絶対にデレない敵役生徒   作:有機栽培茶

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高評価お気に入り登録よろしくお願いします(挨拶)
過去おじ可愛すぎませんか?????????
あとユメ先輩でっっっっっっっっっっk
ネタバレになるので言えませんが新キャラが推しになりました。
読んでない人はぜひ読んでください。


2.焼け落ちたオペラカーテン

 

 エデン条約。

 

 ゲヘナとトリニティ間を結ぶ平和条約。

 あり得るはずのない楽園を──エデンを作り上げる条約。

 

 それが締結されるその時が、刻一刻と迫ってきていた。

 

 向かい合うように掲げられたゲヘナとトリニティの旗が風に靡かれはためく。水と油、悪魔と天使。決して混ざり合うことのない二つの学校が、今その手を取り合う様をスマホに映る配信画面は映し出そうとしていた。溢れかえる野次馬に殺到する報道陣。そしてエデン条約を結ぶ場だというのに互いに睨み合って一触即発の雰囲気を醸し出すゲヘナ生とトリニティ生。

 

 場所は古聖堂。かつてトリニティにおける第一回公会議が行われ、そこで定められた戒律の守護者である『ユスティナ聖徒会』が守り続けてきた伝統ある地だそうな。

 

 僕にはもはや興味のない話ではあるが、そのような伝統のある場所で犬猿の仲であったゲヘナと平和条約を結ぶことで、それを絶対的なものであるとアピールすることが目的なのか。もしくはただ立派で見栄えの良い場所で行った方がかっこいいという考えか。

 

 はたまた何か別の企みがあるのか。

 

 

「圧巻だね」

 

 

 それを僕はコーヒーを片手に1人シャーレの屋上でそれを眺めていた。

 先生がシャーレに帰ってきたあの時から、しばらくの時がたった。その間、エデン条約を妨害し台無しにすると僕に豪語してみせた者たちからは音沙汰もなかった。特に何かニュースになるような問題が起こることもなかったし、エデン条約に深く関わることとなった先生も特に変わった様子は見せなかった。そんないつも通りの日々。

 

 日和ったか?いいや、違う。

 僕にはわかる。なぜか?

 

 それは勿論、()()()()()()()からだ。

 

 ()()()両校の警戒がMAXな今現状わざわざ事を起こして地雷原に突っ込むような真似はしない。

 ()()()今は静かにただ耐え忍ぶのが正解だ。

 

 そう考える。

 そしてだからこそ、実行するのなら調印式の瞬間である。

 

 そう確信を持てる。

 

 

「アイツらは僕だ」

 

 

 トリニティに……そしてゲヘナに対して絶対的な敵意を、悪意を持っている。対峙したからこそわかる。その目を見たからこそわかる。彼女たちが何者かは知らない。どんな過去があったのかも、知らない。

 

 だからこそ。そんな彼女がこの、()()()無理であると確信したこの瞬間に、僕の考えを超えた方法を用いて破壊するのか。楽しみで仕方がない。

 

 少なくとも僕では無理だ。いくら戦力を集めようとも、あそこに集まった多くの生徒達。さらにツルギにヒナという両校の最高戦力……そして先生を相手に勝つ方法は、思い浮かばない。

 

 

『両学園の主要人物が次々と集まってきています!』

 

 

 アナウンサーの少々耳障りなくらい大きく興奮した声がスピーカーから響く。

 見ればトリニティのティーパーティのポスト、桐藤ナギサが古聖堂に到着した様子。そしてゲヘナの風紀委員長……ヒナちゃんももうすぐ到着すると。そしてその上空には大きな巨体を晒す万魔殿の飛行船。

 

 なるほど、確かに彼女が興奮するのもわかる。かつて両学園の大物がこうも揃ったことはなかっただろう。そして、エデン条約の締結などという奇跡の瞬間をめにすることになる───と思っているのだから仕方のないことだろう。

 

 

「……いや、まて。集まる…?」

 

 

 その一言が喉元に引っかかった。名もしれぬあの反乱組織の彼女達。彼女達がどうあの結集した圧倒的な戦力を打ち破るのかと考えていたが……なにも正面から馬鹿正直に戦うわけがない。

 結集。それは言い換えるのなら戦力をその一箇所に集めてしまったことに他ならない。

 

 もしも、もしもの話だ。もしも……古聖堂一帯を一掃できるほどの……多くのものに致命的ダメージを与えられる兵器があったのなら。それは今この瞬間を圧倒的チャンスに変えることができる。

 

 だが、そんなものは夢物語だ。一般的に出回っている戦車の一撃でも良くて気絶、下手すればかすり傷で済んでしまうこのキヴォトスで……あれほどの大勢を、しかもゲヘナにおける最強格であるヒナちゃんにある程度ダメージを与えられる兵器など────

 

 

「……マジか」

 

 

 鼓膜が破けるほどの大きな風切り音。そして吹き抜けていく風と───僕の上空を飛び去っていった巨大な影。

 

 

 鳴り響くはずの、楽園の始まりを告げる鐘の音は、爆音と悲鳴によってかき消されることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……きりがありませんね。この者たちは、一体……?」

 

 

 エデン条約。その調印式。

 補修授業部のみんなや、ナギサちゃん達の頑張りもあってようやく辿り着くことのできた楽園を作り上げるための約束事を取り付ける場。

 

 それは、襲撃者───アリウス生達の妨害によって混乱に陥っていた。

 

 古聖堂に直撃した巡航ミサイルは全てを破壊し、ゲヘナのマコトちゃん達が乗っているはずの飛行船も炎上して地に落ちた。崩壊した古聖堂からはアリウスの生徒たちに幽霊のようなユスティナ聖徒会……敵が現れ、あたり一体は悲鳴と硝煙に満ち溢れた。

