今回のもそうなのですが最近の公式様の演出が凝っていて、何回かチャレンジしないとストーリーが最後まで読めないのが増えてきました。
……実は、未だに我がスマホ君ではあの日の夜を越えられないんですよね。いつかはYouTube君から見ずとも越えたいです。
「正直な話、宝探しの場所は中庭だけでいいと思うんだけど。その辺はどう思ってるわけ?」
今日も今日とて文化祭の準備中。
職員室から鍵を拝借した私は、同じ班であるまふゆと共に廊下を歩いていた。
「案を出した時には校舎全体を使ったらどうかって話も出てたし……家庭科室は宝探しの最有力候補だから、絶対に下見しなきゃダメだよ」
「えー。ダメってルールはないんだから、そんなのテキトーにしたらいいでしょ。柔軟に生きなきゃ首が締まるわよー?」
「絵名はそう言ってるけど、サボりたいだけでしょ」
周りに知り合いがいないせいか、話すまふゆは見慣れたポーカーフェイスだ。
そのおかげで今日もズバズバ言葉の切れ味は抜群。
妖刀・ズバズバ言葉の切れ味は夜だけ発揮して欲しいと思うのは私の我儘だろうか。
滅多斬りされても大丈夫なメンタルってわけでもないので、もう少し手加減してほしいものである。
「でも実際、校舎全域を対象にして探し回るのは色んな意味で面倒じゃない? 私だったら受付会場は中庭、宝探し場所は家庭科室って分けるけど」
「それは……少し考えてみる」
「ま、ここで文句を言っても、実物を見なきゃ始まらないけどさ」
少し薄暗くして周囲を見え辛くし、謎を解かなければ宝が見つからない仕組みであれば、楽しんでもらえるかもしれない。
そう考えると家庭科室の下見という選択は有りなのかもしれない。
まふゆの言うことも正しいと思ったので、私はこれ以上文句を言うのをやめた。
私が何も言わなくなったことで一時休戦したわけだが……黙って歩いているこちらの前に、見覚えしかないアイドル2人組が話し合っている姿が目に入った。
「──まったく。家庭科室の鍵って言ったのに、どうしてアンタは化学室の鍵を借りてきちゃうのよ」
「ごめんね、愛莉ちゃん。これじゃあお菓子作りができないわよね……」
呆れるように頭を抱える愛莉と、申し訳なさそうにしゅんと肩を落とす雫。
顔面偏差値が高い2人組がワイワイと話している姿はかなり目立っていた。
「あ、でも! ガスバーナーとかアルコールランプもあるし、化学室で何とか作れないかな?」
「ガスバーナーにアルコールランプって、雫はお菓子じゃなくてマッドな薬でも作るつもりなの!?」
漫才をしているようにも見えるが、聞こえてくる話の内容的に予想外のトラブルが起きていることは把握できた。
内容的にも力になれるだろうし、声をかけた方がいいかもしれない。
そう判断した私はまふゆに目配せし、こちらの意図を察したまふゆが優等生モードに切り替えながら声をかけた。
「日野森さん達、そんなところでどうしたの?」
「家庭科室と化学室を間違えた~とか、聞こえてきたけど」
「あっ! 朝比奈さん!」
「絵名、久しぶりね! そうなの。雫が鍵を間違えて借りてきちゃったみたいで困ってるのよ」
声をかけると、パッと明るい笑顔を見せる雫と、やれやれと肩を竦める愛莉がそれぞれ話してくれた。
どうやら聞こえてきた通りの状況のようだ。それならば話が早い。
「家庭科室に用があるなら一緒に行かない? 家庭科室の鍵なら今、私達が持ってるし」
「本当!? ありがとう、絵名! とっても助かるわ!」
「でも、いいのかしら? 朝比奈さん達の邪魔にならない?」
「大丈夫だよ、日野森さん。私達は宝探しの隠し場所にしようと思って家庭科室に行く途中だったから、お互いの邪魔になることはないよ」
申し訳なさそうに尋ねてくる雫に、まふゆは綺麗な笑みを浮かべた。
優等生モードのまふゆの顔にはえむちゃん以外を安心させる効果があるのかもしれない。
心配そうな顔をしていた雫や、隣で話を聞いていた愛莉も笑みを浮かべて頷いた。
「なら、お願いしてもいいかしら」
「朝比奈さんと絵名が一緒なら、こっちも心強いわ」
一緒に行くと決まれば善は急げだ。
「じゃ、早くいこっか」
「絵名が先に行っても、鍵を持ってるのは私なんだけどね」
「……まふゆも一緒に行くんだから、誤差よ。誤差」
優等生モードなのに私には容赦のないまふゆの言葉を受け流し、4人揃って家庭科室に向かって。
今日もお互い、無事に文化祭の準備を進めることができた。
……………………
文化祭の準備を終えてから真っすぐ家に帰り、今日もいつもの時間から作業だ。
『じゃあ、今日も作業を始めようか』
『K、ちょっと待ってくれないかな? ボク、えななんと雪に聞きたいことがあってさ!』
いつものように
「いや、急に何よ? 大した用事じゃなければ白い目で見るわよ」
『残念ながらナイトコード越しだとその目は向けられませ~ん♪ ……じゃなくて! ほらほら、えななん。何かボクやKに言いたいことがあるんじゃない?』
「はぁ? Amiaに言いたいことなら……早くMVを作って欲しいとか?」
『それは昨日の今日でできるようなものじゃないでしょ。ほら、あるじゃん。学校行事とか!』
そこまで言われて、私はようやく気が付いた。
