イラスト担当は記憶を無くしました   作:大森依織

231 / 254


本文増量中……

いつかのケーキは嘘か真か、確認の為に。







231枚目 繋がり、続く道へ

 

 

 

 

 

 私が歩いてきたのは見えない道が前に続いていても、後ろに戻ろうとすればぽっかりと穴が空いて戻れない道だった。

 

 後戻りを願っても叶わない道。

 この穴を埋めたいと思っていたのと同時に、この穴が埋まったら『私』という存在がどうなるのか、いつもふとした時に怖くなっていた。

 

 

(……怖かったんだけどなぁ)

 

 

 まふゆさんに──いや、まふゆに貰った着火用ライターで奴を灰にした後。

 真っ白になった視界の中で、まるで映画のエンドロールのように忘れていたはずの記憶が再生されている今ならわかる。

 

 その恐怖はただの杞憂であった、と。

 

 

(おかえり、私)

 

 

 ──ただいま、私。

 

 

 本物だとか偽物だとか、今まで悩んでいたのが馬鹿らしくなるぐらい、あっさりと。

 ぽっかり空いた穴が繋がって、過去と今の私が1つになる。

 

 気がついたら奪われていて、ずっと『本物の方』だと思い込んでいた私も。

 今までの記憶を無くしたせいで、どうしても自分を『偽物の方』だと感じていた私も。

 大切な4年間の記憶すら完全に無くして、皆に助けてもらった私自身も。

 

 綺麗な地続きの道を作って、ようやく1つに繋がったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「──な」

 

 

 

「──名」

 

 

 

「──絵名!」

 

 

 

 呼ばれた気がして目を開くと、そこは穴だらけな画廊のセカイではなく見慣れた誰もいないセカイだった。

 

 誰もいない、というのに目を開いた私の視界には心配そうに覗き込む瑞希と、少し距離を置いていても心配そうな顔をしている奏とまふゆの姿が見える。

 

 

「顔、近くない? 邪魔なんだけど」

 

「えー。開口一番に言うセリフがそれー?」

 

「だって邪魔だったし」

 

「だってって、もう! えっと、それで、その。言いにくいんだけど、絵名……なんだよね?」

 

 

 起こしてくれた瑞希の口は呆れてますと言わんばかりだけど、目が期待を訴えかけてきている。

 ここで素直に私だと言うよりも、いつも通りに行った方が瑞希の期待に答えられるだろう。

 

 

「私が東雲絵名以外に見えるっていうのなら、今度良い眼科を紹介するわ」

 

「……ちなみにボクらの名前はわかる?」

 

「あんたは瑞希だし、奏もまふゆもいるわね。遠くにはミク達も見てくれてるかな」

 

「ふむ。えななん検定1級になったボク的に……この反応は間違いない! 絵名だ! 絵名ぁ~ッ」

 

「え? ちょっ、わぁっ!?」

 

 

 やっと起きたと思ったら、瑞希によって再び地面と仲良くすることになった。

 押し倒してきた瑞希は泣いているのか、ちょっと服が冷たい。

 

 

「絵名、良かった。目が覚めて」

 

「あ、奏。お父さんのことで大変だったのにごめんね。大変なことに巻き込んで」

 

「巻き込まれたなんて思ってないから大丈夫だよ。うん……間に合ってよかった」

 

 

 直前では追い込まれていた姿を見ていただけに、柔く笑う奏を見ているとほんの少しだけ実感が湧いて来た気がする。

 

 

「これ、終わったんだよね?」

 

「それを聞きたいのはこっちの方だけど、スケッチブックが灰になったのは確かだよ」

 

「あ、まふゆ」

 

 

 奏の隣にまふゆが並ぶ。

 

 一応、自分の手で燃やした記憶もちゃんとあるんだけども……状態が状態だっただけに、私の都合のいい夢のように感じて、誰かに言われるまで怖かったのだ。

 

 

「じゃあ。アイツも燃やせたし、記憶も全部取り戻せたのは夢じゃないんだ」

 

「絵名の記憶、全部戻ったんだ。記憶に違和感はないの?」

 

「そこは大丈夫。すっごい危ない橋だったこともあるのかな……うん。これも皆のお陰なんだろうね」

 

 

 まふゆと話しつつ、くっつき虫状態の瑞希ごと体を起こす。

 改めてぐるりと見渡してみても、わからないところはない。

 

 ここがセカイだってこともわかるし、皆を見て名前が思い浮かばないってこともない。

 全部、必死に記憶を手繰らなくてもわかる。ちゃんと、わかるのだ。

 

 

「──やっと、終わったんだなぁ」

 

