絶対にデレない敵役生徒   作:有機栽培茶

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勉強がやべー作者です。助けてください。私は何もできない。後ついでに高評価ちょうだい(毎度恒例の)

参考にするかわからないアンケートもあります。答えても答えなくてもいいです。その変わり私も参考にしても参考にしなくてもいいとします。


9.灯された戦火(後)

 

 ペンがするりと手元から抜け落ちる。

 

 

「どう、し…て…?」

 

 

 ────どうして。

 

 どうしてそんな事をしたのか。

 

 そして、どうしてそんな顔をするのか。

 

 タブレットに表示されたニュースの速報。そこに映し出される知っているようで、知らない顔。

 

 

『諸君。是非とも賢い選択をしてくれたまえ』

 

 

 仮面のように表情の抜け落ちた顔で淡々と語る彼女。その直後にはいつもの優しげな笑顔に戻ったが、その顔を見た後だと如何してもそれが彼女の心を映し出した本当の表情だとは思えなかった。

 

 全くの無表情。

 

 感情豊かに見えた彼女の奥に隠れた、全くの無。

 

 全てを見下し、興味がないようなその目に背筋が凍りそうだった。

 

 もしも……もしも私の話を聞いてくれている時もそうだったらどうしよう。もしも、あの時見せてくれた笑顔が嘘だったら。その裏であのように無感情に見下されていたら。

 

 

「…………っ?」

 

 

 なにか、感じたことのないゾクゾクっとした妙な感覚に襲われるが、それもすぐに不安の渦にかき消される。

 

 

「…そうだ。ヒ、ヒバナちゃんに、話を聞かないと」

 

 

 タブレットを操作し、表示されるのはヒバナのモモトーク。

 

 

 ───疑問

 

 

 指を運んだ先にあるのはメッセージを送るボタンとは違う、通話を開始するためのボタンだ。これを押せばヒバナちゃんへの通話が開始され、彼方側にも私が呼び出していることがわかるようになっている。

 

 そこに、指を、近づけ──

 

 

 ───どうしてヒバナちゃんはこんな事をする前に私に何も話してくれなかったの?

 

 

 ……ああ、怖い。

 呼び出して、無視されたら?

 もしも、いつもの通りのヒバナちゃんじゃなかったら?

 嫌な想像が指が進むのを妨げる。

 でも。それでも私はヒバナちゃんとちゃんと話をしないといけない。先生として、どうしてこんなことをしたのか、何か理由があるのか。話を聞かないといけない。

 なぜなら、私があの子の先生であり、子供が頼るべき大人───

 

 

『はじめから期待していないんだから』

 

 

 ───────あ。

 

 限界だった。

 

 

「ぅ………おぇ」

 

 

 転びそうになりながらもトイレに駆け込んで、吐き出す。

 何にも食べていなかったから、胃の中身は始めから空っぽだった。だけど、何かが迫り上がってくるような感覚に襲われて気持ち悪くて涙を流しながらトイレに向かって顔を突っ込んだ。

 

 

「い、やだ……嫌だ。ヒバナちゃんは、私を、わかってくれて、受け入れてくれて…だから、私には、あんな顔しない。絶対、しない。あの言葉は、あの表情は、私に向けてくれた全部は、嘘じゃない」

 

 

 ───そうだと言ってよ。

 

 今すぐに、直接会いにきて欲しい。

 いつもみたいに抱きしめて欲しい。

 その体温を温もりを、そして貴方を感じさせて欲しい。

 

 全部嘘ではなかったと教えて欲しい。

 

 その時だった。

 

 

『prrrrrrrrrrr……』

 

 

 タブレットが音を鳴らした。

 モモトークのメッセージではない、通話の着信音。

 

 私はすぐにそれに飛びついた。

 

 表示される名前は『戦華ヒバナ』。あの子の名前。

 後少し、ほんの少し進めれば通話ボタンに触れる位置に置かれた指は、しかし動かない。

 

 逡巡。押すか押さないか。押して仕舞えば彼女と向き合うことになり、押さなければ───その機会は二度と訪れない。そんな気がした。

 

 3コール目が鳴り響く。そこで、私は決心した。

 

 

「っ……もし、もし…ヒバナちゃん?」

『おや?やーっと繋がった。やっほ。元気かい?』

 

 

 電話越しに聞こえるいつも通りの軽快な声。その声に一瞬の安堵を思えるも再びあの時の彼女の顔を思い出し、不安は蘇る。

 

 電話の向こう側の彼女は、いったいどんな顔をしているのか。

 

 

「……っあ…ひ、ヒバナ、ちゃん」

『あ!そうそう!センセーさ。僕の送ったメッセージ見てくれたかな?』

「メッセージ…?」

『あれぇ?見てない?あんな大体的に伝えたんだけどな。()()の招待状』

 

 

 ──祭りの招待状?

