廻り廻れ黒い◯子   作:天廻シーカ

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7 お話ししよっか

「ちょっと、再確認するよ。

 読み上げてくからそれで合ってたら合ってるって言ってね?」

「いいぜ」

 

朝の高専、職員室。

そこで問題教師であるはずの五条悟は逆に大問題をたくさん押し付けられて頭を抱えていた。

元凶はもちろん黒い精子。

禪院家に攻撃されたらやり返していいとは言ったが、まさかこんな事態にまでなるとは思っていなかった。

当の本人の目の前で七海建人から回収した報告書を読み上げ始める。

 

「黒い精子、特級呪霊を見つけてから1分以内に撃破。同時に宿儺の指を回収し、廃校舎に入ってからわずか5分で任務を終了させる。

 あってる?」

「まああってる。戦ったのは30秒くらいだったが」

「やっば。じゃあ次」

 

「禪院家に直行し指を届けたあと、七海建人の制止を振り切り禪院家の戦闘員全員との交戦を開始。

 かつ1分でほぼ全てを鎮圧し、残り9分で回避に尽くしていた禪院直哉を捕獲。

 場所は廃校舎であり被害はなく、帷も張っていたため民間人への被害はないが、圧倒的な制圧力を見せた。

 これあってる?」

「一部間違ってる。

 七海建人は静止はしていたがオレが振り切ったと言われるほどは静止していなかった。

 五条悟なら無理にでも押し通すようなレベルの静止だ」

「オッケー。

 まあそこは僕も禪院家に喧嘩売られたら殺しちゃダメだけどボコるくらいならいていいって言っちゃったからね。

 まさか全員を相手取ってかつ1分でボコボコにするとは思ってなかったけど」

 

ニヤッと笑ってから五条悟は言う。

彼は彼で黒い精子がボコってくれたことに感謝はしているのだ。

やり過ぎかも知れないが、ここまでしないとあの家には何の意味もないだろう。

それを知っているから、五条悟はなんとか笑えている。

 

「最後ね。

 これ一番やばいことなんだけど、例の戦闘で禪院家の子供の一人である禪院由莉が反転術式を会得し、かつそのアウトプットも見せた。

 これは禪院家にとっては偉業と見られたため、黒い精子及び七海建人は一晩その宴に参加することとなった。

 これあってる?」

「あー、全部あってる。

 酒少し飲んだのやばかったか?

 結構すげぇやつだったりとか」

「んなわけあると思う?」

 

五条はため息をつき、思わず顔を顰める。

どうせ冗談で言っている、コイツは絶対知っているはずだと。

というのも反転術式のアウトプットなど、出来る人間は普通いない。精々家入や現代の異能とも呼ばれる乙骨くらいだ。

そのはずが、あの家庭のただの女児が得た。

それが大問題なのだ。

 

「君、わかってる?

 あの家の女、しかも子供が反転術式のアウトプットを使えるようになったの。

 使い潰されて呪力を毎回スカッスカにされて、男どもに回復道具として使われてすぐ死ぬよ?

 しかもその男どもは回復しまくれるからこっちから子供を保護するのも難しい。

 というか受肉体なんだからわかってるよね?」

 

だが精子も言われてばかりじゃ腹が立つ。

今まで五条に散々言いたいこと言わせて来たが、五条悟は禪院家に対する認識が甘い。

残虐な経験を山ほどしてきた精子が直接禪院家を見てきて思ったことはいくつもある。

精々御三家のお坊ちゃん、そう心の中で悪態をついて口撃を開始した。

 

「まず第一にな、オレは全部ちゃんと理解してる。その上で言うぜ。

 お前は禪院家の女を舐めすぎだ。それが餓鬼だろうが大人だろうが、そう簡単に心をすり減らす奴らじゃない。

 いざとなれば男に牙を剥き、その時実力が足りていればそのまま叩き潰す。

 そんな化け物どもが禪院家の女だ」

 

黒い精子は芻霊呪法の持ち主である禪院陽花を3分ほどボコリまくったのに当の本人は案外ケロッとしていたことを思い出す。流石に宴の席で自分を見つけた時は影に隠れ怯えていたが、それ以外の時は姿を見つけない限り案外普通に動いていた。

自殺してくれれば楽だったのに、元気すぎて誤算だった。まあだから暴力を継続して自殺させるために禪院家に自分を分けて半分残したのだが。

 

「そして第二、第二っていうのか?

