浄火の赦し   作:もとりな

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八章 アリウススクワッド

 

 

「反撃の時間だよ」

 

 

 目の前で柔らかな笑みを見せるアツコに、サオリは何も言わない。言えない。あまりにも唐突な援軍…それも別れて久しいアツコの登場にポカンと惚けるだけだった。

 あまりにも突然で「もう自分は死んでいて目の前のアツコは幻覚なのでは?」という思考に至ったが、

 

 

「あ……『さぁ、反撃だよ!』だったっけ?ヒヨリが拾った漫画のセリフを真似してみたんだけど……どっちだったっけ」

 

 

 神秘的な雰囲気を一気に崩して「あれれ?」と首を傾げる少女の姿に「あぁ、このクオリティは幻覚などでは再現できないな」と目の前のお姫様が本物である事を理解した。

 そう、理解はした。

 だが納得はしていない。

 サオリは混乱しながらもアツコに問いかける。

 

 

「な、なぜアツコがここに……」

 

「私だけじゃなくて……あ」

 

 

 当然の疑問にアツコは何かを答えかけたが、途中で別のことを

思い出したかのような声を上げると、ポンと手を打った。そしてポケットからある物を取り出し、くるりとサオリの方を向いてから差し出した。反射的に受け取るサオリ。

 それは白いシンプルなインカムだった。

 未だに動揺しているサオリにアツコは再び笑みを向ける。

 

 

「とりあえずそのインカムを着けて。たぶん大体の疑問には答えてくれると思うから。そして、サオリが説明を受けてる間───」

 

 

 アツコはサオリに背を向けて……こちらへと迫る『トリガメリク』へと挑むような視線を送る。手早くマスクを装着して、愛用のサブマシンガンを油断なく構えた。

 

 

「私はアレの足止めをするね」

 

「ま───」

 

 

 待て。

 そう言おうとした。『トリガメリク』は強大で圧倒的なイレギュラー。サオリが今も生きてるのは運が良かったからでしかない。そんな相手に大事な家族を単身で向かわせるなど出来るわけがなかった。

 けれど。

 

 

「大丈夫、信じて」

 

 

 サオリに背を向けたままポツリと、けれど確かな意志を込めて宣言するアツコに何も言えなくなって───

 

 

『汝、錠前サオリ。汝の友が愛する汝を赦しなさい』

 

 

 あるシスターに告げられた言葉が甦る。

 アツコが唐突に現れた理由はわからない。未だに頭はぐちゃぐちゃで、今すぐにでも彼女に説明を求めたいくらいだ。それなのに目の前の少女はサオリの感情など置いてけぼりにして危険に飛び込もうとする。本当は縋りついてでも止めたい、が。

 

 ここは一つ、自分の直感に従ってみることにした。

 

 深呼吸をして薄紫色の後ろ姿へと語りかける。

 

 

「……相手は特務機装『トリガメリク』。高火力のパイルバンカーとレールキャノン、そして圧倒的な機動力と頑強なバリアが特徴だ。時期に援軍が来る。正面から相手をせずに、時間を稼ぐことだけを考えろ」

 

 

 簡潔なアドバイス。

 リーダーとしてのサオリの言葉を聞いたアツコは、少しだけ驚いたように目を丸くした後……少しだけマスクをズラして、嬉しそう微笑む素顔を見せた。

 

 

「わかった。ありがとう、サオリ」

 

 

 そして……目前に迫っていたパイルバンカーの一撃をゆらりと回避する。火の粉が宙に舞ったのを合図に、激しい攻防が始まった。

 

 

「行くよ」

 

敗残兵(どうるい)が……邪魔をしないで頂きたい!』

 

 

 攻める巨影と躱す少女。

 眼前で繰り広げられるギリギリの戦いに焦りと葛藤を感じつつも、サオリはアツコに言われた通りインカムを付けた。すると───

 

 

『聞こえてる、リーダー?』

 

『うぅ、せっかく平和に雑誌を読んでたのにまた戦場だなんて……やはり人生は辛いばかりですねぇ……』

 

 

 もう随分と聞いていなかった、大切な家族の声が耳に入ってきて少しだけ言葉に詰まった。

 何も言わないサオリを訝しむように少し低い声……ミサキが喋る。

 

 

『リーダー?』

 

『ど、どうしたんですかリーダー?あぁ、勝手に来た事を怒っているんですね!?リーダーに怒られるなんて…辛いです、苦しいです…』

 

『ヒヨリうるさい』

 

 

 ヒヨリが早口で捲し立て、ミサキが軽く嗜める。ここにアツコが参加すればいよいよ話が脱線していただろう。いつも通りすぎる会話にサオリは少しだけ安堵した。

 緩んだ内心を悟られないようにしながらサオリは尋ねる。

 

 

「…やはりミサキとヒヨリもここにいるのか?」

 

『うん。私は木陰に隠れて支援砲撃をしてる。リーダーから見て二時方向』

 

『わ、私は八時方向の丘の上から狙撃をしています……こんな感じで』

 

 

 ヒヨリの発言と同時にちょうど八時方向から狙撃が飛んでくる。二十ミリという大型サイズの弾丸は、アツコに照準を向ける『トリガメリク』のレールキャノンに直撃して狙いを逸らした。

 散る火花の間を潜り抜けながらアツコが『トリガメリク』の攻撃範囲から離脱する。

 それを支援するかのごとく巨大なパワードスーツの上空から子爆弾が降り注いだ。鬱陶しそうに爆風を振り払いながら幹部は後退する。

 

 

「確認した。……私一人では今頃敗北していただろう。助かった、感謝する」

 

『別にいいよ。ヒマだったし』

 

『わ、私は雑誌を読むのに忙しかったのですが……でもリーダーを、サオリ姉さんを狙う敵がいるなら、優先して排除します』

 

 

 淡白な返事をするミサキと、どもりながらも最後だけはやたらハッキリと宣言したヒヨリに思わず笑みが浮かんでしまうが、和んでいる場合ではないと本題に入る。

 

 

「しかし何故ここがわかった?連絡は取っていなかったはずだが……」

 

『それに関しては私がお答えしますね』

 

 

 サオリの疑問に答えたのはミサキでもヒヨリでもなかった。

 鼓膜に纏わりつくよな……けれど不快には感じない声。むしろ心地よいとすら思ってしまうのだから不思議だ。音一つで人を魅了してしまいそうな、そんな魔性を持つ人物。サオリは一人だけ心当たりがあった。

 

 

「浦和、ハナコ?」

 

『うふふ。こうしてじーっくりお話しするのは初めてですね、錠前サオリさん♡』

 

 

 補修授業部、浦和ハナコ。

 トリニティ屈指の才媛が蕩けるような声でサオリに話しかける。

 普通の人間ならその馴れ馴れしいとも言える態度に困惑するのだろう。しかしサオリは虚妄のサンクトゥム攻略戦を通じて彼女の人となりをそれなりに理解していた。だからこそ、彼女が信用に値する人物だということも理解して───

 

 

『その、破廉恥な衣装が!?』

『ギリギリのハイレグレオタードを……!?』

『中に下着は?いえ──よく考えれば物理的に存在できない』

『私もまた、至らなさゆえの覚悟を決めなくてはなりませんね……』(服を脱ぐ音)

 

「……」

 

 

 ──まぁ、理解は……していた。

 少なくとも悪い人間ではない。

 いくら品のない発言をしていようと、いくら露出狂のトンデモ性癖ガールであろうと、彼女は悪人ではないのだ。

 この場にいないもう一人の家族が信を置く人間なのだ。

 だからサオリは彼女の事を信用している……している。

 しかし、それでも疑問が残る。

 

 

「状況を見るに、お前がアツコたちを連れてきたのだろう。この事件に関しては…シスターサクラコから聞いたのか?」

 

『ご明察です。私はサクラコさんから孤児院での出来事を聞いて……()()()()()お話した後、アツコちゃんたちと接触しました』

 

「アツコ『ちゃん』…?いや待て、それよりもどうやってアツコたちと接触した?」

 

『あら、聞いていないのですか?実は私、アツコちゃんと連絡先を交換しているんですよ』

 

「なんだと…!?」

 

 

 今日一番の爆弾発言であった。

 思わず大声を出してしまったサオリに、ミサキが溜息を吐きながら答える。

 

 

『本当だよ、それ。姫も言ってた』

 

『ど、どうやら虚構のサンクトゥム攻略戦の時に連絡先を交換していたらしくて……姫ちゃんから話を聞いた時は、もうお終いかと……また辛くて苦しい羽目に遭うのだとおもっちゃいました、へへ……』

 

『あらあら、そんなに悲しいことを仰らないでください。私、ヒヨリさんともお友達になりたいです♡』

 

『ひ、ひぃぃ!?』

 

 

 インカム越しに繰り広げられるコントにも反応できないほどサオリは驚愕していた。

 虚構のサンクトゥム攻略戦の後は疲弊しており、周りに構う余裕なんて無かったのは確かだ。しかしまさかそんな事になってるとは思いもしなかった。あの後はすぐにスクワッドのメンバーと別れたからアツコも報告する暇が無かったのだろう。

 別にそれは問題ない。

 サオリはハナコに対して悪感情は無いし、むしろ「迷惑をかけた」と謝罪したいとすら考えている。

 問題は無い。無いが……

 

 あの浦和ハナコとアツコが友人。

 作戦中に卑猥な事を叫び、何故か自分も服を脱ぎ出す浦和ハナコとアツコが。

 サオリは途端に渋い顔になる。

 

