もう何があろうと私はこの物語を走り抜けると決めた…!だから誰か私の課題を代わりにやってください。
「───…ってわけなんだけど」
「どういうわけなんだい!?」
わけがわからない!!と僕は思わず大声を出して頭を抱えた。
ああ……そうだな。僕だ。戦華ヒバナだ。聞いてくれみんな。こいつが……このバカが、今なんて言ったと思う?
「アリウススクワッドを、助ける……だぁ!?」
「ひぃ…!?」
ふざけるのも大概にしろと僕は眉間の皺を揉む。冗談をつくにしてももう少し面白いものがあっただろう。もしこれを本気で面白いと思っているのならそれはセンスを疑うレベルだ。
「おいおいおいおい!ついにボケたのかい!?あの時の後遺症でも残ってんのかい!?アリウススクワッドを、こいつらを助ける!?君さぁ!こいつらが何したかわかってて言ってるのかい!?」
「ひ、ひぃぃ!?」
さっきからプルプル震えてた水色の頭を帽子ごと鷲掴みにしてグイッと持ち上げる。そうこいつら。アリウススクワッドが何をしたのかまさか忘れたとは言わせない。
古聖堂にミサイルぶち込んで変な技術を使って化け物軍団呼び出してゲヘナ及びトリニティ両校に大ダメージを与えてあのエデン条約を白紙に戻した大犯罪者。僕が言えたことじゃないが救いようのない害獣どもだぞこいつらは!?
「…先生だからね」
「───はぁ!?」
突然何を言い出すのかと思ったら…!
「…まさかこいつらも生徒だからとか言い出すんじゃないだろうな!?」
「そのまさかだよ」
「………ふざけるのも…」
「ふざけてないよ。逆に効くけど、ヒバナはなんでさっきヒヨリを助けたの?」
ヒヨリ?と一瞬疑問に思うが、流れ的に今僕が鷲掴みにしている泣き虫のことだと気づく。
「それは……たとえ犯罪者だとしても、シャーレ所属として、元風紀委員として私刑は見逃せない。殺人沙汰となればもちろんのこと」
「それと同じだよ」
「は?」
「私も、“先生”としてたとえ犯罪者だろうと困っている生徒がいたら助けるのは当たり前のことなんだよ」
心が揺らぐ。この馬鹿め、普段はただのだらしないバカのくせに…調子が狂う。だが僕は納得できなかった。今まで散々“先生”であることを嫌がっていたくせに。だが……だからと言って自分を撃った相手を進んで助ける?んなバカな。そんなことをするのは
まさかあの時の出来事を忘れたんじゃないだろうな。自分は死なないとでも思っているんじゃないのか?そう口にしようとして……それを飲み込んだ。
「……は、はは」
小さく震える握り締められた拳。よくよく見れば足も少し震えている。瞳は潤い恐怖に満ちている。なるほど。強がりめ。
本当は隣に立っている“生徒”もこれから向かう先も怖くて怖くて仕方ないくせにどうしてかそこに立っている。ただの偽善か?彼女たちの境遇に哀れみでも抱いたか?先生だからという例の使命感とやらか?本人でもそれは分からないんだろうがただ一つだけ言えることはある。
彼女は自分の意思で、命さえも掛けて“先生”という役を演じようとしている。まさに生徒たちのために。大人として助けようとしている。
そうだ。僕は確かに先生に憧れたんだ。ただただ空っぽの偶像なんかじゃなく、確かな決意で、自らの意思でその恐怖さえも抑え込み生徒のために前へと進むその姿に。
「……わかった。僕も行こう」
「ヒバナちゃん…!」
「……すまない」
「勘違いするな害獣。僕はお前達のためじゃなくて、こいつがヘマして死んだら後味悪いからついていくんだ」
「ヒバナちゃんが私を心配して…!?」
「勘違いするなバカ!僕はただ面倒ごとが嫌いなだけだ!」
ああもう……まったく。
「ほら。さっさとそのベアトリーチェとやらをぶっ飛ばしてお姫様とやらを救出しにいくぞ」
「あと制限時間が一時間んんん!?」
「お、大声を出さないでください……」
「うっ…すまない………だが…」
走りながらも僕は器用に頭を抱える。
