絶対にデレない敵役生徒   作:有機栽培茶

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投稿時間がいつもと違う?しょうがないでしょ私だって忙しいんだ。


10.火花舞い散る

 

 15:34

 

 ゲヘナ風紀委員副委員長戦華ヒバナによるテレビ局の占領及びトリニティへのテロ活動開始から約30分後。トリニティ総合学園が正義実現委員会部長、剣先ツルギ率いる正義実現委員会の部隊が現場に到着。その5分後、銀鏡イオリ率いるゲヘナ風紀委員の部隊が合流。

 

 合同作戦としてテレビ局内のテロリストの殲滅と人質の救出作戦が開始された。

 

 

「……ヒバナ先輩がいなかったらこんなものか」

「きゃーはっはっはっはははは!!」

 

 

 後、16分24秒の戦闘行為を得てテレビ局内の完全制圧を確認。被害は軽微。人質5名全員の保護に成功。

 

 しかし事前情報で判明していた不良グループ43名とゲヘナ風紀委員第六小隊50名で構成された敵戦力の内約30名。そして当事件の首謀者である戦華ヒバナが確認できず。

 

 敵わないと察して逃げ出したのか、はたまた…

 

 

「は、ハスミ先輩!」

「貴方は…ありがとうございます。貴方のおかげで迅速に事件を解決することができました」

「そんな!私は…こんなことになる前にもっと早く伝えていれば事件も未然に防げたかもしれないのに…」

「確かにそうかもしれません。ですが、貴方が決心してくれたおかげで私たちが被害を出すことなく解決できたのは事実です」

「えへへ……じゃ、じゃなくて!大変なんです!ひ、ヒバナさん…戦華ヒバナが何人か連れてトリニティの…!」

「なるほど…」

 

 

 ゲヘナ風紀委員の制服に身を包みながらも正義実現委員会のベレー帽を被ったチグハグな制服の少女───どうやら今作戦において情報提供者の立場に立っていたらしき彼女が剣先ツルギの右腕的存在の人間、羽川ハスミにテロ組織の残党の行方を伝える。

 

 

「……どうやら、テロ首謀者である戦華ヒバナとその残党はトリニティの中心…ティーパーティの方々がいる本校へ奇襲をかけに行ったようです」

 

 

 ──悔しいですが、貴方たちの委員長の言う通りでしたね。

 

 

 その言葉にイオリはヒナ委員長とシャーレの先生。()()()()()で別行動を始めた彼女たちを思い浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同刻

 

 

 人気のない路地裏の一角。

 

 通信機越しに部下たちの戦闘音が途切れた事を確認し、僕はインカムを握りつぶした。

 どうやら囮用に置いてきた害獣どもだが……やはり害獣は害獣。知恵の実を食した人間様には勝てないことが証明されたな。

 

 しかし、あのぱっつんちゃんが案の定スパイ役だったことは少し残念だ。私はああいう良い子ちゃんが大好きなのだが……どうやらあちらはそうではなかったらしい。手を差し伸べたにも関わらず結局最後の最後には振り払われてしまった。残念だ。

 

 だが、まあ。そんな嫌ーなことは一旦忘れよう。これから僕らがすべきことはそんな些細なことなどかき消えてしまうほどでかいこと。トリニティがトップ、ティーパーティ3名への襲撃。彼女たちが纏う紅茶の匂いを血の匂いでかき消してやるのが僕らの役目だ。ろくに役にも立たずリタイアしていった害獣どもへの手向にもなる。

 

 最低でも一名。ティーパーティ代表を一人持って行く。そうすればトリニティとゲヘナの開戦は避けられない。トリニティとゲヘナの間に埋めることのできない深い溝を作ることが僕の目的だ。

 

 そしてメインディッシュの後はデザート。

 

 正義実現委員会の委員長、剣先ツルギ。

 ゲヘナ風紀委員会の委員長、空崎ヒナ。

 そしてシャーレの先生。

 

 彼女らを、食う。

 

 考えただけでも心が躍る。

 

 

「さあさあ皆んな。僕らが怨敵。ティーパーティはもう目の前だ。邪魔なカラスどもはここには居ない。君たちはどんな気持ちだい?後少しで害獣どもをこの手で駆除できる。その事実を前にして。僕に聞かせてくれ」

 

 

 しかし、声を上げる者はいない。皆静かに緊張した顔立ちでこちらを見つめるばかり。

 