「絵名……泣いてる?」

 

「泣いてるのは瑞希でしょ」

 

「いや、絵名も泣いてるよ。目元、雑に拭いたらダメだからね」

 

 

 瑞希はハンカチを取り出して、私の顔をせっせと拭っている。

 自分の涙は放っておいて、私の方はお気に入りだとか言っていたハンカチを使うとか。

 

 

「ハンカチがあるんだったら自分で使えばいいのに……私のこと、結構好きでしょ?」

 

「そういう絵名こそ、あんな状態になるまで頑張るなんて、ボクらのこと好き過ぎるじゃん」

 

「そうね……その、本当にごめんね」

 

 

 大切な皆を、あんなことに巻き込んでしまったのがすごく申し訳なかった。

 危ない橋を一緒に渡ってもらったし、皆、各々に重圧を感じていただろう。

 

 記憶を取り戻したら少しぐらい申し訳なさが和らぐんじゃないかと思ったけれど、余計に悪化したように感じる。

 

 

「……皆、いくよ」

 

 

 悪循環な思考の中に、まふゆの声が割り込んできた。

 

 

「え? うわっ!?」

 

 

 まふゆが大胆に、奏は控えめに私を押し倒してきた。

 地面と仲良くリターンズ。もうズッ友かもしれない。

 

 しかも、追加でミクやリン、レンだけでなく、何故か満面の笑みのルカも混ざってドサドサッと私にのしかかってくるし。

 ……あれ? 私、もしかして圧殺されるぐらい恨まれてる?

 

 

「ちょっ、皆!? ストップストップ! 絵名が死んじゃうって!」

 

 

 のしかかる重さで沈みそうになる体とは反対に、実は嫌われている疑惑が浮上しそうになっている考えを遮るように、瑞希が上に乗る皆を下ろしてくれた。

 

 

「し、死ぬかと思った……」

 

「でも、絵名は死んでもいないし消えてもいないよ。なら……謝る以外にも、他に言うことがあるんじゃない?」

 

 

 私に皆を嗾けてきたまふゆは悪びれもなく首を傾げている。

 

 ……いや、今の今まで悪かったのは私の方か。

 謝ってばかりで1番必要なことを忘れていた。

 

 

「皆、その……ありがとう」

 

『どういたしまして!』

 

 

 その言葉を待ってましたと言わんばかりに。

 私は再び皆に揉みくちゃにされて、好意の海に沈められたのだった。

 

 

 

 

 

 

☆★☆

 

 

 

 

 

 

(……ふぅ。大変だったぁ)

 

 

 奏はお父さんのこともあるし、私も私で厄介な寄生冊子(スケッチブック)がいなくなった後遺症があるかもしれないからと、散々揉みくちゃにされた後に部屋に返された。

 

 後日、私の調子が大丈夫そうなら改めてファミレスで打ち上げをするらしい。

 

 最近は私だけでなくまふゆのことや奏のこともあって、打ち上げは保留となっていたこと。

 後は瑞希が「そろそろ打ち上げしたい! しーたーいー!」と猛烈に訴えてきたので、打ち上げはあっさりと決定したのである。

 

 

(部屋で休めと言われても、まだ夕方なんだよね)

 

 

 ここから休んだから変な時間に目覚めてしまいそうだ。

 皆には申し訳ないけれど、休むよりも先にずっと支えてくれていた人達に報告しよう。

 

 

(……って、珍し。全員揃ってんじゃん)

 

 

 この時間はお母さんだけなのに、今日は狙ったかのようにお父さんも彰人もいる。

 珍しいけれど全員いるのなら丁度いいと、私は一呼吸入れてから口を開く。

 

 

「お母さん、ちょっといい?」

 

「うん? どうしたの?」

 

「今日、本当についさっきのことなんだけど。今まで忘れていた記憶、戻ってきたんだよね」

 

「「「……はぁ!?」」」

 

 

 大声が私の鼓膜を貫通する。

 お母さんだけでなく、興味がなさそうなお父さんや彰人も例外なく、それぞれが口をあんぐりと開けてこちらを見ていた。

 

 

「ほ、本当に、戻ったの?」

 

「うん。色々あって今日、戻ったんだ」

 

「色々って何!? そういう冗談は4月だけにして欲しいんだけど……」

 

「冗談じゃなくて本当のことだってば」

 

「本当に本当なのね?」

 

「本当に本当なの。何なら明日、病院に行ってもいいし」

 

 

 信じられないのか、駆け寄ってきたお母さんが私の顔をペタペタ触ってくる。

 

 これで記憶が戻っているのか分かるのだろうか? お母さんはずっと私の顔を触っている。

 頼りになりそうな彰人は魚みたいに口をパクパクさせていて、動きそうにない。お父さんなんていつも通り、何を考えているのかわからない顔だ。

 

 

(私が引き起こした状況だけど、どうしよう?)

