ラモーヌさんとアルダンさんの姉妹の間に挟まれたメジロに転生してしまったお話 作:雅媛
メジロの名は大きく重い、らしいです。
多くの所属のウマ娘がそんなことを言うから、世間的にはきっとそうなのでしょう。ボク自身はあまり気になったことはないですし、ラモーヌ姉さまなんて天上天下唯我独尊ですからそんなこと考えてなさそうです。アルダンも天然なのでたぶん何も気にしてません。ただ、こんな風に考えているのはボクら三姉妹ぐらいな気がします。
もちろん今までメジロでぶん殴ったりぶん回したりいろいろしてますから、恩は感じていますし恩返ししようとは思っていますが……
なんにしろ、大体のメジロのウマ娘はメジロの名を重く感じているようです。
それが原動力になる子もいますが、足枷になる子も当然いるわけで…… そんな彼女に出会ったのは、あるレースの時でした。
きっかけはあるレースの時でした。
当然ですがこの世界には小学校のウマ娘向けのレースというものが存在しています。全国規模のものはほとんどないですが、各都道府県レベルの大会などは大量に存在し、トレセン学園入学前から実績を作っているウマ娘も少なくありません。
メジロの子らが多く参加する大会があるとき、ボクは大体駆り出されます。なんせ中央のトレーナーライセンス持ちですからね。ウォームアップ、クールダウンの指導や応急処置なんかができるメンバーが選手で連れて行くだけで一人増えるわけですから、メジロの家から結構協力にお願いされています。ボク自身も走ること自体は嫌いではないですし、お小遣いももらえますし、まあこれも恩返しの一環だろうとボクもできるだけ出るようにしています。
大会での選手としての成績もそう悪くはないです。そりゃ超小学生級の圧倒的実力だったラモーヌ姉さまや、圧倒的フィジカルで走りすぎて最近幾つかの大会から殿堂入りという名の出禁になったアルダンほどではないですが、どんな大会に出ても優勝争いには確実に食い込みますし、今回は無事優勝できました。
ですがメジロの名を冠していながらそういう実績を残せない子もいます。メジロパーマーもその一人でした。
「や、パーマー。どうしたの?」
「マーリンさん……」
パーマーは練習を見る限り実力はかなりのものなのですが、どうもあがり症で成績がまるで残せていません。それを本人が気にして、悪循環にはまっています。
どうもメジロなら勝たなきゃ、という意識が強すぎるようです。
「どうしたら勝てますかね」
「うーん、気持ちの問題だと思うんだけど……」
見ている限り練習通り走るだけで優勝争いには入れるはずですから、気持ちの問題でしょう。ですが、パーマーは優勝しなければならないという意識が強すぎて、それがから回っている感じです。どうすればいいんでしょうね、これ。こういうのってもっとベテラントレーナーが対応するものじゃないんでしょうかね。
「パーマーはどうして勝ちたいの?」
「……マーリンさんはどうしてレースに出てるんですか?」
質問を質問で返されてしまいました。まあ、子供だからそういうこともあるでしょう。でもボクがレースに出る理由なんてそんなに多くないですし参考にならないと思いますけどね。
「そりゃ、メジロ家から言われてるからだよ」
「言われてなければ出てないですか?」
「多分出ないんじゃないかな」
姉や妹と違ってあそこまで走ることに狂ってないし、やりたいことも他にいっぱいあるボクは、たぶん言われて走っている状態です。やるからには真面目に練習してますけどね。
なので走らなくていいなら多分走らない。姉や妹はそれでも走るタイプだ。
「メジロを誇りに思ってるんですね」
「え、いや、全然」
「え?」
「ボクはメジロの色々を使って生きてきたから、恩義があるだけだよ。誇りとか、うーん、全然思ってないかな」
何となくわかってきたことがあります。パーマーの同期はマックイーンやライアン、グッテンなんかがいますが、みんなメジロを誇りに思っているタイプです。メジロメジロうるさいタイプと言い換えてもいいです。
ですがそういうキャラばかりではないわけでして、パーマーもメジロをかけてとかいうキャラではないのに周りがギャーギャーいうから迷ってしまっているのでしょう。
「そもそもうちの姉のラモーヌなんか、たぶんメジロであることとか興味ないよ。あの人の興味があること、妹とレースと絵画だけだから」
「ええ……」
パーマーが引いている気がしますが、ただの事実です。見た目から神秘的に見られますが、ただのシスコンレースオタクです。さらに生活も若干破綻気味なので、誰かが世話を焼く必要があるタイプだったりします。
まあボクやアルダンやメイドさんが甘やかすから一向に改善しないのもあるでしょうが。
「アルダンだってそうだし、あんまりメジロであることなんて気負わなくてもいいでしょう」
「そう、ですかね……」
説得はあまり効果を上げていません。
こういうのはもっと大人に対応してほしいんですけどねぇ!!! シリウスさんとルドルフといいこじらせてる子多すぎなんですよ!!