 だが────

 

 

「──それでいい」

 

「害獣はすぐ耳障りな鳴き声を上げる。躾がされていないからだ。だが今君たちは声をあげなかった。自らが害獣でない事を僕に証明した。なら見せてくれ。その返事を行動で示してくれ」

 

 

 かつん。靴底を鳴らし、進むべき方向へ振り返る。

 

 

「さあ、害獣どもの喉元に杭を打ちつけよう!」

 

 

 

 

「行かせない」

 

 

 

 僕の声に応えるようなその声が、僕の耳に届くと同時に、僕は素早く金槌を取り出し、耳障りな風切り音を放つ飛来物を叩き落とす。

 

 ガンガンガンという金属質で重厚な音と舞い散る火花。そして金槌を通して伝わってくる重い衝撃と後方から聞こえてくる地面を削る音と微かな悲鳴。

 

 明らかに人一人から放たれるにはおかしい破壊力と、その聞き覚えのある声に、僕は自らの口角が自然と上がるのを感じ取っていた。

 

 

「ヒナちゃん!!!」

「…ヒバナ」

 

 

 見上げるような高さのビルの上から大人を一人かついで舞い降りてきたのは見知った顔。待ち望んでいた顔。僕の友達の顔。

 

 空崎ヒナ。そして、先生。

 

 

「あは!ヒナちゃんに先生まで!相変わらず馬鹿げた威力だ!今ので半数は持ってかれちゃったよ!でも……まさかたった二人で僕を止めにきたのかい!?」

「……そう。私は、貴方を止めて、連れて帰る。それが私の仕事だから」

「こんな時にも仕事仕事って、疲れないかい?今は祭りを楽しもうよ!」

「…無駄話は、後にしよう。さっさと終わらせ───

 

「待って!」

 

 

 笑う僕と対照的に、異様なまでの無表情を顔に貼り付けるヒナちゃん。一触即発。そんな状況に割り込んできたのは化粧も何もしていない、珍しくすっぴんの先生だった。よっぽど急いできたんだろうね

 

 

「なーにさ先生。今いいところなんだよ?すっぴんでも可愛いね、とでも褒めて欲しいのかい?」

「ぅ……ふ、ふざけないで。真面目に答えて欲しい。どうして、こんな事をしたの?もし悩みがあったら、私も協力するからこんなことはやめて…」

「…はぁ。なんだいなんだい。君。それはさっき答えただろ?」

「……あの時、私にはあの時ヒバナちゃんが何か隠しているように見えた。だから、正直に言って欲しい。それとも……私じゃ頼りないから?」

「………はぁ、わかったよ。正直に話す」

 

 

 僕は手に持ったネイルガンをしまい、視線を地面に向ける。こんなこと、彼女たちの目を見ていては話せない。

 

 

「僕はね。先生。トリニティが大っ嫌いなんだ。ゲヘナも同じくらい嫌い。反吐が出るほどにね」

 

「どうしてかわかるかい?それは僕がその二つの、底辺を見てきてしまったからだ」

 

「平気で他者を虐げ暴力の限りを尽くすゲヘナ生徒。金で着飾ったドレスの裏で蜘蛛のように糸で巧妙に弱者を絡め取り自尊心を満たすトリニティ生」

 

「一見違うように見えて、本質は全く同じ。どちらも救いようのない害獣だ」

 

「僕はそれが許せなかった!弱者が強者に虐げられる!この現状が!!!」

 

 

 

「……ヒバナ………」

「…そっかヒバナちゃん。わかったよ。私もトリニティのナギサちゃん達にも協力してもらうように頼むから、もうこんなこと…」

 

 

 

「なんてね」

 

 

 

「……え?」

 

 

 ほっとするように、胸に手を添えてこちらに手を伸ばす先生の顔が一転。実に間抜けな顔をしている。

 

 ぷ、あっは。あははははは。

 

 あーおかしい。ほんと、こんな雑な演技。彼女達の目を見て話してたらすぐ笑っちゃうところだった。こんな雑な演技に騙される先生達もこんなわかりやすすぎる演技をする僕自身もおかしすぎる。笑いが止まらない。

 

 