 

「……姫に変な事を吹き込んでいないだろうな?」

 

『ミサキさんにも同じ事を言われました。うふふ、やはり家族ですね』

 

『通信切っていい?』

 

『あらあら、申し訳ありません。サオリさんの疑問についてですが、ご安心ください。アツコちゃんとは、ちゃんとした健全な友人関係ですよ♡』

 

「……はぁ。まぁいい、大体の事は理解した」

 

 

 掴みどころがないハナコの発言にサオリは追求を諦める。今はそれよりもするべきことがあるからだ。

 装備の状態を点検し、体中の傷に応急処置を施す。

 

 

「浦和ハナコがシスターサクラコからこちらの状況を聞き、偶然にも姫の連絡先を知っていたため、コンタクトを取ってこちらに派遣した。そういうことだな?」

 

『ええ。アツコちゃんとのやり取りで彼女たちがアドレスケレ孤児院の近くにいることを知っておりましたので……』

 

『早い段階で救援に来れたってこと。ただ私たちは偶然近くにいたから来れただけ。本命の増援はまだだから』

 

「了解した。ならばやる事は一つだな」

 

 

 全てのチェックを終えてサオリはアサルトライフルを構える。

 視線の先では炎のフィールドでアツコが懸命に『トリガメリク』の攻撃を捌いていた。ヒヨリやミサキの支援もあって何とか耐えているが、時々攻撃が体を掠めている。体力的に限界が近いのだろう。致命の一撃を貰うのも時間の問題だ。

 

 

「ミサキ、ヒヨリ」

 

 

 状況を理解したサオリは軽く息を吐き、信頼する家族へと呼びかける。

 それに対する答えはないが、これまでの経験から彼女たちが話を聞いていることは理解している。そして、だからこそ言うべきことはただ一つ。

 

 

「合わせろ」

 

『了解』

 

『わかりました』

 

 

 シンプルな命令に疑問すら抱く事なく二つの声が返答する。それを聞き届けたサオリは、炎を力強く踏み締めて、躊躇なく激しい戦闘が繰り広げられる闘技場へと割り込んだ。

 長髪を夜に煌めかせながら乱入してきたサオリにアツコが軽く笑みを浮かべる。

 

 

「スイッチ!」

 

「うん!」

 

 

 サオリからの指令にアツコが迷いなく後退する。追撃をしようと『トリガメリク』のレールキャノンが向けられるが、砲身に狙撃を受けたことで狙いが逸れる。続くようにフィールドに大量の爆弾が降り……爆発が起こった。

 

 

『猪口才な……!』

 

 

 周囲に舞う砂煙と燃える花びらに、幹部が苛立ったような声を上げる。

 そして砂と炎のカーテンをかき分けるようにして、長髪の少女が、錠前サオリがイレギュラーの前に飛び出した。

 

 

「もう一度私の相手をしてもらうぞ」

 

『捻り潰してあげましょう!貴女も、その仲間も!!』

 

 

 サオリが目の前に着地すると同時に膝蹴りが放たれる。それを前進することで回避して、そのままの勢いで『トリガメリク』の背後は回り込んだ。

 だが幹部もこれは予測していたらしく、すぐに後ろを向くとパイルバンカーを振り上げた。

 サオリ一人ならばここで回避以外の選択は取れなかっただろう。

 だが今のサオリには仲間がいる。それも長年連れ添った、家族と言える大切な仲間だ。

 だから、サオリはパイルバンカーの直撃コースにいながらもそのままアサルトライフルを構える。

 無防備な彼女に文字通りの鉄槌が落ちそうになるが、

 

 

『させません』

 

 

 普段の様子からは考えられないほどに冷たいヒヨリの声がサオリの耳朶を打って、同時に激しい金属音がした。

 脳が割れるような轟音にも構わずサオリはアサルトライフルを乱射する。

 しかし…大量の弾丸はその全てが機体に届く前に落下した。

 

 

(やはり通らない…!)

 

 

 すぐ横で聞こえる破砕音を尻目にサオリは歯噛みする。

 が、すぐに思考を切り替えて再度『トリガメリク』の背後へと回った。

 無理な挙動に激痛が体を襲うが、それでも無理矢理に体を動かす。

 理由は単純。

 そうしなければ死ぬ。

 それだけだ。

 

 

(バリアを形成する装置はおそらくここから離れた場所にある)

 

 

 避けるばかりではなく、同時にこの化物の攻略法も考えなくてはならない。

 ミサキが起こした砂煙に身を隠し、アツコと場所を交代しつつサオリは思考を進める。

 

 アリウススクワッドの面々が加わり、状況は一気に有利なった……わけではない。

 実際はかなりギリギリだ。

 アツコとサオリのどちらかが倒れれば一気に戦線が崩壊するというのに、相手の攻撃は全てが必殺級という理不尽も理不尽な状況なのだ。正直に言っていつまで持つかわからない。

 しかし。

 

 

(今からバリアの発生源を探してそれを破壊しに向かわせるのは……時間がかかりすぎる。結局は持久戦を行うしかない)

 

 

 だが、前述した通りそれは綱渡りだ。

 一つのミスが死に直結する、命綱無しの綱渡り。

 サオリには───できない。

 そう、サオリ()()()()できない。

 けれど、アリウススクワッドなら。

 苦楽を共にしてきた最愛の家族なら。

 

 

(私が好きな人たちが信じる『私』を赦す、か)

 

 

 サオリは心の中で再度、燃え上がる孤児院の中で貰った言葉を反芻する。

 ──サオリは、サオリが思う『錠前サオリ』を赦さない。

 ──けれど、みんなが好きな『錠前サオリ』なら……赦せる。

 そんな気がしたのだ。

 みんなが好きだと言ってくれて、自分自身が成りたかった『錠前サオリ』なら、と。

 だから。

 

 

(そんな私を信じる前に……大切な家族そのものを信用しなくてはな)

 

 

 口元に笑みが浮かぶ。

 かつてのサオリなら、他の誰かに「お前はできる」と言われても、嬉しくはあるが信じられなかっただろう。

 その理由は二つ。

 一つは自分に自信が無いというシンプルな理由。

 そしてもう一つは、サオリ自身がその『誰か』のことを信じていないという理由だ。他人を信用できなければ、その人が言う『錠前サオリ』だって信用できない。

 

 だからこそ『誰か』を信用する所からスタートしなければ。

 

 その第一歩として……まずは、大好きな『家族』を信頼するところから始めてみよう。

 サオリは再びアツコと場所を交代し、『トリガメリク』との攻防を開始する。

 

 ───サオリには秘密がある。家族にずっと隠していた秘密が。

 それは憧れ……そして嫉妬という名の秘密。

 シスターマリーに告白した、ずっと抱えてきたその感情を家族に隠していたのは、ひとえにサオリがリーダーだったからだ。

 サオリの中でリーダーという存在のイメージは、大切な者たちを守れる力強い人間というものだった。

 だからこそ、それを体現するために家族に抱いていた憧れ、大切な者たちが持つ『自分だけの価値』への嫉妬をひた隠しにしていた。

 強いリーダーであり続けるために。

 そして、弱い自分を、普通の人間としての自分を知られるのが少しだけ怖かったから。

 彼女たちなら大丈夫だとわかっていても、みんなに見せなかった自分を知られるのは怖かったから。

 だからサオリは家族に秘密を持った。嫉妬という感情に鍵をかけて心の奥底にしまった。

 

 けれど、サオリは家族を信頼すると決めたのだ。

 

 自分の本心を隠したままのサオリが、どうして彼女たちを信頼しているなどと宣えるのか。

 だから。

 サオリは謝罪を……赦しを乞わなければならないと決意した。

 家族に秘密を抱いて、嫉妬の感情を抱いていたということへの赦しを。

 そして、その決意を形にするため、仲間に……秘めていた感情を叫ぶ。

 

 

「ミサキ!」

 

『何?』

 

 

 いつも変わらない平坦な声。何が起こっても変わらないその声に何度も救われた。隣にいるだけでサオリの心には確かな灯が生まれた。

 そして、今もこうして強大な敵に立ち向かう力をくれている。

 振り下ろされた拳を半身でかわしながらサオリは語る。

 

 

「私はミサキが羨ましかった!お前の持つ『温もり』が羨ましかったんだ!」

 

『……急に何を』

 

「聞いてくれ。私の…我儘のようなモノだ」

 

『……』

 

 

 突如としてサオリに羨望を告白されて困惑の声を漏らしたミサキだったが、サオリの真剣な声を聞いて渋々と黙る。

 

 

「お前の側にいるだけで私の心は落ち着いた!どれだけ荒んでいても…どれだけ苦しくても!お前と話している時だけはただ楽しいと思えた!」

 

『……何、それ』

 

 

 真っ直ぐな憧れを笑って告げるサオリにミサキがどもる。

 戒野ミサキという少女はスクワッドの中で一番サオリに近い存在と言えた。全てを虚しいと切り捨てて諦める。彼女とサオリはよく似ていて、だからこそサオリはミサキと話す時は落ち着いていられた。彼女と話している時は、自分は一人ではないという安心を、温もりを貰えたから。だから彼女に死なないでほしかった。大切な家族であると同時に、サオリにとってミサキは何にも代え難い『居場所』だったから。

