ラモーヌさんとアルダンさんの姉妹の間に挟まれたメジロに転生してしまったお話   作:雅媛

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10 メイクデビュー戦

 ラモーヌ姉さまの参加するメイクデビューは函館ダート1000mのレースです。

 短いですしダートですが、それ故に脚部に負担がかからないですし、東京と違って涼しいですから全力で走るには最適の環境といえるでしょう。

 

「でもダートは砂が舞うから苦手なのよね……」

「1000mですから前に行って押し切るのがセオリーです。誰かの後ろに入ることは考えなくていいと思いますよ」

 

 函館のコースは直線は260mしかありませんし、コーナーも非常に急でスパートで速度が出せないコースです。

 さらにダートで速度も出ませんから、差し、追込みはまず決まらず、基本は前残りのレースになります。なので、誰かの蹴とばした砂をかぶる、他人の後ろにつく必要性は皆無です。その時点で負けでしょう。

 もっともアップダウンもそれなりにあるため、あまり全力で飛ばしすぎると最後でスタミナ切れが起きる可能性も0ではないというちょっと難しいコースです。

 

「まずはスタートの善し悪しですね。ここで失敗したらまず勝てません」

「先行争いすごそうだものね。でもそれは大丈夫よ」

 

 ラモーヌ姉さまのスタートに関してはあまり心配していません。小さいころからレース経験も多いですし、ゲートが嫌いなタイプでもありません。逃げなければいけないわけでもないですから、一番いいスタートをする必要もない以上、失敗する可能性は少ないでしょう。

 

「スタートしたら前目前目に進んでください。1000mですからスリップストリームも意識する必要もないですし、先頭をとってもかまいません」

「周りを考えなくていいのは楽ね」

 

 長い距離ならば誰を風よけにするか、だれをペースメーカーにするかといった駆け引きが生じますが、1000mならば特に気にするような駆け引きはありません。

 速めの自分のペースで走ればいいだけです。

 

「で、コーナーを最内で回って直線に入ったらスパート、作戦もシンプルね」

「1000mですからね……」

 

 ティアラ三冠のオークスになれば様々なパターンの戦略も必要になりますが、メイクデビューの1000mならば勝ちパターンの種類もほとんどありません。非常にシンプルにまとめれば十分でしょう。

 それが分析できる知識も、理解できる聡明さも、実行できる技術も、勝てる能力もラモーヌ姉さまは備えています。あとはレースに万全の状態で挑むことができるように調整するだけでした。

 

 

 

 この時期の函館にはメイクデビューを目指すウマ娘が多く集まります。当然クラスメイトなどの顔見知りも何人も見かけます。

 

「マーリンさんこんにちは。ラモーヌさんの調子はいかが?」

「こんにちはダイナムさん。調子はいいですよ。ダイナムさんは?」

「悪くないわね」

 

 クラスメイトのダイナムヒロインさんも、函館でメイクデビューするべくこちらに来ていました。東条トレーナーも同行しているようです。

 

「ダイナムさんはどのレースに出走予定で?」

「開催二日目のレースよ。ラモーヌさん、1日目のレースに出るんでしょう?」

「よくご存じで」

「おかげで1日目の出走者数、開催ギリギリらしいじゃない」

 

 ラモーヌ姉さまは函館の1日目に行われるメイクデビュー、すなわち今年一番最初のデビュー戦に出る予定だった。目的はいくつかあります。一つはこの開催の最後に行われる函館ジュニアステークスに出るのにできるだけ間があけられます。調子が良ければ出走予定ですから、インターバルは多くて損はないです。二つ目は万が一負けたときに、次のメイクデビュー戦に出走するためです。同一月ならば、メイクデビュー戦に何回でも出られますので、それを狙って早めに出ています。最後に……

 

「情報を流した甲斐がありました」

「そういう泥臭い番外戦をするのね、天下の天才トレーナーさんが」

「大事な姉ですから」

 

 メジロの有力ウマ娘が目立つために最初のレースに出ると情報を流せば勝ちに来ているウマ娘はこぞって回避してくれました。メイクデビュー戦はほかにいくつもありますからね。

 ボクと姉さまは最近は天才ウマ娘姉妹と少しずつ知名度も出ていますから存分に使わせていただいた次第です。競合ウマ娘が出走しても負けるつもりは全くありませんが楽に勝てるレースは楽に勝った方がいいに決まっています。

 

「てっきりルドルフ会長みたいに、レースには絶対はないが自分には絶対があると思ってるタイプだと思っていたんだけど」

「絶対なんてあるわけないじゃないですか。姉さまにも、ルドルフにも」

「でも会長無敗の三冠で今も無敗じゃない。負ける姿なんて想像もできないわ」

 

 菊花賞の後ジャパンカップを回避し、その後連勝を続けたルドルフは現在無敗の六冠です。秋も勝てば九冠まで伸ばせる可能性があります。絶対はないといいましたが、ルドルフを見ているとあれにはあるんじゃないかと確かに思ってしまいます。

 

「ま、ラモーヌさんも函館ジュニアステークス出るんでしょう? 楽しみにしてるわ」

「気が早いですね」

「私は出るもの」

 

 力強い断言には自信があふれていました。

 

「ボクの方は、まずはメイクデビューを頑張りますよ」

「ふふ、観戦してるわ」

 

 颯爽と去っていくダイナムさんにボクは少し驚きを覚えます。

 真面目で堅実な印象でしたがこんな挑発的なことを言うなんて、東条トレーナーの影響でしょうか。

 とはいえまずは目の前のデビュー戦です。真面目に勝っていきましょう。

 

 

 

 メイクデビュー戦は姉さまの圧勝でした。

 スタートから先頭をとった姉さまはそのままゴールに飛び込みました。その差、5バ身差。実力差を見せつけた姉さまはまた一つ有名になりました。

 ボクとアルダンはウイニングライブで叫びすぎて声を枯らし、主治医さんに怒られました。




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タイトル画像

【挿絵表示】

北の大地のお話の後は何にしようか

  • 秋の聖蹄祭
  • 他のトレーナーとの絡み
  • クリスマス
  • ラモーヌ姉さまのジュベナイルフィリーズ
  • ルドルフの秋戦線
  • シリウスさんの観戦にヨーロッパへ
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