イラスト担当は記憶を無くしました   作:大森依織

230 / 254


決着への道筋が開かれました。
邪魔な膜を剥がして、幕を閉じましょう。

本文増量中、まふゆさん視点です。





230枚目 【朝比奈さんと因縁解体】

 

 

 

 

 ──記憶を奪われたという絵名と対面して。

 頭の中でずっと、疑問が渦巻いていた。

 

 

(記憶を全部取られたはずなのに、絵名の面影があり過ぎる)

 

 

 絵名の面影があるのは個人的にもすごく嬉しいけれど、純粋に喜んでいいのだろうか?

 今まで歩いてきた壊れかけの画廊が今の絵名を現しているのだとしたら……ここは慎重になるべきか?

 

 

(一旦、落ち着こう)

 

 

 胸に手を当て、深呼吸。

 時間は無さそうだけど慌てず、冷静に考えてみよう。

 

 1回目、事故の後に1から東雲絵名を作らなくちゃいけないぐらい、記憶を無くした人間が……だ。

 

 完全に記憶を無くした人間から、前の人間と言動も動きの癖もそっくりそのままってことはあり得るのだろうか?

 況してや、超常的な力を使う相手が、強制的に記憶を奪っているという状況で?

 

 

(私が奪う側なら、そんなことはしない。だったら……相手にとって何か不具合が起きたって考える方が筋が通る)

 

 

 例えば、絵名が考えていた作戦を直前になって、自分でもやってみたとか。

 それが思いの外ダメージを与えていて、スケッチブックという存在の力を削いだと考えたら、納得できる。

 

 

【出ようにも出口がないのに、入り口はあったとか意味がわからないんだけど!? ただでさえ色々とおかしくなってるのに、これ以上僕の邪魔をするなよっ!】

 

(っ! ……仮に削ってもこれだけの力が残ってるなんて、絵名は随分と厄介な存在に付き纏われているんだね)

 

 

 スケッチブックから黒い靄のような何かが出てきてから、呼吸もままならない。

 周りの空気が重たく感じる上に、ギシギシと鳴ってはいけないような軋んだ音が周囲から聞こえてくる。

 

 セカイに広がっていた黒い霧の発生源も、あのスケッチブックなのは間違いない。

 リンが触れないようにと注意してくれたのを考えると、何かしら害があるのは確実。

 

 

(と考えると、ミク達にも余裕はないよね。急がないと)

 

 

 奏が絵名を守ってくれているみたいだし、黒い靄も今のところはミク達が対応できる範囲内のようだ。

 まだ安全圏がある今のうちに、絵名が言っていたことをやらなくては。

 

 

(確か……絵名は私達に審判をしてほしいって言ってた。たぶん絵名が求めていた役割は相手の問題を浮き彫りにさせて、退場させてしまう第三者)

 

 

 あの黒い靄をまき散らす存在は『ルール』とやらにかなり拘っているらしい。

 そのルールっていうのがとんでもない力を発揮する源であり、同時に弱点であると絵名は考えていたのだろう。

 

 

(便箋には大体、絵名が目星をつけていた違反が書かれてる。それでも足りなかったらこっちでそれらしいものを追加で指摘して……力を削ぐしかない)

 

 

 ここに来る前に考えていたことを改めて確認したし、後は一発勝負に勝つしかないだろう。

 

 

【返せ、返せよ! この記憶も想いも何もかも全部ぜんぶ、やっと俺のモノになるのに!!】

 

 

 感情が高ぶっているのか、それが本性なのかはわからないけれど、一人称が無茶苦茶な奴は駄々を捏ねる子供の様に暴れている。

 観察している余裕はあまりなさそうだ。

 

 

(待ってて、絵名──絶対に助けるから)

 

 

 皆の為にも、私の為にも。あの気味の悪いスケッチブックから絵名を取り返そう。

 

 

「自分のものにしたいから、絵名を手に入れるために無茶をしたの?」

 

【……お前、急に話しかけてきて何なの?】

 

「最後に話せる貴重な機会だろうし、どうせなら絵名を狙った理由を知りたいなって思って。その言い方的に、苦労してきたんじゃない?」

 

【まぁ。持ち主さえ回収できたらお前らとも会わないか。苦労したのも事実だし、どうしても聞きたいって言うのなら? 話してやろうとも!】

 

 

