その男、商人であり将軍(仮)   作:ハーちみつNEXT

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お久しぶりです。
今回も仕込みの話ですね。 だいぶ難産でしたが……どうにかしました。次回は遂に………色んな話が書けるはずです。


15話 違和感と援軍の動き

王騎side 場所:乾原付近の山頂

「…………………」

 

瞼を閉じて思考する、これからどのように行動するべきか……思考する中で感じる敵軍の違和感。総大将は龐煖、しかし実際に軍を動かしている参謀は趙荘。他の武将は…万極、公孫竜、李白。

 

やはりしっくり来ない。

この森林地帯に引き込んでからの蒙武らに対しての落石などの動きは想定されていたものと考えていいでしょう。

 

しかし、その後がない。

ここまでは綺麗な手筋でこちらを誘導していたのに、最後の策は異常なほどの詰めの甘さ。あの落石を私に当てれていれば話は別ですがねぇ。

 

隆国がいながらも引き止められなかったことも考えると、釣り出された要因があるはずです。考えられるのは将軍という餌による陽動。龐煖か、それとも超荘本人か、はたまた影武者か。

 

蒙武や隆国が引き込まれる予定のあの釣鐘状の地形は壁と超荘の本軍で挟むことで、強力な力を発揮しますが私の軍を抑えていない以上、自分たちの軍も挟み撃ちが有り得るこの策は愚策と言わざるを得ないですね。

 

私の軍を抑えているのならこれは良策と言えるものですが………超荘さんはいったい何を考えているのでしょうか。

 

ゆっくりと瞼を開いて、目の前に広がる森林と空を見つめる。

やはり、いる。

私が放っている斥候よりも遠くに。

理論だけの読みではない、むしろ直感や感覚に近い。これらは知能型である王騎には本来無い感覚である。しかし、あの激動の時代を生き抜いた秦における大将軍の積み上げた経験は本能型の将軍の感覚に似たものに昇華されていた。故にいると判断した。

 

「騰。」

 

隣に立っている副官に振り向くことなく、森を見つめながら声をかける。

 

「はっ。」

 

いつも通り返事をする騰。

 

「本当に、この趙軍に超荘以外の参謀はいないのですか?」

 

王騎は思考した末に、疑っている事象を質問する。

一見すると今更質問するようなことでは無い。なぜなら、既に相手の陣容は割れているからだ。

しかし、それでも今の情報の信用性などを今の状態における戦場の違和感が上回った。故に騰に最終確認をしたのである。

 

「いませんね。()()趙軍には。」

 

騰は手元で剣を手入れしながら、そう答える。

その声色はいつもと何も変わらない。

 

「そうですか……」

 

副官の答えは私が持っている情報と同じものであった。

視線を空へと向ける。数えられるくらいの鳥たちが森から飛び立っていくのが目に入る。

 

「………………」

 

沈黙が続く。そんな中で王騎は結論を出す。

 

「この軍で蒙武と隆国の救援に向かいます。」

 

ハッキリと言い切る。良くも悪くも王騎自身はベテラン、つまりこれからの大いなる成長は望めないと言える。しかし、蒙武は若い。秦の今後の未来を背負って立つに値する将軍だ。あっさりと失う訳にはいかない。

そう王騎は判断した。故に救援を自ら向かうことを決断した。

 

「はっ。」

 

騰は予測していたのか、すんなりと受け入れる。

 

「騰、至急に軍の再編をします。至急、録嗚未と干央に伝令を。貴方の騎馬隊はここにて待機です。

その分、空いたところに録嗚未とその第1軍の騎馬隊2000を補充します。これは移動しながら私が吸収します。

それに伴い、録嗚未が率いていた第1軍の指揮権を干央に譲渡させます。干央含め、この森林地帯にいる王騎軍の指揮は貴方に任せます。」

 

と王騎が指示を出す。

 

「……なるほど、分かりました。」

 

少し間が空くが受け入れる騰。

自分をこの軍から抜くのは、それ相応の理由があるのだろうと先の指令から理解する。

 

「あと貴方には2つの役割を持ってもらいます。1つ、蒙武救出後に撤退を始めた時の殿。2つ、王騎軍と彼の連絡役。この2つです。」

 

彼、と王騎は言った。自分が胡散臭いと評した人物を騰は頭で思い浮かべる。

 

「…彼はくるのですか?」

「えぇ。来るはずです。」

「左様ですか。ならば、出番が来るまでは楽しみにここで待つとします。」

 

と返事をする騰の姿に焦りは無い。いつも通り、ゆったりと馬に跨っている。それを確認すると王騎は

 

「ンフフ…なら、ここは任せましたよ。」

 

とだけ声をかける。

 

「はっ。」

 

