途中まで着手してたお話を完成させたので、更新します。
範囲はリラックスティータイムの所。奏さんバナーのサブイベです。
飛ばし気味なので奏さん成分を摂取したい方はYouTubeでもアプリの方でも、お好みの方でぜひ……
今まで特に触れてこなかったけれど──2年生での長き押し付け合いの末、3年生で部長を無事に回避した私はちょっと変わった平部員というポジションに収まっていたりする。
面倒なことは部長に丸投げできるので、後輩から喋りかけられるのも減るだろう、と目論んでいた……んだけども。
「えな先輩、えな先輩!」
「すみません。今、いいですか?」
中庭で写生課題に勤しんでいると、思わぬところというか……咲希ちゃんと志歩ちゃんから声をかけられた。
まさかの2人にちょっとビックリしたけれど、何とか先輩風を吹かせて会話に臨む。
「こんにちは。2人揃ってどうしたの?」
「アタシ、えな先輩に聞きたいことがあって!」
「私はその付き添いです」
咲希ちゃんは元気よく、志歩ちゃんは控えめに。
(そういえば、咲希ちゃんと志歩ちゃんって2年になってから同じクラスになったんだっけ)
たぶん、何か用事があった咲希ちゃんが志歩ちゃんの手をグッと掴んでここまで連れて来たのだろう。
思い出した情報と今の様子を見ているだけで、何となく今の状況に至るまでの過程が想像できた。
「ここまで来て聞きたいことって?」
「えな先輩は宵崎さんって人と同じサークルで活動してるっていっちゃんから聞きました!」
いっちゃん、というのは一歌ちゃんだと考えると。
記憶を掘り起こして思い出したのは、奏が一歌ちゃんから作曲のことで相談を受けたりしていたという話だった。
私が奏から話を聞いたように、2人もそういう話を一歌ちゃんから聞いたのだろう。
それで私の元まで来てくれたのだとしたら、2人が目の前にいるのも納得できる。
自分なりに理由を考察できて満足した私は、待たせている咲希ちゃんに首肯した。
「うん、そうだよ。もしかして奏に何か用事なの?」
「用事というよりは……いっちゃんと何かしてるみたいなので、えな先輩なら何か知らないかなぁって」
「あぁ、そういうことね」
咲希ちゃん達からすると奏は一歌ちゃんの話の中に出てくる人という認識だろうし、一歌ちゃんも奏も知っている人に尋ねるのは間違いじゃないだろう。
とはいえ、だ。
「そうやって聞いてくるってことは、作曲以外のことだよね? それだと力になれないかも」
今はお父さんが元気になっている途中だけど、基本的に奏といえば曲ばかり作っているタイプである。
それは今も変わりなく、息をするように作曲をしているので、それ以外のこととなると私もわからない。
「奏と一歌ちゃんの共通の知人って意味なら、私よりも穂波ちゃんに聞いた方が早いんじゃないかな」
「最初にほなちゃんにも聞いてみたんですけど『わからないけど、待ってたらちゃんと言ってくれると思うよ』って言われちゃいまして」
「あー」
穂波ちゃんなら言いそう。
別に落ち込んでるわけでも沈んでるわけでもないのなら、一歌ちゃんが言ってくれるまで待ってようよって言う姿が私でも想像できた。
「だったら、待つ方がいいんじゃないかな。私も奏が何かしてるなら、話してくれるまで待つからね」
「やっぱりえな先輩もそう思いますか」
「そういう咲希ちゃんも、穂波ちゃんの言葉に納得してたでしょ?」
それでも気になるという気持ちは誤魔化せないから、私のところまで来たんだろうけど。
私の予想は間違っていなかったようで、咲希ちゃんは力なく頷いた。
後ろで見ていた付き添い役の志歩ちゃんも、これには苦笑い。私もたぶん、似たような顔をしてると思う。
「忙しい所、すみませんでした。咲希の相談に乗ってくださり、ありがとうございました」