 子供っぽいのでちょっとそれっぽく話したら、応じてくれそうだという目論見は正しかったようだ。

 

 その話し声を聞いているとお腹の中がぐつぐつとするというか、血が上りそうというか。何とも言えない気分になるけど、落ち着くために一息入れる。

 

 

(……会話になるなら、それでいいか)

 

 

 何とも言えない気持ちを落ち着かせ、自慢話をし始めるスケッチブックを見た。

 

 

【そもそも、今回はいつも以上に時間がかかってるんだよね。いつもなら1年やそこらで収集してるのにさ!】

 

「そうなんだ。絵名には時間がかかってしまったのはどうして?」

 

【いつもならさ、もう少し濁った想いの人物を狙うんだけど。今回は良さそうな願いを願ってくれそうなキラキラした想いの持ち主がいたからね! それはもう心が躍ったし、狙わないわけがないよね!】

 

「へぇ……そうやって選んだのに、絵名が『才能』を願わなかったから予定が狂ったんだね」

 

【……え?】

 

 

 調子よく話をさせてもらえる機会だと思ったら、大間違いだ。

 

 ずっと自分を、絵名が残した痕跡を見て考えていた。

 

 

(今まで気が付けなかった私にも、ここまで絵名を苦しめてきたあなたにも、怒ってるんだよ……どう気持ちを整理をしても、許せないぐらいに)

 

 

 許せない気持ちは刃として。怒りは刃を振り下ろす為のエネルギーに。

 第一関門の土俵には乗せた。後は──絵名を今まで苦しめて、記憶どころか命も狙う不届き者を裁く時間だ。

 

 

「絵名は才能を願うと思って、あなたは事故にかこつけて記憶を全部奪った。才能なら代償に釣り合いが取れるから、全部の記憶を取ったけど……絵名が願ったのは『才能』じゃなかったから、色々とおかしくなってるんだよね?」

 

【は、はぁ? 何を証拠に……】

 

「絵名はいつも言ってたよ。自分には絵以外の才能はあるかもしれないけど、絵に関係する直接的な才能は天才に負けるって。ねぇ、奏」

 

「えっ、わたし?」

 

 

 急に話を振られるとは思っていなかったようで、奏はきょとんとした顔をしている。

 絵名も真似して奏の横で首を傾げているのが目に入るけど、今はそれどころではない。

 

 

「奏は絵名が病院に行ってる理由、何か知ってる?」

 

「記憶のこと以外だよね? わたしが聞いたのは、絵を描き続けなくちゃいけないって錯乱するって話と……後は、睡眠時間が事故の後から急に短くなったっていうのもあったかな」

 

 

 ありがたいことに、奏が必要な要素だけを的確に出してくれたので、話はすんなり繋がった。

 

 

「そっか。ありがとう、奏。それで……錯乱もおかしいけど、記憶を無くしてから偶然、ショートスリーパーになったってあなたは主張したいの? どちらもおかしいと思うんだけど、それでも言い張る?」

 

【そ、それは……】

 

ルール的に(・・・・・)、それはいいの?」

 

【いや、でも。君らの大事な子は何を願ったのか、わかってて僕に聞いてるの?】

 

「っ! 絵名の、願いは……」

 

【はは、はは! わからないし、答えられないだろう? なら、こっちの不手際を責められても困るなぁ!】

 

 

 困ったことになった。ここで相手の調子が戻るのはまずい。

 とはいえ、前の絵名のことはそこまで知らないし……考える時間がないと私の頭からはすぐに出てきそうにない。

 

 答えが出ずに焦る私の後ろから、再び奏の声が聞こえてきた。

 

 

「絵名の願いは──絵を描き続けるための『勇気』じゃないかな」

 

【……その、理由は?】

 

「わたしもつい最近、曲を作れないって思ったけど……その時に1番欲しくて、周りの人から少しずつ貰った物のは1歩、進むための勇気だったから」

 

 

 靄が不自然に震える中でも、奏は何かを思い出すように目を閉じる。

 

 

「その時の絵名もどうしようもなく落ち込んで、動けなくなったんじゃないかな。だから、藁にも縋る思いで自分の思い描く理想に……進むための勇気を願ったんじゃないかなって、そう思うんだ」

 

 

 絵名が願ったのは全部の記憶が無くなるような願いだったのだと、考えていたのは間違いだったらしい。

 

 

