絶対にデレない敵役生徒   作:有機栽培茶

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いやあ…その…最近疲れちゃってぇ…
シリアスさんは退場していただきました。今の私に長編は荷が重すぎる。それに加えシリアスなんて混ぜたら胃もたれしてしまいます。

あ、いつも誤字報告ありがとうございます。寝る前投稿だったり、一発で書いて即投稿が多い圧倒的手抜き作業なので助かってます()


4.おら!催眠!

 

 その日、先生はとあるものをエンジニア部から受け取っていた。

 

 常にロマンを追い求め、面白いからと言って考えついたものを、その持ち前の天才的な技術力を使って片っ端から作り上げる変人の集い。ミレニアムのエンジニア部。例としてあげるのならば、常人であれば持ち上げられないアリスのレールガンを作り上げたのもこの部活。

 

 そんな彼女たちが今回作り上げ、せっかくだからと言って先生にプレゼントしたのは一枚の金属板……つまりスマホだった。

 

 一見何の変哲もないスマホ。背面に描かれたミレニアムのロゴが無ければ市販のものと見分けがつかないほど普通のスマホ。

 

 

 だがこれがとんでも無い危険物だということを先生は知っている。

 

 

「……これ、かな?」

 

 

 恐る恐る開いたのは一つのアプリ。ぐるぐると渦巻く暗いピンクと紫色の怪しげなアイコン。それ以外は市販のものをそのまま流用しているのか普通のスマホと特に変わりはない。

 

 だがこのアプリこそエンジニア部の技術力の結晶であり彼女たちの変態的なまでの発明意欲が生んだ叡智の結晶……否。Hの結晶。

 

 その名も────

 

 

「──催眠アプリ…!!!」

 

 

 おそらく変態紳士諸君ならば誰もが知っているであろう、ウ=ス異本に登場する架空のアプリ。いわゆるご都合主義のデウスエクス・マキナ的存在であり、その使用用途は言葉にすることも憚られるようなことばかり。某ピンク色の小さなトリニティ生が聞いたら即刻死刑宣告間違いなしな叡智な代物。

 

 

「ごくり…」

 

 

 普通ならば、ただのおもちゃ。見掛け倒しなだけの偽物だと一笑したであろうくだらない妄想の産物。だが、これを作り上げたものがエンジニア部となれば話は変わる。

 

 ───彼女たちならやりかねない。

 

 先生はこれを受け取った時彼女たちにこのようなものは二度と作らないように注意し、このスマホ以外には現物が無いことをしっかりと確認した上で懐にしまった。

 

 本当なら受け取ったその場で地面に叩きつけて壊すべきだった。先生として…“正しい大人”としてはそれがすべき行動だったように思える。

 

 だが、彼女も人間だ。

 

 先生として振る舞わねばという強迫観念を抱えながらも、欲は確かに存在しているのだ。

 

 

「…少しだけ…すこし、試すだけ……」

 

 

 彼女は今にも胸を突き破りそうなほど鼓動する心臓を抑えながら執務室のドアを開け放つ。

 

 

「ん……遅かったじゃないか。重役出勤とは良い度胸だね」

 

 

 そこにはいつも通りの書類の山と───ヒバナちゃん。

 

 

「っ…ご、ごめんね。少し、用事があって」

「あっそ……まさかソレ。新しいスマホでも買いに行って遅れたのかい?この僕が君の代わりに書類を片付けている間に?」

「そ、それは……」

 

 

 ジトぉ…とゴミを見るような目で見つめられたことでゾクゾクと不思議な感覚に襲われるが、好都合だった。彼女がコレに興味を持ってくれた。

 

 

「で、でもさ!コレ、みてよ。すごいんだよ?」

「はぁ?何が凄いって…」

 

 

 今だ。

 

 先生は彼女にアプリを起動した状態の画面を見せた。

 

 

「…?なんだいこれ。ただグルグルとまわってる、だ…け……」

 

 

 ヒバナは無警戒にそれを見つめ……そして直ぐに変化は現れた。

 怪訝そうな目つきは見開かれ目線はその画面に固定され、表情筋からは力が抜けてだらしなく口を開けて涎を垂らしている。

 

 まさに薄い本で見るような催眠状態にかかったといった様子だった。

 

 

「……かかった…の、かな?」

 

 

 試しに頬を触ってみる。普段なら嫌な顔をされて拒絶される行為だが───ヒバナは反応を示さない。スマホの代わりに先生の顔をまっすぐボーっと見つめるだけだ。

 

 

「っ…ひ、ヒバナちゃん。右手を挙げてくれる?」

「……」

 

 

 恐る恐る先生がヒバナに命じれば───彼女は素直にそれに従った。平常時であればあり得ないその行動は、彼女が催眠にかかっていることを証明していた。

 

 

「これは……ごくり」

 

 

