イラスト担当は記憶を無くしました   作:大森依織

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現実逃避していたら次の話ができてました。
色んな意味で恐ろしいですね(震え)

範囲的にはTake the Best Shot!です。
それではどうぞ。





238枚目 写真日和

 

 

 

 

 

 

「そういえば、絵名が好きそうな化粧品が景品になっているイベントを見つけたんだけど、知ってるかしら?」

 

 

 とある和風デザートが美味しそうなカフェにて。

 ニヤリと前の席で笑う愛莉に、私は首を傾げた。

 

 つい最近、まふゆから『実は修学旅行の時に桃井さんと日野森さんに協力してもらってた』という話をポロリと聞いてしまい。

 借りたままというのも落ち着かないので、愛莉と雫が好きそうなカフェを探して2人を遊ぶついでに連れて来た……というわけなのだけど。

 

 

「私が好きそうなイベントって?」

 

「ほら、これよ。このフォトコンテストっていうの」

 

「えぇっと……あぁ、これなら私も参加してるよ」

 

 

 差し出された愛莉のスマホを覗き込むと、そこには見覚えのあるサイトのページが映っていた。

 数日前の夜に『絵名が好きそうなコスメが景品になってるコンテストがあるよ~』と瑞希に紹介されたこともあり、はっきりと覚えている。

 

 

「投稿できる写真は3枚までらしいけど。良い写真が撮れたから、先に1枚投稿していたんだよね。今は何位だっけ?」

 

「絵名の写真ね? それなら……あっ、今は10位みたいよ」

 

「10位ってことは上の方よね? すごいわ、絵名ちゃん!」

 

 

 私は人様に絵を見せて、反応を求めてしまう承認欲求モンスター気質だ。

 それなので、雫に素直な反応で褒められると気分が良くなってしまった。

 

 

「ありがとう、雫。10位なら景品も貰えるし、このまま終わってくれたらいいんだけどねー」

 

「……絵名、喜んでいるところ残念だけど、そう甘くはないみたいよ」

 

「え?」

 

「あら? 絵名ちゃんの写真が11位になっちゃってるよ」

 

 

 愛莉の言葉にスマホを覗き込むと、雫の指摘通り11位という順位が躍っている。

 一体誰が10位に躍り出たのか。愛莉のスマホから自分のスマホへと切り替えて調べてみると、そこには見覚えしかない男子がいた。

 

 

「えぇっ、何で冬弥くんが?」

 

 

 目を擦ってみても、スマホの画面に映っているのは彰人の相棒である冬弥くんだ。

 特に写真が得意だとか趣味だとかは聞いたことがないのだけど……いや、待って。

 

 

「──うん? この画角、自撮りじゃないよね。ってことは、冬弥くんは被写体役? 一体、誰が写真を撮ったんだろう。冬弥くんを生かした構図でありつつテーマにも沿ってるから、結構撮り慣れてる子なんだろうけど……というか、どこかで見たことがあるような癖がある気がするんだけど、どこだったかな……」

 

「絵名? 絵名ー? ……ダメね、自分の世界に入り込んでるわ」

 

「そうね、全く聞こえてないみたい。絵名ちゃんの集中力って凄いのね」

 

「えぇ、凝り性だから時間がかかるわよ。これは放置するしかないわね」

 

「そういえば絵名ちゃん、最近は勉強もそこまで頑張らなくてよくなったって言ってたけど。手が抜けなくなって困ってるって言ってたよ」

 

「そうね、やるからには全力でやっちゃうのが東雲家の性質なのかもしれないわ」

 

 

 ……そんな感じで愛莉と雫が話しているのにすら気が付かないまま、写真を見ていた私の意識が戻ってきたのは10分ぐらい過ぎてからのことだった。

 

 

「──絵名、もういいかしら?」

 

「……はい。すみませんでした」

 

 

 流石にこれはない。

 素直じゃないと普段から言われる私でもそう思うのだから、愛莉達に頭を下げずにはいられなかった。

 

