その男、商人であり将軍(仮)   作:ハーちみつNEXT

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今回はオリ主のお話と超荘視点のお話です。


17話 会議と凍る背筋

数日前

孝覇side

 

天幕の中で俺たちは、山の民からの使者を迎え入れていた。中には、うちの軍における幹部たちに集まってもらっている。

 

「………使者殿、それは間違いない情報か?」

 

詠が聞き返す。表情は変わっていないが、目が僅かに普段よりも開いている。

「アア、マチガイナイ。タシカニキョウドノ、レンチュウハ、チョウグンニヨッテ、クチクサレテイタ。」

 

山の民の使者はカタコトだが、ハッキリとした口調で話す。

 

「………どのくらいの数が討たれた?」

 

再び詠が口もとに手をおきながら聞く。

 

「オヨソ10万ダ。」

「10万!?」

 

羌象が思わず、驚く。そして、声が大きかったことに気づいたのか、やっちまったという顔をする。

 

「「「…………………」」」

「……www」

 

何も音がしなくなった空間と羌象の顔に俺は耐えられずに笑い声を漏らしてしまう。

 

「あっ………わ、笑うなよ!!何がおかしいんだぁー!!」

 

羌象が顔を赤くしながら、声を張る。周りの反応は、可愛らしいというか、愛らしいモノを見ているといった様子である。

 

「すまんww腹がwwww」

 

なお、笑いは止まらない。

 

「なーーんで孝覇が1番笑うんだよぉ〜(泣)」

「象のやっちまったて時の表情がwwおもろくてww」

 

羌象の心からの叫びに対して、俺は素直に理由を白状する。

 

「ねぇ彰、酷いと思わない!?」

 

羌象は孝覇が悪いということを認めさせるために、楽彰に同意求める。

 

「…いや〜そうは言っても……ねぇww」

 

楽彰も先程までは笑っていなかったが、羌象の必死な様子を見て、笑いを堪えられずに後ろを振り向きながら笑う。

 

「お、お前もかぁぁぁあ!!」

羌象は思わず、楽彰に詰め寄り、服を軽く掴んでしまう。

 

「象。」

 

と今まで一言喋っていなかった長髪の男、仙が象を止める。仙はチラッと山の民の方を見る。

 

「………ハナシテモイイカ?」

 

気まずそうに山の民の使者が話しかける。

そのタイミングで、やっと羌象は楽彰から手を離し、そそくさと元の位置に戻る。

 

「あ、あぁ。すまない。続きを教えてもらいたい。」

 

俺が謝り、続きを話すようにお願いする。

 

「シニカケノ、キョウドノヤツニ、ナマエヲキキダシタ。チョウグンヲ、ヒキイテイタノハ、''リボク''トカイウヤツラシイ。」

「李牧………私の記憶にそんな将軍の名前はありませんね。殿は?」

 

彰がこちらを見て聞いてくる。

 

「将軍としては知らんが、領主としては知っている。」

「と言うと?」

「李牧は趙北部にある雁門と言われる防衛拠点の領主だ。」

「特徴は?」

「民からの人望も厚く、聡い。実際、雁門で李牧のことを悪くいう人はいない。と言った感じだ。」

彰の質問に答えていく。彰はふむふむといった感じの表情だ。

 

「…殿、雁門の位置を教えてください。」

泳が地図を広げている場所に近づき、質問してくる。

 

「…だいたいここだ。」

俺は地図を見て、大体の位置を指さす。

 

「……………まずい。」

「どうゆうこと?紫詠??何がまずいの?」

 

詠のつぶやきに象が疑問をぶつける。

 

「象、今回の戦いはどこで起こると思う?」

 

俺が割って入り、質問を投げる。

 

「どこって、馬陽近辺のどこ……だろう…あっ!」

 

気づいたかな??

