プロセカ5周年おめでとうございます。
周年曲のニーゴバージョン、解釈一致でいつもいい仕事をありがとうございますって気持ちでいっぱいでした。本当にありがとうございました。
今回は『みんなで配信♡WEDDING LIVE!』の前振りです。
「お願い! 東雲さんも一緒にヒロイン4人のウェディングドレスのデザイン案を考えて!」
そんな話を聞いたのが3時間前のこと。
漫画のアシスタントのバイト中に突然、日頃からお世話になっている漫画家の先生に両手を合わせて拝まれた。
「この漫画は先生の子供のようなものですよね。先生自身が考えた方がいいのでは?」
「それはそうだし、僕の方でも色々と考えてみたんだけどね……どれもコピペみたいになっちゃって。納得のいくドレスをあの子達に着せてあげられないんだよ」
そうして見せられるアイデアは確かに、似たようなドレスを着たヒロインの子達が並んでいた。
違いを出そうと頑張ってるのは伝わるものの、どうしても似通ったものになってしまっている。
「あぁー……これは先生の言いたいこともわかります」
「でしょう? そういうわけで東雲さんにもお願いしたいんだけど、ダメかな?」
「……わかりました。私の方でもちょっとだけ、考えてみますね」
「ありがとぉぉぉっ! 報酬は上乗せするし、クラブには貢いでおくから安心してねぇっ!」
謎のクラブに貢がれても私には関係ないけれど。
これも経験になるだろうと──そう軽く受けてしまったのが、良くなかったのかもしれない。
☆★☆
「うーわ。私のも酷いな、これ」
作業が始まる前にナイトコードに入って、少しの間アイデアを考えてみたのだけど……これが全然ダメ。
装飾がちょっと違うかな? というものは描けても、アイデア用に描いたノートに広がっているのは先生の部屋で見たようなコピペ絵の大群だった。
(瑞希が持ってた雑誌のウェディングドレス、もうちょっとしっかり見てたらよかったかなぁ)
こういうこともあろうかと、ウェディングドレスのネタを蓄えていたら良かったのだけど、そんな用意周到さなんてない。
……安請け合いをしてしまったかもしれない。
漫画家先生と似たような壁に勢いよく追突してしまって、私は頭を抱えることになった。
「あー、どうしよっかなぁ」
『えななん、何かあったの?』
「うん、ちょっとね……って、K!?」
『お疲れさま。集中していて聞こえてなかったんだね』
気が付かなかった時のためにボイチャに繋いでいたけれど、本当に
両手を顔に乗せて天井を仰ぎ見ていると、イヤホンから『ふふ』と小さな笑い声が聞こえてきた。
『それで……何を悩んでたのか、よかったら聞かせてくれないかな?』
「全然作業とは関係ないけど、それでもいい?」
『作業の時間はまだ先だし、えななんさえよければ』
「じゃあ、聞いてもらおっかな。実は──」
特に隠すことでもなかったので、今日のバイトでウェディングドレスの案を考えることになった話を簡単に話す。
話の途中で誰かが来ることもなく、最後まで通しで話を聞いてくれたKは『あぁ』と小さく声を漏らした。
『──それでえななんは悩んでたんだね』
「作業に関係ないことで心配させちゃったみたいでごめんね」
『ううん、謝るようなことじゃないよ。それにしても、ウェディングドレスか』
「何か気になることでもあった?」
『前に《フェニックス・ブライダルフェスタ》に行ったって話をしたと思うんだけど、覚えてる?』
「穂波ちゃんに誘われた時のこと? それなら覚えてるよ」