(そっか。奪った記憶に対して報酬が明らかに足りてないから、後付けで短時間睡眠やら絵への強制持続力とか色々と付け足して誤魔化そうとしたんだ)

 

 

 奏のお陰で私の頭の中の点が1つ、繋がった。

 私は瑞希に目配せしてから、スケッチブックへ語りかける。

 

 

「勇気が欲しいと願う人の代償が記憶の全部だなんて、明らかにおかしい気がするのは私だけ? 絵名の理想から願いを『才能』だと勘違いして、記憶を先に全部取ったとか……言わないよね?」

 

「あれ、まふゆの言うことが正しいのならさ。辻褄を合わせる為に、それっぽいものを後付けで渡したってこと? それっていいのかなぁ、ボク的にはルール違反じゃないかなって思うんだけど」

 

【……】

 

 

 私の意図を察してくれた瑞希の追撃もあって、スケッチブックは黙り込んでしまった。

 

 こちらへの圧が緩んだので、効いてはいるのだろう。

 が、靄もまだ消えていないので、まだまだ違反の指摘は必要そうだ。追撃しよう。

 

 

「黙っていたらどうにかなるって思ってるのかもしれないけれど、違反の2つ目に進むよ」

 

【は? え? まだあるの!? 流石にこれ以上は見過ごせないんだけど!】

 

 

 スケッチブックは焦りからか黒い靄で巨大な手を作り出し、私に向けて振り下ろしてきた。

 何か物理的なことをしてきそうだと心構えをしていた私はそれに何とか反応し、不格好に転がりながらも避ける。

 

 

「まふゆっ!?」

 

「大丈夫、当たってないよ。でも、私は避けるのに集中したいから、瑞希は私の代わりに違反を指摘して」

 

「攻撃されてるのにすっごい冷静だね!? ……あぁもう! 危ないのは間違いないんだから、絶対に怪我だけはしないでよ!」

 

「うん、わかってる」

 

 

 心配そうな視線を向けてくる瑞希へ、見せつけるように靄の手を回避する。

 攻撃される度に側から見ている瑞希の方が悲鳴をあげそうになっているが、何回か回避したことでタイミングは掴めた。

 

 

(……うん。絵名のパンチよりも遅いし、これなら怪我はしないはず)

 

 

 大縄跳びの縄のように予測しやすくて緩慢な動きなので、避けるのは苦労しなさそうだ。

 避けることに集中できたら、瑞希に約束した通りの結果を掴み取ることができるだろう。

 

 何回かスケッチブックの攻撃を避けている間に私の余裕が伝わったらしく、瑞希からの視線が消える。

 それとほぼ同時に、狭いセカイに瑞希の声が響いた。

 

 

「まふゆの安全のためにも、さっさと代わりに進めるけど。君ってさ、何で今まで絵名の家族には手を出してこなかったの?」

 

【は? そんなの、出したって効果が薄いからに決まってるでしょ】

 

「本当にそうなのかな? 絵名なら弟くん達に何か起きちゃったら、描いちゃうと思うんだけどなぁ。それなのに身近にずっといた家族には手を出さずに、最近になって友達の身内には手を出すなんて、それってすっごく怪しくない? ホントはよくないって、わかってて手を出しちゃったんでしょ?」

 

【うぐっ】

 

 

 わかりやすい反応を見せたスケッチブックに、視界の端にいる瑞希はにんまりと笑う。

 

 

「あーあー、いーけないんだー。その反応と絵名を今までずぅっと苦しめてくれたことを合わせると……君が言う持ち主以外の干渉はルール違反なんでしょ。絵名に願いを無理矢理描かせるために、3人も手を出すなんて。これ、罰則はどれくらいになるのかなー?」

 

【何で、どうして3人って決めつけてるんだよ!? ただの人間の癖に抵抗して、わけのわからない出まかせを言うな!】

 

 

 スケッチブックは相当苦しいようで、私に向けていた手を瑞希の方へと向ける。

 危ない。そう私が声を出す前に、瑞希はぎろりと相手を睨んで断罪した。

 

 

「まふゆのお母さんのまふゆを想う感情を歪めて、奏のお父さんを深く眠らせた。奏にも手を出してたよね? こっちは全部知ってるんだよ?」

 

「あぁ──やっぱり。あなたの声は聞き覚えがあると思ったんだ。私の心の声だと思っていたあれ、あなただったんだね」

 

