IS神峰録   作:アリガートル

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第六話:完醒

「術後の経過は良好そのもの、拒否反応もそこまで無いが……」

 

 手術後、麻酔の切れた俺は痛みに悩まされていた。元より一人で動けない身だが、脚の接続部からの激痛は全身に駆け抜けて、呼吸するだけでズキズキとした重い痛みを受け止めなければならない。そのおかげで、呼吸は浅くなり息苦しさすら感じる。

 

 今も、玲奈が様子を見に来てくれていて、様々な管を繋がれた俺を定期的に清潔にしてくれている。寝ようにも、痛みは常時響くと言っても過言ではなく、そのせいで寝れずにいる。時々すごく痛くなって気絶する形で眠るときもあるが、大抵痛みでまた起きる。

 

 そんな中で、束さんも来てくれていたが龍姉の姿は一向に見なかった。気絶している時に来てくれていたのかもしれないが、玲奈は話題に出しすらしなかった。

 

 後、何日続くのだろうか。

 

▼▽▼

 

「……身体痛い……」 

 

 玲奈に殴られて、感情の赴くままに泣きじゃくり、今目が覚めた。床で寝てたからか、体中が痛くて立ち上がるのも一苦労だった。日時を確認すれば、真琴の手術は終わっていた。久々に感情を表に出して、何処かスッキリした感覚がある。

 

 久し振りに部屋に戻り、シャワーを浴びて丁寧に髪を乾かしてから着替える。冷蔵庫の中に何も無いことを確認して社食に向かう。

 

「あれ、珍しいですね社長」

「冷蔵庫の中に何もなかったからね。時間も空いたしで来ちゃった」

 

 訪れた社食は時間が時間なだけに人は少なかった。食券を買って、カウンターのおばちゃんに渡して番号札を貰って席につく。

 

「……こんなに暇と思ったのは久し振りだな」

 

 焼き魚定食が出来上がるまで、携帯を開く。そこで、何ら関係の無いニュースを目にして、自分が思っているより世界が広いことを知る。

 

「社長さん、出来上がりましたよ!」

「ありがとうございます」

 

 席について、定食を食べる。まともな食事は久し振りで、その美味しさに箸を止めること無く食べ終える。食後にお茶を一杯飲み干して、満腹感を感じられることに驚く。そのまま食器を返してお礼を伝えて、何ヶ月ぶりかの自室へ帰る。

 

 着替えて、携帯の電源をオフにしてベッドに入る。驚く程に早く意識が飛んで、気付けば翌朝だった。携帯の電源を入れて、時間を確認して朝食を取りに社食へ赴き、驚かれながら朝食を摂って部屋へ戻る。

 

 真琴の事は、束や玲奈に任せて大丈夫と自分に言い聞かせて、自分の養生に努める。数日そうして人間的な生活を送った後に真琴のいるプラントの屋上に来る。ようやく会う決意がついたのだ。

 

「……ISが出来てからだっけか、父さん。このマザーベースが作られたのはさ。色々なもの作ってきたけど、追いつけそうにないや。でも、負けるつもりもサラサラ無いからさ」

 

 海風に載せて呟く。

 

「見届けてほしいな、私の覚悟を。真琴の覚悟を」

「社長!!」

 

▼▽▼

 

 真琴の様子を見てからタバコを吸いに、甲板に出る。どうせ私ら以外いないプラントだ。外でタバコを吸ってようが咎めるやつはいない。携帯灰皿を取り出して、タバコを咥えてライターを探す。何処やったっけか。

 

「……あ?」

 

 プラントの屋上に、人影が見える。あれは……あの白い髪、社長か!?

 

「待て、待て待て待て待て!早まるな馬鹿が!」

 

 タバコを吐き捨て、灰皿を投げ出して階段を駆け上がる。久し振りにこんな運動をしたからか、屋上についた頃には息も絶え絶えだった。

 

「はぁ、はぁ、社長!」

「ん?ぐえっ」

 

 柵に肘を置いていた社長を後ろに引き倒して止める。

 

「馬鹿!テメェ、今死んでどうするつもりだ!」

「は……?え……?玲奈?な、何、どうしたの?」

「は?死ぬ気だったろお前」

 

 社長は、その言葉に目を丸くする。よくよく見てみれば、今の社長はすっぴんだ。あれだけ濃いクマを消す化粧もしていない。真琴を心配させないように、皆を心配させないようにとしていた化粧をしていない。どころか、肌の血色が良くなっている。健康的と言って差し支えないぐらいだった。

 

「玲奈、退いてくれると助かるんだけど」

「……ちょっと来い」

 

 診察室に連れていき血圧、脈拍を測るが以前のクソみたいな状況より改善が見られる。爪を見てみても、以前ほど酷くはない。

 

「どうしたの玲奈、私、何かした?」

「……いや、いい。大丈夫だ」

 

 大きく息を吐いて椅子にもたれかかる。

 

「……私が死ぬと思ったんだよね。それを止めに来てくれてありがとう、玲奈」

「私の勘違いだったみてぇだな」

「そうだけど、私は玲奈が来てくれて嬉しかったな」

 

 社長はそう言って笑った。この人の笑顔を見るのは何時ぶりだっけか。

 

「ありがとうね、玲奈。私、もう大丈夫だから」

「ようやく吹っ切れたか」

「覚悟を決めただけだよ。真琴に会いに行っていい?」

「行けよ。ちゃんと消毒していけよ」

「当たり前」

 

 真琴のいる部屋に訪れると、真琴は起きていて社長と目が合う。社長は隣に座ると、話し始める。

 

「真琴、喋らないで大丈夫だよ。来れなくてごめんね。でも、もう大丈夫。まだちょっと痛いかもだけど、それを乗り越えれば脚が戻ってくる。一緒に頑張っていこう真琴」

 

 ごめんね、やらなくちゃいけないことがあるのと言って、社長は部屋を出ていく。まだ立ち直っちゃないが、前よりは断然良くなっている。この調子で行けば、前の頃の社長を取り戻すのも時間の問題になるかもしれない。淡い期待を抱いて、今は真琴の経過観察に全力を尽くすことにした。

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