 そして同時に……羨ましかった。他者に居場所を、温もりを与えられるミサキが。自分も大切な人たちに安らげる居場所を作ってあげられる人間になりたかった。

 幹部が繰り出すフェイントにギリギリで対処しながら、サオリは本当に言いたかった事を喉の奥から絞り出す。

 

 

「だから……すまなかった!私は自分の居場所をなくしたくないという我儘でお前の足を引っ張り、それなのに嫉妬していた!醜い感情を向け、お前の枷になってしまって……ずっと、ずっと謝りたかったんだ!すまない!」

 

 

 サオリの告白に息を呑む音が聞こえる。その後、少しだけ間があって、ミサキのいつもと変わらない、けれど少し震えた声が聞こえてくる。

 

 

『そんな風に…思ってたんだ。なら謝らなくていいよ。私だってリーダーが羨ましくて、リーダーの枷になってたんだから。それに───』

 

 

 ミサキは少しだけ間を置いた。そこにどんな感情があったのかはわからない。そんな彼女だけの逡巡を置いて、ミサキはサオリに、少しだけ怯えるように聞く。

 

 

『サオリ姉さんが私の手を取ってくれたのは……私を必要としてくれたからなんだよね?』

 

「ああ。お前は私の大切な家族で、私の居場所だった。ミサキを失いたくないから、私はお前の手を握り続けていたんだ」

 

 

 それはサオリの我儘だ。ミサキにどこにも行って欲しくなかったから、サオリは彼女が死の淵にいても連れ戻した。他でもない、サオリ自身がミサキを必要としていたから。嫉妬とか、そんな感情はない。ただただ彼女が大切だったからだ。

 サオリの迷いの無い断言を聞いた一人の家族は、安堵したかのように息を吐いた。

 

 

『ならいいよ。サオリ姉さんが私を必要だって言ってくれたなら、それでいい。それ以外はどうでもいい』

 

 

 ぶっきらぼうに言い放ったミサキにサオリは笑う。とても大きな信頼だ。それを重いと感じることはない。あるのは本音を語ってくれた家族に対する純粋な感謝だけだ。

 心が軽くなったのを感じながら、サオリは目前まで迫っていた蹴りを横っ飛びに回避する。そして次の家族の名前を叫んだ。

 

 

「ヒヨリ!」

 

『は、はい!?』

 

 

 ミサキとサオリの会話に聞き入っていたヒヨリが驚いたように声を上げる。肩を揺らす姿が容易に想像できて、サオリは自然と笑みをこぼしていた。

 

 

「私はヒヨリが……お前の持つ明るさが羨ましかった!」

 

『あ、明るさ…ですか?』

 

 

 意外そうにヒヨリが聞き返す。彼女自身は自分の事を暗い性格だと思っているのだろう。いや、事実としてそうなのかもしれない。ヒヨリの発する言葉はどちらかと言えばネガティブで、少しだけ欲張り。そんな彼女を暗いと思う人間もいるはずだ。

 けれど、サオリからすればヒヨリは光のような存在だった。彼女が話せばどんな空気でも弛緩する。一触即発の雰囲気が起こっても、ヒヨリが口を開けば肩の力が抜けていて、気がつけば喧嘩していたはずの誰かと笑い合っていた。本人にその自覚がなくても、彼女はスクワッドの清涼剤のような存在と言える。

 そしてやはり、そんな彼女が羨ましかった。

 

 

「私はお前の持つ明るさが羨ましくて、欲しかった!私では絶対に手に入れられないモノだったから…!そんな妬みのような感情を持っていたんだ!隠していてすまなかった!」

 

『え、えっと……』

 

 

 困惑するようなヒヨリの声が聞こえる。

 明るさが欲しい。場を和ませる柔らかさが欲しい。

 ヒヨリへの羨望は同時にサオリの心の中に確かな嫉妬を生んでいた。自分の弱さを見せるのが嫌で、ずっと隠していた感情をサオリは吐き出した。

 心からの謝罪にヒヨリはうんうんと唸ると、しどろもどろになりながら硬い意思を口にする。

 

 

『そ、そういう、誰かを羨ましいとか思う欲?はみんな持ってるモノだと思いますよ?私もサオリ姉さんがとっても羨ましいって思うこと、いっぱいありますから……へへ』

 

 

 ヒヨリは照れるように笑うと、『だから』と付け加えた。

 

 

『謝らなくても良いんじゃない、ですか…?で、でも!サオリ姉さんが、そ、それでも私なんかに謝りたいなら……ゆ、赦します。私なんかが言うのは烏滸がましいかもですけど。サオリ姉さんがそれを望むなら、私も「赦す」って言います。と、というか羨ましいとか、むしろ嬉しいくらいですし。明るいとか言われた事ないので…えへへ』

 

 

 いつもより少しだけ声を高くして、インカムの向こうでヒヨリが嬉しそうに笑う。確かな赦しの言葉をサオリは心の奥に大切にしまいながら、アツコの名を呼んだ。

 炎の勢いは弱まらない。それどころか段々と強くなっている。まるで今のサオリの感情を表しているようだった。

 

 

「アツコ!」

 

「うん」

 

 

 今までのやり取りを聞いていたアツコは、それだけ言うと、サオリの言葉を待つ。爆風で巻き上がる砂煙で周囲が見えなくなるが、それでもアツコは笑っているのだと、サオリにはなんとなく理解できた。

 レールキャノンの熱戦を右頬に感じながら、サオリは思いの丈を叫ぶ。

 

 

「私はアツコが羨ましかった!強大な存在にも堂々と立ち向かえる強さと揺らがない気高さが、美しさが!羨ましかったんだ!」

 

「……そっか」

 

 

 砂煙が晴れて、蝶のように舞う炎の中で、やはりアツコは優しく笑っていた。

 その姿は儚いのに、どうしてか美しく気品に溢れていて…サオリは羨ましく思った。

 どんな時でも失われない高貴な心。誇り高く強い意思。それはアツコという少女が誰よりも仲間を大切に思い、誰よりも真っ直ぐであるという証だった。

 サオリもそんな美しい心が欲しかった。誰かを羨み、それをひた隠しにするような自分ではなく、アツコのような清廉潔白な自分になりたかった。

 自分にない物を持つ彼女を助けたいと思い、大切に感じ、そして同時に嫉妬を抱いていた。

 

 

「だから、すまなかった!お前を守りたいと思うのも、お前が大切だという気持ちも嘘ではない!けれど私は隠していた!羨ましいという嫉妬を……!すまなかった!」

 

 

 高潔で在れなかったサオリは、高潔なアツコが羨ましかった。そんな嫉妬を隠して、リーダー面をして接していた。家族に隠していた羨望とか、嫉妬とか、そういう名前が付けられる秘密。弱さを見せたくない、嫌われたくないという一心で押さえつけていた感情を、サオリはようやく吐露した。

 そんな本音を聞き届けたアツコは、

 

 

「そっか……そうだね。教えてくれてありがとう、サッちゃん。言いたいことはいっぱいあるけど、そうだね。うん」

 

 

 手を胸に当てて何度か頷き、

 

 

「サッちゃんが謝るなら……私は、赦すよ」

 

 

 小さくはにかんだ。

 

 炎に照らされる天使のような横顔がサオリの目を灼く。

 

 

「私は今までずっとサッちゃんに助けられてきた。ベアトリーチェに捕まった時も、その前だって。それに大好きな家族だから。うん。だからきっと、サッちゃんがどれだけ悪いことをしても私は赦すし、望むなら一緒の道を歩みたい。その先が地獄でも、果てしない贖罪の道でも、一緒に」

 

 

 それは家族へ送る、最大限の信頼。どんな道だろうと共に歩みたいという意思。これ以上無いくらいの赦し……いや、覚悟を聞いたサオリは瞠目し、瞑目し、深く深く頷いて、

 

 

「ありがとう」

 

 

 感謝を述べた。

 それはアツコだけではない。ただの人間でしかない、個性のない普通の人間でしかないサオリに、それでも着いてきてくれる少女たちへの嘘偽りない気持ち。心からの感謝だ。

 そして。

 

 

「私は……アズサが羨ましかった」

 

 

 サオリの元から巣立った少女にもまた、言うべきことがある。

 

 

「私は、自分自身が無価値だと思っていた。他の皆には誰かを幸せにできる『何か』があったのに、私にはそれが無かった。だからリーダーという価値を求め……失敗した」

 

 

 サオリが犯した罪。リーダーとして振る舞い、皆を間違った方向に導いた罪。

 それは当時のサオリにとって、自らの無価値を証明されたような物だった。

 だから、アズサを憎み、羨み、嫉妬した。

 自嘲はしない。それはサオリに着いてきてくれた少女たちに失礼だから。過去のアズサにも。

 だから、この身一つで敵へと立ち向かう姿を贖罪の一つとするのだ。自らを貶めるでもなく、責任を転嫁するでもなく、ただただ行動で知らしめる。

 回避の隙を突かれて、サオリの頭上から拳が降ってくる。

 支援も回避も間に合わない。

 だから、サオリは両手で頭をガードしてそれを受け止める。

 鈍い音がした。

 

 

「づ、ぐッ……!だ、から!自分だけの!色褪せない価値を見つけたアズサが!!とても、とても羨ましかった!!」

 

 

 脳が揺れ、視界が弾け、意識が飛びかける。

 しかしそれを跳ね飛ばすほどの雄叫びを上げて目の前の巨体へと蹴りを入れつつ距離を取った。

 

