次は今回の話と同時刻か少し前のオリ主視点になると思います。
政side 場所:王宮前
(チッ)
一人、また一人。次々と押し寄せてくる兵たちを剣で斬りながら周りの状態を確認する。王都の中、そして王宮の近くとは思えないくらいに凄惨な状態だ。鼻を通る鉄の匂い、身体と精神を不快に導く血と汗、そして殺人をする感覚。開戦して、しばらくしてもそれらは拭えない。蓄積するばかりだ。もはや、幾らの時が過ぎたかも分からない。
同胞たちのことを見ると、倒れながらも立ち上がり戦う者。武器が使い物にならなくなり、次の武器を拾いながら応戦する者。俺の方を見つめながら死に絶える者。仮面をつけ、独特の武器を携えながら敵と切り結ぶ山の民。歯がゆい状態だが、耐えるしかない。この戦の決着は別働隊に任せるしかないのだ。勝利条件はシンプルだ。この時、俺は難しく考えるのは辞めた。目の前の相手に淡々と俺は構える。目の前の敵との戦闘に負けないために。こんな場所で死なないために。そして俺の夢を途絶えさせないために。ここまで来る道のりで死んだ同胞のためにも
(負けられない。)
戦において守ることは、攻めることよりも時間を長く感じ、そして疲労を実感する。守りきる中で重要なのは戦闘継続の意思・士気をどれまで維持できるかにかかっている。
「聞け!!必ず我らの別働隊が敵の大将を討ち取る!それまで耐えれば俺たちの勝ちだ!!死んでも耐え抜くぞ!!!」
嬴政の声はよく響いた。味方たちの
「「「おおーー!!!」」」
と応える声が聞こえる。士気をあげることに成功した嬴政は再び剣を構える。決して武芸が達者とは言えない若い王の構え。しかし、それはどこか鮮やかさを感じるものだった。その剣には確かな努力と何事にも対しても揺るがない信念が乗っていた。
楊端和side 場所:王宮前
(やるな。秦王。)
山の民の女王である楊端和は、自分の近くにいる嬴政を見て確信した。これこそ山の民と秦、そして中華を繋ぐ王であると。
(結局、やつの言ってることは当たりだったな。)
と1人の男を思い浮かべるが、直ぐに消す。ここは戦場だ。余裕はいいが、油断は身を滅ぼす。嫌という程自分の夢のために戦争をしてきたのだ。こんなところで終わらせる気は毛頭ない。
「秦王はなんと?」
付近にいる秦の言葉が分からない仲間が聞いてくる。
「1人につき、あと40人殺れとの指令だ。」
「そうですか。容易いことです。」
すんなりと受け入れる仲間。ほんの少しは冗談だと言うのに、それに当たり前のように返答する様子を見て、改めて仲間の頼もしさを実感する。尋ねた仲間以外の連中もまだやれるようだ。各々武器を取り、再び抗戦し始める。
「頼もしいな………なら私は100ほど殺るか。」
仮面の位置を調整し、愛刀である双剣を携え、女王は再び戦場を駆け巡る。秦の西に広がる山界を武力にて治める女王が、山界での戦闘と同じく自ら戦場で先頭に立ち、剣を振るう。そして、女王の華麗な剣戟を振るうその愛刀には、秦王への期待と磨きあげられた技術が乗っていた。
信side 場所:王宮内
(あ…………やべぇ。負け…)
意味のわからない巨人に突き飛ばされ、壁に打ち付けられる。受け身が一切取れずにいたせいで、全身が痺れ出した。視界がボヤボヤしだす。身体から力も抜けていくる。その最中今まで考えたことの無い思考がされた。同じ奴隷だった漂との剣の特訓の日々や、今まで倒した2人の敵との戦闘でも恐怖や畏怖ことあれど、負けを意識したことなんて無かった。自分の勝ちを負けるまで疑ったことはない。しかし、信は今、その負けの意識に呑まれつつある。一度も出会ったことの無い感情、意識。それらは信の灯火を消すには充分なものだった。
(ここで………終わり……)
意識が沈む。深く深く沈んでいく。信の意識が一人では二度と戻ってこれない深さの底へと沈んでいく。
「信!!!」
聞こえる。やまびこをするかのような、遠くに届かせることに精一杯声を張り上げる小さな子の声が。
「天下の大将軍になるんだろ!!」
(大…将軍!)
重かった瞼が上がり、暗かった視界が明るくなる。痺れていた身体が立ち上がる。手を離していた剣を床から拾い上げ、握り直す。
(そうだ。この戦いは始まりだ。俺の天下の大将軍になるための。)
見つめる。超えるべき壁である敵を。終着点はここでは無い。
あくまでこの戦は通過点、その先に自分が求めているものがあると心に言い聞かせる。奴隷として売られ、下僕とも商品とも商人たちに呼ばれる。そんな馬車に揺られる中で見た景色が蘇る。馬に乗り、地平線を埋め尽くすかのような兵たちを率いている1人の将軍の姿が瞼の裏に再び焼き付く。
(考えろ、あいつを超える方法。)
折れていた心は戻り、その目には戦意、そして決意が宿る。
再び下僕の少年は剣を握る。構えはしない、空き時間に今は亡き親友と2人で鍛えた荒々しい剣を携え、少年は巨大な敵へと一直線に向かう。その剣には勝利と身分を弁えぬ夢が乗っていた。
嬴政
原作通り。ただの中華統一したい王様。
楊端和
原作でもこの時点では掘り下げがあまりないというか、心情をあまり描写していない気がします。まぁ、行動で示しているので原作で描く必要がない気もします。
信
いつも通りの主人公。嘘みたいな巨人との戦闘中。
オリ主
あれ???いない……(安心してください。咸陽にはいます。)