ラモーヌさんとアルダンさんの姉妹の間に挟まれたメジロに転生してしまったお話 作:雅媛
すごくすごい楽しかったのでお勧めですよ。
5 選抜レースが行われる前に トレーナー編
入学してから3か月ぐらいたつと、初めての選抜レースの時期が来ます。
年4回行われるこの選抜レースはウマ娘がトレーナーにアピールする場であり、担当の居ないウマ娘達は気合が入るわけです。当然ですが力が入るのはウマ娘側だけではなく、トレーナー側も、当然スカウトの機会ですから非常に力が入ります。
特に初回となると情報が非常に少ないので、情報交換が活発になります。RKSTポイントとかありますが、あまり参考にならない場合が多いですしね。ボクやラモーヌねえ様なんかはポイントもらってないですし。
絶対的な指標どころか参考になるデータがまだほどんどないタイミングですから、情報収集もトレーナーによって内容も方法も変わるわけです。そして、トレーニング風景を確認するという昔ながらの愚直な方法をとる東条トレーナーに会うことになるのもそれはそれは自然な事でした。
「お疲れ様です、おハナさん」
「お疲れ様、マーリン。トレーニングはもういいの?」
「みんなから走りを見て欲しいと言われているので、今は観戦ですね。自分のトレーニングはあとでやります」
教官の指導の下、走るクラスメイトを見ます。みんな頑張ってますね。走りに変な癖が出ている子や、違和感がある子をチェックしていきます。あとで教官に伝えたり、ボクからアドバイスしたりする予定です。
「いい子はいる?」
「いますけど、教えてほしいんですか? 貸しですよ」
「あなたへの借りは高くつきそうね」
「もうすでに一つ貸してますからね」
「何のことかしら」
にっこり笑うボクに、おハナさんはすっとぼけました。
「ルドルフのことですよ。ボクのところに生徒会の仕事を持っていくように誘導しましたよね?」
「やっぱりばれるか」
「ルドルフがボクに頼ってくる時点で疑いますよ。あの人、ボクの能力は認めてますけれど性格的に相性悪いですから」
ルドルフがボクに生徒会の仕事を持ってきたときに第三者の影響を考えたのは当然でした。
ルドルフはボクの能力は認めていますし、必要とあれば苦手な相手に頭を下げる度量もルドルフにはあります。ですが相性が悪い幼馴染であるボクに頼むという発想が誰かの助言がなければないことぐらいは彼女のことを理解しています。
まあそれをしたのはおハナさんだろうな、という予想ぐらいはできるわけです。
「まあばれちゃあしょうがないわね」
「そんなにルドルフの状態は良くないですか?」
「あなたのおかげで一息付けたわ。やっとレースに集中できるわね」
「それならよかったです」
生徒会の担当としてルドルフから分けられた仕事はかなりの量でした。それをシリウスさんやラモーヌ姉さま、そして同級生で手分けしてやっと一息つけたぐらいです。ルドルフは今抱えている分に加えて渡された分も仕事を一人でしていたわけですから、とんでもない分量だったでしょう。レースにも影響出かねない量じゃないかと思いましたが案の定でした。
それでルドルフの状態が良くなったというならよかったというべきでしょう。次の菊花賞も期待できそうです。
「で、どの子がおすすめ?」
そして東条トレーナーはさらに聞いてきます。多重債務上等のスタンス、強気すぎませんかね。一応くぎを刺しておきましょう。
「高くつけますよ」
「いいわよ。なんでも返してあげる」
ん? 今なんでもって(ry
そんなこと言って本当に大丈夫なのでしょうか。リーディングトレーナーである東条トレーナー相手なら色々もらえる可能性があります。有望なウマ娘の引き抜きや、アメリカ留学時に学んだ外国の最新トレーニング理論までボクがぱっと思いつくだけでもいくつかあります。
とはいえ返すつもりがあるなら特に拒否しようとは思いません。
「ではおすすめはダイナムヒロインさんですね」
「あの子? 見た目は小柄でぱっとしないけど」
「でも骨格は大きいですから成長余地がとても大きいですし、バネも強いです。ラモーヌ姉さまのライバルの一人ですね」
「なるほど。そんな強い子を私に紹介していいの? ラモーヌに勝っちゃうかもしれないわよ」
「ダイナムさんも友達ですからね。友達を蹴落としてまで姉さまを勝たせたくはないですし、何よりそんな卑怯なことをしたら姉さまに怒られます」