 白洲アズサ。

 サオリたちを裏切り、抵抗することを選んだ純白の少女は、そこでかけがえのない青春を手に入れた。普通の学生としての、サオリが喉から手が出るほどに欲しかった生きる価値を手に入れた。

 それを羨み、巣立ったアズサの姿に寂寥を抱いて嫉妬した。

 だから。

 

 

「だから!お前に会う資格を手に入れたその時!私はきっとお前に謝りに行こう!私の身勝手を、これまでの全てを謝りに!」

 

 

 夜空に、今ここにはいない少女に向かって吠える。

 今のサオリは、自身がアズサに会う権利はないと感じていた。

 すぐに会うには……あまりにも彼女に対して償うべきことが多すぎる。

 サオリはそれをわかっているから、地面に轟轟と照らされる夜空に目を細めて宣言する。

 

 

「全ての償いを終えて、私が私自身を赦せるようになったその時。私はお前に会いに行くよ、アズサ」

 

 

 彼女の贖罪が終わるのはきっと、サオリ自身がサオリを赦せるようになった時だ。

 それはなんとなくわかっていた。

 だからこそ、いつか訪れるその日には、必ずアズサに会いに行こう。会って頭を下げよう。赦されるかはわからない。けれど、そんなことは関係ない。謝りたいから謝る。『いいよ』と言われたいから『ごめんなさい』を言うのではない。自分が謝罪をしたいからそうするのだ。

 なるほど、ならば告解というのは赦す側からしたらいい迷惑なのかもしれない。

 でも、それでも。

 きっと謝るべきなのだろう。赦しを乞うべきなのだろう。

 それが、小さい子供でも習う当たり前の礼儀なのだから。

 夜空を見上げて吹っ切れたように笑うサオリに誰も、何も言わない。

 炎の中に佇む透明な少女の覚悟に全員が、幹部でさえも、それぞれの思いを抱いていた。

 そして、沈黙の中でサオリが再び口を開く。

 

 

「私の我儘に付き合わせてすまなかったな」

 

『……別に気にしてない。そもそも謝られた理由もよくわかんないし』

 

『そ、そうですね。羨むとか、嫉妬とか、みんな持ってるのに……そ、それを謝る必要がどこにあるんです?』

 

「そうだね。二人の言う通りだと思うよ。私だってカッコいいサオリのこと、ずっと羨ましかったし……あれ、だったら私も謝るべきなのかな」

 

『いいよ姫。また面倒なことになるだけだから』

 

『も、もももしかして私も謝罪が必要ですかぁ!?す、すみません、生きててすみません……はっ!?このまま私は罪悪感を背負って生きていくのでしょうか!?雑誌を読んでる時も美味しい物を食べている時も今日のことが頭をチラついて……楽しめなくなるのでは!?うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!やはり人生は辛いです…苦しいです……』

 

『ほら面倒な事になった』

 

「ふふ、そうだね」

 

 

 いつも通りの空気感に戻ったメンバーたちに、サオリは微笑んだ。そして笑みの形を保ったまま、燃える花壇を踏み潰す『トリガメリク』へと視線を移す。

 

 

「お前も待たせてしまったな」

 

『いえいえ、お気になさらず。仕事柄、待つ事には慣れておりますので。それに面白い茶番も見せて頂きましたから』

 

「茶番か。先程のやり取りは気に入らなかったようだな」

 

『もちろんですとも。青臭いやり取りで……反吐が出るかと思いました。思わず口を閉じてしまいましたよ』

 

 

 はははと朗らかに笑う幹部に、サオリは特に表情を変えない。もともと分かり合えない敵同士なのだ。だからこそ、ここからはただの戦い。ただの……持久戦。サオリたちアリウススクワッドと『トリガメリク』。群のイレギュラーと個のイレギュラー。どちらが生き残るかのダメージレースだ。

 

 先に動いたのは……『トリガメリク』。

 一瞬で構えを作ると、狙撃すら間に合わないスピードで突貫してくる。パイルバンカーを真正面に放とうとする巨体をサオリはシンプルに横に避けて回避した。当然その後に横からやってくる高速の蹴りもだ。

 隙が出来た黒いパワードスーツにアサルトライフルを向ける。

 

 

(ダメージは期待できないが……威嚇くらいにはなるはずだ!)

 

 

 そんな合理的な判断の下に放たれた銃弾は『トリガメリク』の機体に命中し。

 

 戦闘が開始されてから一度も聞いたことの無い音を立てた。

 

 カン!と金属に銃弾が当たるような音。

 そしてその表現はまさしくその通りであり………『トリガメリク』の重厚な装甲に。

 バリアで守られていたはずのそれに。

 

 確かに傷跡がついていた。

 

 サオリが瞠目する。

 今まで一度も達成できなかった目標。

 バリアを突破して『トリガメリク』に傷をつけるという目標は、思いもよらないタイミングで達成された。

 もちろん傷と呼ぶには小さすぎる跡だったが、それでも大きな意味を持つ跡だ。

 そして、それが意味するところは一つ。

 

 

(まさか……!)

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

(まさか)

 

 

 幹部は動揺していた。

 その理由はサオリたちと同じ。

 『トリガメリク』のバリアが突破されたという事実に驚いていた。

 

 防御兵装『コンプリット』。

 それは『トリガメリク』を作成する上で最も多くの金が投じられたユニットだった。

 『トリガメリク』は圧倒的な破壊性能を持つ『タンジェラ(パイルバンカー)』と『サイナス(レールキャノン)』を、機体そのものの機動性を活かして理不尽に押し付けるという設計思想の下で作成されたパワードスーツである。

 しかし、その反面として防御力に難があった。

 機体に使われている金属は軽さの割にはかなり頑丈な特殊合金なので、ある程度の射撃は無効化できるが……関節部のシリコンゴムはその限りではない。ある程度の耐久性があるとはいえ、あくまで『ゴムにしては』という枕詞が付く程度の代物である。しかし、そこを金属で覆うなどすればせっかくの機動性が大いに損なわれる。さて困ったと頭を捻った開発者たちだったが……一人がこんなことを言った。

 

 ──バリアを使うのはどうだろう?

 

 開発者たちはこれしかないと手を叩き、再度開発に取り掛かった。

 だが、それもすぐに行き詰まることとなる。

 バリアは基本的に脆く、頑丈な物にするならばパワードスーツ内には機構が収まらなくなったのだ。

 そして再び開発部は頭を抱えて……「スーツ内に収まらないのであれば、いっそのこと防御兵装は外部に作ろう」ということになった。

 

 かくして()()()()()()()()()()()()に巨大な防御兵装が設置されることとなった。

 

 外部の動力から送信する形でバリアを展開するという使用上、活動範囲はブラックマーケット限定になってしまったが、そこに限ればほとんど無敵となるイレギュラーが完成したのだ。

 

 そして。

 そんなバリアが消え失せたということは。

 激しい動揺に包まれる幹部は、一つの結論に至った。

 

 

(ビル内の防御兵装(コンプリット)が……何者かに破壊された?)

 

 

 

〜〜〜

 

 

 白洲アズサにとって、アリウス自治区とは紛れもない地獄であった。

 

 内戦で敵味方問わず多くの人間が傷つき、一般市民や学生も飢えと寒さに倒れる。その後もベアトリーチェや大人たちの支配によって生徒たちは洗脳され傀儡となり、テロなどの凶悪犯罪を起こすための手駒となった。だから、アズサにとってアリウス自治区とは地獄そのものでしかなかった。

 そして。

 

 白洲アズサにとって……アリウススクワッドとは。

 

 

「………」

 

『なにも───かっ……あ、がっ……』

 

 

 首を掴んで引き倒し、喉元に手刀を叩き込んでパワードスーツを昏倒させる。

 僅かしか露呈していないゴムの部分に、瞬時にそれをやれるのは、アズサが特殊な訓練を積んでいるからだった。

 

 ブラックマーケットに存在するクエタ&クエクトのビル……サオリが生身の幹部と一対一で向かい合ったビルの地下にアズサは潜入していた。

 その理由は、サクラコからの依頼。

 頭の中で彼女からの詳しい説明を反芻する。

 

 ──ブラックマーケットのあるビルの地下に、怪しい熱源が存在します。

 ──それはアドレスケレ孤児院で事件が発生した後、より強い反応を示しました。

 ──アズサさんにはこの熱源の調査、可能ならば破壊をお願いします。

 

 作戦内容を説明されたアズサが抱いたのは確かな『納得』だった。

 発見された熱源が孤児院の事件と関係があるのかはわからない。あくまでも疑惑の範疇をでないのだ。そんな不確定要素の多い推測を根拠に大量の戦力を割くわけにはいかない。何十人も戦闘員を派遣して「何もありませんでした」では骨折り損のくたびれ儲けだ。

 だからこそ先行調査が必要になる。

 それも少ない戦力での……つまりは隠密での調査。

 そこで白羽の矢が立ったのがアズサである。

 彼女は過去の経験から隠密行動が得意であり、彼女自身も自分が選ばれたのは納得のいくことだと判断していた。

 まぁアズサに危険なことをさせようとしたサクラコにハナコが大変良い笑顔で詰め寄るという事件が起こったりもしたのだが、それはアズサが嗜めることで解決した。

 しかしハナコの懸念も理解できる。

 潜入先は企業の闇が大量に隠されたビルだ。防衛戦力も多く配置されてるだろう。

 そんな場所に単独での潜入調査……そして可能なら熱源の破壊。

 いくらアズサといえども失敗する可能性は低くなかった。

 しかし、アズサはそれを理解していながらも依頼を受けることにした。

 

