眠いです。
ということで本編どうぞ。
―― side 場所:王宮内 時刻 王騎到着〜王騎問答終了後まで
男は木で作られた小さな道具箱を持ちながら通路を歩いていく。普通の商人なら見るに堪えない景色を目に映しながら。
(右龍に来たはいいものの、詳しい道は知らないからな。これで王宮につかなかったら困るな。)
つい少し前に王騎将軍にお願いして、梯子で下に降ろしてもらい、右龍から別働隊が辿った道を俺も歩いていた。まだ戦闘が終わってから時間はそんなに経過していない、ゆえに死臭はしない。しかし、相変わらず戦場というものは血のせいで鉄臭いものである。それに今回は室内だから尚更である。しかし、そんな臭いもしばらくしていると鼻が慣れてしまい、何も感じなくなる。ある意味この鼻という器官が1番使い物にならないのかもしれない。
「うぅぅ…」
おっと、また倒れて苦しんでいる人発見。見たところ成蟜側の兵のようだ。柱に背を預けて座り込んでいる。
「おい。大丈夫か?」
「うぅ。腕が。」
「あー右腕か??」
と聞くと首を縦に振りながら頷く。顔がしわくちゃになっている様子を見ると、少し前まで泣き叫んでいたのかもしれない。
「どこら辺が痛いんだ??」
と聞くと左手の人差し指でちょうど腕の真ん中辺りを指差す。
「折れてるかもな。少し待て。」
と俺は言いながら懐から小さなナイフと道具箱を取り出し、道具箱からは布を取り出す。
「少し体を柱から離してくれるか?」
と言うと頷き、少し前に進んでくれた。俺は布を相手の左肩からだいたい腕を真横に畳んだ高さから相手の右肩を通し戻してくる。そして少し長めにナイフで切る。
「腕を体の内側に畳めるか??」
と言うとうめき声に近いものは上げていたが何とか腕を曲げて畳んでくれた。
そして布を左肩から通し、腕の前から腕の下を通してから右肩に持ってくる。そして首の後ろで結ぶ。
「よし。こんなところだ。激しく動くのはしばらくやめにしな。それと、余裕があるなら医師にも見せるといい。あくまでこれは緊急用の処置だからな。」
「助かる………」
戦の疲れと痛みから顔は上げれていないがなんとかなりそうだ。
そのまま俺はあっちこっちに剣や血が散らばっている右龍を進む。
パシャパシャと鳴り響く俺が歩くことで血の池から血が飛び散る音、積み上がっている死体、折れた剣や槍、何もかもが戦争を象徴するものだ。もう慣れたものだが、慣れたくない。大人になるのが嫌な青年のような感情が湧いてくる。
(はぁ。早く家に帰りたい。)
心のそこから俺はそう思う。
遂に王宮へと繋がる入口が見えた。扉は完全に開いているので僅かに戦闘の後が少し遠くからでも見える。そして、王宮の入口につくと、そこには王宮とは思えないほど凄惨な現場が広がっていた。そこに俺は足を踏み入れる。大きな柱、そして王が座るであろう玉座、入口から1歩のところで止まって眺めてしまった。特に玉座なんかは成蟜がこだわる気持ちも分からんでもないと思うほどにオーラというか雰囲気を感じる。なんやかんや王宮に入るのは初めてである。
「何者!?」
と髪を後ろでまとめている既にボロボロの男が尋ねながら、剣を構えてくる。これなら素手で余裕で勝てそうなくらいヘトヘトで立ち上がっている。もはや、心配である。
「んー。答えたところで疑うでしょ?おっタジフじゃん。見た感じ、傷は深くはないみたいだな。」
「豕翫°(伯か)」
「荵@縺カ繧翫□縺ェ(久しぶりだな)」
「なっ!タジフ知り合いなのか!?」
と男は驚く。タジフは男に対して親指を立てて、グッとしている。男はこちらを見ると
「君は山の民なのか??」
「違うよ。平地生まれ、平地育ちの立派な秦国民。」
「ならなぜ、山の民の言葉を話せるんだい??」
本当に意味が分からないといった顔で尋ねてくる壁。
「幼なじみというか、古馴染みというか。そいつが山の民でね。幼い頃からある程度の年齢まではずっと会ってたから、それで互いの言語を大人を交えて話ながら、教えあってそれで覚えた感じだね。」
「そうなのか。」
「その子は大丈夫そう?」
と俺は変な被り物が近くに転がっている少女を指さす。
「あっ、あぁ。傷は深くはないみたいだ。幸いだが中に楔帷子を着ていた。今は刺された衝撃で気絶しているみたいだ。」
「そうか。良かったな。」
「……………改めて、名前を教えてくれないかい?私は昌文君配下の壁という。」
「伯だ。秦国内で商人をしている。何か買いたい時はウチの店に来れば初回だけ少しは安くしてやるぞ〜。」
「商人!??なぜこんな戦場に来ているんだ!??」
俺のちょっとしたセールストークをフル無視で俺に質問をとばしてくる壁。本当に俺の事を心配しているようだ。
「そんなにおかしいか?商人は安全と利益を天秤にかけて商売する。俺はここが確実に安全ではないが、ここに来た。それは大きな利益を得られるから来たわけさ。単純なことだよ。」
「幾らなんでも王宮に来るのは…………下手したら罪に問われるぞ。」
「そこも含めて大丈夫だから、来たんだよ壁。安心しなよ。君が俺の処罰の減免のために奔走する必要は一切ない。」
「そうか………」
と壁は胸を撫で下ろしているようだ。
扉の向こうから、雑音に紛れて階段を上がる足音がする。
戦が終わってここへと真っ先に来る人物は1人しかいない。
(割と早かったな。)
「壁。王の帰還だ。出迎えなよ。」
「えっ?」
壁は意味が分からないといった顔をしているが、その直後にギ゙ィッと音が鳴り響く。王宮へとはいる扉がゆっくりと開けられる。その中から出てくる黒髪で、長さは肩の少し上で揃えられ、服は返り血や破れた部分、荒んで色が落ちているところと綺麗ではないがどこか身体全体に纏うものがある若い少年。
(相変わらずどこから見ても絵になる王だ。)
と横から眺めながら改めて思う。
紆余曲折を経ながら、蜘蛛の糸のような僅かな希望と可能性を掴んだ男が再び王として今、玉座へと帰還した。
右龍にいた兵たち
急に現れた簡易的に治療をしてくれた謎の男に大感謝している。
壁
地味な男。至って真面目がゆえに頭が固い。オリ主との相性は至って普通。
オリ主
傍から見たら服装に違和感のある医者。本職ではないから、あくまでも応急処置しかできない。壁に遭遇。タジフと話すことで信用を得ることに成功。
河了貂
気絶している。傍から見たら屍でしかない。
右龍の戦いの結末
左慈が死んでから士気が保てずに成蟜側は崩壊。後ろに逃げた人たちは後ろから討ち取られる形となり、かなり死んだ。