浄火の赦し   作:もとりな

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■章 「■■■■■」

「──私はずっと、物心ついた時からずっと醜い存在だった!お前もアリウスで起こっていた内戦は知っているだろう?私がその時、ミサキたちに何を指示していたか知っているか?盗みだ!相手の物を奪って自らの私腹を肥やす行為だ!あの時は戦いが激化していた頃で、そうするしかなかったことも事実だろう。けど、それでも!私は他の可能性に目を向けようとはしなかった!ヒヨリとミサキに、手を汚させる以外の選択肢を与えようとも思わなかった!そして何よりも、私は知っていたんだ。私が奪った人間たちが、私たちから奪われた人間たちがどのような目に遭うかを。少し他人より手先が器用で、賢しかった私たちが飢えて道端に転がって死にかけていた。それなのに、他の人間たちが食料まで奪われてしまったらどうなる・・・・のか、私はわかっていた!わかっていたんだ…!思えばそこから、ヒヨリとミサキに罪の片棒を担がせた所から私の悪業始まっていた。ベアトリーチェがやってきて、私たちはヤツにとって都合の良い道具として生まれ変わった。その時だって反抗することはなかった。ヤツの教えに従って、全ては虚しいと、トリニティは悪であると思い込まされて、疑念すら抱かなかった。アツコの枷を解くにはそれしか無いと思い込んでいたんだ…!あの時、立ち上がる選択をしていれば!『大人には逆らわない』だなんて潔く諦めていなければ!ベアトリーチェが唱える警句に惑わされていなければ!何もかも変わっていたかもしれないんだ!私には出来たはずなんだ……アリウスの中から有志を募り、ベアトリーチェに抗い、箱の外から出ることも、出来たはずなんだ…!それでも!臆病な私は動けなかった!そこで違う選択を出来る私なら、トリニティに爆弾など落とさなかった、リリナから大切な物を奪ったりもしなかった!それでも私は何処かの本に書かれただけの一文を信じ込み、大人の守りもしない約束を信じ込み、アツコがそれで解放されるならば仕方ないと……そうだ、仕方ないと割り切ってしまったんだ!私が今お前に吐き出しているこの言葉だって身勝手な物だ。なにせ、私はあの日、大切な仲間と見ず知らずの誰かを天秤に掛けて、誰かを切り捨ててしまったのだから!その誰かを目の前にして漸く遅すぎた後悔の念に身を任せて吐いてる言葉に過ぎないのだから!!それに…それだけじゃない。私の前には、チャンスが、選択が山のように転がっていたんだ。ある日トリニティから、アリウスなんて薄汚れた場所とは無縁なお嬢様がやってきたことがあった。そいつはあろうことか……アリウスとトリニティで『和解』したいなどと言ったんだ。何の譫言だと呆れ果てた、が……それでもそんな言葉に希望を抱いた。そして、希望を抱いて、私たちの中で、最も自由に羽ばたけるアズサにその希望を託して……私は裏切った。百合園セイアを殺すという話を聞いた時、全てが壊れるのを承知で、それでもベアトリーチェの指示に従ったんだ…!アズサに百合園セイアを殺害させ、そして今度は桐藤ナギサの殺害まで……!次にあのお嬢様が訪れた時は、その変化を『何を考えているのかわからない』などと評したが、本当はわかっていたんだ!私だって、大切な人間が死んでしまったら、心を虚しさだけが支配するだなんてことはわかりきっていた!彼女がどんな状態かなんてわかりきって、その上で見ない振りをしたんだ……。そして、私はアズサに桐藤ナギサの暗殺を命じた。私が、あの子に……私自身が、希望になってくれると期待したあの子に!全てを押し付けたんだ!それがどれだけ罪深いことか……!その上私は、ある意味では私の望み通り、裏切って、私たちの元から巣立って居場所を手に入れたアズサを羨んだんだ…。お前の居場所はそこでは無いと、希望を託した存在に言い放ったんだ!私は……私は!アズサを妬ましいと思ってしまったんだ!そして醜い嫉妬を抱えたまま、トリニティに爆弾を落とした私は……結果として、また選択を間違えてしまった。エデン条約調印式の全てが終わり、ベアトリーチェから逃げ出して、それでも私は間違えた!アツコが攫われるのを見てるしかなかったんだ……。アツコは、アツコは私よりも強かった!私たちを守ろうと独りでベアトリーチェの下に向かって、私はそれを見てることしか出来なかった!その尻拭いをしたのは誰だ!?私では無い……大人だった!あれほど忌み嫌ったはずの大人だったんだよ……!私は結局、最後まで状況に流されて、ハッピーエンドを手渡されるのを待つ犬だったんだよ…!わかるか、シスターマリー?私は、こんな人間なんだ。選択を間違えて、正しい選択をした家族を妬み、最後には他人に縋ってハッピーエンドを待つしかなかった、ただの傍観者だ!そんな私が、何もして来なかった、足を引っ張って、罪を重ねることしかできなかった私が、自分を赦すことなど──────」

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