──転生者。
おそらくオタク文化を嗜む人間、それこそラノベやこのような
そして何を隠そうこの私、新戸コモリもまた転生者であった。
とはいえ、よくある創作物のようにチート的な、主人公を張れるような能力を持っているわけではなく、強いて言えば人よりも多少モノづくりが上手いくらい。そして致命的なことに私はコミュ障で、この体は転生前同様にひどく脆弱であった。
そんな私が転生先の世界、つまりはこの世界。ブルーアーカイブと言う物語でまともに生きれるわけがない。殺傷能力は神秘によって低いものの、一般人が当たり前のように銃火器を携帯している世界だ。
そしてこの物語の主題は『学園モノ』。そんなキャピキャピとした青春で私のような陰キャが生きていけるわけがない。
そう思っていた。彼女と出会うまでは。
「そんなとこで何やってんだ?一緒に遊ぼうぜ!」
彼女は、ヒバナちゃんは独りぼっちだった私に手を伸ばして引き上げてくれた。少し強引だったけれどそれが私には嬉しかった。
「へえ?コモリって言うのか。変な名前」
「何やってんだ?ゲーム?俺にもやらせてよ」
「コモリの羽ってモフモフでいいよなー」
「俺の角?いいぜ。コモリなら触っても」
「トリニティ?ゲヘナ?そんなのどうでもいいだろ?早く遊ぼうぜー?」
いい加減で、乱暴で、自己中で。
いっつも私を振り回りして。出たくない外に連れ出されたり、噂に聞いたとか言って心霊スポットに連れて行かれたり、イジメが気に入らないからと言う理由でいかにも怖そうな年上のヤンキーたちに私を巻き込んで喧嘩を売ったり、限定プリン争奪戦だとか言って人混みに突っ込んではプリンに向けて取ってこいと私を投げ飛ばしたり……私のゲームに付き合ってくれたり、一緒に美味しいアイスを食べてくれたりもしたけれどそのほとんどはウンザリするくらい破茶滅茶な出来事だらけだった。
──でも…それがよかった。
私の空虚で寂しい人生に、彼女は乱暴に穴を開け、そして連れ出してくれた。外の世界へと。
私の世界が彼女によって一変された。ただ1人隅っこで本を読んでいたり、外で遊ばず家に引き篭もっていただけの灰色な私の人生が彼女によって彩られた。毎日が刺激的で忙しく、けれど楽しくて。
面倒ごとを避け、辛そうなことを避け、人と関わることすら避けて、逃げに逃げて、
けど、そんな天国のような時間が長く続くわけがなかった。
「貴方、ゲヘナと会ってるって聞いたんだけど」
幸せな時間が終わるのは思っていた以上に早かった。トリニティとゲヘナ。私たち2人がそれぞれ通っている学園の仲の悪さは知っていた。キヴォトスの三大マンモス校の二校にして犬猿の仲。
それはゲームとしてのブルーアーカイブの知識でも、この世界を生きている人間としての知識でも知っていたことだった。けれどのその溝は私の思っていたものよりも相当深いものだったらしい。
小学校高学年になった頃、クラスの中心的な存在であった陽キャに呼び出された時それを思い知ることとなる。
「やめなよそんなの。あんな薄汚れた奴らと遊ぶなんてさ」
「脅されてるの?それなら私に任せなさいよ。先輩に言って2度と手を出せないようにしてあげるわ」
「友達?えー!ありえなーい!そんなやつとなんて絶交しちゃいなよ。私たちの仲間に入れてあげるからさ」
「…アンタね。わかっているのかしら?貴方のその行動がトリニティ全体の権威を貶しているのよ?」
「ああ汚いわ。あんな野良犬と遊ぶなんて。何か病気にでもかかってたらと思うと恐ろしいわ」
笑顔で近づいてきた彼女たちの質問は、心配から忠告へ。忠告から脅迫に。そして最後には侮蔑へと変わった。
そしてその日から学校生活は一転した。ヒバナちゃんと出会った時のような良い方向へではなく。それもトラウマをピンポイントに抉るような、そんな最悪な方向へ。
「最近どうしたんだ?元気ないみたいだけど…」
「……なんでもない、よ」
きっとひどい顔をしていたのだろう。それとも彼女が私の些細な変化に気づくことができただけなのか。ヒバナちゃんはすぐに私を心配してくれた。
でも私はこのことを彼女に伝えなかった。伝えられるわけがない。トリニティだのゲヘナだの、そんなのどうでもいいと一蹴してくれた彼女に、こんなクソみたいな現実を見せたくなかった。彼女に迷惑をかけたくなかったと言うのもある。
それにもう小学生も終わる頃。中学に上がればこんなこともなくなるだろう、という希望的観測も混じっていたから。
