ラモーヌさんとアルダンさんの姉妹の間に挟まれたメジロに転生してしまったお話   作:雅媛

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14 メジロマーリンとへんたいふしんしゃさん

 夏合宿には当然ですがトレーナーも教官も同行しています。

 指導する人が必要ですし、何よりトレーナーにとってはスカウトが狙えるタイミングですからね。

 

「奈瀬さんはいい子見つかりました?」

「まだだね。今は兄さんのサブトレーナーとして一人担当持ってるけど……」

「どんな子ですか?」

「すぐ来るよ」

 

 ということで、偶然会った奈瀬さんに最近のことを聞くと、どうやら小内トレーナーのサブとして担当を一人持ったようです。新人トレーナーですからね。先輩のフォローの元専属に近い形で初めての担当を持つというのはよくあるパターンです。

 そんな感じで話していると、鹿毛のウマ娘がこちにかけてきました。

 

「お待たせしました。トレーナー」

「いや、待ってないよ、リーガル」

「マーリンさんもこんにちは」

「シヨノリーガルさんじゃないですか。奈瀬さんと契約してるんですか?」

 

 奈瀬さんが今担当している子は同級生の子でした。ラモーヌ姉さまのメイクデビューの時にも一緒に走っていましたし、それなりにお互い知った仲です。

 

「そうですよ。それで、マーリンさんって奈瀬トレーナーとどういう関係なの?」

「同期トレーナーってだけだよ!! それ以上の関係ではないよ!!」

 

 湿った感じの問い詰めが発生しそうなので慌てて関係を否定します。

 奈瀬さん、愛されてますね…… 新人トレーナーは専属もしくは少数で面倒を見ることが多いですから、ボクが取るかもしれないと思ったのでしょうか。必死のボクの否定は信じてもらえたようで、シヨノリーガルさんに笑顔が戻りました。

 

「ならよかったです」

「それでリーガル。今日はマーリンと回らないといけないから、兄さん、小内トレーナーから指示を受けてくれ」

「……」

「こっち睨まないでぇ!!」

 

 恨めしく見られても、そういう約束だったし、トレーナー同士の情報交流も大事だし、そもそもリーガルさんが担当だなんて初めて聞いたししょうがないじゃないですか!

 リーガルさんの視線なんてまるで気にせず、というか気づかずに奈瀬さんは「がんばってね」とだけ残してサッサと立ち去ります。ついていくボクの背中には鋭い視線ががんがんと突き刺さりました。

 

 

 

「奈瀬さんってウマ娘一杯泣かせそう……」

「そんなことないよ」

 

 リーガルさんへの対応を見たボクが奈瀬さんをからかおうとしますが、奈瀬さんは冗談だと思って取り合ってくれません。鈍感力強いな……

 雑談をしながら、トレーナーの待機スペースに移動します。日陰でお話しするにはちょうどいい場所です。

 

「で、どうしたの?」

「この前の函館でラモーヌ姉さまがダイナムヒロインさんに負けまして」

「ラモーヌさんもすごいけど、ダイナムさんは上を行ったね。素晴らしいレースだったと思うよ」

「で、敗因がわからなくて困ってるんです」

 

 髪の毛を弄りながら奈瀬さんにそう告げます。

 

「そうなの?」

「姉さまは完全に理解したみたいなんですけど、お話聞いてもいまいちピンとこないんですよね」

「なんて言っていたの?」

「格上からのプレッシャーと格下からの負けたくない気持ちは違う、みたいな話ですね」

「うーん、そのままの意味じゃないの?」

「?」

「マーリンが考えすぎだと思うんだけど、体験したらピンと来るんじゃないかな」

 

 そんなものでしょうか。でも、体験するといってもそう簡単ではない気がしますが……

 

「リーガル、ちょっといいかなー!」

「なんでしょうか奈瀬トレーナー!」

「マーリンと一緒にレースしてくれない? 勝ったらこの後僕がトレーニング見てあげる!」

「やります!!!」

 

 うじうじしてると奈瀬さんが急に動き始めました。シヨノリーガルさんを呼んで、ボクとレースをさせるつもりなようです。唐突すぎませんかね。

 

「マーリンも、キミが勝ったら明日の担当僕が変わって上げるよ」

「それならやりましょう」

 

 夏合宿中は練習量が増えますから教官だけでは手が足りず、トレーナーも一般の生徒への指導へ回ります。その担当が明日あるのですが教える相手が多くて結構めんどくさいんですよね。それをボクがこのレースに勝てば奈瀬さんがやってくれるようです。

 ご褒美も出ますし、それなら頑張ろうとボクは気合を入れるのでした。

 

 

 

 ということで、レースはボクが負けました。

 シヨノリーガルさんが普通に強かったのもありますが、気合が違いすぎました。

 レース自体はいい感じに運べていたのですが、直線入って並ばれた時の気合が、こう、もうボクでは勝てないなというぐらいすごかったです。完全にそこで負けたボクは、そのままクビ差で競り負けてしまいました。

 約束通り、奈瀬トレーナーはシヨノリーガルさんに連れていかれてしまったため、ボクはぽつんと一人取り残されました。

 

「うーむ」

 

 なんかわかったような、わからないような、そんな感覚が胸の中に渦巻きます。

 砂浜から外れて皆のトレーニング風景を見ながら悩んでいると……

 

 むにっ

 

「おお、トモのつくりもいいじゃないか。まさに、肥えウマ娘に難無し、だな」

「……」

「ふげっ!!」

 