「じゃあ、こういうのどうですか? ボクが次のレースまで指導します。で、勝ちます。万事OK」
「え?」
「おっけー?」
「え? え?」
「オッケーもらいました!!」
「何も答えてないんですけど!?」
もう何もかも面倒になったボクは、パーマーを鍛えることにしました。健全な肉体に健全な精神が宿るから万事解決するよたぶん!! いや実際は健全な肉体に健全な精神が宿るべし、なので宿りにくいのを前提とした話らしいですが、そんなのかんけーねー!! 女子小学生にできるのなんてこれくらいだし!!
「直近の大会は、小さいけど来週だね。大丈夫大丈夫、お姉さんが優勝させてあげるよ」
「だれかたすけてー!!」
パーマーの悲鳴を聞いた人は何人かいましたが、皆目を背けました。ロイヤルビタージュース改が火を噴かなくてよかったです。こうしてメジロブートキャンプが始まりました。
パーマーが勝てない理由は簡単で、勝負根性が足りていないところです。それは、勝負の際に勝たなければという意識が強すぎて迷いが生じるために起きています。
なので勝つには簡単です。
「泣いたり笑ったりできなくしてやる」
「なにそれー!!!」
死ぬほどトレーニングをすることです。
4時間の走り込みから始まり、1000m走や筋力トレーニング、そして股割り含めた徹底的な柔軟体操まで行います。
「もうむりー!!」
「無理っていうのは、うそつきの言葉なんですよ」
当然ですが教える側も一緒にやらないとただのいじめなので、ボクも同じメニューをこなします。さすがに何度もやっているので、かなり慣れてきてますし無茶苦茶きついですがこなせないわけでもありません。というかしれッとアルダンまで混ざっているのがちょっと怖いです。この子、地獄に自分から飛び込んできたんだけど……
ラモーヌ姉さまはボクたちを見て油絵を描いています。また姉妹絵が一枚増えるでしょう。
「関節壊れるううううう!!」
「大丈夫、壊れても直しますから」
「もっと怖いいいい!!」
パーマーが叫びます。ですが叫ぶ余力があるならまだ大丈夫です。叫べなくなってからが本番ですからね。
こうして、一週間鍛え上げたメジロパーマーがこちらになります(三分クッキング風
極限まで削ぎ落とした体に、鬼が宿る。そんな状態に仕上がりました。ヤバいですね!
ちょっと仕上げすぎたかもしれません。
「姉御、いってきます」
「行ってらっしゃい……」
トレーニングが厳しすぎたせいか、ロイヤルビタージュースに漬け込みすぎたせいか、若干おかしくなったパーマーからボクは姉御と呼ばれています。いつの間に極道の世界に入ったのかな? プリティーさんが行方不明です。
ちなみにレースの結果は言うまでもありません。爆逃げでぶっちぎって大差勝ちですよ。なんか大会レコードまで出しています。ここまで強くなれば、きっとパーマーのメンタルも鍛えられているでしょう。ボクはそう信じることにしました。
その後、パーマーが「姉御の妹になります!!」とボクのストーカーを始めたり、アルダンがそれに対抗意識を燃やしたり、第一次妹大戦が勃発してマックイーンのスイーツが吹き飛んだりしたりしましたが、それはまた別のお話……
マーリンちゃんのトレセン学園の目標は?
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姉妹でティアラ三冠連覇
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クラシック三冠もいいのでは?
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メジロだし天皇賞を目指そう
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あえてのスプリント路線
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トレーナー業に専念しよう