ラモーヌさんとアルダンさんの姉妹の間に挟まれたメジロに転生してしまったお話 作:雅媛
選抜レースが終われば、スカウトが始まります。
ボクの参加したレースで無事一着をとり、素晴らしい快走をみせ、実力を見せつけたシリウスシンボリさんのところに、スカウトが殺到…… しませんでした。
まあ当たり前ですよね…… シリウスさん自身が不良のトップと目されていて評判が悪いですし、それに加えて東条トレーナーと仮契約を続けながらも正式契約をしないという状況も触りたくない原因でしょう。さらにシンボリの総帥と喧嘩しているとなればもう劇薬です。誰もスカウトに来ないのもむべなるかな、といったところです。
では2着だったラモーヌ姉さまはどうかというと、そこそこ人が集まっています。
ただ、結果と走りから言えば明らかに数が少ないですし、困惑した表情で姉さまを見ているトレーナーもそれなりにいます。ラモーヌ姉さまとボクが契約していることはそれなりに有名ですからね。なんでこいつ、今回走ってるんだ、みたいな表情で見ている人が多いです。答えは簡単、姉さまは走りたかっただけです。あとで怒られると思います。
当然ラモーヌ姉さまにスカウトに来るようなのは、情報収集が足りていないか、ボクから奪い取ってやろうと考えているかのどちらかなので、姉さまの対応は塩いです。空気も極寒であり、すぐに退散していくトレーナーばかりでした。
で、3着だったボクはというと……
「キミの走りならクラシック三冠も夢じゃないだろう! 一緒に頑張らないか?」
「いえ、結構です……」
「うちのサブトレーナーにならないか? 優遇するよ!」
「サブトレーナーは今のところ考えていないです」
「忙しいだろうし短距離路線はどうだろうか! うちは短距離専門だからあっていると思うよ!」
「いえ、契約は今のところ考えてないです」
無茶苦茶スカウトが来ています。
競走ウマ娘としてのスカウトはもちろん、サブトレーナーとしてのスカウトも無茶苦茶来ています。もうてんやわんやですよ。訳が分からないよ……
推測ですが、トレーナーさんたちには話しかけやすいのでしょう。なんだかんだで入学前も可児さんや奈瀬さんと一緒にあいさつ回りをしていましたから顔見知りは多いですし、トレーナー側の視点もあるからしゃべりやすいところもあるのだと思います。
で、選抜レースに出たんだからスカウトもできるよね、ということで殺到しているわけです。
さらにサブトレーナーのお誘いも同時に来ているのでもうしっちゃかめっちゃかです。今のところ誰かと契約するつもりはないですが、スカウトに来た人はメモしておいて、あとでお断りのごあいさつに回らないとまずいでしょう。大御所の人も来ていますし。
どうにかこうにか抜けだしてトレーナー観戦スペースに行って、ひとまず見つけた奈瀬さんの陰に隠れようとしましたが体格違いすぎて隠れられませんでした。仕方がないから抱っこしました。ちょうどいい大きさです。
「大変そうですね」
「すごくすごい大変でしたよ。奈瀬さんの方は?」
「今のところは見ているだけですね。兄弟子の手伝いがしばらくメインだと思いますし」
「ふーん、可児さんは?」
「シリウスさんにスカウトに行って撃沈していました」
「勇気あるな……」
あの浮いているシリウスさんに突撃できるだけで十分すごいと思います。うまくいかなかったようですが。奈瀬さんやボクと違い、もともと持っている人脈がないですから、それくらいの前のめりさは必要なのでしょう。
「マーリンはまだ見ていくの?」
「クラスメイトのレースは一通り見ていくよ。あとでアドバイスくれって言われるだろうし」
タイムなどのデータはあとでもらえますが、やはり走りそのものも見ておいた方がいいですからね。タイムがいい人、悪い人、勝った人、負けた人、クラスメイトも様々に分かれます。スカウトも来たり来なかったり、分かれますね。とはいえこの時期だとさすがにスカウトされている人は少ないですが……
スカウトを受けているクラスメイトもその場で即答しない人ばかりです。あとでボクにトレーナーさんの評判を聞いて決めるつもりなのでしょう。ダイナムさんの所には東条トレーナーが行きましたね。ほかにスカウトされているのは…… フェイスノーモアさんですかね。ダートで激走していたからでしょう。とはいえ、あのトレーナーさん全然知らない顔だな……
「二人とも、いいウマ娘は見つかったかな?」
「こんにちはコミちゃんトレーナー」
「こんにちは、小宮山さん」
そんな感じで眺めていると、奈瀬さんと仲がいい小宮山トレーナーが声をかけてきました。面倒見のいいひとですから、初心者トレーナーであるボクたちを心配しに来たのでしょう。
「何かトラブルでもあった?」
