彼女は物語の始まりを自覚する。
ゆっくりと太古の戦士に近付く巨漢を彼女は知っている。太古の戦士と巨漢のやり取りを彼女だけは1億9000万年以前に知っているのだ。ああ、なんという幸運だろうと彼女は歓喜し、この時代に彼と歩める事を喜び、そして静かに嘆く。
彼女は太古の戦士と違って無力だ。彼らに対抗する手段はなく、ぴったりと彼の傍らにいなくては不安で不安で仕方無い。だが、それ以前に全裸の二人に近付く趣味を彼女は持っていない。
太古の戦士と巨漢は分かり合える。その様子を彼女は優しく微笑ましく見守り、真後ろにあったティラノサウルスの亡骸にビックリし、今まで出したこともないような「ふるきゅあ!?」なんて悲鳴を上げてしまった。
「グルルゥ…!?」
その悲鳴に太古の戦士は瞬時に牙を剥く。
しかし、真後ろにいるのはティラノサウルスの亡骸にビックリしている己のツガイだけ。ああ、お前はこんなに近くで見るのは初めてなのかと彼は納得し、ゆっくりと駆け足で彼女のところに戻った。
「ハルルゥ」
太古の戦士は彼女を安心させるように抱き締めて抱き抱える。彼女は世界は違えども見知った時代にティラノサウルスの亡骸と太古の戦士を連れて、確かに帰ってきたのだ。
米国某研究所───。
古代原人の研究のためにやって来た老科学者アルバート・ペインは困惑していた。彼は
ああ、実にとんでもない事だが。彼女は私達の言葉を理解し、既に言語を会得している!!それも私達の言葉や文字、文化にすら適応している!!
これは、ほんの数日の出来事だ。
彼女は研究所のパソコンを触っていた。最初は物珍しさに触れているのかと考えた。しかし、そうではない。彼女はタイピングを、熟練のパソコンマニアのごとくやってのけた!!
「ケッパー。君は何者なのかね?」
「るるぅ…」
アルバート・ペインの問い掛けに彼女は首を傾げ、やがて何かを理解したように彼女は太古の戦士の元に行き、彼女は自分と彼を交互に指差す。
その行動はペイン博士に向かって「私は彼の妻です」と言っているように見えた。実際に彼女はそう伝えようとしているのはペイン博士も理解している。けれど。その知能の高さは驚異的であり、下手に物事を教えるのは危険すぎる。
「はるるぅ」
「ん?これは、黒曜石の短剣…!」
黒曜石のナイフなど実物は何度も見てきた。しかし、そのナイフを使っていた張本人に手渡されるという経験は人類史上───。
ペイン博士が初めての事だ。
〈アルバート・ペイン〉
老科学者
某研究所にてピクルとケッパーを研究しており、数ヵ月後に日本へ連れていく際は必ず同行するつもりで二人と生活している。だが、その前にピクルの脱ぎ癖(やはり元々は全裸だったため、衣服は窮屈なのだろうか?)を治さなくてはいけない。