絶対にデレない敵役生徒   作:有機栽培茶

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本編終了後の小話(ある意味こちらが本編)
今後も暇があったり妄想が湧き出てきたら投稿するのでよろしくお願いします。

高評価くれ(挨拶)


小話
1.ヒバナの受難


 

 シャーレの仕事はいつも忙しい。

 

 積み上げられた書類の山。終わる気配のない仕事。さらに追い打ちをかけるように寄せられてくる依頼の手紙と耳障りな着信音。

 

 既視感を覚えざるをえないこの地獄のような光景に包まれ今日も僕はエナジードリンクを飲み干した。

 

 

「…んく……ぷはっ…これの飲み過ぎであの害鳥どもと同じものを授けられたらたまったものじゃない」

 

 

 翼を授ける、なんて売り文句の商品だ。一本目を開けた時は今なら空に飛び立てそうだなんて思えるほど元気が湧いてきたものだが、こうも短時間に何本も飲み干してしまったら体が慣れてしまい、その効能も薄れてしまう。このまま僕の体がこいつに適応して背中からトリニティの奴らのような羽が生えでもしたら僕は即座にそれを引きちぎって手羽先にでもしようと思う。

 

 …ふむ。しかし…そうだな。トリニティの害鳥どもはカスだが、素材に罪はない。奴らの背中に生えているあの白い羽。あれは一体どんな構造なのだろう。焼いたら食えるのだろうか。もし食べれるのなら、あの大きさだ。両手をいっぱいに広げて掴み、口を大きく開けて超巨大な手羽先を丸齧り………

 

 

 

「じゅるり…」

 

 

 

 おっと失礼。

 

 少し正気を失っていた。疲れが蓄積しているのか、仮眠程度じゃ頭がうまく働かなくなってきているようだな。

 

 では改めて自己紹介といこう。

 

 僕の名前は戦華ヒバナ。元ゲヘナ風紀委員副委員長兼ゲヘナ風紀委員第六小隊小隊長にして、シャーレ所属先生のボディーガード兼秘書兼メンタリストを勤めているただの平凡な一生徒だ。

 

 

 何故そんな漢字が詰め詰めな堅苦しく偉そうな感じの役職から下されたかと言えば僕がテロ行為を起こして捕まったからで、何故そんな犯罪者が先生のそばに仕えているかと言えば、このバカが僕の拒絶を無視して権力のゴリ押しでその立場にぶち込んだから。

 

 …こうして文字に起こしてみるとなかなかに意味がわからないな。

 

 

 さて、そんな僕の生活は……実はそこまで大きな変化があったわけじゃない。

 

 所属がゲヘナ風紀委員からシャーレに変わっただけで、書類に追われる日々は変わらないし、これでも罪人故に先生の監視なしに自由行動が取れないという制約がありはするが、もともと仕事に追われ夜くらいしか自由時間がなかったためそれもそこまで気にならない。

 

 数少ない問題点として挙げるのなら先生というストレスの権化が常にそばにいるということと、それなりに癒しになっていた白モッp……ヒナちゃんのいい匂いのする髪をわしゃわしゃできないこと。

 

 とは言え後者はヒナちゃん自身がシャーレに所属してることもあってたまにできるのだけど、何故か僕を見る目が少し変わって、なんだか嫌な予感がするようになったから最近は控えるようになった。

 

 

 そして前者の先生についてだが……これが問題なんだ。

 

 

 

「ヒバナちゃん、おわったよ」

「……そう」

「ん」

「ん?」

「お疲れ様のぎゅーは?」

「逆に僕がすると思う?」

「……だめ?」

「だめ。キモい。大の大人が上目遣いやめろ」

「う…それちょっと私も思ったんだから……おかしいな…ヒバナちゃんはこれでイチコロって聞いたんだけど」

「どこ情報だよ」

 

 

 

 これだ。

 

 これなのだ。

 大の大人のキモい行動に鳥肌が立つ?いちいち仕草が鬱陶しい?違う。そうじゃない。逆にそうであったらよかった、というかそうであるように僕は振る舞っている。

 

 ……皆んなは、僕がいつか言った先生の外見についての言葉を覚えているかい?