 第二にだが、禪院由莉の呪力が尽きて死ぬことはないと思え。

 禪院家の男どもはクソだからあらかじめオレの体の個体を半分あっちに送ってる。それで呪力が足りなくなったら適当に料理して食えと言っといた。

 それで呪力が回復するから、呪力不足で死ぬなんてことはありえねぇ」

「はぁ?」

 

五条悟、再び頭を抱える。

なんか目を離していたら精子がいつのまにか体を半分分けて禪院家に送り込んでいた。

良くない。この戦力のやつを禪院家に渡すのは非常に良くない。

もう行っちゃったけど。後の祭りだけど。

五条は一通りもがいてから、全てを諦めたのか再び精子の方を見やった。

 

「で、その女の子が食べる精──、いや良くない、なんて言えばいい?

 精──、お前ってマズイの?

 一応聞いておくけどさ」

「どうしてだ」

「僕の親友、日記残してた時期があってさ。

 呪霊ってクソまずいらしい。虎杖も不味いって言ってたし、その調子だとその女の子常食するでしょ?

 反転アウトプット出来るレベルの術師が道を踏み外したら困るからさ」

 

その美しい双眸は黒い精子ではなく、その後ろの窓へと、青い空へと向かっている。

なにか嫌な記憶があったんだなと適当に結論づけ、精子は話を続けた。

 

「割と食えたらしい。

 オレが困ったがな。自分を食われるとか、普通に不快だ。そのくせに結構バクバク食ってた。

 普通にキレそうだった」

「おー、よかったよかった!

 というかそこでキレないでくれてありがとね。

 なんでだろうね、半分呪霊、半分人間みたいなはずなんだけど、案外美味しかったりするのかな?

 ──いや、この話題やめよう、お互いに良くない」

 

黒い精子が青スジを頭に作っているのを見て、五条はおちょくるのをやめた。それに親友もこんなやつを食っていたら気が軽くなっていたのかと思うと、胸が痛くなるし、つらい。

苦い顔をしてから頬を手でパンパンと叩き、五条は笑った。

 

「じゃあ呪力が枯渇することもなくて、その女の子が辛い思いをすることも多分ないってことね?

 なら保護しなくてもなんとかなるかな、禪院家が盛り上がっちゃうのだけは癪だけど、まあうちにも精子いるってことでトントンで。

 で、君に提案あるんだけどいいかな?提案というか命令というか依頼というか、ね?」

 

その瞬間黒い精子に走る嫌な予感。

この男のこの言葉、絶対碌なことにならない。

というかこれ、依頼の命令だろ。なんかしろってことだろ。

そんな精子の顰めっ面を無視して、五条は続ける。

 

「頼みたいことは二つあってね。

 一つ目に、日常生活において虎杖悠二の護衛をして欲しい。

 彼命狙われてるから、一応死んだことにしてはいるけど念の為安全は確保したくてね。

 君特級術師ともやりあえるし、戦闘能力は十分でしょ」

 

特級術師と戦ったことないんだが。

ボソッと呟かれた精子の言葉は思いっきり無視された。

 

「二つ目に、明後日の虎杖の任務に同行して欲しい。確証はないけど相手がおそらく特級でね。

 なんか、人間の体が捻じ曲げられて死んでたみたいなんだ。おそらくただの呪霊じゃなくて命に関わる術式を持ってる。

 七海も行くけど、不安だからね」

「七海、精子と仕事行きたくないとかいってなかったか?

 あいつ帰り愚痴凄かったけど」

「ん?

 絶対に行きたくないって言ってたよ?