 

 

「て、テレビのこと?」

『お!ちゃんと見てくれてるじゃないか。よかったよかった』

「……招待状って、どう言うこと?」

『そのままの意味さ。僕はみんなが楽しめるとっておきのイベントを準備した。アレはそのイベントへの招待状。宛先はアレを聞いているみんな。一緒に楽しもうってわけさ!』

「……楽しめるわけないよ」

『そうかい?いやいや。そんなことはないはずだ。きっとみんな楽しんでくれる。害獣と、害獣同士の殴り合い。血を血で洗う醜い争い。きっと楽しいよ。普段纏っている醜い外套を脱ぎ捨てて、頭をパッパラパーにして殴り合うのさ。きっと先生も気に入ってくれる。そうに違いない』

 

 

 そこでようやく私は彼女に対して“私”ではなく“先生”として接しなければならないことに気づいた。スイッチが切り替わる。私から先生へ。自分をうちに隠す。

 

 

「……ヒバナちゃん。それは、ダメだよ』

『……はぁ?なにさ。今さら先生面かい?』

「そんなみんなを傷つけること。どんな理由があってもしちゃいけないんだよ。まだ…今なら間に合うかもしれない。こんなこともうやめよう。私も一緒に謝るから。貴方が言っていた虐めとかの問題も、私が協力───」

 

『はぁ……つまんなーーーい!』

 

「ひっ」

 

 

 その言葉に背筋が凍った。裏に隠したはずの私が引き摺り出されそうになる。

 

 

『先生。僕は知ってるんだよ?君は、僕と同じだって』

「え?」

『正直、虐めとか、ゲヘナとトリニティの確執とかそう言う建前はどーでもいいのさ。…懐かしいなぁ。あの時、みんなでカイザーを潰したあの戦い。僕は遠目にだけど、君のことを見ていた。……眩しかった。あの時の君は輝いていた。皆を指揮し、奴らを蹂躙する君の姿は、実に美しかった!!そこで気づいたんだ。君は僕の同類(戦闘狂)だって!戦いの中でこそ輝くんだって!だから話しかけた!だから興味を持った!』

「…違う、よ。そんなこと」

『ない?それこそあり得ない!あり得てしまったら……君はただのつまらないやつになる』

「っ……」

『だからさ。一緒に楽しもう。君を僕に魅せてくれ』

 

 

 ぷつり。

 

 

 電話は彼女の声を最後に途切れてしまった。

 そして理解させられた。ヒバナちゃんは私が止めないといけない。あの子は、生徒は、私が“先生”として止めないといけない。

 これは先生としての責任。

 そして同時に、あの子に見放されたくない“私”としての我儘。

 

 それに────あの子はまだ何か隠している。

 

 私の知らない何かに思いを馳せている。苦しんでいる。そんな気がした。本人は気づいていないのかもしれないし、あえて隠そうとしているのかもしれない。それでも私は”先生“として……そして私自身がそうしたいから。彼女を助けたい。

 

 

「……アロナ。行くよ」

 

 

 私はタブレットを持ってシャーレを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ヒバナ、さん」

「ん?君は確か元正義実現委員会の…」

 

 

 先ほどの放送が終わり、慌しくこれから攻めてくるであろう正義実現委員会や風紀委員会を迎え打つための防衛陣形を構築していく僕の指揮下にある小隊メンバーと、ヒナちゃんの元を離れる時に理由として使った取引済みの不良グループ。

 

 そんな中話しかけてきたのは元トリニティ生の子。黒髪ぱっつんなかわい子ちゃん。ただ暴れたいだけの害獣どもを隠れ蓑に匿ってあげていた子の一人だ。

 

 