「あー、ホントばっかだなぁ。あははは。なんだいなんだい。僕が何かちゃんとした理由を持って事を起こしたとでも思っているのかい?んなわけないじゃないか。あはは」

「そんな…」

「例えばそのクソみたいな害獣どもの自己満足の現場を見たから?例えば僕の友達がその被害にあったから?例えばその友達が僕のことすらわからないくらいに甚振られていたから?例えば………僕が友達を救うことができなかったから?」

 

「あの時僕にヒナちゃんのような力があったら、あの時の風紀委員長がヒナちゃんだったら。あの時僕に先生のような主人公のように事件を解決する頭脳があったなら、あの時先生がいてくれたなら。そんな後悔から?」

 

 

 

 実に馬鹿馬鹿しい。

 

 

 

「そーんなことあるわけないじゃないか。今は楽しい祭りの時間。そんな陰気な話はやめにしよう!祭りは全力で楽しむのが礼儀ってものさ!」

「ヒバナちゃん、まだ話は───」

「…先生。もう下がって。ヒバナは、私が止める」

 

 

 まだ何か話そうとしている先生を後ろに下がらせてヒナちゃんが前に出る。ヒナちゃんの得物、デストロイヤーを手に持って。

 

 それでいい。

 

 

「ふふ。メインディッシュの前にデザートを食べる形になってしまったけど、まあいい」

「ひ、ヒバナさん!?」

 

 

 バシュバシュバシュ!というガスが噴き出される音と共にネイルガンから射出された何本もの釘がヒナちゃんの初撃を生き残った部下達を壁に拘束する。

 

 

「うん。やっぱり一対一じゃあないとつまらないよね。いや、一対二か?まあ些細なことはいいじゃない」

 

 

 トンットンットンっと地面を軽く蹴って小刻みにジャンプし──

 

 

「じゃあ、始めようか」

 

 

 火花が散る。

 

 

 

 

 

 

「まず狙うのなら、後衛からだよね」

「先生!!」

 

 

 戦華ヒバナの姿が幻覚だったかのように目の前から一瞬にして消えたその次の瞬間、ヒナは先ほどまで何もなかったはずの先生の真横に己の得物を割り込ませ───火花が散った。

 

 ヒナの得物、デストロイヤーに叩き込まれたヒバナの蹴り。

 

 間違いなく先生を狩りに掛かっていたそれは奇跡的に防がれた。

 

 

「あっは!流石ヒナちゃん!君を放っておくのはやっぱ悪手だね!」

 

 

 蹴り抜いたヒバナの足をヒナが掴もうとした次の瞬間には再びその姿は消え、彼女の手は空を切る。幻覚ではない。明らかに彼女はそこにいた。しかし次の瞬間には姿が消えている。

 

 つまり──

 

 

「ちょこまかと…」

「あっははは!遅い遅い遅いなぁ!」

 

 

 ヒバナは目に見えないほどの高速で動いている。あたりの壁を足場に使ってさらにその加速を増してゆく。

 

 ヒナのデストロイヤーが放つ弾丸の雨は悉くが空を切り、反対にヒバナが先生とヒナに向けて放つネイルガンの釘は全てが正確に彼女達を捉えて飛来する。

 

 しかし。

 

 

「先生、隠れて」

「っ!あ、ありがとう」

 

 

 その全てがヒナが展開した翼によって弾かれる。勿論、ヒナ本体を狙った釘も有効打にはならず全て弾かれている。

 

 

「かったいなぁヒナちゃん。君の表情と同じくかちこちだ」

「……そうさせたのは貴方でしょ」

 

 

 距離減衰か、そもそも威力が足りないのか。

 

 当然か。こちらはただのネイルガン。改造が施されているとはいえ所詮はただの工具だ。人殺しの道具じゃない。そして対する彼方はゲヘナ最強で最硬……否、キヴォトス最強と言ってもあながち間違いではないような存在。

 

 

「なら、まずはギアを一段上げるとしよう」

 

 

 壁を削りながらヒバナの影を追う蜂のような銃弾の軍団。しかし、それは一瞬にして彼女の影を見失うこととなる。

 

 ギアが上がった。

 

 彼女の速度がついに空崎ヒナでさえ捉えられない領域に達した。

 

 トットット、という地面を蹴る音だけが聞こえ、

 

 

 

「チェック」

 

 

 真正面。

 

 片手にネイルガン。もう片手には、その速度ゆえに止まって見えるネイルガンから放たれた3本の釘を、ヒナに向けて打ちつけようと振りかぶられた金槌。

 