「いえ、ボク自身のものではないのですが、あそこのフェイスノーモアさんのスカウトをしている人がどういう人か知らなくて……」
「ほかの人のスカウト気にしているの?」
「クラスメイトなんです。おそらく後でトレーナーさんの評判聞かれるから」
「なるほど、世話焼きさんだねぇ」
横に座った小宮山トレーナーがボクの頭をぐりぐり撫でます。縦にも横にも成長したボクですが、小宮山トレーナーはそんなボクよりも背が高いので、簡単に頭を撫でられるのでしょう。
「フェイスノーモアさんの脚質は?」
「パワー系ですね。今日のダートレース見る限りおそらくダート適性が高いと思います。距離は短距離っていう感じはしませんが、マイルから中距離まで行けるんじゃないでしょうか」
「なるほど」
「後脚があまり強くないので、体調管理が丁寧な人が向いていると思います」
「それだと相性もあるけど、あのトレーナーはそれだとあまり勧められないかなぁ。あの人、結構昔気質のバリバリ系だからねぇ」
小宮山トレーナーもベテランの域に入る人ですから、そのアドバイスは有用でしょう。なかなか担当に恵まれず実績が出ていない人ですが、話していても感じのいい人ですし、トレーニングに関する知識も豊富なのです。めぐりあわせが悪いとこんなものなのでしょうか。最近は少しずついい子が集まっていると聞いていますが……
「ありがとうございます。参考になりました」
「誰かいい子いたら教えてね~」
そういって小宮山トレーナーはさっそうと去っていきました。
おそらく彼女も担当になってくれそうな娘を探すのでしょう。
小宮山トレーナーを見送ると次に来たのはラモーヌ姉さまでした。立ち入り禁止ではないとはいえ、ここ、トレーナー席なんだけどなぁ……
ご機嫌は斜めらしく、ボクの隣の席にドスンと座りました。そんなはしたない座り方するとケツがデカいのがばれますよお姉さま。ブルマ履いている時点でもう手遅れかもしれませんが。
「スカウトめんどくさいわね……」
「スカウトを受けるためのレースですよこれ……」
めんどくさいのに絡まれてご機嫌ナナメなのはわかりますが、明らかに趣旨を全否定するような発言に苦笑しかできません。いい走りをしたらスカウトが来る、って当たり前じゃないですか…… ぷんすかしているラモーヌ姉さまをなだめていると、見知らぬトレーナーさんが寄ってきます。スカウトでしょうか。
「あの、ちょっといいでしょうかラモーヌさん」
「つーん」
「すいません、姉はご機嫌ナナメでして、ご用件なら妹のボクが聞きますが」
姉さまは完全に拗ねモードに入ってしまったのでボクが代わりにお話を聞きます。
「ああ、マーリンさん、ラモーヌさんの先ほどの出走に関してお伺いしたいことがありまして」
「というと?」
「ラモーヌさん、マーリンさんとすでに契約済みですよね」
「そうですね」
「選抜レースは契約をしていないウマ娘しか出走しちゃいけないの、知ってますよねラモーヌさん?」
「……」
目をそらすラモーヌ姉さま。この人、スカウトしに来たわけではなく主催の人ですね。お叱りが来てしまったようです。
「マーリンさんも、ラモーヌさん止めなかったんですから同罪ですよ」
「そんなー」
まあそうなるかなと思っていました。止めなかったのは確かに事実ですし。でも姉さまに妹は逆らえないんですよ。
「お話はゆっくり聞きます。ご同行ください」
とっさに逃げようとした姉さまの尻尾を掴みます。
「あふん」
「わかりました」
仲良く叱られましょうね。お姉さま。
どんよりした姉さまの尻尾を掴んで引きずりながら、ボクたちは連行されるのでした。
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今後の展開はどうしようか(選抜レース編後
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ラモーヌ姉さまのジュニア戦線
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メジロ家に戻って休養
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夏合宿&サマーウォーク
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人気投票にしたがってアルダンと主治医出せ
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生徒会のお仕事
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