「ほ、本当にこんなことしてよかったんでしょうか…」

「んー?緊張しちゃった?それとも自分の元々所属してたとこが貶されて嫌だった?」

「そ、そう言うわけじゃ」

「あっはは。だいじょーぶ大丈夫。安心して。今更君のことを疑ってるわけじゃないし、計画は絶対に上手くいく」

「…で、でも……無関係な人を巻き込むのは…」

 

「無関係……?……ああ。気にする必要はないよ。賢くお優しいティーパーティ諸君はきっと僕らの要求を飲んでくれるはずだ。何せ高潔で誠実で、ゲヘナなんかとは違う、立派なお嬢様方なのだろう?なら、きっとこちらの要求も紅茶のように容易く飲み込んでくれるはずだ。無関係な人たちを巻き込まないために。そして、この子たちを助けるために。それとも、ゲヘナなんかに出し抜かれたくないと言うプライドからかな?でももし助けてくれないのだとしたら……関係があると知っているから?」

 

「ん゛ーーーーーー!!!」

「ひっ…!」

 

 

 傍にかけておいた“害獣”を掴んで引き寄せる。

 

 トリニティではありふれた金髪。ゲヘナ生とは違い改造も何もされていない統一され着崩されてもいない制服。

 

 一見没個性。彼女を知らないものなら他のこと見分けもつきもしないモブ。だが僕は覚えている。忘れもしない、あの時の光景。

 

 

「そういえば、この子。君の知り合いだっけ?」

「…い、委員会の仕事で、少し…話したことは、あります」

「ふーん。じゃあ、この子は君にとっての害獣?それとも無関係な人?」

「……む、無関係…だと、思います…」

「へー。じゃあもうやめたんだ。それとも隠れてやってるだけかな?」

 

 

 口枷をはめ縄でぐるぐる巻にされ、お嬢様なんて大層な呼び方より芋虫の方が似合いそうな彼女の顔を地面に押し付ける。

 

 

「ヒ、ヒバナさん!?」

「覚えてる?この痛み。忘れちゃった?」

 

 

 そして、振り上げた拳を───

 

 

「………ーーーーー!!!!!」

 

 

 嗚呼よかった。思い出してくれたみたいだ。泣くほどにちゃんと記憶してくれてるなんて。やっぱりあの時の拳はいいところに入ったと思ってたんだよね。

 

 

「っ……ひ、人質相手にやりすぎ、じゃないですか?」

「人質?あははは。ダメじゃないか。害獣を人扱いなんて。ぱっつんちゃんはもっと人を観察しないと。」

「それって、どういう…」

 

「はっはっは!そんな細かいこと気にしないでいいじゃん!!頭が痛くなっちまう!」

「うわっ!?」

「私達は好き勝手暴れればいいの!気に入らない連中の鼻を明かすいい機会なんだからさ!」

 

 

 僕とぱっつんちゃんの話を遮って入ってきたのは二人の不良。……うるさいなぁ。害獣が。僕が話している最中だと言うのに。

 

 

「……はぁ…まぁ、彼女たちの言う通り、君は君のやりたいようにやればいい。なんたってこれは祭りなんだから。みんなで精一杯楽しまないとね」

 

 

 不良二人に絡まれ涙目でこちらに助けを求めてくるぱっつんちゃんを横目に僕は改めて椅子に座り直し、通信機器に耳を当てる。

 

 どうやら傍受した感じ、トリニティでは正義実現委員会が動き出したようだ。そして同時に砲撃部隊にも動きあり。本気だね。

 

 ゲヘナは…ふーん?少し遅れているようだね。ヒナちゃんをちょっと驚かせすぎちゃったかな?でも彼女もきっときてくれるはずだ。せっかく僕が苦労して用意したんだから。それに、体を動かすことはストレス解消に効くって言うしね。ヒナちゃんも楽しんでくれるはず。

 

 楽しみだ。楽しみだな。何せ久しぶりに思いっきり体を動かせる。

 

 戦いは好きだ。嫌いなことを考えなくて済む。バカな僕の一番の得意分野だ。これから来るのは正義実現委員会の委員長に、ゲヘナ最強のヒナちゃんに、そして先生。こんな機会もうないだろうね。全力を出して、精一杯楽しまないと。

 

 

 

 楽しんで楽しんで───

 

 

 

 

 ──最強をぶち破る。

 

『もしも僕がヒナちゃんだったら』

『もしもあの時先生がいたら』

『もしもあの時トリニティがあの子を守ってくれていたら』

 

