絶対にデレない敵役生徒   作:有機栽培茶

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説教系苦手作者。発狂しながら書き上げました。あとミカがわからない。先生が先生してないからこうするしかなかったんです許してくださいなんでもしますから(なんでもするとは言ってない)


泣き虫お姫様

『……』

「どうしたんですかそんなに落ち込んで」

『……貴様に私の気持ちはわかるまい』

 

 

 アリウス自治区。

 暗闇に包まれた、幽鬼の彷徨い歩く廃都市と言って過言ではないほど寂れた街並み。そんな街の一際天に近い時計台に、黒いスーツを纏った異形と、うずくまって動かない機械仕掛けの傀儡の二人組がいた。

 

 ──誰がお前のような犯罪者を信用するか!

 

 あの時彼女が自分の目をまっすぐと見て鋭い声で言い放った言葉が脳内にこだまのように響き渡る。

 

 

『…わかっていた……予想できた展開だ。問題ない……問題ない。そのはずだ……だが……うぅ……』

「…問題がないのならしっかりしてください」

『貴様に私の気持ちはわかるまい!!!』

 

 

 はぁ…という呆れたようなため息が聞こえる。コレだから人の心を失った大人はダメなんだ。人間、人の心を失ったらおしまいだというのに。

 だが、しかし彼の言うようにいつまでもこうウジウジとはしていられない。私だって生きてきた……いや、この言い方はおかしいかもしれないが、経験してきた年数は大人同然なのだからいつまでも子供ではいられない。なすべきことをなすために、そろそろ立ち上がらなければなるまい。

 

 

『……きたか』

「ですね」

 

 

 幽鬼───聖徒会のミメシスの反応が一点に集中しているのを察知した。おそらく先生一向がベアトリーチェとも最初の会敵を果たした場面だろう。

 

 

「…なるほど。信用していなかったわけではありませんが、ここまで正確に予言と一致するとは」

『してもらわなければ困る。演目は正確に進めなければならない』

「ですが……少々、差異があるようですね」

『………』

 

 

 プレイヤーの有無。そして私という外部からの異分子。少なくともコレだけの前提条件の乖離があるのだから当然といえば当然なのだが……

 

 

「『釘を穿つ者』の同行……そして、『人工天使』の失敗作。その()()

『…より正確にいえばアンブロジウス含む複数のミメシスの不在……ベアトリーチェ側の戦力が予測以下』

 

 

 釘を穿つ者──ヒバナの同行はまだ問題ない。彼女が危険な目に会うのは不本意ではあるが、彼女ほど今の先生の補助に適した人材はいない。それに彼女の補助なしで、あの空虚な人形がシナリオをなぞることが出来るとは思えない。もしずれが生じたとしても私が修正可能な範囲内だろう。

 

 だが、後者は違う。

 

 ベアトリーチェ側の戦力──ミメシスの数が明らかに少ない。予言──原作においてその規模は明言されていなかったが、原作先生の指揮するスクワッドを圧倒し、聖園ミカに足止めされる……言い換えれば聖園ミカを足止めしうるだけの戦力は存在していた。

 だが、現在確認しうる数では、先生がプレイヤーであったのなら聖園ミカなしに突破しうる戦力だ。ベアトリーチェが彼女を原作以上に軽視しているという線もない。彼女に伝わっている先生の功績は原作そのままのはず。

 

 

『……マエストロが協力を渋ったのか?』

「いえ、予言に従いゲマトリアとしてマダムへの協力を拒んではいませんでした」

『ならばマダムの独断か』

 

 

 ……何を考えている?何らかの要因でミメシスを満足する数だけ配備できなかった?私に確認できない何処かに隠している?

