イラスト担当は記憶を無くしました   作:大森依織

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正直に白状しますと。
そこまで原作と違いを付けれませんでした……っ!


118枚目 知り合いだらけのファンフェスタ!

 

 

 

 

 ファンフェスタ当日、会場にて現地集合することになった私は人混みに流されそうになりながらも、何とか会場に辿り着いた。

 

 さて、誰かいないかなと周囲を見渡していると、瑞希が大きく手を振っている姿が見える。

 

 

「あっ、絵名。来たね! こっち、こっちだよー!」

 

「ふぅ、皆お待たせー! 待たせちゃった?」

 

 

 慌てて瑞希の元に駆け寄ると、隣に奏も立っていた。

 時間に余裕を持って会場に来たつもりなのだが、2人は早く来ていたのだろうか。

 だとしたら申し訳ないな……と思っていると、奏がゆっくりと首を横に振った。

 

 

「ううん、待ち合わせ時間よりも前だから大丈夫だよ」

 

「よかったー。って、あれ? まふゆは?」

 

 

 そういえば、あの見間違えようのない紫髪がどこにもいない。

 奏も瑞希もまふゆも見間違うことがほぼない外見なので、この場にいないということは……珍しく私が最後ではないということで。

 

 

「まふゆ、どうしたんだろ」

 

「ボクの方にも連絡は来てないから、遅刻ってことはないと思うけど」

 

「いつもなら真っ先に来てるから珍しいよね」

 

 

 奏が可愛らしく首を傾げる横で、瑞希はニヤニヤと笑いながらこちらを見ている。

 腹立つぐらい悪戯っぽく笑っている顔から、何となく言いたいことが伝わってくるのが余計にムカついた。

 

 

「なんか『絵名は大体いつも最後の方だけどねー』って言いたそうな顔、してるわね」

 

「言ってないからノーカウントだよ」

 

「はいはい、そうですねー」

 

 

 これ以上やり取りをしても無駄になりそうなので、雑に話を切り上げる。

 そうこうしているうちに時間が結構過ぎていたのか、よく聞く声が耳に届いた。

 

 

「皆、遅れちゃってごめんね!」

 

 

 それは学校でよく聞くトーンの、優等生モードのまふゆの声だった。

 こちらにやって来たまふゆの表情筋はフル稼働していて、人好きそうな、柔らかい笑みを浮かべている。

 

 どうして皆の前でも優等生モードで現れたのか、私達の頭の中が『?』で支配されていると、これまた聞き馴染みのある声が鼓膜を揺らした。

 

 

「あら、皆こんにちは」

 

「えっ?」

 

 

 ゆったりとした声に瑞希が首を傾げるのと、ほぼ同時だろうか。

 まふゆの後ろからひょっこりと、雫と愛莉、更には遥ちゃんの姿が現れた。

 

 

「さっきの声は雫で、後は愛莉と遥ちゃんも揃ってるの? あれ、でも……」

 

「うわー!! 遥ちゃんだーっ! 顔ちっちゃ! めっちゃくっちゃカワイイ〜ッ!」

 

「うるさっ……ちょっと瑞希、こんなところで騒いだら迷惑でしょ。落ち着きなさいよ」

 

 

 アイドルも好きな瑞希は思わず興奮してしまったようだが、私の声で我に帰ったのかバツの悪そうな顔で声のトーンを抑える。

 

 

「ご、ごめん……もしかしなくても今日はお忍び、だよね?」

 

「そうだけど、そこまで気にしなくても大丈夫だよ。瑞希さん、だよね? ありがとう」

 

 

 ニッコリと微笑む遥ちゃんに対して、瑞希はキラキラと輝かせた目を大きく見開いた。

 

 

「わぁ、生アイドルスマイルだ……めっちゃくっちゃキラキラしてるよ〜!」

 

「嬉しそうねぇ……」

 

 

 ただのファンと化している反応を見せる瑞希だが、まだ分別はついているようですぐに切り替えた。

 

 

「でも、まふゆが一緒に来るとは思わなくてびっくりしちゃったよ!」

 

「ふふ、朝比奈さんとは同じ部活なのよね」

 

「有名だもんね、弓道部。って……そういえば、雫達はどうして一緒に来たの? 待ち合わせしてたってわけじゃないでしょ?」

 

「今日は同じグループの子がファンフェスタで参加するから応援に来たの。それで偶然、朝比奈さんに会ったのよ」

 

