ラモーヌさんとアルダンさんの姉妹の間に挟まれたメジロに転生してしまったお話 作:雅媛
13 メジロマーリンと芦毛の小さなウマ娘
「マーリン、頑張ってね」
そんなことをラモーヌ姉さまに言われ、ボクはトレセン学園の夏合宿に合流しました。
ちなみにラモーヌ姉さまはレースの疲れを抜くためにしばらく休養です。アルダンと二人旅行でもしているのでしょう。ボクは一人、学園の夏合宿…… とてもつらい……
とはいえラモーヌ姉さまが負けたことに対して対策は必須である。その原因がいまだボクは理解したといい難いですが、とにかくボクが本気のラモーヌ姉さまに勝てばいいようなので、それに向かって頑張りましょう。完全に思考放棄してますね……
なんにしろ、夏合宿頑張りましょう。夏合宿の運営もまた生徒会のお仕事ですしね。前半はルドルフが会長として全体を統括していてくれたのですが、後半はさすがに調整のため離脱してますからね。秋三冠目指しているでしょうし、頑張ってほしいところです。
今のところ、ルドルフが問題なく合宿を進めてくれていたようなので、あとは流れで、という感じでどうにかなりそうで、あとは時々起きるトラブルを適宜解決すれば済みそうなのは助かります。
ひとまず軽くアップとして走りながらトラブルが起きていないか、見回りをしましょう。てってってー、と。みんなそれぞれ頑張ってますね。これなら特に問題はないかな……
「芦毛だからってなんや! ウチは勝って見せる!!」
「えー、でも芦毛のウマ娘は走らないって有名じゃない」
なんかトラブっている声が聞こえますね。
ひとまず喧嘩になっては大変ですし、止めに入りましょう。
声の方向に移動すると、ちっこい芦毛のウマ娘と、そこそこ体格が良い鹿毛のウマ娘が言い争ってますね。
「それにあなた、すごく小さいじゃない」
「うるさいうるさい!!」
「はい、すとーっぷ」
「……はい?」
「なんや?」
ひとまず二人の間に入って引き離します。
暴力沙汰になったら本当に大変ですからね。ボクがいきなり現れて二人とも面食らったようです。
「はいはいー、生徒会副会長のメジロマーリンですよー。喧嘩は止めてねー」
「だって、こいつが遅いくせにうるさいから!」
「なんやて!」
「喧嘩は、やめて、ね」
笑顔でそうお願いをします。威圧感こみこみです。ルドルフほどじゃないですがボクだってこれくらいはできます。
二人とも大人しくなりました。でもこのまま放置したらまた喧嘩が再開しそうだなぁ…… どうしようか。
「そこまで言うならレースで決着をつけましょう」
「……」
鹿毛の子がそういうと、芦毛の子は黙ってしまいました。おそらく芦毛の子の方が遅いのでしょう。ですがそもそもあまり関心出来る解決方法ではありません。
「ほらほら、野良レースは禁止だよ。特に、体ができてないウマ娘が無理したらしばらく悪影響が残るんだから、そういう吹っかけは良くないな」
「でも、こいつ遅いんですよ!」
いや遅いからなんやねん。意見の正しい間違ってるかは関係ないやん。脳内が一瞬関西弁で支配されました。
「ならボクとやろうか」
「……先輩とやっても勝てるわけないじゃないですか」
「あれ、おじけづいた? 確かに僕は中等部2年だけど、1年飛び級してるから君たちと同い年だよ。ふふ、先輩だから勝てないっていう言い訳で逃げられないねぇ」
実はちょっとイラっと来ているボクはあえて挑発します。
鹿毛の子はわかりやすく挑発に乗りました。
「わかりました! じゃあ勝ったら私が正しいって認めてください!」
「うふふ、まあ早速走りましょうか。あそこのポールまで、先についた方が勝ちね。好きにスタートしていいよ」
「負けても文句は言わないでくださいね!!」
挑発したからか、さっさとスタートする鹿毛の子。速さは学園ではふつうぐらいか。悪いわけではないが、そう特筆するほどではない。一生懸命、大体1000mぐらい先に立っているポール目指して爆走している。
