塩漬け前の太古の戦士との生活   作:SUN'S

5 / 18
このお話の後半を変えました。

なんか違うかな?と思ったので、ごめんね?


白亜の時代に武術の兆し

彼女は自分を異物(転生者)と嘆く。

 

彼女は残り少なくなった塩を調達するために運河の流れ着く先に向かっていた。黒曜石の石器包丁、簡素な弓矢、不格好な石の槍を携えて、ひっそりと肉食恐竜を避けるように歩いていた筈だった。

 

ふと視線を感じて彼女は動きを止める。肉食恐竜の中でも素早く鋭利な鉤爪のついた。デイノニクスだとかヴェロキラプトルだとか。たぶん、そんな名前の恐竜と彼女は数百メートル越しに見つめ合う。

 

敵前逃亡───。否、絶対に無理だ。

 

しなやかで素早く疾走(はし)る事のみを追求した様な極太い両足の恐竜と長距離走を出来る程の基礎体力を彼女は持ち合わせていない。大きく小回りの利きにくい恐竜ならば逃走する手段は幾つも存在する。だが、あの恐竜相手に通用する物ではない。

 

「KYURUUUUUUU!!!」

 

甲高い雄叫びと共に駆け出してきた。

 

噛みつき、引っ掻き、引っ掻き、噛みつき、幾度となく超至近距離で振り回される天然の凶器に彼女は冷や汗を流す。これに当たったら絶対にヤバい!そう彼女は確信しながら無理やり身体をひねり、その鋭利な鉤爪を回避(かわ)したその時だった。

 

パシィィンッ!!

 

空気を切り裂く音───。

 

それは、ほんの些細な偶然の重なりだ。

 

彼女は全神経を回避行動に費やし、余分な力みを極限まで磨り減らし、恐竜の攻撃を回避していた瞬間に、偶然にも彼女の右手のひらが恐竜の頬面をハッキリと確実に捉えていたのだ。それは本当に偶然の重なりを経て、自分を喰わんと襲い来る恐竜相手に向かって鞭打を放った。

 

「GUGRUGAAAAAA!!?!?!?」

 

のたうち回る。

 

恐竜は誇りも自尊心もかなぐり捨て全身を振り回し、木々や岩にぶつかることさえお構い無しに恐竜は転げ回り、ようやく動けるようになると恐竜は彼女を見もせず一目散に逃げていった。

 

「るぅ…?」

 

どうしたんだろう?と彼女は不思議そうに首を傾げる。本当に偶然に偶然が重なって出来てしまっただけであり、彼女自身に鞭打を使ったと云う自覚は全く無い。むしろ彼女からすれば、いきなり恐竜はのたうち回り、自分を食べずに逃げてしまったのだ。

 


 

太古の戦士は花畑にいた。

 

この花畑は彼女と出逢った大切な場所だ。この花畑の近くに生える大樹の木陰でツガイと一緒に眠ったりするのは太古の戦士にとって、それは恐竜達と死闘を繰り広げる事より楽しく幸せな時間である。

 

「るるぅ…」

 

己の腕の中で心地良さそうに寝息を吐くツガイを見るのが何気なく太古の戦士は好きだった。ここで過ごす時間は彼と彼女の束の間の平穏な一時だ。恐竜達とて花畑を踏み締め、蹂躙する行為は避ける。

 

なんとなく花畑は避けて通るのだ。

 

憩いの場。不可侵領域。この花畑に入り込んだ生き物は花畑を出るまで襲ってはいけない。ごく当たり前のように、ごく自然と、そういう風に彼らは認識し、この花畑にいる。

 

「クカアァ…」

 

太古の戦士もまた欠伸を噛み締める。

 

ここは白亜の時代。弱肉強食の世界。されど彼らにとって大切な場所は存在する。その場所だけは決して汚してはいけない。

 

 

 




〈鞭打〉

最古にして最新の技術。

しなやかな動き。究極の脱力を経て五体は鞭となり、恐竜の硬く分厚い顔を叩いた。彼女自身は自分の放った痛打に気付くことはないまま、恐竜は喰えないと判断して逃げていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。