 普通ならばここで止めるべきだった。このアプリの真偽を確かめた時点で、それ以上はやってはいけないことだった。

 

 だが、そうだと分かっていても欲望は止められない。

 

 

「……ヒバナちゃん。先生を抱きしめて」

「……」

 

 

 ぎゅう

 

 ヒバナから先生へのアプローチ。先生に対して塩対応なヒバナが普段ならば絶対に取ることはない行動だったが、それもこのアプリさえあれば容易にできてしまう。

 

 

「あぅ……じゃ、じゃあ……『先生大好き』って、言ってくれる…?」

「……」

 

 

「先生、大好き」

 

 

 だから、こんなことも容易に───

 

 

「……違う」

 

 

 先生は抱きしめてくるヒバナを剥がして離れる。ヒバナは変わらずじっと先生を見つめ次の命令を待つばかり。

 

 

「ヒバナちゃんは、私のいうことなんて聞かないし、私に大好きなんて言わないし、そんなまっすぐ見つめない。ヒバナちゃんは私のことが嫌いで、私の言葉なんて無視して、私を冷たい目で見下すの」

 

「ヒバナちゃんは私に優しくしない」

 

「ヒバナちゃんは私に大好きなんて言わない!」

 

 

 ──その様子はまさに解釈違いを起こして苦しむオタクの姿そのものだった。

 

 

「そうだよ。当たり前だけど、こんな、私の言いなりになるヒバナちゃんがみたかったわけじゃない……こんなの、ただの人形だよ」

「……」

「私が求めていたのはこんな従順なヒバナちゃんじゃない!もっと…こう…私をゴミを見るのような目で私を見るいつものヒバナちゃんなんだ!」

「……」

 

 

 普段からこのようなことを言っているのならゴミを見るような目で見つめあられてもおかしくはない。

 

 

「っ!そ、そうだ!なら、催眠で……ヒバナちゃん、いつもみたいに私を罵って!いつもみたいに私をゴミを見るような目で見て!畜生扱いして!」

「……」

 

 

 それなら催眠を解除すれば良いのでは?なんて野暮なことを聞くものはこの場にいなかった。

 

 

「近づかないでくれないかい蛆虫。君と同じ部屋にいるだけでも吐き気がするというのに。全くなんで僕がこんな駄犬の世話をしなければならないんだ」

「そ、そう!その調子!」

「何鼻息を荒くしているんだい気持ち悪い。これじゃあまるで本物の犬じゃないか。ほら、四つん這いになりなよ。駄犬。畜生が人間の真似事なんてするなよ」

「ワン!」

「あははは!本当にやったよ!人間としてのプライドとかないのかい!?あはは!なら次にすることはわかるよね?ほら、犬ならご主人様の足を舐めて服従の意を示さなきゃ」

「ワン!」

「くく…よしよし。良い子だ。人間としては失格だけど犬としてはなかなか良いじゃないか。このまま首輪をはめて僕の犬として飼ってあげても───」

「……違う」

「あ?」

「ヒバナちゃんはこんな“優しく”ない!」

 

 

 ヒバナちゃんなら散々私で遊んだ後あっさり捨てるんだ。私みたいなのを飼ったりしない。そんななかなかにひどい事を言えばヒバナはその意思を汲み取ったのか行動を止めた。

 

 そして先生は気づく。この催眠は相手の言ったことはちゃんと聞くものの、そこには命令主の主観や欲求が混ざってしまい、これでは自分の本当にみたいヒバナを見ることはできないと。『自分の言いなりになんてならない、自分に優しく接することのないヒバナちゃん』と『自分をデレデレに甘やかしてくれる王子様なヒバナちゃん』という両立することのない二つのイメージがある故に、催眠で望む姿を見ることはできないことに。

 

 催眠でいいなりにしてさせる膝枕より、嫌な顔をされながらも引き剥がすのは面倒だとされて勝手にさせてもらえる膝枕の方が良かったのだと。

 

 

「やっぱり催眠なんてよくないよね…」

「……」

「でもこのまま終わるのは勿体無いよね!」

「……」

 

 

 気のせいかジト目で見られた気がした。

 

 しかしこのまま終わらせるのは勿体無い。もしかしたら一度使ってしまったらもう効かないかもしれないし、もうヒバナちゃんが素直に見てくれないかもしれない。

 

 

「……そうだ」

 

 

 素直、そう素直だ。

 

 私はまだ本当のヒバナちゃんを見たことがないのかもしれない。いや、ああやって嫌悪感丸出しに罵ってくるのは本音だろうけれど。

 

 でもそれじゃない。

 

 彼女が寝ている最中、夢の中の“あの子”に対して見せるあの儚げな顔、声……そして心。私に対しては決して見せたことのない、うちに隠れた本当のヒバナちゃん。それを見せて欲しかった。

 

 

「…よし」

 

 