 殺意がヒナの目の前にまで迫っていた。

 

 

 ───だが。

 

 

「無駄」

 

 

 ヒナの銃口はすでにヒバナを捉えていた。

 

 放たれる一発の銃弾。

 しかしその威力は建物の壁を幾つもの貫くほどの威力。それが向けられた3本の釘を吹き飛ばし、そのままヒバナの脳天を見事捉える。

 

 命中した弾丸は貫くことは無かったものの、衝撃波を放ちヒバナを仰け反らせ、血は流れ、その眼球は白目を剥き───

 

 

 ギョロリとヒナを見つめなおした。

 

 

「……やっぱ正面からじゃ無理か」

 

 

 笑みはそのまま。

 

 

「だが、一切の問題なし」

 

 

 再びヒバナの姿が消える。

 ───彼女の手からこぼれ落ちた二つの球体を残して。

 

 

「っ!手榴弾!?」

「待ってヒナちゃん!」

 

 

 先生の静止も間に合わず、ヒナの放った銃弾が空中で正確にその二つの球体を打ち抜く。と、同時にあたり一面に充満する真っ白な煙。

 

 

 ───スモークグレネード!?

 

 

 気づいた時にはもう遅い。辺りにはすでに不透明な煙が充満しており視界は塞がれた。手榴弾の爆風を警戒して突き飛ばしたことによって先生とも離れてしまった。

 

 

 音を聞き取れ。

 

 

 ヒナは周囲の音に集中する。タンタンタンと絶えず聞こえてくる足音がヒバナが未だ自分と距離を置いて加速を増している事を教えてくれる。

 

 そしてもう一つ。ヒナだけが知っている、ヒバナの音。

 

 彼女のネイルガン。そこにつけられたお揃いのキーホルダーの音がはっきりと彼女の位置をヒナに知らせていた。先ほどの一撃も、それが教えてくれたのだから。

 

 チャリンチャリン

 

 聞こえてる。彼女はまだ様子を───

 

 

(───音が途絶えた!?)

 

 

 音が消えた。

 ここを離れたのか。自分たちを諦めてティーパーティを優先したのか。いや、ありえない。彼女が見せたあの一面からそれは否定できた。なら、どこに行った?

 

 

「………まさか、先生!?」

 

 

 振り返る。先生を突き飛ばしてしまった方向に駆け出そうとして───視界の端に煙を突き破り自身の脇腹に狙いを定められた一本の“杭”が目に入った。

 

 

「安心してよ。僕は一途なんだ」

 

 

 それは彼女、戦華ヒバナの愛銃から放たれたものではなく、彼女が直接手にした釘よりも一回り二回りも大きな杭と呼べる代物。その正体は彼女の記憶の片隅にあった温泉開発部からの押収物。

 

 衝撃を加えることで対象を内部から破壊する、岩盤破壊などに使われる小型起爆杭。

 

 手にはすでにネイルガンは握られていなかった。

 

 機械を使わず杭を打つ。昔ながらのやり方。

 

 

「外はかっちかちだけど、中はどうだろうね」

「しま─────」

 

 

 振り下ろされる金槌と脇腹に当てられた金属質な硬い感触。チェックメイトを下ろされる、その瞬間だった。

 

 

「ヒナちゃん!」

「っ!な、ぁ!?」

 

 

 その狙いがずれ、杭は狙いを外して何もない空中で起爆する。

 

 原因は明らか。勝負を決めるあの瞬間、戦華ヒバナに抱きつくようにタックルをかました先生だった。

 

 おかげで狙いは外れ、ヒバナは先生に抱きつかれたまま体勢を崩した。これでは再び体勢を立て直しヒナの捕捉から逃れるほどの加速を得るのにあまりにも時間がかかりすぎる。

 

 一瞬で勝負がつくこの戦闘においてそれはあまりにも致命的過ぎる隙だった。

 

 

「チェックメイト」

 

 

 向けられた銃口。

 

 放たれた銃弾は迷いなくヒバナの頭部を打ち付け、その意識を容赦なく刈り取った。

 

 

「………ああ、くそ……くやしい、なぁ……」

 

 

 16:04

 戦華ヒバナの捕縛。

 

 トリニティテレビ局占拠テロ事件はこれにて幕を閉じた。

ヒバナは先生に

  • デレない(不屈の精神)
  • デレる(タイトル詐欺)
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