 もしくは───

 

 

『……不要だと考えた?』

 

 

 一体奴は何を企んでいる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テメェがマダムとかいうババア……」

「…ヒバナちゃん。私に任せて」

 

 

 アイツは飛び出そうとした僕を抑え、通信越しに現れた赤い肌の女、マダムだとかベアトリーチェだとか呼ばれている、今回の元凶の前に立ち塞がった。

 

 

───あなたは生徒を、私たちを侮辱した。

───そして教えを、学びを侮辱した。

 

───私は大人としてあなたを絶対に許すことはできない。

 

 

『そうですか……貴方は、私の敵です』

 

 

 アイツは、“先生”としてあのマダムを名乗る化け物の馬鹿げた提案を、巨悪を前にして真っ向から断って見せた。

 まさに先生。己が意思だけで、あの不気味なカードに頼らずとも恐怖を抑え、怒りを握り締め、生徒を背に巨悪へと己が信念を貫き示してみせた。

 ならばそれに応えなければ彼女の生徒は名乗れない。

 

 

「いくぞお前ら!強行突破だ!」

 

 

 アリウス生から強奪したショットガンをぶっ放し、エデン条約の時に湧き出てきた聖徒会の幽霊どもを吹き飛ばす。

 わらわらと正気のない様子で、まるでゾンビゲーかと思うほどに湧き出ては襲いかかってくる奴らだが、どうやら耐久力はそこまでないらしい。ショットガン一発、釘を脳天に突き刺せば地に伏し燃え尽きた灰のようになって消えていく。

 

 だが、いかんせん数が多い。

 

 

「先生ェ!無事か!?」

「だ、だだだ、大丈夫……じゃないかも!!!」

 

 

 ああもう、言わんこっちゃない。タップダンスのように銃弾を避けている姿は滑稽で面白いが、放っておくのはまずい。

 

 

「指揮官が前線出ちゃダメだろうが!」

「逆に前線じゃないとこどこ!?」

「それもそうだな!」

 

 

 先生をお米様抱っこの体勢で抱き抱え、そのまま杭を抜き取り薙ぎ払う。ふむ?意外と直接ぶっ叩いた方が有効打なのか?

 

 

「…ゴリラ」

「聞かなかったことにしてやる!で、こっからどうする先生!?」

「突破するよ!ミサキは陽動をお願い!サオリは混乱したところに切り込んで!ヒヨリはサオリの援護!十二時の方向に突破するよ!」

「わかった!」

「僕は?」

「私の護衛」

「りょーかい!」

 

 

 さぁ、先生が啖呵を切ったんだ。僕ら生徒がそれに答えないわけにはいかないだろう!?気張れスクワッド!アリウスじゃない!先生の指揮の元シャーレの分隊としてあのババアに目にもの見せてやろうじゃないか!

 

 

 

「猟犬の恐ろしさ!味わってもr──

「やっほ⭐︎」

 

 

 瞬間、ワラワラと湧いて出てきていた聖徒会どもが吹き飛ばされ、チリになって消えていく。

 降り注ぐその星屑のような遺灰を被りながら姿を現したのは───

 

 

「ミカ…!?」

 

 

 ──トリニティのゴリラお姫様。

 ああ、嫌な予感が当たってしまった。アイツは、あの性悪お姫様は絶対あそこで大人しく引き下がってくれるような良い子じゃ無いとは思っていたが。もし彼女が僕たちを援護しにきてくれたっていうのなら心強いが……はは、ありゃそうには見えないな。全く最悪なタイミングだ。

 

 

「先生たちのピンチにヒーロー登場〜、なんてね」

「……まさかここまで追いかけてきたのか」

「おー…そうだな。それもどうやら用があるのは君らしいぞサオリ」

「あはは。何を勘違いしているのかな?ヒバナちゃんにも会いたかったよ?」

「……わぁ。コレほど嬉しく無い再会はないだろうね」

 

 

 わぉーお。嫌な目だ。病んじゃってるね。

 

 

「……もしかして、助けに来てくれたの?」

「あはは。私がサオリたちを助ける?おかしなことをいうんだね先生。先生だけだったら喜んで助けたんだけどなー」

「だったら……事が終わるまでどこかに隠れていて。全部終わったら、説明するから。今はそんなことをしている時間はないの」

 

「んー…先生が今どういう状況かはわかるけど、従えないの。だって、サオリが…そこのヒバナが、私と一緒でみんなを傷つけた悪者がさ、何も失わないなんて許せないの」

 

 

「ほら、私悪い子だからさ?」

 

 