 

『孤児院ここで新しい友人ができて、それを守りたいと思った。それだけだ』

 

 

 サクラコの携帯端末から聞こえたサオリの言葉。

 あの時アズサがサクラコの側にいたのは、彼女から呼び出しを受けたからだ。

 おそらくはマリーから聞いた孤児院の現状とブラックマーケットで見たかった熱源の関連性に気がつき、個人としての能力が高いアズサを向かわせることを思いついたのだろう。

 サオリの会話を聞かせたのはおそらく……アズサのことを考えての行動だ。エデン条約の時からずっと聞くことができなかった今のサオリの考え方を聞かせようと思ったのだろう。

 

 「友人を守る」と断言したサオリの声音は、アズサの記憶にあるものとは少し違っていた。

 

 

『全てが虚しいこの世界で、真実を思い知れ!』

 

 

 最後に投げかけられた言葉。古聖堂の地下で決着をつける前にサオリが叫んだ声は……アリウスという場所に絶望し全てを虚しいと否定するその心を表すように冷え切っていた。まるで氷のように。

 あれ以来、アズサは彼女の声を一度も聞いていなかった。

 そして久しぶりにアズサの耳を叩いたかつての仲間の声は、炎のように熱く決意に溢れていた。

 別人なのかと思ったほどだ。

 通話が終わった後もアズサは信じられなくて、自分を呼ぶ声にも応えられなかった。

 だが、もはや認めるしかない。

 サオリは誰かと影響し合い、確かに変わることができたのだと。

 その事実に目を伏せて考え込んでしまったアズサにサクラコは、『思いも誰かとの繋がりも、きっと変化する。変わらないモノはない』と諭した。

 サオリは変化した。先生と出会い、ベアトリーチェから解放され、そして孤児院での様々な出来事を通じて、自分の中の何かを変えることができた。

 

 呪いから解放され、自分自身の意思で不条理へと立ち向かうサオリの姿は、かつてアズサが諦めてしまった物だ。

 

 虚しいと自らの翼を折ってしまった少女を見て、アズサは彼女を裏切り、叛逆した。それでも抵抗をやめるべきではないと立ち上がった。

 その選択に悔いはない。

 あの選択のおかげでアズサは補修授業部のみんなと出会うことができた。あの選択のおかげで最良の未来を掴むことができた。たから後悔をしてはいない。

 けれど……アズサの中に、かつての家族を裏切ったというトゲが残っているのも確かだ。

 そうだ。

 

 白洲アズサにとって、アリウススクワッドとは間違いなく家族だった。

 

 大人に反抗し、いつものように虐げられていたあの日。

 ボロ雑巾のように転がるアズサを庇ってくれた誰かがいた。

 その誰かに手を引かれて辿り着いた場所は、それまでとは比べようもないくらいに暖かかった。

 

 ちょっとだけ欲張りで、でもそこが可愛らしいヒヨリ。

 無気力で何にも興味がない風を装っているけど、実は寂しがりやで可愛い物が大好きなミサキ。

 花のように綺麗で高貴で、けれどどこか抜けていて親しみやすいアツコ。

 そして、仲間を誰よりも大事にして、決して見捨てることをしなかったサオリ。

 

 彼女たちと過ごす日々は、アズサの辛い人生の中で数少ない幸福だった。

 アズサが今日という日を幸せに生きているのは、間違いなく彼女たちとの生活があったからだ。

 それほどまでに当時のアズサにとってアリウススクワッドとは心の支えだった。

 

 けれど、アズサは決断してしまった。

 虚無と絶望が支配するアリウスという檻を抜け出して、悲劇を食い止めると。

 誰も傷つけないために、自分一人で全てを壊そうと。

 地面に力強く咲く美しい花を見て決意してしまった。

 

 そしてアズサは家族に銃口を向けた。

 裏切り、殺し合い、離れて。

 それで終わりだった。

 最悪の形で幕を閉じたアズサとアリウススクワッドの幻のような絆は、煙となって雲散霧消した。

 もう蘇ることはない。

 アズサは補修授業部として、サオリはアリウススクワッドとしての道を歩んで交わることはない。

 それで良いと、それが結末だと納得していたのに。

 

 アズサの心の中に言語化できない感情が渦巻いて思考が任務から逸れかけるが、進んでいた通路の曲がり角から警備が迫っていることに気がついて意識を現在に戻す。

 白色の蛍光灯が眩しく光る通路。一面が金属でできた狭い通り道で警備がやってくるのを待ち……

 

 

『!?て、敵しゅ───がっ』

 

 

 その姿が見えた瞬間に首元へ銃のストックを叩きつけて気絶させる。

 一連の動作が監視カメラに映っていないことを確認してアズサは先を急ぐ。

 

 ビルの地下空間は通路が迷路のように張り巡らされており、事前に想定した通り警備が厳重に敷かれていた。

 しかし基本的には人的資源を使った巡回が主であり、監視カメラの数自体はかなり少なかったため、任務自体は比較的スムーズに進行している。

 おそらくは下手に映像記録を残したくないという企業側の思惑からそうなっているのだろう。くだらない理由だが、そのおかげで爆薬も銃弾も節約できている。

 これなら───

 

 

『これならば努力目標である熱源の破壊も達成可能でしょう。正体不明の高性能機が目撃されたという報告が挙がったのと同じタイミングでさらに活性化した熱源……もはや関係性があることは自明。破壊するに越したことはありませんね』

 

 

 すっかり聞き慣れた……浦和ハナコの妖艶な声にアズサは「うん」頷くと、周囲に敵影が見当たらないのを確認してからインカムの向こうで指示を出す少女に問いかける。

 

 

「ハナコ、熱源との距離を教えて」

 

『もうすぐ側です。おそらくは壁一枚を隔てた向こうに……アズサちゃんから見えませんか?』

 

「本体は見えないけれど、やたら大きな扉を確認できる。ハナコの言う通りなら、おそらくあの先に熱源の正体があるんだろう」

 

 

 通路の影からアズサが見つめる先には広い空間と分厚い白色の扉があった。その他の物体は見当たらない。せいぜい三人の見張りがいるくらいだ。シンプルで何も無い、ただの白い空間。平時ならば違和感を覚えなかったのだろうが、アズサはここに至るまですれ違うのがやっとというレベルの通路を通ってきたのだ。そこに突如として現れた広い空間が現れたのだから違和感を感じてしまう。

 加えてあの分厚い扉。カードキーによるロック、それも二段階認証だ。重要な何かが保管されていることは間違いない。

 アズサは見張りに勘付かれないように声を潜める。

 

 

「とにかく見張りを制圧して侵入しよう。ハナコ、ありがとう。ここまで来れば案内は大丈夫だ。何かあればまた連絡する」

 

『わかりました。私も少し()()が出来たのでちょうど良かったです』

 

「……サオリのこと?」

 

『ええ。突然の援軍に少し混乱しているご様子ですので、説明をしてきます』

 

 

 くすくすと上品に笑いながら話すハナコ。

 アズサは彼女の言葉を受けて一瞬だけ逡巡し……決断した。

 

 

「ハナコ、通信を切る前に一つ頼みがある」

 

『何ですか?アズサちゃんの頼みであれば何でも──』

 

「サオリたちの会話を聞かせて」

 

 

 アズサからの頼みに揶揄うような態度を取っていたハナコの雰囲気が真剣な物へと変わる。

 

 

『……大丈夫なんですか?』

 

「わからない。けれど私は()()サオリを全く知らないから。だからこそ彼女の声を聞く義務が……ううん」

 

 

 そこでアズサは首を振った。

 サオリは変化したのだろう。

 そしてベアトリーチェの呪縛を打ち破り、己の罪と向き合って、大きな決断を下したのだろう。

 いつかのアズサと同じように。

 サクラコは『変わらない物はない』と言った。それは何度も何度も傷つき、後悔を重ねてきた錠前サオリという少女にも当てはまる。

 アズサは抵抗することを諦めなかった。

 けれど同時に家族を諦めてしまった。

 選択にはいつだって後悔が付き纏う。その選択が正しくても間違いでも、『選択する』という行動を取った時点で何かしらを切り捨てなければならないのだから。

 アズサだって過去の選択そのものに後悔はないにしても、選択の結果として切り捨てた家族には罪悪感を抱いている。

 だから知りたい。

 切り捨てて、喧嘩別れしてしまった、それでも大切な昔の家族の今を。

 

 

「これは義務じゃなくて我儘。私が勝手に諦めて、切り捨ててしまった選択の先。サオリが成した変化を知りたい。そういう我儘なんだと思う」

 

『……』

 

「だからハナコ。こんな私の我儘を……叶えてはくれないか?」

 

 

 遠慮気味にねだるアズサ。彼女にしては珍しい弱々しい声にハナコは……

 

 

『…アズサちゃんにそこまで言われては断れませんね。わかりました。これから行うサオリさんたちとの通信をアズサちゃんのインカムに流します』

 

「ありがとう」

 

『お礼を言われるほどの事ではありませんよ。大切なアズサちゃんが決めたことです。背中を押さずして友人は名乗れませんから。……では行きますね』

 

「うん」

 

 

 アズサが頷くとインカムの音声に一瞬だけノイズが走る。

 そして、

 

 

『それに関しては私がお答えしますね』

 

『浦和、ハナコ?』

 

 