 だから今回で終わり。

 これ以上は流石に申し訳ないんだけど、今回の件はあまりにも被害がどうなるか予想できない。

 七海でも特級のガチモンの術式持ってる相手に勝てるかって言われたら疑問符しか沸かないからね。

 僕がこんなこと言っちゃあれだけど、精子がいなければ今回の任務、先送りにすることも考えてる」

 

青い双眸が精子を射抜く。その奥に感じる、純粋に見定めるようにぴたりとも動かない瞳孔。

五条悟の覚悟は完全に決まっていた。

精子はそれを察して、呆れに近い感情を抱いた。

 

「あー、わかったよめんどくせぇ。

 つまりピンチになったら助けろってこったろ?

 了解した」

 

その視線を受けて、目を逸らしながら精子は言う。

正直精子はこの話をさっさと終えたかった。

真面目に話をするのは苦手だ。

 

「そゆこと。

 理解早くてほんと助かるよ。

 てなわけで、七海には今日と明日休んで貰ってる。

 君も今日は休むといいよ、やることないしね」

「いや、認識阻害の呪具あるだろ。

 街に繰り出す。

 一年どもが虎杖の死で病んでるからな、こっちまで気が重くなってやってらんねぇ。

 一日遊んでくるわ」

 

そんな言葉を残して、精子は職員室を去った。

その背中を固まったまま見やる五条。

まさかここまで生徒のことを見ていて、自分よりも見ているとは思わなかった。

 

()()()()()()、狂ってないな」

 

五条は静かに呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「五条悟はどうだった?」

「無理に決まってんだろう、馬鹿が!

 あの小僧をどうやって止められるんだ!?」

 

群馬某所の温泉。

山の中、火山頭の呪霊は袈裟を着た男に怒鳴っている。

呪霊の名は漏瑚。

先日五条にボコられ頭だけになっていたが、呪力を上手く回して体裁だけは元に戻していた。

 

「言ったじゃないか、五条悟は獄門疆で止めるってさ。

 そうしないとどうしようもない。

 それで私もこの姿をしてるんだし、まあ今は体を休めな」

「たく、どうすんだか……」

 

袈裟の男の名は羂索。湯船の近くの岩に腰かけ、湯船に入った呪霊たちのことを薄ら笑いを浮かべながら見ている。

 

「黒い精子のストックも増やす必要あるしね。

 精子、今何兆くらいだっけ?私の呪霊も有限だし、あまり無駄に殺させたくはない。

 というかもう使いたくない」

「20兆だな。一週間前15兆だったことを考えりゃ全然上出来だろ。

 まー、芻霊呪法があるからどうにもこうにもいかねーんだがな」

 

呪霊3分の1くらい使ったんだけどね、と愚痴を叩く彼に隣で寝る精子はため息をつく。

しょうがないのだ、本当に芻霊呪法だけはどうしようもない。

黄金以上になれば体の硬度的にそもそも刺さらないだろうが、それだけの人員は残念ながら高専側には存在しない。

1億体しか送れなかったらしいし。

 

「でも末恐ろしいね、生まれて一週間で芻霊呪法で情報交換しようなんて思いつくとは。

 芻霊呪法で体を傷つけて、それで書いた文字を全体に一斉送信。

面白すぎるよ、呪術の可能性が広がったんじゃない?」

 

ニヤニヤと笑う男を見て、精子も考える。

一週間前羂索に回収されてから今まで情報がなかったが昨日の夜やっと、身体から芻霊呪法による連絡が届いた。

高専の五条悟、芻霊呪法がどうしようもないと。

実際事実だし嫌になりそうだったが、羂索に拾ってもらったのが功を奏して知識と共に高専を潰す方法は見つかった。

なんだかんだ順調である。

 

何を考えているんですか? なにをかんがえているんですか?

「ああ、高専をまず潰す方法な、そして五条悟、芻霊呪法の持ち主釘崎野薔薇の殺害。

 でもなんとか行けんだろ、羂索」

「ああ、いけるよ。全然ね」

 

男も笑う。

男の頭の中に浮かぶのは呪霊でも人間でも受肉体でもない新生命、黒い精子で埋め尽くされた世界と、その中を歩く巨大な呪霊。

それを見てみたい。

 

 

黒い闇は、形を成し始める。





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高評価、感想、ここ好きしてくださると作者が飛びます。
1億の高評価で呪霊を作ってみたいんだ。
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