ラモーヌさんとアルダンさんの姉妹の間に挟まれたメジロに転生してしまったお話   作:雅媛

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11 函館のヒロイン

 函館ジュニアステークスは、函館開催の最終日に行われる重賞です。メイクデビューで勝ち抜いたウマ娘達が集まる、一番最初の重賞レースであり、今後注目されるウマ娘が集まります。

 といっても今年のレースで特に注目が集まったのは二人、メジロラモーヌとダイナムヒロインでした。それぞれ一番人気、僅差の二番人気となりました。

 

 ラモーヌ姉さまは前評判の高さに加え、メイクデビューを5バ身差で勝利したため、ダイナムヒロインさんもメイクデビューを5バ身差で勝利したため人気に大きな差はありませんが、前評判の大きさだけラモーヌ姉さまが少し人気で優っているようです。

 もっともボクの分析では、ラモーヌ姉さまが勝つと思っています。ダイナムヒロインさんも優秀なウマ娘ですが、ラモーヌ姉さまのほうがスピードもパワーもテクニックも上回っていると思います。

 コンディションもばっちりです。トレーニングはちゃんとしつつ、休みの時は姉妹三人で各所に遊びに行ったりして調子を整えました。

 

「函館ジュニアステークスは芝1200m、コースはダートとあまり大きく変わりません。直線は260mしか無くてしかも平坦ですから、後ろから差すのは難しいでしょう」

「先行有利のコースね。今回も前目につけていくわ」

「そうですねかなり前目でいいと思います。前回のように先頭に立ってしまっても構いません」

 

 逃げは勝利の定石ではない、よく言われる話ですが逃げは絶対不利なわけではありません。通常行われる中長距離では逃げが不利、という意味でしかないわけです。例えば菊花賞は何十回と開催されていますが逃げで勝ったのは一人だけ*1しかいませんし、東京競馬場の2400mのレースなんかも逃げがあまり勝てません。長距離になれば逃げは不利なわけですが、一方で1000mや1200mのレースになると一転して逃げや逃げ気味の先行の勝率が上がります。距離が短いですから前に行ったウマ娘がスタミナ切れで落ちてくる可能性が低いんですよね。いくら切れる末脚があっても追いつける距離には限度がありますから、どうしても後ろから展開すると勝てなくなります。

 逃げは自分でペースを作らないといけない欠点もありますが、姉さまの精神力なら特にそれも問題ないでしょう。

 

「ライバルは?」

「一番のライバルは二番人気のダイナムヒロインさんでしょうね。脚質は基本は先行ですが、器用なので逃げから追込みまで何でもできますよ。併走でいろんな走り方してますからね」

「なるほど」

「とはいえこのレースだと後ろ目で進行するメリットが少ないですから、ハナをとってくるか、競り合ってくるか、だとは思います。ただ、9人立てで8枠9番のダイナムさんと、2枠2番の姉さまでは展開でも有利かと」

 

 相手が東条トレーナーですから油断はできませんが……

 とはいえ負ける気はこれっぽっちもしませんでした。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

「おハナさん。どうするとメジロラモーヌに勝てますか?」

 

 ダイナムヒロインは担当トレーナーに率直に聞いた。

 今の自分では彼女に勝てないことはわかっていた。大きな差ではないが明確に差がある。今後埋められるだけの差だと信じているが、今問題なのは直近に迫ったレースだ。

 ただ走るだけで勝てないならば、何らかの工夫が必要であった。

 

「そうね、まず、相手より自分が優れている部分を考えましょう」

「はい」

「スピード、パワー、テクニック、この辺りは残念ながら彼女の方が上ね。さすがメジロの至宝。隙が無いわ」

「悔しいですが、そうですね」

 

 才能以上に積み重ねてきたものの差だろう。残念ながらダイナムヒロインは自分のほうが強いといえるほど愚かではなく、また、メジロラモーヌは圧倒的だった。

 

「ただ、2つだけあなたのほうが優れている部分があるわ。一つは担当トレーナーの腕」

「それはそうでしょうね」

 

 親友といえるメジロマーリンは、最年少でトレーナーになった天才だ。頭のキレも知識の深さもクラスメイトとして、また、一時期トレーニングを見てもらっていた身として認めるところだ。

 だが、それでも目の前の彼女、リーディングトレーナーにして無敗の三冠を達成したトレーナー、東条ハナを上回るとは思えなかった。

 