「えな先輩、ありがとうございましたっ」
志歩ちゃんは付き添いなのに丁寧に、咲希ちゃんは迷いがなくなったのか元気よく頭を下げた。
「いいよいいよ、気にしないで。私も話を聞いてたら奏のことが気になってきたけど……お互いにグッと堪えて待ってようね」
「はい! アタシもグゥーッと待つことにしますっ」
咲希ちゃんの悩み事は保留状態で解散することになったし、そろそろ放置していた絵に向き合おう。
(よし! 課題を早く終わらせてあの絵に取り掛からなきゃ)
……そうしてすぐに描くのを再開した私の耳には既に、周りの声が聞こえていなかったと言い訳させて欲しい。
「えむちゃんが進級前に心配してたから気になってたんだけど、元気そうでよかったぁ」
「ライブの時にはそう見えなかったから、私は大丈夫だって思ってたけどね」
「またまたー。しほちゃんも心配だったから一緒に来てくれたんだよね?」
「……それもあるかもね」
廊下を歩く2人がそんな話をしているのも知らずに、私は鉛筆を走らせていたのだった。
……………………
話を聞いてから数日が経った、とある日の朝。
前もって咲希ちゃん達から話を聞いていた私は、奏に誘われた日に合わせてコンディションを整え、目覚まし時計も使わずに体を起こした。
ちょっと体を動かしてみた感じは好感触。
朝ご飯を食べて準備をして、玄関に立って。
それでもやってこない睡魔に、思わずガッツポーズをした。
──そうやって意気揚々と外に出た私を待っていたのは、待ち合わせをしていた瑞希とまふゆ……なんだけど。
何故か2人はこちらをまじまじと見て、時間が止まったように固まっていた。
「ご、午前中なのに絵名が目を開いて歩いてる!? 異常事態だよ、まふゆ!」
「うん……明日は槍が降るかもしれない」
「あんた達、人の家の前で失礼過ぎない?」
再起動したと思ったら、開口一番がコレなんて失礼過ぎる。
そんな内心を込めて睨み付けると、瑞希が笑みを浮かべた。
「あははー、ごめんって。最近のことを考えると珍しかったから、ビックリしちゃってさ」
「私だって、やろうと思ったら頑張れるわよ」
「みたいだねー。ちなみにそれ、続けられる感じの努力? 無理してるんじゃない?」
「……準備に時間がかかるのは確かね」
「じゃあ、無理はしない方がいいね。お迎えは続行ってワケだ」
変わらず迷惑をかけ続けてしまうって話なのに、瑞希は何故か嬉しそうだった。
相変わらずのポーカーフェイスなまふゆすら、満更でもなさそうな雰囲気である。
(……へんなの)
普通、嫌がったりするもんじゃないの?
そう思ったけれど、懸命な理性が『今は聞く時じゃないな』と判断して、口を縫い付けてきた。
藪から蛇を出す気分でもないので、私は2人の後をついて行くように奏と約束している場所に向かった。
☆★☆
「── 奏、今日は呼んでくれてありがとね」
「やっほ~♪ ボク達も来たよー」
「今日は招待してくれてありがとう。楽しませてもらうね、奏」
私と瑞希はいつも通りだったけど、まふゆは久しぶりの優等生モードで、奏と一歌ちゃんが主催のお茶会に参加していた。
公園の一角にシートを敷いて準備しているみたいだけど、木が日差しを遮ってくれていて丁度いい。
奏が招待した人は失礼な予想かもしれないけれど、そこまで多くないはず。
なので、一歌ちゃんの幼馴染である穂波ちゃんや咲希ちゃん、志歩ちゃん以外にも、愛莉やみのりちゃん、遥ちゃんというモアジャン組だけでなく、他校生の寧々ちゃんも来ているのは一歌ちゃんの招待なのだろう。
思った以上の大人数でのお茶会と、練習したらしい手付きでお茶の準備をする奏の姿。
「奏、大丈夫かな……?」
「まるで保護者みたいに心配してるじゃん。そんなに心配しなくてもいいと思うけどねー」