 悪い子で住む範疇にないだろう、と口に出さず毒づきながらも先生の指示を求め、目を向ける。すると先生は一度目を瞑り、覚悟を決めたのか、タブレットを開き、ミカと対峙する。

 

 

「とりあえず、ミカにお灸を据えよう」

 

 

 

 

 

 

 

「けほっ……」

「やっと……倒れやがったか、わがままお姫様」

「っ……」

「うぅ……倒せたんでしょうか」

「倒せていなかったら困る」

 

 

 純白のドレスが土によって汚される。

 先生の指揮もあって、なんとかギリギリ聖園ミカの制圧に成功した。していないと困る。僕らもこれ以上の継戦は不可能なほどに消耗している……のだが。

 

 

「んん……いたた……やっぱ先生がいると厄介だね」

「…化け物め」

 

 

 いっそここまできたら笑えてしまう。聖徒会を一掃できる火力に、先生の指揮を受けた僕ら4人の集中火力を前にして『痛い』で済ますなんてな。お嬢様っつー肩書は捨てちゃってトリニティの人型最終決戦兵器ミカンゲリオンでも名乗ればいいのではないか。

 すると後ろで指揮をしていたはずの先生がミカの前に出る。

 

 

「お、おい」

「……ミカ、セイアは多分無事だよ。だから、今はトリニティに戻って」

「先生……」

 

 

 何を根拠にそう言っているのか、彼女はそう言い切った。

 

 

「ごめんね……私はいつもこんなだよね…」

 

 

 ───は?

 

 

「私みたいな問題児はさ、先生に何度も心配をかける生徒は…先生のそばにいられないこともよくわかってる…」

 

 

 ……ああそうだったな。()()()こいつらと同じだった。本当にうんざりするよな。嫌気がさす。人生は、物事は、世界はもっと単純であるべきなんだ。小さい頃絵本で読んだような、ヒーローと、それに倒されるヒール。単純な正義と悪だけで。

 

 

「ヒバナちゃん?」

「もう、帰る場所がないの…トリニティにもどこにも。私はトリニティの裏切り者で…みんなの敵で……何度もセイアちゃんを傷つけてしまった魔女だから───

 

「だからなんだよ」

 

 ──え?」

 

 

 俺は説教くさいのは苦手だし、前言ったように傷の舐め合いなんて大っ嫌いだ。だが、こいつは……今のこいつはそんな些細なことなんてどうでもいいくらいには、俺をムカつかせている。

 

 まるでかつての俺を見ているようだ。

 

 

「帰る場所がない?バカ言ってるんじゃねぇ。テメェが拒んでるだけだ。みんなを傷つけた敵?魔女?だったら俺はなんだ。友達の苦労も知らず、自分の好き嫌いだけで2度も裏切った俺は悪魔か何かか?」

「っ…あ、あなたにはわからな──

「わかるんだよ。テメェと同じだからな。ああ良いさ。やってやるよ。傷の舐め合いでもなんでも。テメェのその閉じこもって開かねぇ目ん玉をかっぴらいてやる。その必要がテメェにはある」

 

 

 ミカの気に入らないその綺麗なほっぺたを両手で掴んでずいっと顔を近づけ俺に向ける。

 

 

「テメェの目の前にいるのは誰だ。俺がどんなクズか、言ってみろ」

「ぅえ!?……も、元風紀委員会副委員長…?」

「違う。単なる思い込みと偏見と、自分勝手な好き嫌いで俺のことを信じ友と言ってくれた友人を2度も裏切ったクソ野郎だ」

「え……そ、そんな、」

「そして、親友をテメェが臆病なあまり()()()()()()最低最悪のゲス野郎だ」

 

 

 さぁテメェのその曇った眼でもこんだけ近けりゃ見えるだろ。反吐が出るほどのクソ野郎のご尊顔がよ。

 

 

「その錆びついたテメェの頭でも理解できたか?俺がどれだけのクソやろうか。理解できてんなら思うだろ疑問によ!なんで俺が!今!こうしてヒナちゃんと、風紀委員の奴らと仲直りできて!いるべき居場所もあって!こうしてテメェに説教できるのか!」