(なるほど、みのりちゃんがいないのはファンフェスタに参加する側だからなのね)

 

 

 私の問いかけに雫が答えてくれたので、やっと最初に感じた疑問の答えを入手した。

 

 3人がここにいるということは、モモジャンとしてフェスに参加しに来たわけではないのは確実。

 どういう経緯で1人だけ参加することになったのかは不明だが、知り合いが出てくるのなら余計に楽しみになった。

 

 

「それで、雫に紹介してもらって話してたら、絵名達と同じサークルで活動してるって聞いたのよ」

 

「びっくりしちゃったわよね♪」

 

 

 愛莉が情報の補足を入れて、雫が笑う。

 

 2人にロックオンされて、ファンフェスタに来た理由を話しても優等生フェイスでは逃れられぬまま。

 合流先まで一緒に行くことになったまふゆの姿が、今の愛莉と雫の会話でありありと想像できた。

 

 

「盛り上がってるところ、ごめん……その人達は誰なの?」

 

 

 既に知り合いがいる私達と違い、誰も知らなかった奏が困惑した様子で尋ねてきた。

 ほぼ共通の知り合いなのでうっかりしていた。私は慌てて奏に声をかける。

 

 

「あ、そっか。愛莉達も奏とは初対面だったよね。この2人は私の友達で愛莉と雫。有名なアイドルだよ」

 

「それで、こっちが遥ちゃん! 皆もボクも大好きな国民的アイドルなんだ!」

 

 

 瑞希の私情たっぷりの紹介も聞いた奏はイマイチわかってなさそうな顔をしつつも、ゆるりと頷いた。

 

 

「そうなんだ……知らなかった」

 

「ふふ、奏はアイドルに興味なさそうだもんね」

 

 

 教室等ではよく見る姿なのに、違和感を覚えた。

 奏や瑞希が揃っている前でまふゆが優等生モードを維持していることがないから、違和感があるのだろう。

 

 

(ニーゴの皆がいる前でまふゆが優等生モードだと、こっちの調子も狂うなぁ)

 

「絵名、どうしたの?」

 

「う、ううん。何でもない」

 

 

 言わなくてもわかる、余計なことは言うなと釘を刺してきそうなまふゆの圧。

 了承の意味も込めて右手をヒラヒラと振ると、まふゆは瑞希の方へと視線を戻した。

 

 許されたようだ。ホッと安堵の息を漏らしてから、私も奏達の方へと目を向ける。

 

 

「そうだわ。ここで会えたのも何かの縁だし、一緒にステージを見るのはどうかしら?」

 

 

 いつの間にか奏の紹介は終わっていて、雫がとんでもない提案をしていた。

 

 先程のまふゆの姿を思い出しても、これ以上ニーゴの面々以外と行動するのはやめた方が良さそうだ。

 好意の申し出はありがたいけれど、ここは断ろう。

 

 

「ごめん、雫。私もそうしたいけど、今日は元々4人で楽しもうって話だったから、4人で見たいかな」

 

「あら、そうなの……残念ね」

 

「ま、それがいいかもね」

 

「雫も愛莉も本当にごめんね。会えたらまた後で会おうね」

 

 

 愛莉が「また後でね」と手を振ってくれたので、私も振り返す。

 3人の背中が人混みに紛れてから皆の方へと振り返ると、そこには優等生の笑顔からいつもの無表情に戻ったまふゆがいた。

 

 

「お、いつものまふゆに戻ったね」

 

「いつもの?」

 

 

 瑞希の言葉に不思議そうに首を傾げるまふゆは優等生モードとの違いをあまり自覚していないようだ。

 

 

「まふゆは何かわかってないみたいだけど、私達の前ぐらいは今の姿を見せてくれる方が落ち着くかも」

 

「そうだね。わたしもまふゆが落ち付けてそうな今の方が良いかな」

 

 

 私が抱いていた違和感を奏も少なからず感じていたようで、小さく笑みを浮かべたまま頷いた。

 

 

「それにしても、遥ちゃん可愛かったな~。キラキラしてて、絵名とは大違いだね」

 

「瑞希は余計なこと言い過ぎ。タイプが違うんだから同じだったら怖いでしょ」

 

 

 むしろ、遥ちゃんのような子が何人もいた方が恐ろしい。どこのアイドル戦国時代なのかとツッコミたくなる。

 

