこの東京とかいう街より多いだろう。

考えちまえば人の住めなくなってた街であるZ市ですらこの日本っつー島より全然デケェ。

やっぱこの星の奴らは規模が小さいレベルで戦闘してるってことがよーくわかった。

そりゃこの五条悟が僕ちゃん最強と勘違いしちまうわけだ。

 

 

──車が止まった。どうやら目的地に着いたらしい。しかし東京という街を考えればずいぶん山深くまで来たものだ。

呪術を一般人には隠したいんだろうがこうやってこそこそできる時点で規模が小さいショボいグループだっていうのを理解できる。

ヒーロー協会とか馬鹿でかいビルを市のど真ん中に立てていたからな。

あれはあれで大馬鹿野郎が建てた臭いがプンプンしたが。

 

そのくせに学校というより神社仏閣の見た目をしてやがる、なんでこんな見た目にする意味があるんだろうか。

五重塔が立ってるが絶対に管理費を食ってるだけだろ。バカにしてんのか?なんかの暗喩か?

 

「バカみたいに和風だ。ここは重要文化財とかにでもなってんのか?」

「ああそれ、俺も気になったからごじょせんに聞いたけどマジで重要文化財になってるらしいぞ!」

 

え、マジ?

オレは別に製作者でもねーが戦闘集団の巣窟にされてるのは同情するぜ。

 

虎杖悠仁が俺、死んでるからと言って先に校舎に入って行った。詳しくは分からねぇがどうせ超能力者だから利用されかけて死んだふりしてるんだろうな。可哀想に。

 

 「君さ、いくら協力関係になったとはいえなんも言わないのはヤバいから夜蛾学長のところに行くよ。ついてきて」

「学長ってことはこの学校で一番偉いのか」

「やっぱり一番強えのか?」

「ギルドみたいな役割あるって言ってたけどそれも学長やってんのか?上層部にしてはよく働きやがるな」

「ご名答。実際には上層部ではないけど、物凄い働いて貰ってるよ。

 ちなみに最強は僕だから、夜蛾さんはすっごい強いわけではないかな。敵に回すと厄介極まりないと思うけどね」

 

ならば軍師系かバフ系、回復系もあり得るな。どれにしたって大した差はねぇがバフ系でなけりゃありがたい。回復系であっても即死させりゃいいだけだし、軍師系だとしても蟻の群れじゃゴジラには勝てねぇ。

 

「色々考えてるみたいだね。

 僕最強だから、君には負けないと思うよ」

「あー、言ってろ言ってろ。

 すぐに対処法見つけてブチ殺してやるよ」

「楽しみにしてるねー」

 

ヒラヒラと手を仰いで煽る五条悟を無視しながら、オレは奴の後を着いていく。

夜蛾っつー奴も五条悟も、来たるときにはまとめて殺してやる。

それまでの辛抱だ。

 

 

 

 

 

 

 

「五条、なんだその珍生物は」

「人間みんな皆殺しにしようとしてた過去の術師の受肉体。

 なんでこんな見た目になってるかっていうと……、うーん猿が呪物食べたとか?

 大丈夫大丈夫、互いに危害加えないっていう縛り結んだから」

「お前が言っても信用がない。おい、そこのチビも本当の名前はなんなんだ?

 五条流石に知ってるよな?」

「え?知らない」

 

夜蛾という男が頭を抱える。

まあそりゃそうだろうな、最強の頭は最弱に等しい。もっと糖分とった方がいいぞ。

 

「オレは黒い精子。ずっと昔からそう呼ばれてる」

「セイシって生死の方?それとも性器から出る方?」

「性器から出る方だ」

「ふぅん。人の命に直接関わってるし、どっちにしろロクな存在じゃ無さそうだね。

 まさか結構昔は有名な呪詛師だったり?」

「そんな名は知れてねーよ。

 昔から見た目は変だったしあまり人前には出てねぇしな」

 

夜蛾はすでに去ってしまっている。

おそらく『黒い精子』というのを資料かなんかで見に行ったのだろう。

オレは過去にはこの世にいねーはずだから絶対に見つからねぇが、わざわざ教えてやる必要もない。

ただ五条悟はオレに関する警戒を少し強めたようだ。せめて受肉体じゃねぇってことだけ隠し通せりゃ今はいいんだがな。

 

 

 

 

 

「で、君。

 ここに来たはいいけどとりあえずどうするの?」

「オレに聞くなよ」

「そもそもテメーが連れてきたんだろうが」

「オレとしてはここで生活してる人間見ておきてえが」

「お、それ賛成!オレもそうしたい」

「じゃ、とりあえず明日高専色々見ていいよ」

 

「「「は?」」」

「だって君、まだ敵意ないでしょ。

 敵意ってよりかはこの世界のこと知っときたい的な、そんな気持ちなんじゃない?