「あぁ! もしかして、文化祭のこと?」
『もしかしても何もそれしかないでしょ。友達はちゃんと文化祭に誘われてるのに、ナイトコードでは全く話題にならないし!』
声だけでもわかるぐらいプリプリと怒るAmiaに、画面に反射して映る私は目を瞬かせていた。
「そうはいわれても、ねぇ?」
『……わざわざ言うような話題でもない』
ナイトコードで言うような話題でもないと思っていたのは私だけではなかったらしく、
形式的には2対1だ。分が悪くなったせいで、聞こえてくるAmiaの声は小さかった。
『雪は兎も角、えななんなら誘ってくれるかなーって待ってたんだけどなー』
「もう、ごめんってば。こういう時って大体Amiaが話題にするし、すっかり忘れてたのよ」
これは私のミスだ。いつもAmiaに甘えてしまっていたのがこういう形で出てしまったのは反省している。
『忘れてたのなら仕方がないんだけどさー。ボクと一緒に行きたくないってわけじゃないよね?』
「そんなわけないでしょ。空いてる時間ならいつでも……そもそも当番って決まってたっけ?」
Amiaと話していて思い出した。そういえば、当番はアンケートに答えてから音沙汰がなかったな、と。
そしてそのアンケートを実施したのはうちの学級委員様、雪だ。
「雪ー、そういえばうちのクラスって当日の担当はどうなってるの?」
『午後希望か2日目希望の人が多くて今、1日目の午前に代われる人がいないか聞いてる途中』
「そういえば朝に雪が話してたわね。大変だなーって思いながら聞いてたのを思い出した!」
『……他人事みたいだけど、えななんも1日目の午後希望だよ』
「えっと……そうだっけ?」
アンケートでどちらを選んだのか、すっかり忘れていた。
確かどれか選ばなくてはいけなかったから、選択肢の中で何が1番好きだと思ったか。そんな認識で選んだような気がする。
「夜型だし、朝は好きじゃないから午後希望って選んだような。1番、2番なら1番の方が良いよねって気持ちで選んでないような」
『……大した理由がないのなら、1日目の午前に来てほしい。私が入っても人手が足りてないから』
「別にいいけど。それ、最初から言ってくれたらよかったのに」
『忘れてたのはえななんだけどね』
「うぐっ……悪かったわよ。私も午前で大丈夫だから変更しておいて」
言い訳のしようのない指摘が私の胸を抉った。
こちらのやり取りを聞いて笑っているAmiaの声が聞こえてくるが、今日は不思議とムカつかない。
たぶん、抉られたダメージの方が大きかったのだ。そのせいでAmiaの声が気にならなかったのだろう。
大爆笑してくれているAmiaを待たせているのも事実なので、気持ちを切り替えた。
「……まぁいいや。1日目の午前って決まったし、それ以外なら遊べるわよ、Amia」
『ひー、痛い。おなかいたい』
「ちょっと! こっちが切り替えたんだからあんたも早く切り替えなさいよ!」
『わぁっ、えななんが怒った~。ふくくっ』
まだ笑うか、こいつ。
これ以上笑うようなら、セカイで出会い頭にタックルしようと決意した。
『ふぅ……えっと、えななんと雪は一緒のタイミングで終わるんだよね? なら、Kも一緒に文化祭に行って、皆で回ろうよ!』
しかし、何処かで怪電波でも受信したのか、Amiaが紙一重でタックルの刑を避ける。
急に話を振られたKは『そうだね……』と考えるような間を作ってから、アイコンを輝かせた。
『わたしも少し気になってきたし、雪達さえよければいいよ』
『やったぁ! それでそれで、神様雪様! ボクらと一緒に回ってくれますか!?』
Kが行く意思を見せたからなのか、イヤホンから聞こえてくるAmiaの声が途轍もなく煩い。
そう思っているのは私だけではないらしく、うんざりとしてそうな雪の声が聞こえてきた。
『神様じゃないけど、予定はないから別にいいよ』
『やっったぁっ! これで皆でいけるね!!』
『……Amia、うるさい』
『あ、はい。ごめんなさい』
暴走するかのようにハイテンションだったAmiaが、雪の言葉で冷水を被せられるように静かになった。
「約1名ほど暴走してたけど、皆で文化祭に行くってことでいいのよね? 時間帯的には1日目の午後からでいいの?」
『わたしは午後の方がありがたいかな。朝早いと色々と大変そう』
『私も手伝った日の午後がいい。最悪、別日にヘルプに入らなくちゃいけないかもしれないから』
ヘルプに入ってまで雪が面倒を見る必要があるのか、後日話し合いが必要なのは置いておくとして。
『それにしてもいいこと聞いたな〜。午前中かぁ、これはえななんを冷やかしに行かなきゃねー♪』
「来なくていいから。午前中は家でおとなしくしなさいよ」
『えぇー。ひどいなー』
絶対にそう思ってなさそうな声のトーンで話すAmiaに目を細めつつ、私は背もたれに体を預ける。
「文化祭の話はもういいでしょ。ね、K」
『そうだね。話もまとまったと思うし、そろそろ作業を始めようか』
25時を少し過ぎてから、Kの声と共にいつもの作業が始まった。
なお、公式イベストでの2年B組の出しの物では結構広範囲を対象としてましたが、こちらではえななんもアイデアを出してるので家庭科室内で収まってます。
次回は文化祭当日です。