 

「そうだな。少なくとも、今回は馬陽付近での戦だ。それでお前がもしこの状況で、雁門の数万もいる兵を率いる将軍だったらどうする?」

俺は雁門の位置に指をさしながら聞く。

 

「……雁門から、軍を南下させて馬陽の戦いに参加する。」

 

羌象は地図の雁門から、すぅーーと指を移動させて最後には馬陽まで持ってくる。その様子をみて、

 

「正解〜」

 

俺はそう言いながら、手を叩く。

 

「おーーいいね〜」

 

今回の戦の、情報担当である廻も褒める。そんな、廻は1人椅子に座ってくつろいでいるが……まぁ、いいだろう。

 

「なら、早く先に行ってる秦軍に伝えないと不味くない?」

 

象はその先のことも考える。

 

「まぁ、待て象。今回の情報源はどこだ?」

 

しかし、それを羌象と同じ女性幹部であり、俺の近衛兵をまとめている冥が止める。

 

「どこって、山のたm……あっ。」

「そう。普通の軍は山の民なんかの情報を信用しない。それに、この情報は全くと言っていいほどに情報漏洩していないのよ。そのくらいやる将軍が馬陽付近を見張ってないと思う?」

 

冥は綺麗に、順序だてて象に説明する。俺もちなみに同意見である。

 

「思わない…」

「そう、つまり今から伝令を出しても信用されないかもしれないし、下手したらこっちの情報が透けることになるわ。」

 

冥はそう締めくくる。

 

「なら、これからどうするの?」

 

象はこれからの行動を聞いてくる。

 

「それは、今から俺が話すから。

まず、軍の足を少しだけ早める。馬陽の2個手前の街までは進むことにする。その間に通る街で冥は、俺の名前と金、そして食料を担保にして兵を雇ってこい。名簿を作ることも忘れずにな。」

 

早速、俺は指示をとばす。事前に決めていたものだ。

 

「分かった。」

 

冥はハッキリとした声で返事をする。

 

「次、彰、泳、仙は変わらずに自分の隊と共に前進。ただ、いつでも走れるようにはしておいてくれ。」

「「「はっ。」」」

 

3人揃っての返事だが、三者三様の言い方で返事が返ってくる。

 

「象、お前の隊は2つ先の街で離脱してもらうから、バラバラになってる隊の奴らに声を掛けとけ。詳しい指示は後で出す。」

「了解。」

 

さっきまでとは違う目をした羌象が返事をする。

 

「廻、馬陽の2個前までは今まで通りに斥候を走らせろ。2個前に着いたら1度斥候は止める。」

「分かりました。」

廻は椅子に未だに座っていながら、返事をする。

 

「あとは、着いてから指示をだす。問題ないなら解散だが…何かあるか?」

「「……………」」

 

問いかけるが、返事は無い。

 

「ないなら、解散する。使者殿、今回はわざわざこんなところまでありがとう。助かった。」

 

素直に山の民の使者にお礼を述べる。

 

「モンダイナイ。」

 

仕事をしたまでといった態度で返答をしてくれた。

 

「其方の主である楊端和殿にも、礼を言っておいてくれ。」

「ワカッタ。デハ。」

 

しっかりと、楊端和(古馴染み)へのお礼も伝えるように頼むと、すぐに返答をし、颯爽と外へと出ていってしまった。

 

 

 

 

 

******************

 

 

 

 

 

超荘side

開戦して直ぐに超荘軍は虚をつかれたと言える。

その事実がいかに大きいかを示すかのように録嗚未を止められる雰囲気は一切ない。

 

 

「侵入した敵軍の勢いが止まりません!!左軍の中団に差し掛かりつつあります!!」

 

伝令兵が伝えてくる。

 

「チッ!」

 

超荘は、無惨にも自分が手塩にかけて育てた兵たちが討ち取られている光景に思わず舌打ちを漏らす。

 

自分の認識が甘かったと言えばそれまでだが、それだけでは無い。超荘は李牧の策を聞いた上で、この場にいる数少ない人間だ。つまり、目的は李牧の策が成る時まで耐えることなわけである。

 

それが故に、今の王騎本軍 vs 超荘軍 の構図の戦では勝利を望まなくなってしまったのである。この僅かな隙は、超荘が戦の目的を低く設定したことで生み出されてしまった。

 

しかし、超荘も無能な将ではない

 

「敵の狙いは左軍を貫くことだ。本陣ではない。

左軍の横の兵たちを後ろに回して厚みを作れ!」

 

すぐさまに敵の狙いを見切り、指示を飛ばす。

まだ戦は始まったばかりである。

 