途中でえむちゃんや瑞希と合流したという話を聞いた後、何故か後から瑞希がウザい自慢をしてきたのではっきりと覚えている。
記憶を掘り出していたら「いいでしょー」とドヤ顔している瑞希が脳内再生されて、色んな意味で後悔してきた。
「あーあ。今更だけど、私もそのイベントに行けばよかったかなぁ」
『それなんだけど……前回のイベントが好評だったらしくて、2回目のブライダルフェスタが開催されてるみたいだよ』
「えっ、そんな都合のいいタイミングでイベントが開催されてるの?」
『わたしは遠慮したんだけど、望月さんが2回目は幼馴染の人と行くって言ってたから。間違いないと思う』
「へぇ、そうなんだ。今週の休みの日にでも行こっかなぁ」
本当は次のバイトの日までにイベントに行けそうな日がそこぐらいしかない、というのが正しいけれども。
Kには関係ないので余計なことを言わずに脳内で計画を立てていると、イヤホンからか細い声が聞こえてきた。
『えななん』
「うん?」
『それ、わたしも一緒に行ってもいいかな』
「えっ、でも……資料探しも兼ねてるから、遊ぶのはその後になるよ?」
『大丈夫。行ったことがあるイベントだから、少しぐらいなら案内できると思うんだ。ダメかな?』
「ううん、そんなことないよ。案内してくれるのなら助かるし、一緒に行こう」
『うん。予定は合わせるから、いつぐらいに行くか教えて』
「ちょっと待ってね。今週の予定は──」
スマホに視線を向けて、改めて思う。
(Kが自分から外のイベントに行きたいって言うなんて、意外だったな)
流石に、意外は言い過ぎか。
今までだってKの方から音楽関係のイベントに行こうと言っていたこともあったし。
最近は運動するために外に出てるのだから、音楽に関係なくても外に出ようと思うことだってあるはず。
ここは逆に考えよう。
今週末に行く予定のイベントは、Kがもう1度行きたいと言いたくなるぐらい良かったのだと。
「──うん、そう考えるとちょっと楽しみになってきたかも」
『何でだろう、何か勘違いされてる気がするけど……いつぐらいに行くつもりなのか、決まった?』
「あっ、ごめん。すぐ確認するから!」
そうして予定を合わせたタイミングで、来ていなかった
『お疲れさま、2人とも早かったんだね』
『やっほー。何してたのー?』
『ちょっとね。それで、作業の話なんだけど──』
てっきり、2人にも話すのかなと思っていたけれど、Kは何事もなかったかのように作業の話をしている。
(本当に2人でイベント、行くことになりそうかも)
奏と2人で行動するのは2人と比べると珍しい方だと思う。
そう考えると主な目的は遊びじゃなかったはずなのに、ちょっとだけ当日が楽しみになった。
……………………
ブライダルフェスタ当日の朝は、前日から入念に準備していたので体調調整に無事、成功。
ギリギリになってしまったけれども、奏と待ち合わせの時間にも間に合った。
「奏ー、お待たせっ」
「ううん、さっき来たところだから待ってないよ。わたしの方こそ、迎えに行けなくてごめんね」
「……いや。その件は奏が悪いんじゃなくて、私が悪いだけだから。強いて言うならまふゆと瑞希がおかしいんだよ、あれ」
いざとなったら彰人に頼むって言ってるのに、未だにあの2人は予定を合わせて私の朝の送迎をしてくれるのだ。
最近は申し訳なくてしょうがなかったのだけど、最近ではもうここまで継続できてる事実に恐怖を感じている。
普通、家族でもない友達相手にそこまでするだろうか?
