たぶんジュラ紀・白亜紀の頃だ。
彼女は其処に存在していた。
やがて太古の戦士と成る幼き子供と共に暮らし、小さな恐竜を狩り、ある時には大きな恐竜を狩り、彼と共にのびのびと何者にも縛られることなく自由に生活していた。しかし、本来の
その彼の傍らに彼女はいる。
彼もまた彼女がいるのはごく自然の事だと受け入れており、こうやって共に過ごすのは当たり前の事だと信じている。
だが、彼女は違う。
彼女は知っているのだ。
自分はこの
彼女は彼のように生身で五体のみを武器に強き好敵手と渡り合える膂力を持たない。だから知恵を絞り、とにかく罠を仕掛け、小さくとも恐竜を仕留めて、彼と一緒に彼らを食べる。
ふと気がつけばお前は
いつも不安そうに顔を強張らせ、あいつらと必死に戦おうとするお前がいた。おれのような
T-レックスよりも。
トリケラトプスよりも。
プテラノドンよりも。
お前は弱いはずなのに、それなのにお前は強敵に勝ってきた。ほとんど小枝のような手足をがむしゃらに動かし、あいつらに勝ってきた。震えながら、怯えながら、いつもおれの近くでお前はあいつらに勝ち続けてきた。
「ハルルゥ…ッ!!」
「GAOOOOOOOッ!!!」
そんなお前を傷付けた
アロサウルスの噛みつきを避けて、避けて、避けて、避けて、首に絡み付いて何度も殴り、お前の白い肌を傷つけた怒りをぶつける。噛みつき。蹴り潰し。握り砕き。殴り。殴り。殴り。殴り。殴り。お前のためにこいつを倒す。
こいつを喰らうために倒すのではなく、お前のためにおれはこいつを倒す。はじめての想い。おれは訳も分からぬままにこいつの首をへし折り、まだ怯えるお前にもう大丈夫だと触れる。
小さなお前。おれより弱くて膂力も瞬発力も強靭さもない小さくてか弱いお前はいつも隣に居続ける訳じゃない。
「ハルルゥ」
「は、はるるぅ…」
お前は安堵したように微笑む。
やっぱり、あの
お前を脅かす奴らはおれが倒し喰らう。
〈塩漬け前の戦士〉
白亜紀の戦士。
いつも隣にいる小枝のような痩躯の雌を気に入ってる。強くもないのに頑張っている彼女を見守りつつ、とても大切にしている。