 縛りも結んでるし、高専のみんなは僕の大事な大事な仲間だから傷つけられない」

 

確かにそうか。

オレの思惑が見透かされてるのは癪だが、確かに今オレが欲しがってるのは情報。天敵となり得る存在や、オレを害し得る存在がいるかどうかだ。それだけ知りたくて互いに縛りも結んでるんだから、そりゃ戦闘にはならないか。

それでも気になることはある。

 

「見ちゃいけない場所とかないのか?」

「あーそれ?

 こっちもあまり見られたくない場所にはさらに結界張ってあるからね。

 今の君が入ることを許可されてる結界は一番ゆるゆるのところだよ。

 他の場所に入ろうと思ったら弾き出されるからご安心!」

 

ご安心じゃねぇよ、こっちは急に弾き出されること考えたら怖くてたまらねぇよ。

急な衝撃に潰されたらオレもなかなかな頭数減らされるんだからな?

そんなんたまったもんじゃねぇ。

 

「結局てめー、あんまり色んな場所見せる気ねーだろ」

「あ、バレちゃった?

 だって君僕の想定以上には強そうなんだもん。

 しかも結構頭も回るっぽいしさ。メンゴ!」

 

あー殺してぇ。前世ならぜってー殺してたわ。

だがオレも一度は死んだ身だ、冷静にしていなきゃ理不尽な存在にぶち殺されることは知っている。

現にこの男の黒い球の手品についても知れてねぇわけだしな。

 

「あと君、今日は虎杖と一緒に寝てね!」

「あ?いいのか、大事な教え子さんとオレを同じ空間にぶち込んで」

「君も少しの間秘匿にしたいからねー。

 僕はこれから上層部の方に仕方がないから伝えに行くけど、それより先に知られちゃうと大惨事だ」

「あっそう」

 

オレの言葉と同時に消え去った五条悟に、思わずため息をつく。

今までの奴の言動を見て思ったが、この世界では腐った奴はとことん腐ってやがるができる奴はとことん優秀で働きまくる。

言ってしまえば結局ヒーロー協会の仕組みと同じで統制はねぇがオレに抗いようがある化け物が独断で暴れられる環境ってこった。

下手な警察組織よりはよっぽど厄介、こっちの世界でも本気で生きるしか無さそうだ。

オレは先に寝ていた虎杖悠仁の隣へと行きそのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、虎杖より先に起きたオレは五重塔のてっぺんから学校の外の様子を見ていた。

戦いもいいが、こうしてぼうっと外を見ているのも気が楽でいい。

オレも一回の敗北のせいで少し丸くなったのか?

いや記憶ねぇしそれはないか。単に昨日のクソ目隠しのせいで疲れただけだろ。

 

さて、周りの様子はわかったけどこっからどうするかねぇ……。

本当は9割ここに集めて目隠しを叩き潰してぇんだが、あいにくオレ自身が散らばせてしまった。

五条悟からは集めてねーっと頼まれたわけだが連絡手段ねぇし……、目隠しに前の山に連れてってもらったとしてもそしたら今度は10年前に受肉したっつー嘘がバレるし。

 

なんつーかオレら1億詰みでは?

あー嫌だな、別にオレが死ぬわけじゃねーんだがなんか無駄死にみたいで気にくわねぇ。

 

 

 

『パチン』

 

 

大きな拍手の音と共に変わった視界に、オレは警戒を強める。

今いたはずの塔のてっぺんから肌色の塊が飛んできて、目の前へと砂埃を巻き上げながら激突する。

チッ、バカ目隠しみてーな超能力者がまた現れやがったか。

塔のてっぺんから飛び降りるこの身のこなし、少しダリーかもしれねぇ。

 

 

「お前、呪霊だな?

 いや違うか、人間か?

 まあいい、それなら俺が知りたいことはただ一つだ」

 

 

目の前に突如現れた筋肉ダルマは、ニッと笑って臨戦態勢をとる。

 

「どんな女が好みタイプだ?」




五条悟……今のところ黒い精子を結構警戒している。警戒レベルとしては宿儺よりもワンランク落ちるくらい。精子の見ていないところで電卓を打ったら総和では宿儺よりも呪力量が多くなることに気づいて軽く引き気味。

黒い精子……今のところ天敵もいないのでゆったりしている。五条悟はなんか強くて厄介なやつというイメージだが、まだ無量空処を知らないので舐めている。

筋肉ダルマ…‥お馴染みあの人。黒い精子のことをただの呪霊じゃないと見破ったので結構すごい人。なんで見破ったかは作者もわからん。でもアイツだし。


縛りについて。
『お互いがお互いのことを殺せるようになるまで』という条件がついたのは、黒い精子が五条のことを殺すと煽りまくったから。五条悟はどうせ殺せないと思ってその縛りを結んだ。腐ったみかん(上層部)のところへ向かっている今の五条は少しだけ後悔している。
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