 

 

『美人か否かで言えば美人であると肯定され、しかし美女か否かと問われれば少し疑問が残る程度の幼さを残した顔立ち。

 道端を歩けば10人中10人が振り返るとは言わずとも、よくよく見れば魅力的だと気づくその女性』

 

 

 そう、魅力的。

 つまりは可愛いのだ。悔しいが、僕の琴線に触れるほどの可愛さをこのストレスの権化であったはずの先生は有しているのだ。

 

 その存在自体は嫌いだが、顔がいい。顔がいいということは美少女に対して弱い僕への特攻を持つというわけで。

 

 

 

「………頭が痛くなる」

 

 

 

 はっきり言えば、ムラムラする。

 

 

 僕は……自分の自己分析はできる方だと思う。なんで僕が先生のことが嫌いかと言えば、面倒臭いところと……全ての生徒の味方、みんなを助けるのが私の役目、だなんて主人公じみたくさいことを当たり前に言って、主人公みたいな行動をするところだろう。

 

 だから、その容姿が嫌いなわけじゃない。むしろ好きだ。中身が先生でなかったらどうなってたかわからないくらい嗜虐心をそそるいい顔をしてる。

 

 そして僕は親友であった『あの子』と接点を持った理由が顔であったくらいには面食いである。

 

 

 そんな僕に対して無駄に顔がいい先生はアホみたいな距離感で接してくるわけだ。事件以前は話し相手程度の距離に保っていたというのに。

 

 

 ……なぜ、こんな事態になったのか。

 

 

 

「……あれは、先生だぞ?」

 

 

 

 そう…あれはいつも通り仕事に追われ、僕が疲れのあまりそのままシャーレのソファーで寝ていた日のことだ。

 

 今思えば、息苦しいからと言って胸元のボタンも開けて、先生がいることも忘れて非常にだらしなく無防備な状態で寝ていた僕も悪いと思うのだが……まあ、聞いてほしい。

 

 

 無駄に柔らかいソファーの上ですやすやと気持ちよく眠っていたら何やら誰かが近づいてくる気配がする。昔やんちゃしていていろんな不良から狙われていた影響でそう言うものに敏感だった僕は半分眠った状態にありながらその様子を観察していた。

 

 

『あれ、ヒバナちゃん寝ちゃったんだ』

 

 

 頭の上から聞こえてくる声。先生のものだとわかる。

 

 なんの用だと思うも、彼女が僕を起こすようなそぶりは見せないし、そもそも何か動いた様子もない。ただただ静かに僕の寝顔を見ているようだった。

 

 なんのつもりだ、なんて不審に思っていたら動きがあった。

 

 

『……』

 

 

 ほっぺをぷにぷに。うん、まあ、確かに寝ている人がいればついついやってしまうような行動だと思う。普段他人のほっぺを触る機会なんてないだろうしね。わかる、わかるにはわかるのだけど嫌いな奴にやられるのはあまりいい気分ではない。

 

 そろそろやめさせるか、と思ったところで先生は自分からほっぺつんつんをやめた。

 

 

『……ねてる、よね…?』

 

 

 すると、ギシリ。ソファーの音が鳴った。

 

 どうやら先生が僕にまたがるようにソファーに乗ってきたようだ。言うなれば馬乗り。僕が昔不良たち相手によくやった姿勢だ。

 

 先生に限って変なことはしないだろうけれど流石にそろそろ起きよう。そう思い目を薄めに開けたところでまたまた僕の行動を妨げるよう、先に先生が動いた。

 

 

 ぽすん

 

 

 ちょうど胸辺りへの圧迫感。暖かい体温が、ちょうど晒された僕の肌を通して伝わってくる。吐息が肌に当たる。普段ならわからない相手の心拍までも伝わってくる。

 

 視界に映るのはちょうど胸と胸の間に収まった先生の柔らかい髪が生えた頭頂部。

 

 詰まるところ、先生は僕の胸に顔を埋めていた。

 

 

 

「(………は?)」

 

 

 

 思わず頭が真っ白になってしまった。

 

 

 

『……ヒバナちゃん』

 

 

 

 先生を名乗る者の、先生としてあるまじき行動。

 

 確かに、イオリちゃんの足を舐めたことがあったということは知っているし、なぜか首輪をつけたアコがその手綱を先生に持たせて謎のプレイをしている現場も偶然目撃してしまったことはある。

 

 だが前者は先生がヒナちゃんに会うため、イオリの無茶振りを真に受けてやってしまったということは知っているし、後者は……まあ、両者合意の上やっているように見えたからまだ良いとしよう。

 

 

 だが、だがこれはなんだ。年頃の女の子の服のはだけた胸元に顔を埋めて抱きしめるという明らかなセクハラ。先生が生徒にしていいことではないだろう。

 

 だから流石にダメだと思った僕は先生の背中を掴んでひっぺがした。

 

 別にそのままいい雰囲気にー…なんてことはない。僕は先生のことが好きじゃないし、なんなら嫌いだ。それにその時はそういう雰囲気よりも驚愕や混乱といった面が強かったためいくら先生の顔が良くてもそういう考えには至らなかった。

 

 

 

『え……あ、ひ、ヒバナちゃん、起きて……い、いや!ち、違うのこれは!』

 

 

 

 そこからはめんどくさかった。とくに赤面してあたふた慌てる先生を落ち着けるのは大変だった。別にどうしてこんなことをしたのかだとかそういうのは聞かなかった。先生の顔を見ればわかったから。