しかし、録嗚未の対応にバタついている趙軍を見ていて、王騎が手を緩めるわけがない。間髪入れずに次の動きを起こす。

 

「「「うぉぉぉ!!」」」

 

と声を戦場に響かせながら、秦右軍の全歩兵たちが前進し始めた。王騎は録嗚未への対応から、趙軍の左右の特徴を分析した上で、再び秦右軍を趙左軍にぶつけることで致命傷を与えることが目的だと推測した。

 

再び、趙軍の弓兵たちは矢を構える。秦の歩兵たちはそれでも、速度をゆるめない。

 

秦の歩兵たちに趙左軍から弓矢が放たれる。

しかし、万全では無い左軍から放たれた矢の数は多くは無い。だが、相手は歩兵である。騎兵はともかく、盾を持たない歩兵に弓矢というものは強力である。

 

当たると超荘は確信する。

しかし、その予想は覆される。

 

「左方転回!」

 

その声が響くと、秦右軍の歩兵たちは左へと進路を変える。速さは一切緩めない、そして歩兵たちの向かう先は

 

「まさか、こちらを狙っているのか!」

 

超荘の側近は思わず声を上げてしまう。

そう、歩兵たちの狙いは超荘が身構える本陣であった。

それを認識すると超荘は

 

「左軍の第2、第3隊を前に出せ!秦軍の横を突かせる!」

 

直ぐに対応策を出す、それに伴い左軍の歩兵たちが前へと進む。

秦軍の横腹を見事に突く形となった。

 

(甘いぞ、王騎。まともに鍛え上げていない歩兵たちで本陣を狙うなど……)

 

「ドドドドド」

「ん??」

 

不自然な音が趙本陣に聞こえる。思わず超荘は右を見る。しかし、秦の左軍は動いていない。音の出処を探ると、

音は左から聞こえてきていた。

 

左へと視線を向けると、砂埃の中から黒く染められた騎馬隊が王騎を先頭にして現れた。

 

姿が見えた時には、時既に遅し。趙中央軍は真横から攻撃を受ける形となる。

 

(まずい……)

 

超荘がそう思った時には止めようがなく、一気に趙中央軍の内部に王騎軍は侵入していく。

想定を上回る突破力に趙中央軍の指揮系統は機能不全に近い状態になる。

 

しかし、超荘は今回の戦の進み方に違和感を感じる。

早すぎる。らしくないのだ。

王騎という将軍は万能といって差し支えない。自分自身で戦場を切り開くことも、自分以外の軍や敵すらも動かして戦を行うことも出来る。

 

しかし、こんなにも早く戦を展開する将軍だったのかと超荘は疑問を持つ。

蒙武たちは瀕死だが、趙軍は蒙武たちの包囲を解いている。

そんな状態のこの戦を急ぐ理由など…………

 

 

 

体温がぐっと下がり、冷や汗が出る。

 

寒気が走る。

 

背筋が凍る。

 

 

それらの現象が超荘を襲う。

 

 

あった。

一つだけ。

 

一つだけ、この戦を急ぐ理由が。

しかし、しかし、それは有り得ない。有り得ないはずだ。

 

だが、あの軍のことを考慮することなんて…この戦の全体図を知っているのは私と公孫龍、そしてあの方だけだ。

 

それ以外は知らない。

 

その事実を知ることは、自軍の将軍たちでさえ無理だ。それを王騎が知ることは不可能だ。

 

何故、王騎は趙の北東部にいる軍が()()してくることを知っているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




超荘…優秀なんだけどねぇ〜良くも悪くも突き抜けてない男。何かが足りてない。

彰▶楽彰………イケメン腹黒(?)なやつ。めっちゃ優秀。

詠▶紫詠………長髪イケメン、妹(形式だけ)大好きマン。

仙▶???……長髪で無口なイケメン。

これより下はオリジナルキャラとなります。

冥▶銀冥……女性幹部。今回は孝覇の持つ近衛兵のまとめ役として参戦している。少しだけ訳ありの銀髪美女。

廻▶音廻(ねかい)……能天気でゆるーい雰囲気を醸し出してる細目の男幹部。女の扱いが上手なのでモテる。
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