「望月さんも側にいるし、朝の絵名よりは大丈夫だよ。ほら、ちゃんと座って待ってよう?」
ちょっと心配なだけだったのに、苦笑いしている瑞希とまふゆに誘導されて座り直した。
……というか、優等生モードなのにまふゆの言葉に毒があったような。
そういえば、最近のまふゆは優等生モードだろうが、笑顔で毒を混ぜてくる愉快な状態になってるんだった。
さっきの言葉に混ざった毒も気のせいではなさそうだ。
苦戦している様子を見る度に反応してしまう体に、瑞希とまふゆに窘められること数分程。
奏の小さな「できた……!」という声を聞けて、私の体から力が抜けた。
「よ、よかったぁ……」
「絵名も他人のことを言えないぐらい、過保護だよねぇ」
「……はいはい。人差し指はウザいからやめようねー」
「いっ、痛い痛いっ。ごめんってば〜」
安心している横で余計なことを言いながら人差し指で体を突いてくる指を掴み、ギュッと握ってやった。
悪は成敗した。後は奏が入れてくれたお茶を楽しもう。
(それにしても……1杯1杯で茶葉を入れ替えてるんだ。偉いなぁ)
お茶を淹れるのに詳しいわけではないので、奏の淹れ方が正解なのかもわからない。
ただ、同じお茶を1杯ずつ大切に淹れてるのが凄いなぁと、目がついただけだったのだけど。
「……瑞希」
「うん? どうしたの?」
「私のお茶とあんたのお茶、色がちょっと違う気がするんだけど」
ちょっと隣を見た時に、感じた違和感。
ぐるりと周りを見渡して自分以外のお茶も見てみる。
光のせいか、目の錯覚か。やっぱりチラリと見えるコップに注がれたお茶の色が僅かに違うように見えるのだ。
私の分は口に入れるとスーッとするような、ハッカっぽい感じがするので、ミントティーなのかもしれない。
ミントティーといえばハーブティーの1種だから、もしかすると。
「これ。1人1人、別のお茶だったりする?」
「へ? でも、似たような色だよ。気のせいじゃないの?」
「パッと見じゃ分かんないけど……私も瑞希も、まふゆのも全部、バラバラのお茶だと思う」
「え、嘘でしょ!?」
驚く瑞希とニコニコ笑ってるだけのまふゆの許可を貰い、理科の実験のように手で仰いでみる。
ハーブ系のお茶に詳しいわけではないけれど……やっぱり、違う。
「なるほどね。それで1杯1杯、茶葉を入れ替えてたんだ」
「ねぇねぇ、これってボクらだけなのかな? それとも皆違ってるのか、まふゆはどう思う?」
「わからない。私に聞くよりも奏に聞いた方が早いよ」
「ちょうど奏もこっちに来たし、皆で聞きに行こ〜」
身軽な瑞希はひょいと立ち上がって、奏の元へと飛ぶように駆け寄る。
「私も行こうかなって思うけど、まふゆはどうするの?」
「私は……」
顔を見合わせると、優等生モードなのに迷うように視線を泳がせるまふゆがいた。
あれだ。たぶん、近くに一歌ちゃんとか、色んな人がいるのをまふゆは気にしているのだろう。
後からゆっくり向かうか迷ってそうだけど、バラバラに行くと今度は奏が気にしそうだ。
「行きたくないのか行きたいのかはどっち?」
「……行きたくないとは、思ってない」
「じゃあ、さっさと行くわよ。何かあったら私のせいにしていいし」
「絵名のせいにはしないよ」
「はいはい。わかったから行くよー」
ムッとする顔をできる程度には遠慮がなくなったらしいので、まふゆの手を引いた私も奏がいる方へと向かうのだった。
☆募集:ルイボスティーとの和解方法☆
慣れないお茶とも和解しながら楽しんでいる人生を送ってますが、ルイボスティーだけはどうしても和解できないんですよね……
次回更新予定:どこかの25時、そろそろどんな話を更新するか考える時期が来たと思いますので、いい感じに完成したら更新します。