ラモーヌさんとアルダンさんの姉妹の間に挟まれたメジロに転生してしまったお話 作:雅媛
入学してから3か月ぐらいたつと、初めての選抜レースの時期が来ます。
年4回行われるこの選抜レースはウマ娘がトレーナーにアピールする場であり、担当の居ないウマ娘達は気合が入るわけです。
入学したての現状、担当が決まっているウマ娘なんてほとんどいませんからほぼ全員が参加します。ほぼ全員です。少数ですが担当がすでに決まっているウマ娘もいます。そして、担当が決まっているウマ娘は参加ができません。そう、参加ができないんです。
「やーだー。私も選抜レースに出るぅ」
「ラモーヌ姉さま、だから無理です」
キャラ崩壊しながら駄々をこねているのがわが愛しの姉、メジロラモーヌです。
いつもの女王様オーラをかなぐり捨てて、絨毯の上に寝転がりヤダヤダと騒ぎ続けています。
ラモーヌ姉さまはボクと契約してしまいましたから、当然選抜レースに参加する資格はありません。ですが、ラモーヌ姉さまはどうやら出られると思い込んでいたらしく、レースを楽しみにしていたようです。そのため本日出れないと知ってからラモーヌ姉さまはずっと駄々をこねています。
「そうだ、ルドルフに言ってルール変更してもらいましょう」
「横紙破りも甚だしい!!」
「じゃあさっそく行ってくるわ」
ボクの言うことは何も聞かず、颯爽とラモーヌ姉さまは旅立っていきました。
そして、ラモーヌ姉さまの代わりにシリウスシンボリさんがトレーナー室に来訪します。
「ラモーヌの奴、どうしたんだ?」
「選抜レースに出られないと聞いてルドルフのところにルール変更の申し込みをしに行きました」
「そうか」
どうせルドルフに怒られてすごすごと帰ってくるのが目に見えます。シリウスさんも同じことを考えたのでしょう。興味を完全に失っています。
「で、マーリンは調整はどんな感じだ?」
「ううう、めんどくさい。どうにか休んじゃおうかな……」
「理由がない限り、契約していない新入生は全員参加だ。理由をでっちあげるより走ったほうが楽だと思うぞ」
ボクもまた、選抜レースの出走対象になっています。学生ですからね。当たり前でした。そして、ボクは自身と契約はできないので、契約しているウマ娘にも該当しないわけです。杓子定規すぎる解釈ですがしょうがないです。
もちろん回避する方法はあります。怪我などしていればもちろん参加しなくてもいいわけですし、あとは適当なだれかと形式的に契約して逃げる方法もあります。可児さんとか奈瀬さんとかに頼めば手伝ってはくれるでしょう。
でもそれはそれで面倒ですし、1回ぐらいは走ってみることにします。
「シリウスさんの方の調子はどうですか」
「悪くはねえな」
シリウスさんはシリウスさんで、東条トレーナーとは仮契約でしかないので選抜レースに出走権があり、今回は出走するとのことです。芝2000mという、ボクと同じ距離で申し込んでいます。一緒に走ることになったらそれはそれで楽しいですが、芝2000mのレースは数が多いので当たる可能性は低そうです。
「ひとまずお茶でも入れますね。シリウスさんはルフナのストレートでいいですか」
「面倒ならマーリンと同じでもいいぞ」
「じゃあチャイにしちゃいますね」
鍋に水と紅茶の葉っぱを入れて煮だし始めます。
沸騰して少したったらミルクをだばーっと大量に入れて、また煮立つまで待ちます。最後に砂糖を適当に入れれば完成です。完成したそれをマグカップに注いで、シリウスさんに渡していたところにラモーヌ姉さまが帰ってきました。
「ただいま……」
「おかえりなさい、ラモーヌ姉さま。どうでした?」
「ルドルフがダメって。すごく怒られた……」
「いやまあそうでしょう」
大きなマグカップに注いだチャイをラモーヌ姉さまに渡します。
砂糖多めで甘いので、飲んだらラモーヌ姉さまの表情が和らぎました。
「残念ですが無理ですからあきらめてください」
「私はあきらめないわ。ダメで元々ということで出走申し込みしてきたわ」
「いや、はじかれると思いますが」