 

 

 途方に暮れる私の視界に、唯一動かなかったお父さんが立ち上がる姿が映った。

 

 もしかしてこの状況をどうにかしてくれるのか。

 そんな期待が顔を覗かせる中、お父さんは重たそうな口を開く。

 

 

「──あれだな。今からケーキを用意しなくては」

 

「……は?」

 

「お祝い事にはケーキ。記念日にもケーキだろう」

 

 

 だ、ダメだ。期待した私が悪かったのか、真顔で頭がおかしいことを言い出した父親がいる。

 

 

「そ、そうね、ケーキが必要だわ。今からひとっ走りして来なくちゃ」

 

「えぇ……?」

 

 

 しかもお父さんの異常がお母さんにも感染したのか、変なことを言ってる。

 どうなってるんだこの両親。早く正気に戻って欲しい。切実に。

 

 

「オレが買いに行く方が早いだろ。ちょっと走ってくる」

 

「彰人まで何言ってんのよ!?」

 

「あら、助かるわ。これ、お金ね」

 

 

 更に彰人まで乗って、お母さんに渡された財布を片手に颯爽と外に出て行ってしまった。

 

 なんだこれ。

 本当に、何だろうか、これ。

 実はスケッチブックの逆襲で悪い夢でも見てるんじゃないだろうか。頭が痛くなってきた。

 

 

「今日はめでたい日だから、夕飯は人参もなしでいいと思うんだが」

 

「いい年の大人でしょう。好き嫌いはダメだからね」

 

「……う、うむ」

 

 

 ……嬉しそうに会話をするお父さんとお母さんを見ていると、変なことを言ってるなぁとは思えども、それを突っ込む気にはならない。

 

 

(それだけ、心配をかけてたってことだもんね)

 

 

 いつもは家でもほぼ無言なお父さんがはしゃいでいるようにも見えるし、記憶が戻った本人よりも喜んでくれているということなのだろう。

 

 

「──ただいま! 買ってきた、ぞっ?!」

 

 

 勢いよく扉を開いた彰人が部屋に飛び込んできた……と思ったら、跳ね返ってきた扉に顔を強打した。

 

 

「えっ、ちょっ。危なっ……じゃなくて、大丈夫なの!?」

 

「……お、おう。鼻血は出てない」

 

 

 何かを守るように蹲ってる姿は痛そうだ。いつもならやらかさないようなミスに、私も呆れを隠せない。

 

 

「何であんたまで挙動不審になってんのよ、もう」

 

「……記憶、戻ったんだろ。なら、今までのことを考えたら、これぐらいしたっていいだろ」

 

 

 彰人は鼻を手で押さえながらも、私に箱を差し出した。

 

 

(この箱って……)

 

 

 差し出された箱に、思考が止まった。

 

 思い出した記憶が間違いなければ──それは、記憶を無くしてからは行かなくなった、家の近くにあるケーキ屋さんの箱で。

 チーズケーキが美味しく、昔はよくおめでたいことや記念の日に皆で買いに行ったのを覚えている。

 

 

「……このお店の、久しぶりに食べるね。4年ぐらい買ってなかったし」

 

「ああ。もう食べる機会はないんじゃないかって、思ってたからな」

 

「……そっか」

 

 

 お父さんも私も彰人も好きだからって、私の記念のケーキはいつも決まったお店の特別なチーズケーキだった。

 毎年毎年恒例で、事故に遭う前も……お父さんとあんな話をする前に、またチーズケーキを買う予定だって話していて──結局、その年から4年間全く買わなくなったチーズケーキ。

 

 たぶん、皆が気を遣って買えなかったんだと思う。

 本人は思い出せなくても周りはそれを思い出して、気まずくて、避けていたんだろうな。

 

 そう思うと、胸の中に熱い何かが込み上げてきた。

 

 

「あっ、彰人」

 

 

 セカイで揉みくちゃにされてだ時に、散々泣いたと思っていたのに、普通に出そうと思っていた声は上擦ってしまう。

 

 濁音混じりになりつつも、私はこの時ばかりは素直に気持ちを吐露した。

 

 

「ありがとう、すごく嬉しい」

 

「おう……良かったな」

 

「……うんっ」

 

 

 気がついたらお母さんとお父さんも私の周りに集まって、チーズケーキが常温になるのも構わずに泣いてしまった。

 