「ほら。奏っていう君が干渉した人の証言もあるよ。自分の大事なルールを自分から破ったんだから──おとなしく罰を受けろよ」

 

【嘘だろ。何で……何で何で何で何で? 希うことしかできない人間なんかに、叶えろって煩いだけの餌なんかに、追い詰められてる? 私が?】

 

 

 瑞希の低い声を合図に、手の形を作っていた靄だけでなく、周囲に散っていた靄も消えていく。

 スケッチブックは弱々しい声で【嫌だ嫌だ】と呟いているものの、フラフラになってもしぶとく飛び続けていた。

 

 

(この距離……ジャンプじゃ届かないな)

 

 

 掴み取れたら燃やせるのに、スケッチブックは手が届かない絶妙な位置にいる。

 あともう少し、もう少しなのに……思い浮かぶ違反内容は指摘した2つの範囲に収まっていて、決め手に欠けているような気がした。

 

 

「まふゆ、任せて」

 

「……ミク?」

 

 

 必死に考えている私の前に、靄から守ってくれていたミク達が立っていた。

 

 任せてとはどういうことなのだろう?

 それを聞くよりも早く、ミクは1歩前に出ていた。

 

 

「あなたもわたし達と同じ、誰かの想いから生まれた存在なんだよね?」

 

 

 バーチャルシンガーだけが感じる何かがあるのか、ミク達は全員、何かを確信したような態度に見える。

 

 

「わたし達とは違って、あまり良い想いから生まれてなさそうだよね。だからこそ、見てるだけでも嫌悪感が強かったのかな。今ならわかるよ、あの気持ち悪い感覚の正体」

 

「ただ、ぼく達と同じなのなら……あなたにもセカイがあるはずなんだけど」

 

 

 リンは嫌そうに、レンがリンの背中に隠れながらスケッチブックへの違和感を告げる。

 

 

「そう見えないということは、セカイを捨てた代わりに大きな力を手に入れたのかしら?」

 

「そうだとしたら、今の状態はすごく問題があるわね」

 

【は? え……ど、どういうこと?】

 

 

 ルカとメイコの指摘を受けて、スケッチブックから再び声が聞こえてきた。

 本当に心当たりがないのか、スケッチブックの声は誰が聞いてもわかるぐらい震えている。

 

 

「この仮初のセカイに開いた穴に蠢く想い。アレはお前が今まで奪ってきた人間の想いや記憶、そして……命そのものだ」

 

【う、嘘だ。ここは僕が生み出した場所じゃない。そんなはず……】

 

 

 カイトの鋭い視線を浴び、揺れ動く姿はスケッチブックの動揺そのもの。

 

 

「──きっかけは絵名の『消えたくない』って想いと、皆の『消えてほしくない』っていう想いから、一時的にこの場所が生まれたことだけど」

 

【あぁ、あぁ……やめて。やめてくれ。これ以上は本当に不味い】

 

 

 今まで絵名を苦しめて、マッチポンプにしても笑えない行為で強引に奪ってきた癖に、スケッチブックはミクに命乞いしている。

 

 だけど、そんな命乞い程度でミクの言葉は止まらなかった。

 

 

「でも、このセカイとあなたが繋がってしまった以上、あなたは自分のセカイを持ってしまったんだよ。だから……その大きな力を使うために捨てたはずのセカイを、再び手に入れてしまったあなたは──その力を使えなくなるぐらいのルール違反だと思う」

 

【あ、い、嫌だ。イヤだ、嫌、いや。いっ、あっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ──っっ!!】

 

 

 断末魔と共に力が消えてしまったのか、浮遊していたスケッチブックは床に落ちてきた。

 私達が囲んでみても、動く気配も喋る声も聞こえてこない。

 

 ただ、ボロボロな表紙のスケッチブックが開いた状態で床に落ちていた。

 

 

「絵名」

 

「……な、何?」

 

 

 触っても反応がないのを確認してから、皆の外側から1人、こちらを眺めていた絵名の方へと向く。

 

 

「このスケッチブックは絵名に絡みついた悪い縁だから。絵名が断ち切って」

 

 

 記憶も何もなくて、状況についていけていない絵名は目を白黒とさせている。

 そんな絵名には申し訳ないけれど、私はお父さんの私物からこっそり拝借した着火用ライターを手渡した。

 