少し遅れてボクもスタートした。目測、950mぐらいか。全力で走り続けられる距離です。最初からスパート態勢で全力で走り始めます。砂浜はダートと似たようなものですから、足首を柔らかく使って掻くように走ります。ちょうど半分ぐらいで、鹿毛の子には追い付いて、そのまま抜き去ります。あとはゴールまで一直線。無事先着しました。
「ふー、なかなかいい準備運動だったね」
「はぁ、はぁ…… 速すぎる……」
「さて、まあ喧嘩を止めてくれればいいんだけど、一つ言っておくね」
息を切らせた鹿毛の子の肩に手を置いて、耳元でささやきます。
「芦毛のウマ娘は走らない、ね。今度同じこと言ったらメジロがキミを潰すよ」
「ひっ」
おばあさまであるメジロアサマ、そしてその子供であるメジロティターン、天皇賞を親子制覇したこの二人は芦毛です。ちなみその子供であるマックイーンさんも芦毛で、遺伝って本当にすごいですよね。
なんにしろ、芦毛のウマ娘だってGⅠを勝っているのです。それを無視して走らない、なんて言われるとねえ。メジロの偉大な先達の功績をなかったことにされたみたいで、すごくメジロにクるんですよね。それをボクに最初に言ったシンボリルドルフはいまだに許していません。
まあ、これだけ脅しておけば今後トラブルも起こさないでしょう。ボクは悠々と元の場所に戻ります。
「あら、芦毛ちゃん、どうしたの?」
「あんたがやったことやで……」
「あー、ごめんごめん」
砂に埋まった芦毛の子を掘り出します。どうやらスタート時に思いっきり蹴飛ばした砂を思いっきりかぶってしまったようです。
しかし本当に小さいな。でもどこかで見たことがあるような気がする顔です。メジロの子だったらさすがに覚えていると思うんだけど……
「さて、改めて自己紹介でもしようか。ボクはメジロマーリン。よろしくね」
「タマモクロスや。よろしゅうな」
あー、前世の記憶必死に掘り出して思い出してきました。この子、タマモクロスですか。何というか、小さいな(三回目)。単に身長が低いだけでなく、全体的に小柄な印象です。ちゃんと食べてるんでしょうか。
こちらの世界でも有名なウマ娘になるかはわかりませんが、一応仲良くはしておきましょう。
「……なにするんや?」
「いやぁ、軽いなって。ちゃんと食べてる?」
「あまり食が太くなくてな、って余計なお世話や!」
試しに持ち上げてみたら本当に軽くてびっくりしました。がりがり、っていう感じです。おそらくちゃんと食べてないですねこれは。学食も寮も食べ放題ですから、もともと胃が小さいのでしょう。
「タマちゃんはさ」
「最初からタマちゃん呼びかいな! あとおろせや!」
「クソ不味いジュース死ぬほど詰め込まれるのと、味はいい料理死ぬほど詰め込まれるのと、どっちがいい?」
「なんやそれ!? どっちも拷問やろ!?」
放せーと暴れるタマちゃんだが、力の差も体格差も歴然としているので逃げられません。知らなかったのか、生徒会副会長からは逃げられない。
「まあひとまず両方試してみようか。まずはクソ不味いジュースから」
「どこから取り出したんやそのまがまがしい緑の液体!?」
「胸元からだね」
「くっ!」
タマちゃんがボクの胸を見て悔しそうにします。ボクは大きいけどタマちゃんぺったんこだもんね。でも大丈夫、これを飲めば解決するよ。
「やめろ、それなんや!? ちかづけんで!」
「ロイヤルビタージュースマーク3だね。初代より栄養2倍、不味さは3倍になってるよ」
「味を改良せんかい!! にぎゃあああああ!!!」
強引に口にロイヤルビタージュースを流し込んだところ、タマちゃんは絶叫をあげて倒れました。うーん、強すぎたかなぁ。
倒れてしまったタマちゃんを保健室に連れていき、ボクはトレーニングに戻るのでした。
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