 

 久しぶりに正面から見た先生の顔は深い隈ができて疲労が明らかに顔に表れていた。いつかの…僕らが出会った時と似たような顔をしていたから。

 

 多分その時の……先生の苦しい言い訳を聞き流している時の僕はすっごい冷たい顔をしていたんだと思う。

 目に見えるように先生のテンションは落ち込んでいき、顔色は赤から青を通り越して白に。

 

 

 

『あ…ぅ……ごめんなさい……嫌わないで』

 

 

 

 ついには涙をポロポロ流してそんなことを言ってきた。もとより君のことは嫌っている、だなんて追い討ちに近いツッコミはしなかった。確かに僕は先生のことが嫌いだが、先生が悲しんでいるのを見て愉悦に浸るような性格はしてないから。たとえ相手が嫌いな奴でも(害獣でないのなら)悲しんでいるのを見れば人並みに同情する良心は持ち合わせていた。

 

 だからだろう。一瞬の気の迷いに流されて僕はとんでもない間違いを犯してしまった。

 

 

 

『はぁ……いい加減顔をあげてくれないか。別に僕は気にしてないから。ちょっと驚いただけで、先生が僕の体に抱きつこうがどーでもいいんだよ』

 

 

 

 言ってしまったその言葉。否定でも肯定でもないその言葉を先生は実に都合よく受け取ってくれたんだろう。抱きつこうが気にしない。つまりは抱きついていいということだと解釈したんだろうね。

 

 

 その日から、先生から僕へのスキンシップは増えた。

 

 

 隙さえあれば抱きついてきたり、勝手に膝を枕にして寝たり、僕が寝ている隣に滑り込んできたり。はっきりと断ればやめてくれたものの明らかにその頻度は増えた。

 

 

 そして……その結果がこれだ。

 

 

 僕だって思春期の女子高生だ。さらに僕はどっちかと言えばレズだ。そして相手の先生は大人の女性であり、ヒナちゃんの様なヨシヨシしてあげたくなるような可愛さではなく、相手を誘うタイプの可愛さを纏っている。

 

 故にたとえ相手が嫌っている先生だろうと、これだけのスキンシップがあれば意識するなという方が無理というもの。

 

 先生ともあろうものが、わかっていないのだろうか。

 間違いは、起こさない。起こしてしまった時が僕の死に時だ。

 

 

 故に耐える。限界ギリギリの理性で耐えるんだ。

 

 

 

「ちょっとごめんね」

「……あ゛?」

「んー……癒される。ヒバナちゃんエネルギー…」

「………」

 

 

 

 後ろから抱きついて僕の首元に顔を埋める先生。

 今日も僕の受難は続く。




先生
ヒバナが自分のことを嫌っているのを知っているけど、自分が本当に困っていたり限界だったりすると助けてくれる優しさに甘えてしまっている。ダメだとはわかっているけど、薬物のように依存してしまってやめられない。ヒバナ以外にも事情を話せばきっと甘えさせてくれる子はいるだろうけど先生としての意識がそれを邪魔してヒバナ以外に甘えられない。むしろヒバナじゃなきゃダメという状態になっている。またヒバナが自分のことを嫌っていることを知っているため、自分のことを好いてくれている生徒にしたら間違いを犯してしまうようなことも彼女なら大丈夫と思っててアウトに近いセーフな行動をしている。寝てるヒバナに抱きつくとかいうアウトに近い行動をしているが、これもあくまで癒されたい故の甘えであり、そういう気持ちからの行為ではないのでエ駄死は回避される。

ヒバナ
先生は嫌い。でも顔は好みだから非常に困っている。先生が嫌いな理由は『あの子の時は助けてくれなかったくせにヒーローぶった振る舞いをするお前が嫌い』。どちらかと言えばレズなため、最近距離感の壊れている先生に困っている。ヒナちゃんにも少し嫌な予感を覚えているため以前より少し距離をとっている。ちなみに彼女は恋愛対象が同性だが、ノーマルな子たちは一体どんな男性が好みなのかと疑問に思っている。まさかワンちゃんやロボットに発情してるんじゃないだろうな、とキヴォトスの触れてはいけない部分に触れそうになっている。あと情報を追加するのなら、ヒバナはどちらかと言えばSである。

ヒナ
心を許せる友達が捕まった上シャーレにいってしまい会う機会が少なくなってシナっている。またヒバナが事件時に自分に対する恨み言に近いことを言っており、さらに似たようなことを言われた先生に対してヒバナが『嫌い』と言っていることから自分も本当は嫌われてるんじゃないかと不安になっている。しかし事実を言葉として聞くのは怖いためシャーレに行くたびにヒバナを観察したり嫌われてないか話す際によくヒバナの目を見つめるようになった。そのせいでヒバナには不気味がられ距離を取られている。
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