無駄に行動力を出しているラモーヌ姉さまですが、さすがにそれはあとで気付かれるだろうとそう思っていたのですが……
選抜レース当日、レース表が発表されました。
ラモーヌ姉さまもなぜか無事受付がされてレース表に名前が載っています。
おそらく、主催側でトレーナー契約の有無はチェックしてないのでしょう。確かに契約しているにもかかわらず選抜レースに出る必要性もないですからね…… これが生徒会開催だったらボクが拒否するかルドルフが目ざとく見つけていたでしょうけど、トレーナーたち主催のイベントだからか、結構管理が雑なようです。性善説で運営されていると言い換えるべきかもしれません。
「今日は頑張るわ」
鼻息荒く準備する嘘つきの悪い子、ラモーヌ姉さまは若干イレ込んでいるぐらいやる気十分です。
「負けねえからな」
シリウスさんも、理由はわかりませんがやる気にあふれています。
そんな二人に挟まれてボクは困惑していました。ボクの参加するレースが、この二人と同じでしたから。
本当にやめてほしいんですけど。主に実力的に。もっとこう、弱小グループに入れて欲しいんですけどねぇ…… とはいえ手を抜くと二人に怒られそうですし、せいぜい頑張って惨敗するとしましょう。
そう待つこともなく、ボクたちのレースの順番は回ってきました。
16人立てのフルゲートです。やはり芝2000mは王道の距離ですから人気が高いですね。パドックはありませんが、ゲートイン前に一人ずつ名前を呼ばれます。
「8枠16番、メジロマーリンさん」
「マーリン、頑張れー」
「目指せ一着~」
「負けないでよ~」
クラスメイトが声援を送ってくれるので手を振ってこたえます。
トレーナー席の方は…… まあシリウスさんとかラモーヌ姉さまのほうみてますよね。ボクはそのまま素直にゲートに入りました。
ゲートに入って少し待ち、一瞬の静寂の後、ゲートが開いてレースがスタートしました。
スタートはかなりバラバラです。ゲート練習をあまりしたことがない子も多いですから、スタートは難しいのでしょう。そんな中、そこそこいいスタートを切ったボクは、そのまま前に行かず、適当なところでほかのウマ娘の後ろに入ります。
ボクの戦法は、消去法的に追込みです。
自分でペースを作る必要があり精神力が必要な逃げはとてもできませんし、前につける先行も同様にダメです。王道の先行から差しの間のバ群で勝負するのも、あまり勝負意識が高くないボクでは競り負けてしまう可能性が高いです。なので、他人を風よけにできるので楽に走れて追われる感じのない追込みをボクはとっていました。
とはいえ切れる末脚があるわけでもないので、スパートもかなり早めにかける必要があるのですが。
姉さまもシリウスさんも王道の先行策です。この二人の雰囲気にのまれた逃げの子がペースを上げてしまい全体的にかなりハイペースです。ボクはただただペースに身を任せているだけなので負担は少ないですが、逃げの子はすでにあごが上がってしまっていますし、周りの人たちもかなりスタミナを使ってしまっています。
そして残り1000m弱、第三コーナー入り口のここでスパートを始めます。
外に周り、一気にスピードを上げ、前の人たちを抜き始めます。
つられてスピードを上げる人、戸惑う人、いろんな反応をしますが、皆一様に動揺しています。おそらくもうまともにレースはできないでしょう。まあ、皆直線に入ってからの残り400m弱からスパートをしようと考えていたでしょうから、こんなことをされればもう無茶苦茶なのでしょう。
そのまま第四コーナー真ん中あたりで、姉さまとシリウスさんも抜いて、直線ではボクが先頭に立ちました。
そのまま突き放そうとしますが後ろからのプレッシャーが全く消えません。二人がスパートをかけ、追いかけてきているのを感じます。必死に逃げ切ろうとしましたが、残り200mで並ばれてしまいました。こうなってしまえば勝負弱いボクでは二人に勝てません。どうにか残り100mまで粘りましたが、そこで差し返されて、ボクは3着で終わりました。
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