その男、商人であり将軍(仮)   作:ハーちみつNEXT

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お久しぶりです。
学業が忙しく消えていましたが、投稿をとりあえず再開します。
頻度は申し訳ないですが分かりません。
ご了承ください。


18話 反転する戦場

三人称視点

 

王騎が総大将がつとめる秦軍と龐煖が総大将をつとめる趙軍の戦が始まって、はや5日目。

 

乾原から場所を移したこの森の中の戦場で秦軍と趙軍によって囲まれたスペースで、初めて総大将同士は目線を交え、言葉を交わす。

しかし、そんな時間は長くない。

王騎は過去との決別のために。

龐煖は自分の武の証明のために。

外野に入り込む余地は一切ない。

 

 

互いが矛を握り直し、構える。

 

 

この戦の行方と互いの命運を掛けた一騎打ちが幕を開けた。

 

 

 

 

録嗚未side

 

録嗚未は後ろへと陣を下げて、布陣している超荘を自身の眼で捉えていた。

 

「録嗚未様!!見えましたぞ!あそこが趙軍本陣です!」

「よし!てめぇら、超荘の首を取るまで止まるんじゃねぇぞぉ!!」

「「「おぉぉぉ!!!」」」

 

自身が引き連れてきた兵とその他の騎馬隊も1部が合流し、1つを錐型を作り、突撃をする。

目の前の敵をなぎ払い、進む。

進む。

進む。

何回も趙軍は道を阻もうと壁を作る。

しかし、止まらない。

録嗚未たちは決して止まらない。

目的を達成するまで彼らは一度も止まることはない。

 

 

 

 

 

三人称side

 

互いの矛が音を立てて、ぶつかり合う。

互いの技術が。

互いの力が。

互いの意地が。

何度もぶつかる。

武器だけでは無い。2人の中に渦巻く思いも交錯する。

 

 

 

龐煖は理解できない。王騎から感じる矛の重さに。

一方、王騎は理解する。この男の矛の軽さの理由を。

王騎は

 

「龐煖、貴方には理解出来ないでしょうが、13の時から数多の戦場を駆け抜けてきた私の双肩には、数万の戦友、葬ってきた数十万を超える敵、彼らの命と共に散ってきた思いが重く宿っているのです。もちろん、貴方が葬った摎もです。」

 

と龐煖に告げる。龐煖は認めない。いや認められない。

何も世の中に生まない戦から、そのような力が誕生することなど、まやかしだと心の中で否定する。

 

「語るに足らん。貴様らはずっと思い違いをしている。死者の思いなどただの夢物語だ。死者は黙って土くれになるだけだ。」

「んふふ。やはり、貴方とはとことん相容れないようですねぇ。」

「当たり前だ。」

 

相容れない2人。再び矛は交錯する。

互いの矜恃を掛けて、相手を打ち砕かんと矛をぶつけあう。

龐煖の技術が王騎の矛を掻い潜り、鎧の下の皮膚と肉が裂ける。しかし、王騎は倒れない、砕けない。矛の重さは変わらないどころか、増していく。

龐煖が振る矛が弾かれだす。

防御をしようと弾かれる。

攻防は王騎が中心へと動いていく。

 

王騎が矛を振るう。

龐煖が止める。

止めらない。

軌道こそズレるが、止まらない。

 

王騎が再び龐煖の防御を打ち砕かんと矛を振るう。

負けじと龐煖も矛を繰り出す。

 

「「'ド''ゴ'''」」

 

しかし、王騎の矛は振り抜かれた。

龐煖は体勢を崩す。秦軍から歓声が漏れる。

王騎が矛を振りかぶる。

 

 

 

 

 

 

王騎は矛を下ろさない。下ろせない。ふと視線に入ったものが矛を止めさせたのである。

龐煖から目線を移す。

その遙か先から、騎馬の軍勢が凄まじい勢いで迫っているのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王騎side