 ぺこりと首振り人形に変身しかかっている私に、スマホの画面を指差した雫が首を傾げる。

 

 

「それで、絵名ちゃんはどうするの? 11位だと景品は貰えないんだよね?」

 

「うん、だから上位に入らないとね。やるからには全力でやりたいから……その、遊んでるのに申し訳ないんだけど」

 

「待って。絵名の言いたいことは予想できるけどそのコンテスト、わたし達も手伝うわ。だから、絵名の言葉の続きは断らせてもらうわよ!」

 

 

 もう1度頭を下げようとしていたら、愛莉に先回られてしまった。

 

 

「え、本気?」

 

「えぇ、本気よ。絵名が考え事をしている間に雫と話し合ったわ」

 

「……そっか。じゃあ、手を貸してもらってもいい?」

 

「「もちろん!」」

 

 

 そうして、2人の好意に甘えた私はカフェから公園へ移動し、写真を撮ることにした……のだけど。

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆

 

 

 

 

 

 

 

 

「「あ」」

 

「え、冬弥くんとこはねちゃんがなんでここに……それに、遥ちゃんまで」

 

「えっ、絵名先輩!?」

 

 

 私もびっくりしてるけど、目の前にいるこはねちゃん達も驚いている。

 

 たぶん、前で背中しか見えない愛莉と雫もそう。

 というか、2人の方が何で遥ちゃんが向こう側にいるのかわからなくて、目を見開いちゃってそうだ。

 

 

「そういえば、こはねちゃんって写真撮ってるんだっけ。なら、3人はフォトコンクールの写真を撮りに来たんだ?」

 

「えっ。何で絵名先輩がそれを……?」

 

「私達も同じ目的でここで写真を撮ってたからね。景品狙いなら、同じ目標に向かって頑張るライバルってわけ。次はリベンジさせてもらうからね」

 

 

 意外な組み合わせだと思ったけど、この布陣を見て理解した。

 

 被写体役・冬弥くん。

 撮影係・こはねちゃん。

 アドバイザー・遥ちゃん。

 

 たぶん、こんな感じの布陣だ。

 私が納得して投稿した写真を超えるクオリティを叩き出せるとは、これは手強い相手になりそうだ。

 

 

「ちょっと予想外のメンバーだけど、負けないからね」

 

「……私も、負けません!」

 

「だよね。お互い、頑張ろうね」

 

「はい!」

 

 

 そうして、こはねちゃん達という目標を超えて景品を貰うために愛莉と雫に協力してもらったんだけど。

 

 2人に協力してもらいながら、私の力不足で11位とギリギリ目標には届かなかった。

 普段から写真を投稿したり、絵の参考程度ではなく、もう少し勉強していたら違っていたのだろうか?

 

 こはねちゃんの好意で打ち上げの時に、景品を分けてもらっちゃったし……これは完全に私の負けだ。

 とはいえやっぱりちょっと悔しいので、写真の勉強もしようと思ったイベントだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《side.こはね》

 

 

 

 

 

「は? 姉貴と会っただと?」

 

「うん。同じフォトコンテストに写真を投稿してたみたいで、偶然だけど」

 

 

 いつものようにストリートのセカイに行って、青柳くんと合流した後。

 セカイのカフェで杏ちゃん達にも今日の出来事を話していると、東雲くんが顔を顰めた。

 

 

「なぁ。あいつ、変だったり迷惑をかけたりしてねえよな?」

 

「ああ、彰人が気にするようなことはなかったと思う」

 

「そうか……なら、いいんだけどよ」

 

 

 言葉だけならお姉さんに対して厳しい発言に聞こえるのに、青柳くんと話している東雲くんの顔と声色から心配が透けて見えてしまっている。

 

 たぶん、皆も東雲くんが心配してるんだってわかってるせいかな。

 東雲くんが絵名先輩のことを大切に思ってるのは私にも伝わってきた気がした。

 