 ……久しぶりに食べた懐かしいチーズケーキは、1番美味しい状態じゃなかったはずなのに、今まで食べたどのケーキよりも美味しく感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 記憶が戻ってから初めての週末。

 予定を合わせた私達は『ニーゴの色々諸々打ち上げ・お疲れ様会』として、いつものファミレスに集まっていた。

 

 ……のだが。

 

 

「絵名、すっごい眠そうだね」

 

「……うん。申し訳ないけどすっごい眠い」

 

 

 こんなに眠たいのなら、午後からにしてもらった方が良かったかもしれない。それぐらい睡魔が襲ってくる。

 

 

「まふゆー、最近の絵名って学校でもこんな調子なの?」

 

「うん、朝は今みたいな調子。目を覚ますのは午後からだよ」

 

「そっかぁ。スケッチブックの後遺症はとんでもないね」

 

「4年間の睡眠負債が乗り掛かってるから、返済も大変だろうね」

 

「勝手に貸し付けておいて後から返済要求とか、跡を濁さない鳥を見習った方がいいと思うなー」

 

「立つ鳥跡を濁さず、だね。あんな執着していた存在には程遠そうな言葉だけど」

 

「あー。まふゆの言いたいこともわかるかも」

 

 

 瑞希とまふゆが楽しそうに話している間も、睡魔は容赦してくれない。

 本当にあの今は亡きスケッチブックめ。燃やせるチャンスが復活したら後100回は燃やしてやるぐらい置き土産が酷い。

 

 コーヒーを流し込んでも全く吹っ飛ばない眠気に顔を顰めていると、苦笑している奏と目が合った。

 

 

「絵名、眠いなら少し寝てもいいんだよ」

 

「……大丈夫、これでも今日は10時間寝てきたし。それよりも……奏の方が大丈夫そうなの?」

 

「大丈夫って、何が?」

 

 

 きょとんとした顔で首を傾げる奏は思い当たることがないらしい。

 それが安心でもあるのだけど、ちょっと不安になって怖くなる。

 

 

「奏のお父さんのこと。調子が悪くなったりしてない?」

 

「昨日も元気にリハビリしてたけど……」

 

「あぁ。絵名は自分みたいに、私のお母さんや奏のお父さんが絵を描く前の状態に戻るんじゃないかって心配なんだね」

 

 

 まさか奏と少し話しているだけで、まふゆの方から答えが出てくるとは思わなかった。

 でも、私以外の誰かが思い至るということは……その可能性はあり得るということで。

 

 

「私だけならいいの。でも、まふゆや奏にも跳ね返ってしまったらって思うと……」

 

「大丈夫だよ」

 

 

 私が言い切る前に、奏の力強い声が遮った。

 

 

「もしかしたら杞憂かもしれないし、仮に跳ね返って来ても……1度、奇跡を起こせたんだから、また手繰り寄せればいい」

 

「私も。またお母さんと向き合うから、絵名は『私だけなら』とか言ってないで、自分のことを1番に考えていいんだよ」

 

「あ……そうだね、そうする」

 

 

 最近まで卑下する思考が常態化してしまっていたせいで、記憶が戻ってもまだ後遺症が残っている。

 

 記憶を無くす前と無くした後の自己肯定感で結構相殺できると思ってたのが甘かった。

 やっぱり最近の影響の方が強いらしい。

 

 頭の中でプチ反省会を開いていると、隣に座っている瑞希が両手を叩いて注意を集めた。

 

 

「先のことを考えるのなら、もっと楽しいことを考えようよ! ニーゴの曲の方針とか、桜を見る会とか!」

 

「桜を見る会はその言葉通りだろうけど、曲の方針って?」

 

「今のところ、緊急で対応しなきゃいけないことは絵名が地雷爆発職人ばりに処理したでしょ。ここで一旦、止まってゆっくり考えてみてもいいと思うんだよね」

 

「いや、誰が地雷爆発職人よ」

 

 

 その評価は甚だ不本意である。

 しかし、残念ながら私の不満は流され、瑞希の言葉だけが奏に拾われた。

 

 

「あまり変えるつもりはないけれど……まふゆの自分探しを手伝いながら、曲を聴いた誰かが少しでも救われるような、幸せに思うような曲を作りたいかな」

 

「うんうん、やっぱり奏は奏だね! じゃあ、ボクも今まで通り、頑張っちゃうぞ〜♪」

 

「そうだね。皆の力を貸してくれると嬉しいな……あっ、でも。まずは絵名の調子が戻ってからね」

 

 

 奏が心配してくれる横で、まふゆがまたいらないことを言う。

 

 