けれど中学に上がっても、その教室に私の居場所はなかった。私はいないも同然で、私の私物はどうやら一人歩きするようで、それは私の椅子や机もまた同様だった。
けれどそんな時私にもヒバナちゃん以外の友達ができた。もちろんそのことはヒバナちゃんにも自慢したし、彼女は当たり前のようにそのことを喜んでくれた。彼女にも私以外の友達ができたってことは少しもやっとしたけど、それでも彼女が喜んでくれたことが嬉しかった。
……あの頃の私は相当のバカだったんだろう。虐められている中話しかけてしかも友達になろうなんて言ってくるやつをただの物好き、親切な良い子で済ませるなんて。
「ほんと!滑稽よね!ちょっと優しくしたらヒヨコみたいによちよちついてきちゃってさぁ!」
──当然、全部嘘だった。
私の上げたプレゼントを高値で売り払ったことを大声で笑いながら自慢する彼女の姿は今でも脳裏に焼き付いている。
けれど、それ以上にそのことに対して私以上に怒ってくれた彼女の姿も焼きついて離れない。
嬉しかった。彼女が私のために今まで見たこともないほどに怒ってくれたことが。私のことを、それだけ大切にしてくれているのだと言う実感が。
私の友人は、親友は彼女以外にいないのだ。
だからこそ後悔している。
あの時、私を助けてくれたのが彼女だと気づいた時。私が酷い言葉を投げかけてしまった相手が、彼女だと知った時。
一度犯した過ちはなかったことにはできない。私と彼女の間には、私のあの一言で、たった…されど十分重い一言でトリニティとゲヘナの間にあるような溝ができてしまった。
会うことは許されない。私には、彼女を傷つけてしまった私にはそんな資格はない。私が、その資格を得るまでは直接会うなんて許されない。
「……クソみてぇな悪人が得をして、弱いだけの良い奴が損をする。そんな事があっていいわけがねぇ」
けれどずっと会いたかった。私は変わってしまったから。
「……こいつらは救われなきゃならねぇんだ」
だから、貴方も変わってしまったのかと心配だった。
「そのために!今はテメェが邪魔だ!」
───嗚呼、どうやらその心配は杞憂に終わったらしい。
私の親友。私の英雄は、昔のままそこにいた。
「今はテメェが邪魔だ!!」
ヒバナの放った拳が、掃除屋の顔面を吹き飛ばす。
『……ジ…ジジ……引き際か』
そういうと奴は再びあの真っ黒な虚空を宙にあけそこに飲まれるように姿をくらましていく。
「っ!まて!」
『…………またね』
「……?」
最後に、その暗闇に少し優しげに揺らぐ赤い光の残光と、誰かの幻影を残して。
「ひぃぃ!!ヒバナさん助けてくださぁぁい!」
「ちっ!」
後ろから聞こえてくるヒヨリの悲鳴に顔を向ければそこには必死に指揮をする先生をそれに答える生徒たち。そして、それでもなお勢いを失わない機械兵の軍団。その数も気のせいか先ほどよりも多くなっているように見える。
「おい先生!」
「ヒバナちゃん!?掃除屋は!?」
「悪い逃した!こっちは!?」
「だめっ!いくら倒してもどんどん湧いて出てくる!」
「奴の使っていたあの黒い穴から次々と湧き出てくる。あれをどうにかしないことには…」
「キリがない…!」
よくよく目を凝らせば奴らの向こう側にある未だ消えない黒い穴からは僕らが敵を倒すたびに、それを補填するかのように新しいやつが湧いて出てきている。
「どうする!?夜明けはすぐそばだぞ!?」
「……私が残るよ」
「ミカ!?」
そう言い出したのはさっきまで僕たちを邪魔しようと暴れ回っていたおてんばお姫様。
「私がアイツらを足止めする。だから行きなよ!時間がないんでしょ!?」
「っ……」
「……ああ」
「代わりに!絶対アツコちゃんを助けて帰ってくるんだよ!」
「わかった。約束する」
「それと、ヒバナちゃん!」
「僕!?」
「全部終わったら、またお話しようね!」
「──…ああ。必ずだ!友達として、約束してやる!」
「──うんっ!絶対だからね!」
僕たちは聖園ミカに背中を押され、決戦に場へと向かった。
ヒバナちゃんってどのくらい好かれてるのかなって…(原作キャラと比べる無謀&不敬)
い、いやちゃんと意味あるやつだから!
ちなみに私はヒバナちゃんに執筆で相当苦しめられたのでベア叔母派()
どっちの方が読者さんからの好感度高いのかなって
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戦華ヒバナ
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ベアトリーチェ