……それを言ったら何倍にもなって言葉が返ってくる気がしているので、奏の前ぐらいでしか言わないけれど。
「あはは……2人とも、絵名のことを大切に想ってるんだと思うよ」
「個人的には無理はして欲しくないって気持ちの方が強いけどね」
「そっか。でも……わたしも皆も、絵名が大切なんだってことは覚えておいてほしいかな」
微笑む奏から『否定させないぞ』と言わんばかりの凄みを感じる。
「……私も皆のことは大事だし、そういうことかな。余計なことは言わないでおくよ」
「うん、その方がわたしもいいと思う」
「それじゃあ、そろそろ行こっか。えっと、イベント会場は……」
「前回と場所は変わってないみたい。こっちだよ」
そう言って先導してくれる奏について行くと、想像していたよりも立派なブライダルフェスタの会場が目の前に広がっていた。
比較対象がデパートとかの展示だったのがよくなかったかもしれない。
フェニラン主催でそんな小規模なイベントを開催するはずもなく、ズラリと並ぶドレスに圧倒されてしまった。
「絵名? 見ないの?」
「ごめん。圧倒されちゃってぼーっとしてたみたい」
「すごいよね。これだけあったら、絵名の参考になりそうなドレスも見つかりそうだよ」
「確かにこれだけあったら見つかるかも……奏と遊ぶ時間も欲しいし、頑張って見つけるからね」
「こっちのことなら気にしないで。絵名も納得する資料が集まった方が、わたしも嬉しいから」
奏の優しい応援を受けた私は、早速2人で資料になりそうなドレスを見て回った。
最初の方は定番のドレスが並んでいて線だけでは描き分けるのが難しそうなものが並んでいたけれど、流石は天下のフェニランのイベント。
面白そうな式の案だけでなく、ドレスのデザインにも本気を出してくれていたおかげで、1時間もかからずに目星をつけることができた。
「──よし。これぐらいあればデザインが描けそう」
「え、もう? そんなに時間は経ってないけど……」
「ある程度、方向性は決めてたから早く集めることができたよ。ありがとね、奏」
「一緒に歩いてただけだから、お礼を言われるほどじゃないけど。絵名が納得できる資料が集まってよかったよ」
薄らと笑みを浮かべる奏に、私も笑みを返す。
ここからは仕事じゃなくて、遊びの時間だ。
「付き合わせちゃったし、今度は奏の行きたいところに行こうよ。試着コーナーとか、面白そうなのがあるみたいだし」
「わたしが着るのはちょっと……絵名は着たい?」
「私も今はいいかなぁ」
「……なら、わたしも試着はいいかな」
奏は少し残念そうな顔を見せつつ、別方向に指を向ける。
「あっちにプラネタリウムウェディングっていうのがあるみたいだよ。面白そうだし、そっちに行ってみない?」
「へぇ、そうなんだ。ちょっと見に行ってみよっか」
プラネタリウムとウェディングを混ぜてる理由がよくわかってないけれど、フェニランだしどちらかのクオリティは高いだろう。
そんな気持ちでプラネタリウムのある方へと向かっていると、見知った顔が現れた。
茶髪と銀髪の2人組。
バンドを組んでるからなのか、4人で活動してることの方が多い穂波ちゃんと志歩ちゃんのコンビだった。
「望月さんと……確か、日野森さんだっけ」
「えぇっ、宵崎さん?!」
あまりにも予想外の場所で出会ったからなのか、穂波ちゃんの視線が奏に注力されている。
目を瞬かせて固まる姿は停止ボタンを押された機械みたいだ。
隣にいる志歩ちゃんも穂波ちゃんの異変に気がついたらしく、奏に会釈してから申し訳なさそうに私にも頭を下げてくれた。
「どうも。この間のお茶会振りです」
「久しぶりだね、志歩ちゃん。えっと、穂波ちゃんは……」
「予想外の光景に思考が止まってしまったみたいです」
「……嘘でしょ?」
まさか側から見た感想がそっくりそのままだとは、私にも予想外だ。
いくら奏が外にいるのが珍しい方だとはいえ、固まるほどまでとは予想できるはずもなく。
穂波ちゃんが再起動するまで、私達は困惑した顔を見合わせるしかできなかった。
・最近の奏さん
お父さんが目を覚ましたのもあって、週に1回はウォーキングをするようになった
……が、それでも家の中にいる方が多いせいか、珍しい扱いは止まらないらしい。
・望月さん
まさか奏さんがいるとは思わず、停止中。
・えななん
嘘でしょ、穂波ちゃん……?
・日野森さん(妹)
……どうしてこうなった?
更新予定:変わらず25時、日曜日です。