 私がこっそりと東雲くんの様子を窺っていると、杏ちゃんが私の隣に座って耳打ちしてきた。

 

 

「心配なら心配だーって、言えばいいのにねぇ」

 

 

 そう言う杏ちゃんは微笑ましいものを見るような、ちょっと呆れているようにも見える目で東雲くんを見ている。

 杏ちゃんの言っていることもわかるけれど、でも。

 

 

「私は東雲くんの気持ちも、少しわかる気がするな」

 

「何かあった、っていうのはおかしいか。こはねはそう思う何かを見たの?」

 

「うん。学校での話なんだけど……」

 

 

 私は絵名先輩と知り合うまではそこまで意識していなかったんだけど、一種の名物になるぐらいには『絵を描いている絵名先輩』と校内で会う可能性は高かったりする。

 

 基本的にはどこかの教室でこっそりと描いているらしいけど、その日もそういう気分だったのか、私が見えるところで絵名先輩は絵を描いていた……んだけど。

 

 

「その時の絵に向き合ってる気迫っていうのかな。絵名先輩を見ていると、最近、映像を見たせいかもしれないけれど……あの日の夜の凪さんみたいだなって感じて、ちょっと怖くなっちゃんだ」

 

「凪さんみたい、か……何となくわかったかも。それは確かに、彰人も心配になるよね」

 

 

 杏ちゃんの顔がどんどん険しくなっていくのを見て、今更ながらに気がついた。

 もしかしなくても勘違いさせているのは間違いないので、私は慌てて訂正を入れる。

 

 

「あ、でも。今の絵名先輩は違うよ! 一時期そう見えたってだけで、今の絵名先輩は大丈夫だと思うな」

 

「え? あー……そっか。そういえば、瑞希も山場は超えたーとか言ってたっけ。じゃあ、今更心配してもアレかぁ」

 

「アレかどうかはわからないけど、今の絵名先輩は元気そうだったよ」

 

「ま、そうだよねー。瑞希の話を聞いてる感じだと、色んな意味で人気者みたいだし……彰人が心配するようなことにはならないか」

 

「色んな意味で人気者って?」

 

「んー。こはねが知らなくてもいいことかな~」

 

 

 ……ちょっと、杏ちゃんに誤魔化された気がするけれど。

 

 

(大丈夫だっていうのなら、後はあの日を超える。それだけだよね)

 

 

 ぎゅっと手を握って気持ちを新たにしていると、スマホに何か連絡が来た。

 杏ちゃんにひと言告げて端に寄り、通知の内容を確認する。

 

 

『こはねちゃん、この前はありがとう! 分けてもらった景品の化粧品、すっごい可愛いし早速付けちゃった。また何か手伝えそうなことがあったら遠慮なく連絡してね。すぐに駆け付けるから!』

 

 

 通知はさっきまでの話題の主である絵名先輩からのお礼の連絡だった。

 

 打ち上げの後にお礼だってどこのいつのタイミングで買ったのかわからないお土産も貰ったのに、すごくマメだなって思う。

 もしかしたらこういうところが杏ちゃんが言う『色んな意味で人気者』の秘訣なのかも。だとしたらちょっとわかっちゃうな。

 

 

「こはねー、メイコさんがオヤツ用意してくれるって! 早く選ばないと選べなくなっちゃうかもよー」

 

「え? あっ、うん!」

 

 

 私はじっと見ていたスマホを片付けて、手招きする杏ちゃんの元へと駆け寄った。

 

 

 

 

 







えななんがマメなのは大人達から根回し術を習ったから。
どうしても不安定で迷惑かけてしまうのはわかってたので、嫌われて敵が増えないようにする生存戦略の名残なのです……




次回予定:後回しにしたことを本気で片付けます。なので、それが終わった後の25時で。

(本当に長引きそうなので、活動報告の方にえななんふんわりスペック載せておきました。よろしければどうぞ)
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