「…そ、それは………わからないよ」

 

「向き合ったからだよ。怒られること、非難されること覚悟の上であいつらに向き合って、謝った。心の底から。許さなくても良い、ただ俺の本音を、謝罪の言葉を聞いてくれと頭を下げたから。だからヒナちゃんは、アコちゃんは、みんなは俺を許してくれたし、友達でいてくれた」

 

「……」

「だから、テメェもまずはお前の友達と向き合え。ビビってんじゃねぇよ。それともなんだ?またわがままで感情のまま復讐してからってか?果たしてそん時の、他人から大切なものを奪った後の汚れ切ったテメェはお友達と向かい合う資格はあるんだろうかね」

「…そんなの、もう手遅れだよ。私は、もう……」

 

「少なくとも、今の方がマシだろうがよ。それともなんだ?テメェのご友人は俺と同じくらいかそれ以下の悪い子なテメェを許すこともできねぇ器の小さいヤロウなのか?まあ流石にトリニティごときがヒナちゃんに勝るわけないもんな!」

「なっ、そんなことないよ!ナギちゃんは普段は真面目で怖いけどちゃんと話を聞いてくれるし起こりはするけど3食ロールケーキにするくらいで許してくれるし、セイアちゃんだって小難しいこと言ったり、バカにしてきたり意地悪なこと言ってきたりするけどちゃんと話を聞いてくれるしなんだかんだいつも許して────……あ」

 

 

 慌てて口を手で抑えた彼女の滑稽な姿に思わず笑いが漏れる。

 

 

「はっはっは……もう答えは出てるじゃねぇか」

「で、でも……もしも許してくれなかったら…」

「なんだよまだ決心できねぇのか。姫様は臆病だな」

「うっ……」

「だったら、事が全部すんだ後俺が…いや、そこのバカも含め俺たちが一緒について行ってやる。もしもそれでもダメってんなら、その後のテメェの居場所だって俺たちがっつーか、先生が用意してくれる。今の俺みたいにな」

「あなたと先生が…?」

「ああ。困ったり辛かったら俺たちシャーレを頼れば良い………それと、最後に良いことを教えてやるよ。こんな俺だが……失ったものはある。親友だ。アイツとは、もう何年も会えてない。多分、もう会えない」

「……どうして?」

「俺が、逃げたからだ。もしあの時あの場所でアイツに謝っていたら。あの後すぐあいつの家に行って謝っていれば。そうだったら……今も俺の隣にはあいつがいたかもしれねぇ」

「……」

「だから、向き合うなら、謝るなら早いほうがいい。後悔してからじゃもう遅いぜ」

「……ありがとう」

 

 

 ようやく俺は立ち上がって、そして彼女に手を差し出した。彼女は、ミカはその手を──握り返した。

 

 

「さて、君はこれからどうする?このまま一度帰るもよし。僕たちと来るもよし。オススメは後者だけどね。君はサオリたちともちゃんと言葉で向きあった方がいいし……それに、お友達のとこに帰るのなら、このクソみたいな物語の元凶をぶっ潰したっていう土産話があった方がいいだろ?」

「……そうだね。確かに、ナギちゃんたちに自慢できる話があった方がいいよね。きっと驚いてくれるよ」

「くくっ、わかってるじゃないか。ナギちゃん……桐藤ナギサか?彼女の驚く顔は面白そうだ。紅茶でも吹くんじゃないかい?」

「あはは。ナギちゃんならやりそう!じゃあ、よろしくね。これからも、これが終わった後も。私は臆病なお姫様だからさ?」

「はっ、冗談も休み休みに言え」

 

 

「よかったよヒバナちゃん。先生感動しちゃった」

「………クソッタレ」

 

 

 ニヤニヤと笑う先生を見ながら僕は思う。

 だから説教とか傷の舐め合いだとかそういうのは嫌いなんだ。キャラじゃないことはやるものじゃない。




なんかヒバナちゃんがそれっぽく裏切ったりしててそれっぽく親友失ったりしてるのは全部たまたまだしエデンはほぼアドリブなのでガバは許して許してぃ
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