 そうと決めれば覚悟を決めてスマホを握る。そして───

 

 

「ヒバナちゃん…私に、貴方の本音を見せてください!」

 

 

 ──萌え萌えキュン!!…なんて掛け声はつけなかったがそれくらいの勢いでスマホを向けた。

 

 すると変化は直ぐに現れた。

 

 

「っ……」

 

 

 無表情だったヒバナちゃんの表情が少し驚いたような顔に変わり────

 

 

「……うぅ」

「ぇ!?」

 

 

 ポロポロと涙を両目から溢し始めた。

 

 

「ヒバナちゃん!?」

「…こもりに…会いたい…」

「あ……」

 

 

 ───こもり、こもり、コモリ…。ヒバナちゃんが寝ている時にこぼした“あの子”の名前。

 

 

「…謝りたい…俺が、守らなきゃ……でも、できなくて…失敗して…俺が、俺…俺の、せいで…うぅ…グス……ぅあ…」

「ひ、ヒバナちゃ」

「…なんで、俺にはできなかったの…?ヒナちゃんなら、きっとできた……アンタだって……でも、グス……俺は……俺が、弱いから…俺が、バカだから……なにも、何もできない……」

「……ヒバナちゃん…」

「俺じゃ…ダメだった…」

 

 

 それはまさに普段の彼女なら決して見せることのない”本音“であった。

 

 かっこ悪く泣いて悔やんで自責の念に駆られる。

 

 

 その姿は彼女もまた自身が守り支えるべき生徒の一人だということを理解させるには十分すぎた。

 

 

「……」

 

 

 私が、彼女を助けないと。心から、“先生”として、“私”としてそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んぅ?寝て、た…?」

 

 

 瞼を擦りながら目を覚ます。

 寝る前の記憶が思い出せないが、いつの間にか寝ていたみたいだ。妙な倦怠感が体を支配している。書類仕事をしていたはずなのにソファーの上に毛布をかけられ寝かされていた。

 

 

「はぁ…誰かは知らないけど起こしてくれるだけでよかったのに………ん?」

 

 

 モゾリとその毛布が動いた気がした。

 嫌な予感がしたため思いっきり剥がしてみれば案の定そこには僕にひっつき虫が如く張り付いた先生が。

 

 

「起きろ気持ち悪い」

「いったぁ!?」

 

 

 気持ち悪かったので思いっきり蹴飛ばした。

 

 

「いてて…あ、ヒバナちゃん。おはよ」

「おはよじゃ……まあいいや。もうこんな時間だ。先生、書類仕事はやってくれたのかい?」

「あ」

「あ、じゃないが。寝ていた僕も僕だが、本来僕はただの補助であれは君一人でやるべき仕事なんだぞ」

「えへへ…ごめんごめん」

「はぁ……さっさと終わらせよう。君と同じ部屋の空気を1秒でも吸っていたくない」

 

 

 本当なら今直ぐ逃げ出したいところだが、それでヴァルキューレにまた追われる立場に、用は害獣に落ちるのは割に合わない。

 

 

「さっさと終わらせるぞ」

「…ねえ、ヒバナちゃん」

「ああ?」

 

「何か、困ったことがあったらいつでも“先生”を頼ってくれても良いからね。私はいつだってヒバナちゃん(生徒)の味方だから」

 

「………」

 

 

 

「ならさっさとこの積み上げられた書類の山を片して欲しいんだけど」

 

 

 変に真剣な顔をして臭いことを言う先生を軽くあしらって席に着く。さっさと終わらせよう。

 

 何があったか知らないが、本当にムカつくやつだ。

 

 僕にはそうあってほしくない(先生として接してほしくない)と思っているにも関わらずそんなことを言う。

 

 

 これだから僕は君のことが気に食わないんだ。




ヒバナ→先生
ナヨナヨしていて気に食わない。先生の実力は認めているが彼女自身を絶対に認めたくないと思っている。なんであんな奴が、と言う嫉妬の思いが強い。また彼女が自分の望む力を持っているにも関わらず“先生として扱ってほしくない”とソレを否定し甘ったれたことを言っているから嫌い。けれど今回のように『私を“先生”として頼ってくれて良いよ!』って無理して言われるのもまたムカつく。多分全部投げ出して赤ちゃん化するか、逆に全部背負い込んで先生として徹底するかなどどちらかに徹底しても彼女がデレることはない。

ただし、嫌ってはいるが抱きついたり勝手に膝枕させられたり、なんならおっぱいを揉まれても無視で済ますあたりだいぶ甘い。やりすぎたら殴られるが。おそらく『はぁ…君はほんと救えないクズだね』とか言いながらもパチンコ代を出してくれる見捨てることは出来ないタイプ。


コモリ
未だ何をしているか未定だが、前作ルートだった場合今頃「アル様!偽造欠席届の生産ラインの確立に成功しました!」とかやってる。
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