 迷う心を力強く掴む声が聞こえてきた。

 スッと体が軽くなって、気がつけばアズサは背中を押されるように前へと飛び出していた。

 流れるように発煙弾を投下して見張りへと襲いかかる。

 その間も懐かしい声は途切れない。

 

 

『状況を見るに、お前がアツコたちを連れてきたのだろう。この事件に関しては…シスターサクラコから聞いたのか?』

 

(まだ混乱も収まってないだろうけど…….相変わらず察しが早い)

 

 

 突然の状況の変化にも瞬時に対応できるのが錠前サオリという少女だ。アズサも彼女のそんなエピソードを思い出そうとして………何故か風邪を引いていることがすぐにバレてしまった記憶が甦る。

 

 

(確かあの時サオリは訓練の予定を無理矢理に変更したんだっけ)

 

 

 一瞬で視界を奪われて混乱する見張りの一人を物理的に黙らせながら、アズサは当時のことを思い出す。

 朝起きて顔を合わせて、開口一番に『今日の訓練は中止する』と言い出したのだから何事かとアズサは思った。あの時の記憶は倦怠感が酷くて曖昧だが、サオリがベアトリーチェへと必死に頭を下げていたのは覚えている。その時、何故か自分の目から涙が溢れてしまったことも。

 思えば……『今を変えたい』と強く願うようになったのはあの時からだったのかもしれない。

 感傷に浸りつつも、残りの二人を手早く始末しようと走り出す。

 アズサの耳元ではサオリがハナコの言葉に諦めたような溜息を吐いていた。そして彼女は状況を整理した後、何かを納得するように『やることは一つだ』と二人の仲間の名前を呼んで───

 

 

『合わせろ』

 

『了解』

 

『わかりました』

 

「うん」

 

 

 深い霧のような煙の中で、端的で鋭い指示にアズサは自然と頷いていた。ずっとずっとそうして来たから。数えきれないほどの戦場で、数えきれないほどに助け合ってきた絆がある。辛い現実と虚しさに焼かれて、それでも残った灰のような記憶がある。

 決別しても殺し合っても、手を繋いだ過去はなくならない。

 地獄のような日々の中で大切に育んできた連携は、アズサの糧となって今も生き続けている。

 だから───昔を再現するなんて、容易いことだ。

 

 

『一体なにが───あがっ!?』

 

『エマージェ───かはっ!?』

 

 

 狙撃が直撃する音に合わせて蹴りを入れる。それが一番隙が出るタイミングだと知っているから。

 断続的な爆発音に合わせて距離を取る。それが回避を助けてくれるとわかっているから。

 控えめな「スイッチ」の声を聞いて前進し、攻撃を再開する。それが位置を交代する合図だと決まっているから。

 そして───勇猛な口上を聞いて武器を下ろす。それが勝利の宣言だと信じているから。

 

 この場にいるのはアズサ一人だ。けれど彼女は確かに『連携』をとっていた。

 一人目が攻撃し、二人目が援護し、三人目が引き付け、四人目が追い詰め、五人目がトドメを刺す。

 冷酷なまでに効率的に敵を追い詰めるその動きはさながら狼群の狩り。

 きっとアズサの足元で倒れ伏した三人の見張りは統率の取れた精鋭部隊に襲撃されたと勘違いしたまま意識を失ったことだろう。

 煙が晴れる前にアズサは純白の髪をたなびかせて部屋の天井に何度か発砲する。

 真っ直ぐ射出された弾丸は寸分違わず監視カメラに直撃し、その機能を停止させた。

 煙が消滅した瞬間に躊躇いなくガスマスクを外し、重厚な扉へと歩いていく。

 マスクの下。久方ぶりの共闘を終えて汗が滴る美麗な横顔には……確かに子供のような笑みが浮かんでいた。

 

 アズサは一拍も置かずに満足げな笑みを奥底にしまい込むと、腰に巻いていたポーチから手のひらほどのサイズのカードキーを取り出して扉のロックを解除する。こうなることを予測して事前に権限の大きいカードキーを入手しておいた。ピッと軽い音を二回立てた後、純白の大壁は重苦しい音を立てながらゆっくりと開く。

 体育館ほどのサイズの空間だ。

 壁に埋め込まれたモニターやタッチパネルなどの機械も目立つが……何よりも目を引くのは中心にある巨大な装置。自動車や航空機に使われるオルタネーターを小さな家ほどの大きさまで巨大化したような物体だ。それは青白い光を発しながら静かに駆動音を響かせている。おそらくこれこそが企業の闇───サオリたちの会話から推測するに、『トリガメリク』と呼ばれた兵器のバリア維持システムと思われる装置だ。

 これは破壊すればアズサの任務は完了。

 常時のアズサであればすぐにでも爆弾を投擲して役目を完遂するだろう。彼女も元特殊部隊。任務における迅速な行動の重要性はよく理解していた。

 しかし、今のアズサは普通の少女である。特殊部隊としての矜持に縛られているわけではないのだ。

 だから彼女は足を止めて───かつてアズサの手を取った少女の、家族への告解の言葉に聞き入っていた。

 

 

『私はミサキが羨ましかった!お前の持つ『温もり』が羨ましかったんだ!』

 

『私はヒヨリが……お前の持つ明るさが羨ましかった!』

 

『私はアツコが羨ましかった!強大な存在にも堂々と立ち向かえる強さと揺らがない気高さが、美しさが!羨ましかったんだ!』

 

 

 それはサオリが家族に隠してきたこと。

 リーダーとして振る舞い、強い自分を見せてきたサオリが、この日まで秘めてきた彼女の弱さだ。

 ずっとアズサたちを導いてきた頼もしい影。

 どこか遠く離れていた過去のサオリの背中が、何故か今はすぐ側に感じられる。

 なんてことはない。

 誰にも言えない重責を背負っていても、取り返しのつかない罪を抱えていても、どこまで遠くへ行っても。

 錠前サオリという人間は、アズサと一つしか違わない十七歳の少女でしかないのだ。

 それはずっと近くにあった事実で、アズサもずっと知っていた事実で、けれどいつのまにか忘れていた事実だった。

 

 

(そっか。そうだね、サオリ)

 

 

 瞑目してアズサは頷く。

 家族を裏切った。恩人を置いて、彼女たちの本心を理解しないまま殺し合ってしまった。

 アズサの中には今、確かな後悔の感情が芽吹いている。

 彼女は一人で立ち向かわなくても良いということを、誰かと手を取り合って困難に対処することを学んだ。

 そんな今のアズサだからこそ、一人で立ち上がった…立ち上がってしまった自分自身の行動に少しだけ罪悪感を抱いていたい。

 セイアを襲撃する直前。

 あの時サオリに協力を求めていたら。どれだけ困難な道のりでも、アリウススクワッドの仲間たちの協力を得ることができていたら。共にベアトリーチェの呪縛を抜け出すという選択を選ぶことができていたのなら。

 また今とは違った未来があったのかもしれない。

 サオリが嫉妬も寂寥も持ち合わせるただの少女であることを理解して、ただの友人として、一人の家族として接することが出来ていたのなら。

 他のエンディングを見れたのだろう。

 

 だからきっと、サオリだけの罪ではない。

 

 サオリの選択。それを止める道も確かに残されていた。そんなリスクを承知で踏み込むことができなかった自分アズサにも罪があるのだろう。

 だから……そう、だから。

 

 

『全ての償いを終えて、私が私自身を赦せるようになったその時。私はお前に会いに行くよ、アズサ』

 

 

 その時が来たなら、きっと赦そう。

 頭を下げるサオリに『いいよ』と言おう。

 

 

(そして私も謝ろう。謝って全ての罪を贖えたなら……その後は、一緒にスイーツでも食べに行こう)

 

 

 良い店を知っている。

 ハナコが、コハルが、ヒフミが。

 今のアズサの仲間たちが与えてくれた幸せの一つだ。

 そうだ。

 サオリもアズサも、自分の居場所を見つけてしまった。

 だからもう家族には戻れないのかもしれない。

 けれど、きっと友達になることはできる。

 ただ笑い合い、青春を過ごすだけの友達に。

 不意にアズサの脳裏をある光景がよぎる。

 

 ハナコがおかしなことを言って微妙な顔をするミサキ。

 迂闊な発言をしてコハルを怒らせるヒヨリ。

 ぬいぐるみと睨めっこするアツコを微笑ましく見守るヒフミ。

 そして、お気に入りのケーキを分け合うアズサとサオリ。

 

 とても、とても暖かい。理想の未来の姿だ。

 

 

(きっと良い友達になれる)

 

 

 瞼の裏に鮮明に浮かんだ景色。それに満足してアズサは目を開いた。

 眩しい白い光に目を細めながら、アズサは巨大な装置に向かって銃口を向ける。

 その仕草に迷いはなかった。

 引き鉄を引く。

 軽い発砲音と共に放たれた銃弾は装置に直撃。爆発音がして、着弾地点から火の手が上がる。それは周囲の機械にも連鎖して次々に誘爆を引き起こしていった。

 精密な機械らしく衝撃には弱かったようだ。

 湖の波紋のように、燃え上がる炎は部屋中へと広がっていく。

 その光景は今のサオリが戦っている孤児院と少し似ていた。

 炎と全てを呑み込む轟音の中で。

 

 

「またね、サオリ」

 

 

 天使のような少女の声が、ハッキリと響いた。

 

 

〜〜〜

 

 

 『トリガメリク』の装甲に傷がついた。

 その事実にサオリの中の時が止まる。

 サクラコが手を打ったのか?