「これともう一つ、あなた自身がメジロラモーヌに上回っているところを合わせれば、勝機は見えなくはないわね」

「上回っているところ?」

「それはね……」

 

 

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◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

函館ジュニアステークスの日は、やや曇りながらもバ場状態は良好でした。

 

「2枠2番、メジロラモーヌ」

「ねえさまー!」

「らもーぬねえさまー!!」

 

 パドックでの調子も非常に良さそうなラモーヌ姉さま。ブルマから伸びたおみ足はみっちり仕上がっていますし、尻尾や髪も艶々です。調子がいいのが一目でわかる出来です。

 ほかのウマ娘の子たちも、当然メイクデビューから勝ち上がってきたわけですから強そうな子ばかりですが、ラモーヌ姉さまに勝てる相手ではないでしょう。

 

「8枠9番、ダイナムヒロイン」

「どう? うちのダイナムヒロインは」

「おハナさんこんにちは。仕上がりはばっちり、ですかね」

 

 ダイナムヒロインさんが出てきたタイミングで、おハナさんが話しかけてきました。

 ダイナムさんも見た感じ、仕上がりは最高でしょう。それはわかりますが……

 

「でも、負けませんよ」

「ふふ、お手並み拝見ね」

 

 おハナさんは意味深に微笑みました。

 

 

 

 レースは特にトラブルもなく、無事発走しました。

 3番手を追走するラモーヌ姉さま。逃げて押し切ろうという作戦なのだろう子たちが先に行きます。姉さまはその後ろにぴったりつけて楽に走れているようです。ペースはそれなりに早目ですから、ある程度後ろを気を付ける必要もありますが……

 一方ダイナムさんは後ろの方につけています。さすがに追いつけないと思うんですが、何か作戦なのでしょうか。

 1200mのレースなどすぐにクライマックスになります。残り600m、第三コーナーを回り始めます。逃げていた二人が内ラチに沿ってゆっくり回っていきます。函館のコーナーは急なので、内ラチ際をコーナーリングするにはよほど技術があるか、スピードを落とすしかありません。ジュニアクラスではさすがにそこまで素晴らしいコーナーリングをできませんから、皆かなりスピードを落とします。

 その外側を、ラモーヌ姉さまが悠々と抜いていきます。

 コーナーの外を回ると、1コーナーごとに1m程度ディスアドバンテージになりますが、函館のような小さなコーナーでは外に出た分旋回半径が増えますから回りやすくなります。ラモーヌ姉さまは今の自分の技術にあったコースを走ることで速度を落とすことなくコーナーリングを行い、そのまま先頭に立ちました。

 そんなラモーヌ姉さまに、大外からダイナムヒロインさんが強襲を仕掛けてきました。

 

 函館の直線は中央の芝コース最短の260mしかなく、直線からスパートしては前には届きません。とはいえコーナーからスパートするにはコーナーが急すぎてやはり難しい、というコースです。ですから後ろから強襲を仕掛けるという選択肢はボクにはありませんでしたが…… それを覆すために大回りして全力でスパートする、という戦略をダイナムさんは選択したようです。

 

「うわあああああああ!!!」

 

 ラモーヌ姉さまも、そんなダイナムさんに並び、スパートを仕掛けます。あとは直線の競り合いです。差し、差し返しを繰り返しますが……

 

「姉さま!?」

 

 徐々にラモーヌ姉さまが劣勢になっていきます。

 競り合いとは肉体的なスペック以上に精神力での勝負になります。ですが、勝負にこだわり、あのシンボリルドルフとすら競り合えるラモーヌ姉さまが、競り負けるなどということをボクは全く想定していませんでした。

 もしかして故障した!? 最悪の想像すら頭をよぎります。

 

「あああああああ!!」

「くっ」

 

 ダイナムさんが差し返します。それをラモーヌ姉さまは再度差し返そうとしますが…… その前にゴール板の前を通過しました。

 ラモーヌ姉さまは負けました。

 

「姉さま!!」

 

 コース中央で呆然と立つラモーヌ姉さまに慌てて近寄り、脚を触ります。

 触った感じ特に異常はありません。

 

「ねえさま! おかしなところは!?」

「……マーリン」

「なんですか! どこが痛いですか!」

「あなたのお友達はすごいわね」

 

 姉さまを見上げると、負けたにもかかわらず姉さまはとてもうれしそうな笑顔でした。

*1
ハククラマの菊花賞。時代が下ってもセイウンスカイ、タイトルホルダーぐらい。キタサンブラックすら菊花賞の時には5位追走です。




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