 

王騎は矛を下ろし、凄まじい勢いでこちらへと向かってくる軍勢を視界に捉える。

その軍勢は紛れもない趙軍であり、王騎の目で見る限りは3万はくだらないと判断した。

 

王騎は自身の戦略においての敗北を自覚する。

見落としがあった、相手の情報にではない。自分への分析に綻びがあった。それを敵の黒幕は突いてきたのだ。それを知った時に少しだけ汗が流れる。

しかし、自分への失望はなく、身体の体温が下がる事もない。

気づいた時には王騎の口の両端はつり上がっており、口角も僅かに上がっている。

 

自ら、そして秦軍全体が死地へと陥った状態。

秦軍の面々は思考を放棄していた。敵の第1陣が突撃をしてくるのも防ぐことが出来ず、蹂躙される。

王騎の配下たちは、1対1の構図を中断する判断をし、王騎の周りを取り囲む。

 

周りの秦兵たちを見渡すとこちらに視線が向いている。王騎は更に口角を上げる。

 

「ンフフフ。見事にしてやられましたよ。これほどの死地は久々です。しかし、だからこそ血が湧きます。」

王騎の顔を見て、秦兵たちは理解する。

まだ、将軍は諦めていない。と。

 

「戦線は崩さないように下げて構いません、殿を玄維と周央で指揮を。「「ハッ!」」西登は歩兵たちを集めて移動を。「ハッ!」他は自分の部隊をまとめ、後退で大丈夫です。「「ハハッ!!」」」

 

王騎は部下たちに速やかに指示を出し、自分も馬を走らせようとする。

 

「どこへ行く。王騎。まだ決着は着いていないぞ。」

 

龐煖が迫ってくる。

王騎は内心で舌打ちをうち、馬を龐煖の方へと返す。

どうやら、因縁の一騎打ちはまだ続くようだ。

 

 

 

 

 

 

 

李牧side

 

李牧は一安心し、拳を握る。

超荘や一部の他の将校を失ってしまったが、それに値すべき戦果を得られそうなことにひと安堵する。

もう、王騎に打てる策は無い。そして、この状態を覆す援軍もない。唯一の不安要素は王騎の副官の騰が見えない事だけですが……他の王騎軍は趙の将軍たちが足止めしている状態では援軍はせいぜい3000といった所だと李牧は踏む。

 

しかし、今回の戦は秦軍に勝つことが目的ではない。

王騎を討つことが今回の目的なのだ。

遠くの場で龐煖と王騎が一騎打ちをしているのが見える。

ただただ見つめている。

 

「李牧様、第3陣と第4陣も配置が完了したみたいです。」

 

カイネが馬を寄せてから、報告をしてくる。

 

「そうですか。カイネ、報告ありがとうございます。」

「………しぶといですね。」

「えぇ、さすが王騎です。易々と死んではくれませんね。」

 

李牧はそう言いながら、総大将同士による一騎打ち眺めている。

 

「しかし、遂にあの王騎が死ぬことを目の当たりにするのは不思議な気分ですな。李牧殿。」

 

魏加は2人の会話に割って入り、そう発言する。

カイネは魏加の方へと体を向ける。

李牧は戦場から目を離さずに

 

「えぇ。王騎は間違いなく時代の傑物であり、秦における象徴ですからね。それが戦場から消え去るというのは想像しがたいものです。」

 

と魏加へと返答を返す。龐煖と王騎の一騎打ちは未だに続いており、一進一退と言える攻防である。

 

ふと、一騎打ちが途切れる。

王騎が自らの兵たちに話しかけているように見えた。

少しすると、秦軍の士気が上がり、僅かだが戦線が押し返され始めた。

 

李牧はそれを最後の悪あがきだと判断した。

もはや、どう考えようともこの状態で打てる策は無い。自分でも同じ判断をする。しかし、最後の悪あがきだからこそ下手を打つと火傷をする。

そう考え

 