 それともエネルギー切れを起こしたのか?

 真実はわからない。

 しかし、焦ったような気配を見せる幹部の姿を見れば、それが罠ではないことは明らかだ。

 ならば得られる事実はただ一つ。

 

 

(『トリガメリク』のバリアが……消失した?)

 

 

 理由は一切不明。

 インカム越しに待機してるはずのハナコも何も言わないのだから本格的に意味不明だ。

 けれど───バリアがなくなったということは、()()()()()()()()()()()()()ということに他ならない。

 それを理解した瞬間、サオリは全ての疑問を切り捨てた。

 

 

「……アリウススクワッド各員に通達。これより我々は───」

 

 

 もはや不毛な持久戦の必要性は皆無。

 後に残るのはシンプルな事実だ。

 それを宣言するようにサオリは叫ぶように指示を出す。

 

 

「特務機装『トリガメリク』を撃破する!!」

 

 

 殺られる前に殺れ。

 シンプルな指示に対する返答は行動で示された。

 

 

『やらせは───ぐっ!?』

 

 

 何事かを言おうとした幹部の横っ腹に狙撃が直撃する。

 少しよろめかせる程度の威力しかなかったはずの鋭い弾丸は、『トリガメリク』の巨体をニメートルほど吹き飛ばすことで本来の力を見せつけていた。

 

 

『い、威力が……再計算が必要になるってことですねぇ……どうしてこう面倒なことばかり……辛いです苦しいです………』

 

『面倒くさがってないで次弾装填早く』

 

「アツコ!」

 

「うん!」

 

 

 ネガティブにえんえんと泣く少女の弱音をミサキが一蹴する。そんな聞き慣れたコントをBGMにしながらサオリは『トリガメリク』を挟んで反対側にいるアツコを呼んだ。元気よく返事をした彼女とまたしてもスイッチを行う……のではなく。

 

 

「一瞬で片付ける!行くぞ!」

 

「わかった!」

 

 

 今度は二人がかりで攻めかかる。

 援軍の到着を待つのではなく、自分たちが息切れする前に短期決戦で攻略する方向にシフトしたサオリ。今までは体力を温存するためにアツコと交代で敵のヘイトを受け持っていたが、攻めに転じた今となってはそんなことは不要なのだ。

 無敵性を無くしたイレギュラーを挟み撃ちにする。

 それに対して幹部は防戦一方だ。何とかその場から退避しようとするが、狙撃に牽制されて結局は止まることしかできない。

 もともと単独のイレギュラーを叩き潰すことを想定としていた『トリガメリク』は集団戦に弱いのだ。

 レールキャノンもパイルバンカーも一対一であれば猛威を振るうが、一人にかかり切りになってる間に他から攻撃を受けてしまえば脆い。

 今までその事実を誤魔化していた絶対無敵のバリアは……もう存在しない。

 群のイレギュラー(アリウススクワッド)が確実に個のイレギュラー(トリガメリク)を追い詰めていく。

 サオリが裂帛の叫びとアツコの「えいっ」という気の抜ける声が対照的で違和感のある光景だが、その実態はアサルトライフルとサブマンガンの乱射だ。もはや銃声というには生温いほどの爆音と共に二つの銃口と『トリガメリク』の装甲から尋常ではない量の火花が散る。

 そして銃弾のいくつかが関節部に入り込み───左膝と左肘の関節を支えるゴムが裂断された。

 ガコンという音と共に『トリガメリク』が膝を突く。

 その瞬間、サオリとアツコは同時にその場から飛び退くように後退した。

 絶好のチャンスに追撃しなかった。

 その意味に気づくことなく、幹部が叫ぶ。

 

 

『この程度で!私はまだ戦える!』

 

「残念だが───」

 

『これで詰みだよ』

 

 

 立ちあがろうとする幹部。

 ──満身創痍の姿にミサキがロケットランチャーを構えた。

 ミサキのロケットランチャーは上空に放つことで高高度から大量の子爆弾をばら撒き、広範囲を殲滅することを目的としている。

 つまり彼女の用いる砲弾には無数の爆弾が仕込まれているということだ。

 ここで問いたいのだが……

 

 そんな爆弾を重箱に押し込めたような砲弾が直撃したら、果たしてどうなるのだろうか。

 

 その答えはすぐに示された。

 

 サオリの視界を眩い光が包み込む。

 いつか何処かで見た気がする視界を満たす光にサオリが瞑目した次の瞬間、けたたましい爆発音と凄まじい衝撃波が孤児院の庭を埋め尽くす。

 炎すら掻き消え、舞い上がる花びらは灰に還り、孤児院の本庭は暴力的な破壊によって鎮火された。

 戦場に沈黙が落ちる。巻き起こった砂煙の中に隠れたアリウススクワッドは何も言わない。油断など一ミリもなかった。

 彼女たちを取り巻くように舞い散る砂煙。それはしばらく空中を停滞した後、ゆっくりと空へと拡散していった。

 そして爆心地が、直撃を受けた『トリガメリク』の姿が露わになり───

 

 

『こ、れは………痛かった、で、すね…』

 

 

 装甲は破壊し尽くされ、モニターにはヒビが入り。

 それでも立ち上がる『トリガメリク』をアリウススクワッド全員が目にした。

 

 

『ま、まだ立ち上がるんですか?痛いでしょうに、苦しいでしょうに……』

 

『確かにしつこいけど、でも……』

 

「そうだね……サオリ」

 

「ああ。もう終わりだ」

 

 

 マスクを外して名前を呼ぶアツコに、サオリを小さく頷いた。

 そして今にも倒れそうなその姿に、右手に握りしめたライフルを向ける。

 

 

『……訂正しましょう』

 

 

 夜風に髪を戦がせる少女の姿に、幹部は溜息を吐き、

 

 

『錠前様……貴女は正真正銘の、イレギュラーだ』

 

 

 諦めたように彼女を認めた。

 燃え残った炎がパチパチと静かに音を立てる戦場。

 その中心で嘘偽りない賛辞の言葉を受け取ったサオリは、

 

 

「違うな」

 

 

 それをハッキリと否定して、

 

 

「私()()がイレギュラーだ。だから───」

 

 

 強調するようにして訂正し、

 

 

「──そのことを思い知れ」

 

 

 誇るような声と共に……その引き鉄を引いた。

 金属音が鳴り響く。

 アサルトライフルの連射がまともに直撃し、『トリガメリク』の装甲が剥がれ落ちていく。

 レールキャノンが吹き飛び、パイルバンカーが砕け、モニターが割れて飛散した。

 そして。

 

 

『………よ、く…覚え、て……おきま、しょう』

 

 

 その言葉を最後に『トリガメリク』は……幹部は倒れ伏し、沈黙した。

 アツコが崩れた落ちた巨体にゆっくりと近寄って、ペタペタと機体を触り、頷く。

 

 

「完全に気絶してる。もし目を覚ましても、機能を停止した『トリガメリク』の重さで動けないと思う」

 

「……そうか。ならば放置していても問題無いな」

 

『お、終わったんですね!これでようやく帰れるんですね!?』

 

『いや……はしゃいでるところ悪いけど、まだ帰れないと思うよ、ヒヨリ』

 

『えぇ!?そうなんですか!?』

 

『うん。だよね、リーダー?』

 

「ああ」

 

 

 若干呆れ混じりに確認を取るミサキを、サオリが静かに肯定する。

 未だに真剣な表情を崩さないサオリの顔を、いつのまにか近寄っていたアツコが下から覗き込む。

 彼女の顔には優しげな微笑みが浮かんでいた。

 

 

「助けに行くんだね」

 

「ああ」

 

 

 裏庭の方から銃声がする。

 燃える孤児院を挟んで反対方向では、まだ管理人の少女たちが戦っているのだろう。

 最大の脅威が片付いたとはいえ、リリナやマリーたちの危険が全てなくなったわけではないのだ。

 

 

「だから……もう少しだけ付き合ってくれ、三人とも」

 

「うん。もちろん」

 

『ま、まだ戦いは終わらないんですね……辛いですね、苦しいですね……』

 

『別に良いよ。どの道リーダーを助けろっていう依頼なんだし』

 

 

 頼もしい家族からの肯定に、涼しい夜風に吹かれながらサオリは小さく笑った。

 

 

〜〜〜

 

 

 ヒヨリ、そしてミサキと合流したアツコとサオリは、急いで裏庭の方へと向かっていた。

 途中で幾らか敵と遭遇もしたが、『トリガメリク』と戦った後では全てが生温く思える。適当に処理しながら、戦いの最前線へと急いだ。

 そして辿り着いた裏庭では───

 

 

「子供たちに触れると思うなよ!」

 

「私を無視するなんて良い度胸してるわね!」

 

「そんな豆鉄砲で私の盾を貫けると思わないことです───!」

 

 

 未だに激しい戦いが繰り広げられていた。

 子供たちがいる巨大な倉庫を囲むようにして世話係の少女たちが炎の中で吠えている。

 全員の服と装備は既にボロボロだったが、その戦意が衰えることは一切ない。

 向かってくる大量の襲撃者を相手に奮戦を続けていた。

 よく見れば管理人の少女の姿もある。彼女も彼女で全員に指示を叫びながら二人の襲撃者を相手取っていた。

 善戦しているようにも見えるが───

 

 

「リーダー、これまずいよ」

 

「ああ、わかっている」

 

 

 少しだけ焦ったようなミサキの言葉にサオリは頷く。

 彼女たちは今、子供たちを守るという気概だけで立っているのだ。額から血を流し、折れた腕を放置しながら銃を構える少女たちは、どう考えても満身創痍。脳内麻薬の力でどうにか戦っている。

 すぐにでも戦線が崩壊してもおかしくはなかった。

 

 

「ヒヨリはここから離れて狙撃。厄介そうなのから仕留めろ。ミサキは一箇所に纏まっている敵を掃除だ。くれぐれも味方を巻き込むな。アツコは私と───」

 

 

 もはや一刻の猶予もない。

 そう判断したサオリが急いで指示を出そうとした───その時。

 

 サオリたちの目の前の地面が爆発した。

 

 今日何度目かもわからない砂煙が巻き起こる。

 幸いにもそれほど大きな爆発ではなかったらしく、アリウススクワッドの面々が吹き飛ばされるような事はなかった。

 だがそれでも緊急事態だ。

 

 

(敵に手榴弾でも投げ込まれたか?)