 

 

「あ、あぁ……」

 

 

 いつも私を銃弾やさまざまな脅威から守ってくれていたアロナは巡航ミサイルの一撃でその力を使い果たしてしまった。生徒のみんなも、私を守ってくれているけれど、圧倒的な数の敵に押されている。

 

 

「先生!!」

「っ!……ひっ」

 

 

 銃弾が、頬をかすった。

 燃えるように痛むその痕をなぞれば目の眩むほど真っ赤な血液が手に付着する。

 

 ───傷。

 

 キヴォトス人ならば『痛っ!』で済む程度の銃撃が、ヘイローを持たない私には致命傷になりかねない。あの銃弾が一撃でも頭や胸に……いや、身体のどこでもいい。当たりどころが悪かったら、私は───

 

 

「……し、ぬ……?」

「先生!?」

 

 

 足から力が抜けて、私は膝から地面に崩れ落ちる。

 

 視界は歪み、揺れ、震え、そして色は消え失せて、全てのものが白黒に見える。

 

 恐怖。

 

 死という存在が、まるで自分のすぐ真横に腰掛けてきたように、すぅっと体温が抜け落ちていくように感じる。寒い。寒くて寒くて寒くて、そして何より恐ろしい。

 

 

「しっかりしてください先生!」

 

 

 死。それは生きている限り誰にでも訪れる事象であり、そして誰にとっても恐るべき物だ。普通ならば誰かのためにその命を危険に晒すなんて、できるわけがない。誰だって自分の命が一番。そのはずだ。そのはずなんだ。だから、私がこうして動けないのも、生徒たちに戦わせて何もできないのも、何もかも。全部仕方ないことなんだ。仕方ないことなんだよ。そのはず……そのはずなんだ……!

 

 

『先生ならどうする?』

 

 

 タブレット共に握りしめた“カード”からそんな問いが聞こえた気がした。気のせいだ。わかっている。私は“先生”じゃない。“先生”にはならない。私は私なんだ。それ以外の何者でもないし、成りたくもない。自分だけは、私のものでありたい。

 

 

『そんな我儘を言っている場合ではないんじゃない?生徒を、子供を守るために大人に……先生になる時が来たんだよ』

 

 

 

「……いや、だ…」

「先生!」

 

 

 私はまだ……“私”でありたい。

 

 

「誰か……お願いだから……私を……」

 

 

 頼られるべき先生としては失格の、私自身の言葉が漏れ出そうになったその時だった。

 

 

「先生!!こっち!」

 

 

「……ヒナ、ちゃん…?」

「ゲヘナの風紀委員長!?」

 

 

 聞き慣れた声。見上げればヒナちゃんが血だらけになりながらこちらに手を伸ばしていた。

 

 

「正義実現委員会、先生をこっちに!今は時間がない!」

「っ……わかりました。先生、私たちがここで敵を止めます。あとはあの風紀委員長が何とかしますから、急いでください!」

「み、みんなは……!?」

「…私たちは先生の退路を守ります。どうか、先生は行ってください」

 

 

 逡巡。彼女達をこの戦地に……死と隣り合わせのこの場所に置き去りにしていいのかという良心の葛藤。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「先生!!」

 

 

 けれどそれでも、ヒナちゃんの声と、そして死からの恐怖によって足を動かす。ジャリ、ジャリ、とひび割れた元は古聖堂の立派な石畳の床だった瓦礫の山を、駆け上がってゆき────

 

 

『縺。縺上o螟ァ譏守・』

 

 

 ───目があった。

 幽鬼のようにゆらめくユスティナ聖徒会のガスマスクの、その向こう。無機質でまるで死人のような───しかし明確な敵意を感じさせる瞳と。

 

 

「っあ……」

 

 

 足が止まる。止まってしまった。

 

 あたり一面で響き渡っているはずなのに、たった一発。異様に目立つ発砲音が耳に届く。そして同時に感じる脇腹の熱。焼けた鉄を押し付けられるかのような、熱。

 

 手で触れる。ドロリとした感触と、そしてちょうど自分の体温よりも少し暖かい真っ赤な液体、血液が悍ましいほどその熱源から流れ出ていることに気づく。

 

 声が出ない。撃たれたのだという事実に気づくと共に襲いかかってきた激痛で、うずくまることもできず地面に倒れ伏す。

 

 

「先生────っあ!?」

「彼女の言っていた先生は排除した。あとは空崎ヒナだけだ。瀕死だからと言って油断するな」

 

 

 ヒナの悲鳴に似た呼び声ももう聞こえない。

 

 耳鳴りがする。うるさかったはずの周りはそれと反比例して静かになってゆく。意識が遠のき、視界が掠れてゆく。死ぬことに対する恐怖すら抱けないほど、意識が暗闇に包まれかけた、その時だった。

 

 私の耳は、確かにその声を拾った。

 

 

「やあ。君というものがいながら、随分と酷い有様じゃないか」

「……ひば、な…ちゃん……?」

 

 

 残る余力を振り絞って瞼を持ち上げれば、そこには想像した通りの白い、私のとっての神様がそこにいた。彼女がこんなところにいるはずもないのに。夢か幻か、はたまた天国からのお迎えが彼女の姿を模しているのか。

 

 

「助けが必要かい?先生」

 

 

 それでもよかった。私はそれに手を伸ばして───

 

 

助けて

 

 

 

 弧を描く彼女の口元。

 それが私の意識が暗闇に飲まれる最後に見た光景だった。




ブルーアーカイブって先生が素敵すぎて大体なんとかなっちゃうんですよね。んもう先生好き。でもそれだと今作で私の目指しているエンドに行けないのです。そういう経緯でこのメンタルクソ雑魚先生が生まれました。

シャーレセンセイモドキ
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