「第2陣を突撃させます。準備を。」

 

李牧は指示をする。周りは少しばかりポカーンとするが、間が空くと指示を理解したのか、伝令たちが動き出す。

李牧は視線を再び、龐煖と王騎の一騎打ちの方へと移す。

正確には、王騎守らんとして自分たちの軍に立ち向かう兵たちを見ていた。

 

王騎軍所属の兵、徴兵されただろう兵たちも等しく絶体絶命の死地を恐れていない。目が逃げていない。

 

これだから、戦は…………

 

「必死ですね。」

「当たり前です。王騎という将にはそれほどの器の持ち主です。それに王騎軍の面々は長年戦場を渡り歩いてきた戦友です。命を掛けることなど惜しくないのですよ。」

「…………私も相手の立場なら命は惜しくないです。」

「だから……………戦というものは好きになれません。」

 

第2陣が突撃を始める。戦線を維持している秦軍に穴が出来る。しかし、崩れない。

やはり、王騎という象徴がいる限り秦軍は折れないと李牧は悟る。

「では、私も。」

 

と魏加が拱手をして馬を反転させる。

李牧も拱手で答え、馬を進め始めた魏加に対して

 

「ありがとうございます。魏加殿。」

 

と返す。もちろん、李牧は魏加の覚悟を察した上でこの返しをしている。

それの感謝の言葉を背中で受け取った魏加は振り返ることなく、馬を更に進めて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

李牧か戦場を再び俯瞰し、次の指示を飛ばそうとしたとき、急報!!という声が耳に入る。

 

「王騎の副官、騰が左の道から約3000を率いて進軍中!!」

 

左に視点を移すと、遠くからだが騎馬と歩兵が来ていることを確認する。

馬ごと向きを左斜め前へと変更する。

 

細い道から砂埃が少し見える。

(やはり来たか。)

 

李牧はその光景と事実を冷静に受け止める。この戦場にそもそも騰がいなかったことは想定外だが、いないなら必ず優秀な副官である騰は援軍という予想が立つ。

(しかし、時間がなかったのか迂回することはしませんでしたね。)

 

騰の軍勢を見ると李牧の目測でも約3000。歩兵と騎馬が半々に見える。

(この短時間で兵をまとめて援軍にくるのは見事ですが、思いどおりにはさせません。)

 

「第3陣の8000をそのまま左から来る騰軍の壁にします。道を塞がないように布陣をするように伝令を。道の右側は空けてて構いません。本陣にだけ来させないようにお願いします。指揮官はそのまま平韓で構いません。」

「ははっ!」

 

李牧は第3陣として用意していた兵たちを動かす判断をした。しかし、騰をここで仕留めるつもりは無い。あくまでも本陣へと来ないための壁である。それに、下手にあの道を閉じると王騎の私兵たちが王騎を生かそうと、更に必死になることを考えての布陣であった。

 

上策も上策。

王騎を殺すという目的を果たすための道筋は決して間違いでは無い。

 

 

 

 

 

 

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ゾクッ

李牧は悪寒を感じる。

見えない何かを感じ取った李牧。理屈では無い。

雁門含めた趙北部での、数えられないくらいの戦場に立ってきた李牧の第六感が危険を知らせている。

視線の先に映る騰、王騎ではない。

別の何かが来る。

体が先に動き、李牧は自分の後ろを振り返る。馬はそんな挙動についていけていない。しかし、李牧は体だけ捻り、後ろへと視線を向ける。

 

 

 

 

李牧はその眼で捉える。

 

 

 

 

この地に足を踏み入れようとする軍の姿を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




文量が少なくてすみません……いかんせん長くしようとすると、原作と同じになるので…

ということで、次回がネタばらし回ですかね〜。

あっ、ちなみに超荘はちゃんと録嗚未が討ち取りました。
この世界線なら、録嗚未はちゃんと評価されるはず(?)
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