 

 

 降りかかる地面の破片の中でサオリは冷静に分析したが、

 

 

「───救護対照、多数確認」

 

 

 すぐにその推測が間違っていると気がついた。

 サオリスクワッドの前方十メートル。

 そこに一人の少女が立っている。

 透き通るような水色の髪を爆風にたなびかせるその少女は、身に纏う純白の衣装と相まって天使か神の使いにも見える。

 地面のクレーターが無ければ、だが。

 加えて言うなら彼女は両脇に二人の少女を抱えているので、サオリとしては美しさへの感動よりも困惑が勝っていた。

 どうやら他のメンバーも同じだったようで、ヒヨリですらも騒ぐような事はせず「えぇ…」と普通にドン引きしていた。

 敵味方問わず全員の視線が集まる中、蒼い少女は燃える地面を踏みしめて高らかに宣言する。

 

 

「───救護を開始します!」

 

「その前に降ろしてください団長!!」

 

「せ、先輩……私たぶん立てないです……」

 

 

 少女……蒼森ミネに宣言に小脇から桃色の髪が特徴的な看護師衣装の生徒が泣きながらツッコミを入れる。反対側ではツインテールをしおしおと揺らしながら豊満な胸の少女が青い顔をしていた。

 救護騎士団。

 ヒエロニムス討伐の際に共闘した蒼い髪の少女の登場に、サオリを含めたアリウススクワッドの面々は……いや、この場にいるの全て人間が呆然としていた。

 しかしそんなことは我関せず。

 ミネは小脇に抱えていた二人の少女を降ろすと「怪我人の救護をお願いします」と伝える。じゃあ貴女は何を救護するんですか?という命知らずな問いかけをする者は誰一人としていなかった。

 団長からの指示に青い顔をしつつも頷いて炎を避けつつ怪我人の方へと駆けて行く少女たち。そして残されたミネは……

 

 

「……」

 

 

 サオリたちの方を向いて目礼をした後、

 

 

「それでは改めて……救護を開始します!」

 

 

 襲撃者たちへと飛びかかって行った。

 突如として空から降ってきた謎の存在に慌てる襲撃者たちはロクに抵抗も出来ないまま薙ぎ倒されていく。

 呆気に取られながらその光景を見ていると、

 

 

「ど、どうしてミネ様が先行しているのですか!?」

 

「そんなことは知りません!それよりも…!」

 

「ええ!私たちのマリーちゃんを傷つけた不届者共に神罰を与えましょう!」

 

「『シスターフッドの良心』『私たちの聖母(ママ)』『懺悔したいシスターNo.1』…様々な異名が示す通り、我々に癒しを与えてくれるマリーさんを傷つけるなど…!」

 

「万死に値します!」

 

「突撃!突撃ー!」

 

「あはは……」

 

 

 壁の向こうから、木々の隙間から、草陰から。

 何人もの少女たちが飛び出してくる。彼女たちは皆一様に、ミネとは対照的な黒を基調とした落ち着いた色の制服を纏っている。特徴的なベールを靡かせながら敵に突貫する少女たちの正体は───

 

 

「シスターフッドの……救援」

 

 

 小さなアツコが呟きがサオリの耳に届いた。

 戦闘開始から約二時間。

 サクラコが約束した援軍が、勝利のタイムリミットが……遂に訪れたのだ。

 雄叫びを上げながら敵を倒して行くシスター服の少女たち。その中には苦笑いしているヒナタの姿もあった。困ったような顔をしているヒナタだが、躊躇なくグレネードランチャーで敵を焼き払っている辺り割と頭に来ているのかもしれない。

 一気に孤児院サイド優勢になる戦場。

 サオリはそのことに安堵して───体の力が抜ける。

 泣き、走り、戦い、叫んだ彼女はここに来るまでに体力の殆どを使い果たしていたのだ。今までは世話係の少女たちと同じく根気で立っていただけに過ぎない。

 それが増援が到着し、勝利が確定的になったことで途切れた。

 無理もないことだった。

 安堵に包まれる自身の心を感じながら、サオリが地面へと倒れそうになったその時。

 

 誰かがサオリを抱き抱えた。

 アツコやミサキ、ヒヨリではない。彼女たちとはまた違った感覚。何故だか少しだけ覚えがある気がして、サオリが過去の記憶を振り返ろうとして───

 

 

「も〜。サオリって私と会う時はボロボロになってなきゃいけない決まりでもあるの?服が血で汚れちゃうから勘弁してくれない?」

 

 

 耳元で甘ったるい声が聞こえてきた。声はここが戦場とは思えないほど軽薄にサオリを非難する。

 さて、サオリを支える人物の姿を認識したアリウススクワッドの面々の反応は様々であった。

 

 

「あ」

 

 

 アツコは意外そうに目を丸くして、

 

 

「げ」

 

 

 ミサキは心底嫌そうに顔を顰めて、

 

 

「ひぇ」

 

 

 ヒヨリはとんでもないスピードでミサキの背後に隠れる。

 

 そしてサオリは……薄く苦笑いをした。

 

 

「……もう少し早く来て欲しかったが」

 

「え〜、助けて貰う立場のクセに文句言うの?それってあり得なくない?私ナギちゃんとのティータイムを放り出して来てあげたんだけど」

 

「……そうだな。ああ、お前の言う通りだ。すまない……ありがとう」

 

「…何それ、変なの。調子狂っちゃう」

 

 

 サオリを支えていた少女はぶっきらぼうに言い放つと、言葉のトゲとは裏腹に、とても優しい手つきでサオリを地面へと座らせる。

 そしてクルリと前を向くと、いつのまにか目前まで迫っていた複数人の敵を見据える。

 相手は一人。それなのに……彼女に見つめられた襲撃者たちの顔には恐怖が浮かんでいた。

 そして。

 

 

「調子狂っちゃってストレス溜まるから……あなたたちで発散するね?」

 

 

 聖園ミカは───正真正銘、絶対無敵のイレギュラーは冷たく笑った。

 

 成す術なく蹂躙されていく襲撃者とその光景を作り上げる絶対的強者を見てミサキが露骨に嫌そうな顔をして溜息を吐く。

 

 

「これ頑張って『トリガメリク』を倒した意味なかったでしょ。あと少し我慢すればあいつが倒してた」

 

「ど、どうでしょうか……弾薬も残り少なかったですし、体力的にもギリギリでしたし、そんなことは無い……あ、いやでも時間的には間に合ってたような?そ、それじゃあやっぱり意味は───」

 

「ううん、意味はあったよ」

 

 

 「意味がない」という言葉を否定しようとしたヒヨリだったが、段々とミサキの方が正しいという事実に至りそうになり───目を瞑って胸に手を当てるアツコに否定された。

 アツコは目をゆっくりと開いて座り込むサオリに顔を向けて、

 

 

「そうだよね、サッちゃん」

 

 

 子を見守る母のように微笑んだ。

 それが何だか何処かのシスターの笑みと重なるような気がして、サオリも釣られるようにして笑う。

 

 

『お姉ちゃーーーーん!』

 

『だ、ダメですよリリナさん!まだ安全では…!』

 

 

 遠くから聞こえてきた声の方を向く。

 満面の笑みを浮かべて走ってくるぱっつんと前髪を切り揃えた幼い少女と、焦るように彼女を追いかける件のシスターの姿が見えた。

 そんな光景に、サオリは笑みを浮かべたまま頷くと、

 

 

「ああ、そうだな……きっと意味はあった」

 

 

 それだけを言って……胸に飛び込んできたリリナを抱きしめた。

 

 

 それから一時間後。

 孤児院を襲撃した人物たちは全員捕縛され、本庭で倒れていた黒幕の幹部も無事に捕まった。

 加えて孤児院の炎もシスターフッドが用意した消化装置によって鎮火。

 管理人の少女と世話係の少女たちは入院が必要なほどの傷を負っていたが、命に別状のある者はいなかった。

 そして子供たちに関してはほとんど怪我をした者はいなかった。例外として援軍が到着してすぐ何故か外に飛び出したとある少女だけ少し火傷を負っていたが、側にいた救護騎士団の生徒がすぐに治療を施したことで解決。

 入院するレベルの子供は誰一人としていない。

 事件の規模を考えると異例のことであった。

 

 こうして……サオリを取り巻く一連の騒動は、一人の死者も出すことなく幕を閉じた。

 

 

 

 

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