ライバルになりそうなウマ娘は確認していますし、そんな素質のあるウマ娘の一人を当代一のトレーナーである東条トレーナーに任せれば当然ラモーヌ姉さまには不利です。ですが、足を引っ張って勝つのは違うでしょう。それで負けたらラモーヌ姉さまが弱いだけです。
ボクの答えを聞いて、東条トレーナーは肩をすくめました。
「変なこと聞いて悪かったわ。あと一つ聞きたいんだけど」
「なんですか?」
「バネはまだしも骨格の大きさってどうやって確認するの?」
「そりゃ触るのと、裸を見るので」
「そこだけ聞くとヤバいわね」
「単にトモのマッサージしたことがあるのと、お風呂で見たことあるだけですよ」
同級生ですからみんなでお風呂に入ることがあります。その時に体つきを見れば体格と将来大きくなりそうかはわかります。さらに揉めばよくわかります。
幸い教官の下でのトレーニングでは、マッサージでのクールダウンなんて人数が多すぎてやってくれるわけないですから、ボクが教えてウマ娘同士お互いやっています。おかげでみんなのトモも触り放題です。
これらの情報はさすがの東条トレーナーも持っていないでしょう。学生の特権ですね。
「やっぱりトモを触るのって大事かしら」
「触ればわかることは多いですね。とはいえいきなり触ったら犯罪だと思いますよ。というかやっぱりって実際にトモを触っていた人がいるんですか?」
「昔、同期のトレーナーが通りすがりのウマ娘にやっていたわ」
「犯罪では?」
「よく蹴飛ばされていたわね」
「それはそれで大丈夫なんですか?」
「不思議と大丈夫だったわね」
へんたいふしんしゃさんがトレーナーに混じっているという情報を聞いてボクは少しビビります。ラモーヌ姉さまの太ももは死守しなければ、と決意をします。
「ま、ありがとう。参考にするわ」
「アフターサービスでおハナさんの方に誘導してもいいですが?」
「勧誘ぐらいは自分でやるわ。ありがとう」
東条トレーナーはそう言って去っていきました。
ほかにもトレーニング風景を見ているトレーナーを見ていると、同期の可児さんと奈瀬さんを見つけます。
「お二人とも、いいウマ娘見つかりました?」
「おつかれ、マーリン。いやぁ、見に来たけど全くわからん」
「お疲れさま、マーリンさん。私は勉強に見ているだけですね」
二人とも云々言いながらトレーニング風景を見ています。
なかなか判断がつかないようです。
「トレーナー試験とか研修で、ウマ娘の見分け方の勉強さんざんやったじゃないですか」
「それはそうなんだが、入学したてって発展途上な子ばかりじゃないか。ここから将来の成長分を予想するなんてできる気がしねーよ」
「私もあまりイメージができません」
そういわれるとそうかもしれません。
ボクはウマ娘だらけの環境で育っていますから経験上何となくわかりますが、そっちの方が例外なのでしょう。
「正直マーリンと比べるとみんな貧弱に見えるしな……」
「ふふーん、ボクの太もも、すごいでしょう。触ります? 1回3万円で」
「たけーよ。というか触らねーよ。触ってどうなるんだよ」
そりゃボクはこれでもフィジカルバリバリに鍛えてますし、成長も早い方ですから、そんな例外と比べちゃいけません。ほかの子らは成長余地があるわけですし。
「マーリン、おすすめはいないのか?」
「さっきおハナさんにはダイナムヒロインさん勧めました」
「東条トレーナーと競って競り勝つなんて無理じゃねーか」
「情報は高いんです。今のはハーゲンダッツの大きいヤツ1個で許してあげましょう」
「情報押し売りするんじゃねぇ。しかも役に立たねえじゃねえか」
可児さんは注文が多いですね。
文句を言う可児さんでしたが、奈瀬さんは違うようです。
「はい、これ」
「コーラ?」
「この分情報教えて」
「コーラ分ですか……」
報酬にコーラを渡されました。パンパンに振られてる感じでちょっと開けるのが怖いやつです。
「炭酸抜きコーラは体にいいって聞いたから」
「いや、抜いてくれませんかね。開けたら噴き出すじゃないですか」
報酬というより爆弾を渡された気分です。
まあ見合った情報でも渡しましょうか。
「小内トレーナーがラグビーボールさんを気に入ったって言ってましたね」
「……」
奈瀬さんがしょんぼりしました。
小内トレーナー、奈瀬さんの兄弟子に当たるらしく、慕っている一方で勝てないという意識があるようです。そんな兄弟子が選んだウマ娘を教えられても困るだけでしょう。
渡されたコーラを開けると案の定勢いよく噴き出して、地面を汚しました。
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