 

「それは?」

 

「これを使えば、今ならあのスケッチブックを燃やせると思う。記憶も何もかも奪おうとしてきた相手と、これで決着をつけて」

 

「決着って……」

 

 

 絵名は困惑した様子でこちら側とライターへ視線を行き来させている。

 

 

(記憶を無くした絵名からすると、付いていけないのも無理はないか)

 

 

 記憶があったら絵名が1番燃やしたがっただろうに、ないと他人事でしかないのだから、困惑するのも無理はない。

 

 

(燃やしてやりたいと思っていた絵名には申し訳ないけど、私達で終わらせようか)

 

 

 そう思ったのとほぼ同時に、手の中にあったライターが取られた。

 

 

「……まふゆさん、ごめん。やっぱりこのライター、使わせて!」

 

 

 さっきまで迷っていたとは思えないぐらい、絵名は何かを決めたような顔でライターを握っている。

 

 

「正直、今でも全然わかんないんだけど……でも、任せるのだけはダメな気がするんだ。だから、私にやらせて」

 

「わかった。危なかったら手を出すからね」

 

「……うん。ありがとう」

 

 

 ふわりと微笑む絵名はあまりにも素直で、ちょっと調子が狂う。

 早く戻ってもらうためにも、私は絵名をスケッチブックの元まで連れて行った。

 

 スケッチブックの前に立った絵名はゆっくりとライターを前に突き出す。

 

 

「……今の私は『絵を描かなきゃいけない』って嘘をつかれた以外に、そこまで恨みはないんだけどさ」

 

【っ】

 

「でも、あんたを見ていると何故か。胸の中が煮えたぎってるみたいにイライラしてくるんだよね」

 

 

 絵名は淡々と言葉を紡ぎながら、ライターに火をつけた。

 

 

「今の私が言うことはないけど、湧き出てくるこの感情を言葉にするなら……」

 

 

 少しずつズレて、逃げようとするスケッチブックにあっという間に近づいた絵名は、にっこりと笑う。

 

 

【ぁ、た──】

 

 

 まだ助かると勘違いしたらしいスケッチブックが止まり、命乞いの声をあげようとしたその、瞬間。

 

 スッと感情が抜け落ちた顔を見せた絵名が、ライターの火をスケッチブックに押し付けた。

 

 

 

 

 

 

「ばいばい──ざまぁみろ」

 

 

 

 

 

 

 断末魔を上げることも許されず、スケッチブックは燃えて……力も何もかも失った絵名の因縁は灰となって消えていく。

 

 ──それを目視したのとほぼ同時に、私達の視界も灰のように真っ白になっていった。

 

 

 

 

 







因縁解体、完了。



《スケッチブック君の補足》
スケッチブック君の攻略方法は『インチキな力を使えなくすること』です。
その力は『セカイという大きな場所を創るリソースを元手に、願いを叶えた人の想いや記憶、命そのもの』を焚べてリソースを更に大きくしてきました。

更に大きな力を使うために、スケッチブック君は以下の4つのルールで縛ることによって、現実さえも干渉できるヤベー力を発揮しています。

・ルール違反を第三者に指摘されてはいけない。
・代償の対価は等価交換であること。
・持ち主以外に干渉してはならない。
・捨てたセカイを再び持ってはいけない。


スケッチブック君は1枚目の時点でルールを1つ破ってしまっていたので、実はペナルティとしてリソースがじわじわと削られていました。
だからこそ早く描いてと催促していたのですが……えななんは中々描いてくれませんでした。この時点でえななんへの干渉を止めたら傷は浅かったんですけどね。

しかし、えななんの『綺麗な想い』を諦めきれず、スケッチブック君はズルズルと粘ることを選んでしまった。
そうして粘っている間に、ルール違反のせいでリソースが削られて焦ってくるスケッチブック君。
更にルールを破って賭けに出ましたが、結果的に全てバレて自爆した……というのが今回のお話です。


セカイ云々のルールはミクさん達が画廊のセカイに辿り着かないとわからなかったし、そもそも画廊のセカイはえななんとまふゆさん達の想いが重なってできた想いの断片です。
つまり、皆で掴み取った勝利ってことですね。おめでとうございます。



長々と記載しましたが、スケッチブック君の設定はそこまで需要はないかなと思いますのでこの辺で。


次回、えななん視点です。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。