王騎は騰の返事を聞くと、颯爽と馬と共に山を降りはじめた。

 

 

 

 

***********

数日前

孝覇side

 

「殿、なぜわざわざ馬陽に遅れているのですか?」

 

優雅に1人で馬に乗っていたら、唐突に横に馬を並べてきた部下に話しかけられる。少しばかり納得のいってない顔をしている。

 

「バレた??」

 

どうやら、自分の所業はバレていたようだ。

バレないようにやったつもりなんだけどなぁ〜

 

「私どころか私の側近も疑ってますよ。」

「………俺の情報網があるだろ。」

 

まさかのカミングアウトを喰らい、それを踏まえて俺は少し黙って考えたが、結局はこちらの手の中にあるものをばらすことにした。

 

「えぇ。私も1部は動かさせてもらってますし。」

「それに、趙の北部から情報が入った。」

「ほう。正確な場所と内容は?」

「場所は雁門。内容は趙の北部軍10万が匈奴を10万以上を葬ったらしい。」

「………」

 

部下は沈黙する。

内心驚いてはいるだろうが、顔には出していない。しかし、眼が変わった。

 

「そして、これは趙の()()()()には何も引っかかってない。恐ろしいと思わないか?」

 

そう、肝はこれだ。普通の情報なら国の指揮系統を考えると中央に届けられる。それが今回は無いのだ。これは意図的に情報を操作しているか、運が悪く情報が届いていないかのどちらかだが……今回はあからさまに怪しい。

 

そもそも趙に置いて、異民族という存在は無視できない存在である。雁門という趙北部の防衛戦においての重要拠点で10万もの異民族を葬ったとなると、これは巨大な戦果であり、国としても祝うべきことであり、自分の名を中華に知ら占めるチャンスなのである。それを捨ててまで、得られるものとは何か……

 

そして、その戦が起こったのは趙北部。馬陽との距離は遠くは無い。つまり、戦で消耗していない軍を南下させると……あらびっくり趙軍が圧倒的有利な戦場に馬陽が変わる。

 

「…狙いは馬陽、それとも王騎将軍ですか?」

 

勘づくのが早い。ぐう優秀。

 

「馬陽が狙いとなると、既に動いているだろうな。」

「となると、王騎将軍ですか。」

「俺はそう踏んでいる。」

「両方というのは?」

 

部下の疑問が出てくる。当然とも言える。軍を動かすなら、最良の結果を得たいだろう。しかし、それは今回に置いては愚策になる。

 

「無くはないが、そうなると王騎▶馬陽の順番で策を動かすのは危険だ。王騎将軍という主を失った軍は尋常ではない力を発揮するだろうな。下手したら王騎将軍の手勢が全て秦北部に来る。火傷どころでは済まないだろう。」

 

「………………」

 

俺の考えを聞いて、部下は手を顎に当てて思考している。すると、ふと新しい発見をした学者のような顔をして

 

「殿、これは相手に取っては大いなる屈辱ですよ。」

 

と発言をした。

意図があまり読めない。

 

屈辱??」

 

俺は思わずオウム返しをする。

 

「自分が()()()()()()()()()()()に相手は引っかかるんですから。」

 

部下はそう発言すると、ニヤッと唇の両端が吊り上がり、嫌な笑みを浮かべる。背筋が凍るような、冷や汗が流れるような、そんな笑みだ。

そして、俺は彼の指す屈辱の意味を理解した。

確かに彼の価値観において、その形での敗北を喫することは屈辱と言える。なにせ、同じような策が故に技量の差、もしくは質で差がつくのだから。

 

「なるほどな……確かに彰の言う通りかもしれないな笑」

 

俺は苦笑する。

まったく、偶々縁があってこいつを登用したが性根は原作と変わってないらしい。こんなスカした顔からは想像しがたいほどの腹黒だ。これで矛まで扱うのだから相手からしたらたまらないだろう。こちらとしては嬉しい限りだ。

 

「殿!使者が来ました!」

 

と唐突に使者を知らせる大声が響く。

 

「どこからだ?」

 

俺は聞き返す。

 

「山の民の楊端和様からの使者です!」

「………なるほど、軍を止めよう。彰、天幕と使者をもてなす準備を。」

「はっ。」

 

彰は拱手して、この場を離脱する。

この知らせは俺と彰以外の幹部の面々を驚愕させることとなる。そして、そこでこの戦がただの防衛戦ではないことを認識することとなるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




数字のところは後で編集する可能性があります。ご了承を。

王騎…バタフライエフェクトで騰を残す判断をする。

オリ主…原作知識もさることながら、ちゃーんと網に情報引っ掛けている。李牧怖ぇよて思ってる。

彰…ダレナンダイッタイ

楊端和…持ってくる情報はオリ主の網のものと変わらない。
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