「……心配しなくても、夜なら絵名も水を得た魚のように動くんじゃない?」

 

「はぁ、誰が夜の方が煩いのよ……!」

 

「そんなこと言ってないし、無理してツッコまなくてもいいよ。声、弱々しいから」

 

「くぅ……」

 

 

 こっちが眠気で弱ってるからって、まふゆは余裕綽々である。

 お昼を超えてから覚えていろ、と宣戦布告できるものならしてやりたい。

 

 

「はは。絵名も少しは目が覚めてきたみたいだし、乾杯の音頭を取るよー。ほら、コップ持って……かんぱーい!」

 

「「「……」」」

 

「いや、反応してよぉ!」

 

「あ、ごめんね。瑞希」

 

「……誰かしてくれるかなって」

 

「瑞希ってば急だし、まだ眠たいし」

 

「うーん、このバラバラ感! ボク達らしいけども!」

 

 

 奏もまふゆも、勿論私も反応しなかったせいで瑞希が拗ねてしまったので、改めて乾杯の音頭を取る。

 暫くすると私の目も冴えてきて、あれよあれよとしているうちに時間が過ぎていった。

 

 

 

 

 

☆★☆

 

 

 

 

 

 

「──いやぁ。喋った、喋ったぁ」

 

「ほぼ瑞希1人で盛り上げてたよね」

 

「だねぇ。ボク1人だと寂しいし、今度は午後からにしよう」

 

「私を巻き込みたいってこと? 嫌なんですけど」

 

「えぇー、そう言わずに付き合ってよー。絵名のツッコミをボクの体が求めてるんだよ、お笑いの頂点だって目指せそうなんだよー」

 

「あんた1人で取ってきなさいよ。私は目指さないから」

 

 

 仮に頂点を目指すとしても、登る山は別にしてほしい。

 

 

「元気だね、2人とも」

 

「あれは煩いだけだと思う」

 

 

 やいのやいのと瑞希が騒ぎ、私も隣でツッコミを入れて。

 その後ろを奏とまふゆが静かに帰り道がすごく嬉しくて、思わず笑ってしまう。

 

 

(いいなぁ、本当に……)

 

 

 本当に綱渡りだったけれど、隣にいてほしい人がちゃんと歩いていて、記憶もあって。

 

 

(本当に、良かった)

 

 

 しみじみと感じている間に、いつもの解散場所(交差点)が見えてきた。

 

 

「じゃあ、この辺で一旦、解散しよっか」

 

 

 奏の一声で、今日の打ち上げも終わる。

 打ち上げもスケッチブックの因縁も終わったけど──

 

 

「「「「また25時に、ナイトコードで」」」」

 

 

 ──25時からまた、私達の活動は続くから……これから先の道はもう、怖くなかった。

 

 

 






オリジナルストーリー『キセキが描く戯雨(そばえあめ)の先へ』……fin.


──賛否感想、色々とあると思いますが、長かったえななんの因縁の旅路もこれにて終幕。

高校2年生で問題を綺麗に解決したいなぁと薄ら考えていたら、生まれてしまった邪悪なスケッチブックとえななんの受難。
紆余曲折、寄り道もしつつ何とか結末まで辿り着きました。

無事にスケッチブックも燃やせましたし、ここから先はえななん達も高校3年、2年生。問題はゴリ押しで解決してしまったので、これから先のイベントストーリーはほぼ壊れてしまってます。
仮に楽しく過ごしていく中で壁が現れても、スケッチブック君という難敵に打ち勝ったえななん達であれば乗り越えていくことでしょう。

なので、定期的に更新するお話としてはこれにて完結です。

改めまして。
多くの感想やお気に入り、後はかなり評価を入れていただいていて、すごく嬉しくもあり畏れ多く感じながらも、皆様の応援のおかげで何とか200話以上という長期更新をすることができました。
心からの感謝を込めて、お礼申し上げます。

















……とはいえ、話は終わったんですけど。
えななんもニーゴで、ニーゴに縁しかない本作品。
231話まで続いたのなら、折角ですし25って数字にしたいかもしれないし、終わってもいい気もしてます。


暫くは活字チャージ期間とやりたいゲームがあるので、今までのようにはいきませんが。
もし機会があるなら次は不定期になりますが……皆様にお任せしようと思います。

よければぜひ。答えてもらえると作者が喜びます↓


ニーゴということで、どうせなら250話ぐらい……

  • カワイイボクらの話、見たいよね!
  • 綺麗に終わったし、ここで完結でしょ
  • え、掲示板形式も見たいの? 好きなんだね
  • ……わからない。皆に任せるよ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。