まず彼女達の話を要約すれば……隠された学園であるアリウス分校へ辿り着くには地下迷宮の如きカタコンベを通る必要があり、そこの入り口は判明しているだけでも300以上。そしてその中でも正しいもの紛い物が入り混じっており、正解のルートは限られている上にその内部構造は一定周期で変化する。そして一度間違ったルートに入れば最後。延々とカタコンベ内部を彷徨い続けることに……故に彼女らアリウスはその通路を暗号で伝えていたが逃亡へ至る彼女達はそれを持ち得ない。
だがまだ完全に希望は潰えたわけではなく、まだ彼女達が知り得る通路が一箇所残っている。それを使えばアリウス自治区にたどり着くことができるが、それも今日の日付変更線までしか使えない。
その上、我々の救出目標たるお姫様のタイムリミットは夜明け。つまりこのルートを逃せば彼女は“生け贄”とやらに捧げられ、ゲームオーバーってわけだ。
生け贄だぁ?そのマダムとやらは大人のくせに随分と厨二臭い……と言い切ることはできない。ゲヘナやブラックマーケットでも昔宗教関連でちょっとした騒動があったと聞くし、このキヴォトスじゃ不可解な現象が起こっても不思議じゃない。先生が言うには神を目指す機械なんてものがいるのだから、神様とやらがいてもおかしくはない……と、思う。
どちらにせよ贄なんてまともなことは行われないだろう。本で読んだことがある。心臓とかささげるんだろ?助けに行ってそんな惨状を見るのはごめんだね。急がなければ。
「おい青マスク!後どのくらいだ!?」
「青っ……もう見えてくるはず…───っ!?」
「ひゃぅ!?」
「うぇ!?」
隣を走っていた泣き虫の首根っこを掴みながら先生を背中に背負った状態でバックステップをして飛来してきた銃弾の雨をかわす。
まあ、そうだよな。そうすんなりいくわけがない。
「いたぞ!『スクワッド』だ!」
「やはりここにきたな!総員戦闘準備!」
「……あっちも同じこと考えていたみたいだね」
「戦闘準備」
「…は、はい!」
「僕に指図するな!」
「まあ…こうなるよね」
「いいだろう……手負いの猟犬の意地、見せてやろうじゃないか」
「……さあ、みんな行くよ!」
先生の心細い掛け声と共に、お姫様奪還作戦は開始された。
───問。なぜマスターはゲマトリア、ベアトリーチェの支援をするのですか?マスターの記憶……いえ、予言によれば彼女を支援するのは逆に望まぬ未来へと繋がる可能性を含む行為と推測。リナは疑問に思っています。
暗闇の中、缶に入った飲料を小さな口に含みながら少女はモニター越しに……否。モニター内の存在の問いかけに対して答える。
「……やり方の、示された……けれど難易度の、高い、模範解答のよう、な道と………不明瞭で……あってるかも分からない、けれど正しければ、近道のできる道……君は、どっちを選ぶ…?」
『……』
「私は……断然、前者。オリチャーなんて……よっぽどの天才か……バカがやること。向こう見ずの勇気は……蛮勇……先人の示した答えをなぞる方が……確実……」
私はRTA走者じゃないんだから、と空になった空き缶を投げ捨てながら少女は言う。
これはゲームではないのだと。ボタンひとつでやり直しの効くような物ではなく、何もかもが主人公の思い通りに進むご都合主義の世界ではないのだから………否。そうではなくなってしまったのだから。
現実となったゲーム。“神々”から見放された未来などなかったはずの歪な世界。“神様”が遊び、そしてまた別の“神様”が世界のバランスを調整し物語を作り上げる世界ではなく、あったかもしれない別の可能性でもなく、この
だからこそ私はかの人形が正しい道筋を歩めるようサポートし、歪んでしまったこの世界を本来の道筋へと導き、空っぽの人形を主人公とした舞台をハッピーエンドとして終わらせなければならない。
全ては私がこの愛すべき世界で平和に暮らすため。
そしてかつての日常を、2人の毎日を守るため。
「待っててね……私が……なんとか、するから……」
「───……また一緒に遊ぼうね、ヒバナちゃん」
世界観前作の設定から引っ張ったり色々考えてるけどミスってそうで怖こわ。