 思わず思いっきり蹴飛ばしてしまいました。

 この辺りは学園関係者以外立ち入り禁止なはずですが、どうやら変態不審者さんが紛れ込んでいたようです。

 

 仰向けに倒れる変態不審者の様子を確認します。人はウマ娘に普通は勝てませんから、こういうときも特に相手におびえる必要もありません。最悪畳んでしまえばいいだけですし。

 黄色いシャツに紺色のベストとスラックスという服装の男性です。胸にはトレーナーバッジをしていますから、おそらくトレーナーみたいですが…… 見たことない顔ですね。

 いや、思いっきり蹴飛ばしてしまったので顔が歪んでしまったのかもしれません。じろじろと顔を見ていると、男性はむくっと立ち上がりました。

 

「いやぁ、いい一撃だった」

「……お話うかがっていいですか? へんたいふしんしゃさん?」

「はは、名前はリョウさんとでも呼んでくれ。変態でも不審者でもなく、ただのトレーナーだ」

「いきなりウマ娘の太ももを触るのは普通ではないです」

 

 ずいぶん飄々とした感じですね。ずいぶん慣れた感じですし、あとでほかに被害者がいないか確認したほうがよさそうです。

 

「いやぁあまりに恵体だったもので思わずな。ところでずいぶん悩んでいるようじゃないか」

「へんたいふしんしゃさんに話すことはないです」

「なんだい、追いかけられる怖さを初めて知って驚いているのかと思ったが違ったのかな?」

「……見てたんですか?」

 

 警戒を一段上げます。トレーナーなら別におかしくないですが、目の前のこいつは変態です。ほかの子が狙われたら大変ですからね。

 

「見てたし、戸惑ってるのも分かったし、どうして戸惑っているのかもまあ、おそらく予想ができるな」

「……」

「お前さん、頭で考えるタイプだろう? 言語化したほうが理解できるだろうから教えてやるよ」

「……メジロマーリンです」

「メジロのお嬢さんか。なら余計理解できるな。マーリンは今まで同年代に負けたことがないだろう」

「……そんなことないですよ。妹には負け越してます」

「妹さん、かなり才能があるウマ娘だろう」

「まあそうですが」

 

 何となく見透かされているようで気持ちが悪いですが、どうも話を聞き入ってしまいます。誘導的な部分もありそうですからあまり騙されないようにしましょう。

 

「走るのは好きだけどレースはあまり興味がないだろ」

「まあ、そうですね」

「交友関係は広くて、年下に好かれる方じゃないか?」

「……面倒見がいいとは言われますね」

「じゃあ今まで、どうしても勝ってやる、みたいな感じで挑まれたことないだろう?」

「……」

 

 自分の過去を振り返ります。負けたこともいっぱいあります。特にルドルフとかラモーヌ姉さまとかは容赦がないですし。ただ、本気で何が何でも勝ちたい、という風なレースはやったことがないように思います。

 

「相手が挑戦者の立場で挑まれたことは、ないかもしれません」

「そういうことさ。挑まれるってかなり怖いだろう?」

「確かに雰囲気が違いますね」

 

 そう考えると、姉さまもあまり経験が多くないかもしれません。絶対女王として走ってきた姉様です。ボクもアルダンも、姉さまが大好きで一緒に走ることはたくさんありましたが、何が何でも勝ってやろうと思ったこともありません。

 でも、あの時のダイナムヒロインさんは……

 

「これってどうすると解消できますかね」

「いろんな相手と走ることだ。後輩で気が強い相手なんかおすすめだぞ。マーリンならそういう相手を準備するのも難しくないだろう?」

「……」

「どうした?」

「なんか全部見透かされているみたいで気味が悪いだけです」

 

 ボクがそう不満を述べると、リョウさんは笑った。

 

「でも役には立っただろう」

「変態不審者さんなのは変わらないですけどね」

「悪かったよ。久しぶりなもんだから悪い癖が出ちまった」

「今度やったら生徒会が全力で捕まえに行きますからね」

「わかったわかった。あ、そういえばマーリンは東条ハナトレーナーは知っているか?」

「? お世話になってますけど」

「じゃあ悪いんだが、これを渡しておいてくれ」

「……呼んできましょうか?」

 

 おハナさんならどこかにいるでしょうし、呼んでくるのもそんなに時間がかからないと思うけど……

 

「いや、渡してくれればいいよ」

 

 そういってリョウさんはボクに箱を投げ渡しました。プレゼントボックスですね。

 東条トレーナーと知り合いなら身元確認もできるでしょう。ついでにセクハラも言いつけておきます。

 

「わかりました」

「悪いな。そろそろ飛行機の時間があるんだ」

 

 そういってリョウさんは去っていきました。

 

 

 

 ちなみに贈り物を渡された東条トレーナーはなぜかすごい怒っていました。ついでにボクがセクハラされたことを言いつけたら無茶苦茶怒っていました。ですが、リョウさんが誰かは本当にトレーナーということ以外結局教えてくれませんでした。元恋人とかなんですかね。




スピカトレーナーさんの本名は設定されていませんが、設定画では西崎リョウでした。
今は主に声優さんから沖野トレーナーとも呼ばれますね。

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適当にウマ娘についてしゃべるディスコードサーバー
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そこそこ前から動いているディスコード鯖です。
気になった方はお気軽にどうぞ

次はどんな話にしようかな

  • 秋の聖蹄祭
  • クリスマスデート(相手は不明)
  • 姉さまの阪神三歳S
  • 皇帝の最後の秋
  • 全部飛ばして正月
  • もっと飛ばして桜花賞
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