 そんなくだらない可能性をぶち破る。

 

 アレは仕方のないことだったと───

 

 

 

「……いや。ダメだ」

 

 

 

 これだから難しいことを考えるのは、嫌いだ。

 

 今は楽しむことに集中しよう。そうした方が、きっとあの子も楽しんでくれるはずだから。

 

 

 

「見ていてね。きっと楽しいエンターテイメントを届けてみせるから」

 

 

 

 全力で、全部壊そう。




いろいろ忙しい作者メモ
【戦華ヒバナの設定】
描いていくうちに重くなってしまった今作主人公。前作主人公の方がまだ軽かったと言える。なんなら前々作並みにドロドロとした感情持ちになってしまった。
初期設定では周囲に対する好感度が極度に低く、心を開くことも滅多になく、戦闘狂で、あの子に対する罪悪感など以外はさっぱりとした感じになる予定だった。周りからの激おも感情を無視するような、好意に気づかない鈍感系主人公よりもタチの悪い主人公になる予定だった。
しかし現在では作者の癖によって、あの子を守れなかったことを正当化しようとするために生まれた先生とヒナなど強者への嫉妬(?)とそれをかろうじて悪い考えと判断するだけの良心が生まれた。結果さらに戦闘狂になって湿度が増した。周りに向ける矢印は基本『嫌い』の上に少しの『嫌いじゃない』が乗るか逆にさらに『嫌い』が乗るかだけど先生とヒナちゃんに対しての『嫌い』はキノコが生える程度の湿気を帯びるようになった。
ちなみにトリニティ及びゲヘナへの憎悪はデフォであり、戦闘狂である自分が楽しいのなら相手(先生やヒナちゃん)も楽しいはずという思考もデフォ。

【先生の設定】
いろいろ限界ウーマン。初期の構想から変わったところはあんまない。
ヒバナちゃんへの執着と先生としての使命感が合わさった結果こうなった。別にヒバナちゃんの同類(戦闘狂)とかそう言うのではない。ヒバナちゃん曰く指揮してる時が一番輝いていた。それ以外はいろいろガタガタ。
現在ではヒバナに思いっきり依存してしまっており、今回の行動も先生だからと言う建前はあるものの、ほとんどヒバナに嫌われたくない、興味を失われたくないと言う思いから立ち上がる。

【ヒナちゃんの設定】
ヒバナの友人(自称)
小説を書く前の初期構想ではヒバナから先生への印象とヒナ(一般生徒)から先生への印象の対比をつけるためだけだったり、間に挟む日常パートに出すだけのちょいキャラにするつもりだった。しかし資料を調べていくうちにだいしゅきチュッチュ曇らせたい!と起動した作者の癖と、『ヒバナの物語』を締めくくる時に先生以外も激おも感情抱いてた方が面白いんじゃない?と言うクソみたいなアイデアの結果。
ヒバナを唯一気を許せる友人(一方的)として認識しているが、ヒナちゃんの周りにヒバナ以外で対等な友人がいなかった結果『友人』のハードルが上がり、その結果一般的な友人以上の感情をヒバナに抱いていることに気づかない。
ただしヒバナからはゲヘナデバフ&最強デバフがかけられた結果ちょっと湿度の高い仲のいい話し相手止まり。多分ゲヘナデバフがなかったらちょっと湿度の高い友人にまでなっていた。

【あの子の設定】
あくまで舞台装置的存在なので多分出ることはない。それなりに重い虐められっ子。全ての元凶。
(おまけ程度の裏設定)
実は前作主人公を意識して作られてたりするがこのキヴォトスでは先生が女性だから違う世界線。いわゆる前作だとIF時空になるので深く考えなくていい。前作みたいに裏社会で結構元気にやってるかもしれないけど多分登場するとしたらそれなりに重くなってる。それか前作とは違ってただただ可哀想な引き篭もりになってる。引き篭もりは確定事項。お外怖い。


【ヒバナ好感度メーター】
あの子(親友)>(越えられない壁)>(友人)>(越えられない壁)>ヒナ>風紀委員メンバー>ヒフミとか知り合い(あったら話す程度に仲がいい)>>>先生(声をかけられたら返す)>>>(越えられない壁)>害獣(害獣)

ヒバナは先生に

  • デレない(不屈の精神)
  • デレる(タイトル詐欺)
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