 

「そういえばライブに雫ちゃん達と同じグループの子が出るんだよね。あの子も宮女かな?」

 

「うん。遥ちゃんと同い年の、みのりちゃんっていう茶髪の子がいるよ」

 

 

 瑞希がこちらに向かって問いかけてくるので首肯すると、今度はピンクの目がまふゆの方へと向く。

 

 

「よかったね、まふゆ。同じ宮女の子が出てくるなら楽しめるかもよ?」

 

「……私、その子のことを知らないんだけど」

 

「あっ……あはは~」

 

 まふゆの正論に瑞希は笑みを浮かべて退散したので、ちょうど良いからと私達もファンフェスタのステージまで移動することにした。

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆

 

 

 

 

 

 

 

 正直に言うと、奏が行くからついて行こうと思っただけで、ファンフェスタを心の底から楽しめるかは自信がなかった。

 奏や瑞希が目的にしている人なんて知らないし、聴く曲は初耳のものばかり。

 

 だからこそあまり期待してなかったのだけど……驚くことに、私はこのライブを楽しんでいた。

 知らない人ばかりならノリきれなくても、知っている人が混ざっていると何とかなるらしいと、身をもって体感したのだ。

 

 まさか、みのりちゃん以外にも知り合いが3人、ファンフェスタに出ているとは思わなかった。

 

 小豆沢さんが出てきた時はまぁ、そういうのもあるのだろうと思った。

 一歌ちゃんも1人で歌っている時はうん? と思いつつも、応援して。

 草薙さんまでステージに立っていた時は、流石に知り合いが来過ぎだろうと驚いたものである。

 

 これでみのりちゃんもガッチガチに緊張しながら、最後の方には凄く良いパフォーマンスを披露していた。

 

 

「──いやぁ、ライブ楽しかったねー。ボク、みのりちゃんのファンになっちゃった!」

 

「良かったね、瑞希」

 

「うんうん、すっごく良かったよ〜。それで、奏も目的のクリエイターの曲は堪能できた?」

 

「うん。久しぶりに聞いても、やっぱりいい曲だったな」

 

「そっか、奏も良かったね!」

 

 

 まだ会場の中なのに、瑞希と奏がもうライブの感想を言い合っている。

 愛莉達とも後から会ったし、後は帰るだけだからなのか、2人とも楽しそうだ。

 

 ……私の隣にいるポーカーフェイス人間は、相変わらず何を考えてるのかわかりにくいけど。

 

 

「まふゆはどうだった?」

 

「日野森さんの所の子は頑張ってたと思う」

 

「もしかして、みのりちゃんへの感想? ふふ、ライブの感想がそれなのね」

 

「ライブは……やっぱりわからなかった。けど、悪くはなかった、と思う」

 

 

 最初の返事はハッキリしていたのに、最後の方はちょっと自信なさげな声が返って来た。

 

 ライブとしてはそこそこ止まりであるものの、みのりちゃんの印象が強かったようだ。

 何であれ、私が丸め込んで連れて来たのだから、まふゆが楽しみを見出していて何よりである。

 

 

「絵名は楽しそうだったね。知ってる人、そんなに出てたの?」

 

「あぁ、うん。思った以上に知り合いばっかりでさ。ほら、あのギター持ってた黒髪の子なら知ってるでしょ。一歌ちゃんは同じ委員会だって聞いたよ?」

 

「……もしかして、あれ、星乃さん?」

 

「うん。他にも、私より下の子が大勢の人の前で1人でパフォーマンスしてる姿を見ると、私も頑張らなきゃなーって思ってさ」

 

 

 両手で握り拳を作って宣言していると、瑞希が私とまふゆの間に入って来た。

 

 

「まふゆと絵名もライブの感想会中? なら、今からファミレス行って2回戦目の感想大会だ〜!」

 

「それって大丈夫なの? 主に奏とか」

 

「ファミレスぐらいなら、わたしも平気だよ」

 

「じゃあ、忙しいまふゆとか」

 

「私も、今日は予定を空けてる」

 

「えぇ……皆、元気ねー」

 

 

 今日は珍しく奏もまふゆも乗り気なせいで、ファンフェスタに参加したばかりだというのに2回戦目の戦場へと向かうことになったのであった。

 

 

 

 







次回はセカイでわちゃわちゃします。
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