IS神峰録 作:アリガートル
リハビリを行う毎日、その中で龍姉がドイツから提供してもらった医療用ナノマシンの投与により通常の数倍の早さで進行している。何より、左腕には神峰重工製の義手が着いていた。筋電義手であるらしく、左腕の復活に喜んだ。足の方はまだ待ってほしいと言われ、左腕だけでも十分と言えばまた龍姉は号泣してしまった。
近い内に退院も視野に入ってくると言われ、リハビリを張り切る毎日。そんなある日、いつも通り龍姉がやって来た。
「入るね」
「おはよう龍姉」
「おはよう真琴。退院の日取りが決まったよ、もう少ししたら先生も来るから」
そんな話をしていると、先生がやって来る。その手には書類とカルテを持っていた。
「おはようございます。お加減はいかがですか?」
「好調だよ先生」
書類を龍姉に手渡し、カルテを机の上に置く。
「今現在の、真琴さんの状態です。ご存知の通りに両足と左の前腕部が失われています。加えて、未だ記憶喪失も回復の見込みは無いと言って差し支え無いでしょう。しかし、右腕と内臓機能には何ら問題はありません。このまま行けば早くて月末には退院もできるでしょう」
その現実を受け止め、前を向く。
「……大丈夫みたいだね。先生、このまま退院の方向でお願いします」
そのまま龍姉と先生は退院の正確な日取りを決めると、先生はもう暫く頑張りましょうと言って去った。
「真琴、退院したら義足を着けようか」
「義足……話してたやつ?」
「そう。それがもうすぐ完成するから、そしたら一回着けてみようか」
龍姉はそう言って俺の頬を撫でる。その手に頬ずりすれば、龍姉は悲しそうな、嬉しそうな顔をする。だから、右手でその手を取る。
「退院したら、俺頑張って龍姉の役に立てるようにするよ」
「…………ううん。私の為じゃなくていい。自分の為に頑張って。それで、自分だけの……」
龍姉は俺の手を両手で包み、そう言う。祈るように眼前に持ってきて、辛そうな顔をして言葉は消えていく。
「龍姉?」
「なんでも無い。今日のリハビリ頑張ってね。応援してるよ」
「うん」
▼▽▼
「……もしもし、玲奈?退院の日取りが決まったよ。そう、それまでに準備しておいて。それと、関係各所に連絡をお願い。アヴェンジャー計画を開始するって。そう、ついに始まるの。じゃ、お願いね」
電話を切り、空を仰ぐ。両親が亡くなり、空いた席を巡っての権力争いや派閥争いを全て制圧して無理矢理に就任した神峰重工の社長。私はこれまで培ってきた人脈を使ったりして複数ヵ国の企業と連携するようになり、神峰重工は成長した。目的は2つ。弟の人生の安寧と我々科学者の黄金時代を追い求めること。
これから、真琴は台風の目のような存在になるだろうし、そうなっても必ずや守ると誓った私を止められる様な奴はそういない。
もう一人に電話をかける。
「束、私。真琴の専用機を作る話はしてあったよね。アレ、始めようか。コアはこっちでも作れるし、大まかな設計図面とかは引いてあるから、それを煮詰めよう。そう……何が何でも、完成させるよ。それが出来なきゃ私達の計画はご破算だよ。ん、じゃあ」
……時折、自分の進む道がこれでいいのか迷う時がある。これは本当に弟の為になるのか、それらは私達の為になるのか。だけれど、もう迷わない。これからは私達が時代を作るし、その時代の荒波は確実に真琴を巻き込むであろう。真琴の想いに応える為には力が必要だ。守ると誓ったからには、その想いを見届ける義務がある。
例え、世界を敵に回したとしても。
人類に、黄金の時代を。