日本、某空港内────。
彼女はピクルとビスケット・オリバと云う二つの巨体に挟まるように歩いていた。ほんの一ヶ月前に衝突し殴り合った彼らの心情を女である自分に察する事は不可能と彼女は断じている。
ふとピクルに近付く花の香りを身に纏った女性。いつか見た覚えのあるリポーターだ。ずいっとピクルの傍らに寄り添ってリポーターの女性を威嚇する。かつてピクルがやっていたように、ケッパーも彼を取られまいと頑張っているのだ。
記者や野次馬、客は理解する。いきなり近付いていったリポーターの行動は、ケッパーにとって自分のツガイを誘惑する行為であると。その事実に気付いたリポーターはそそくさと離れていく。そうするのが一番と彼女も分かっているからだ。
「ハルルゥ…!」
「る、るるぅ」
大丈夫だよ!そう伝えるようにピクルは彼女を抱き寄せて、ゆっくりと抱き上げる。白亜最強にして最古の雄は浮気など絶対にしない。己のツガイはお前だけ。確かにピクルがそう言っているように記者は感じ取った。否、実際にそうなのだろう。
太古の戦士、ピクルは困惑していた。
自分とツガイの暮らす筈の部屋に八匹の雄がいることに?それもあるが己のツガイが、ただの一匹の雄に対して有り得ないほど怯えているのだ。あの黒く分厚い肉を備えた小さな雄より。しかし、ピクルはハッキリと確かに認識していた。
この強い雄は自分と同じ捕食者である!
「言葉は分からぬだろうが。ようこそ塩漬けの名で呼ばれる古の戦士よ。貴様との出会いを俺は感謝しているッッッ」
「グルルゥ…」
「オリバに先んじられたと聞いたとき、おそらく俺は初めてヤツに嫉妬していた。俺より先に、この範馬勇次郎より先に、古代の強さを味わうなどッ…実に、実に耐え難い話だったッッッ!!!!」
怒りの発露────。
範馬勇次郎にとって己こそ一番でなければ我慢出来ないと云う。あまりにも身勝手すぎる発言に一同は唖然とし、彼の言葉を理解するケッパーは流石は範馬勇次郎だと納得する。しかし、ピクルにとって範馬勇次郎の事情などどうでもいいことだ。
むしろ彼の心にあるのは「よくもおれのツガイを怯えさせたな!!」と云う。夫婦や恋人、家族、曇り無き最愛を護るために彼は怒り、範馬勇次郎の厳つい顔面をぶん殴っていた。
轟音────。
さながら地鳴りのごとく二人の拳はぶつかり合う。その様子をやって来ていた闘技者達は呆然と見ていることしか出来なかった。しかし、彼らの心は悔しくも悲しくも一つになっている。
あの地上最強の生物とッッッ、巨凶ッ…範馬勇次郎と互角に殴り合っているッッッッッ!!!!
羨望、嫉妬、憧憬、羨み、憎み、憧れ、焦がれて、八匹の雄は一様に範馬勇次郎とピクルの雄漢男比べを見つめている。あの厳つい顔が仰け反り、野性的な顔が跳ね上がり、土手っ腹に剛拳がねじ込まれ、双肩に鉄槌が打ち込まれる。
しかし、その闘争は一人の兵士の乱入によって終わりを迎えた。その兵士は怯むことはあれど。自分の任務を全うするために範馬勇次郎とピクルの闘争に割り込み、無事に任務を遂行した。
範馬勇次郎
地上最強の生物
ピクルと真っ向から殴り合う至福の一時を過ごし、ビスケット・オリバや郭海皇以来の強敵と闘争に満腹とは言えないものの満足して帰宅した。しかし、ケッパーにとって彼は最も恐ろしい雄である。