ラモーヌさんとアルダンさんの姉妹の間に挟まれたメジロに転生してしまったお話   作:雅媛

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19 年末のGⅠ戦線は近い

 ジュニア級のGⅠは朝日杯ジュニアステークスと、阪神ジュニアステークスの二つが存在します。前者がクラシック路線、後者がティアラ路線へと進むウマ娘が集まる、なんて言われているのは、前者が皐月賞と同じ中山で、後者が桜花賞と同じ阪神で行われるためでしょう。

 ラモーヌ姉さまは当然のように阪神ジュニアステークスを目指します。

 ライバルは函館で敗れたダイナムヒロインさんと、あとは最近調子がいいダイナムエルフさんあたりでしょうか。どちらも強敵に間違いありません。

 

 そんなレースに向けてラモーヌ姉さまが何をしているかというと……

 

「もう一本いくわよ」

「む~り~」

 

 ボクを相手に延々と併走を繰り返しています。

 これがボクにとって非常につらいんです。併走ですから、いい感じに横を走る必要があります。ある程度どちらかが前に出てもいいですが、離れすぎたら意味がないですから。

 で、ラモーヌ姉さまは当然速いわけでして、デビューもしていないボクがそれについていく必要があります。1本ぐらいなら問題ないですが、3本も4本もやると正直かなりつらいんですよ。

 

 ですが、レースに備えてかなりの量を走らなければならない理由もあります。

 姉さま、夏の間にかなり肥えてしまったんですよね。昔は病弱で食が細かった姉様ですが、体質改善で普通並みになりました。そして、トレセン学園に入って走るようになったらもっと食べるようになって…… それでも普段はトレーニングと食事量の釣り合っていたのですが、夏の間のレース後の残り、アルダンと遊びまわっていたら体重がすごいことになってしまいました。

 なのでそれを絞るために猛特訓中だったりします。そんな姉さまと同じだけ併走させられているわけですから、ボクのほうがやせそう……

 

「胸にも尻にもこれだけついてるんだし、マーリンも少し痩せたほうがいいんじゃないかしら」

「姉さま、セクハラですよ!?」

「だってねえ……」

 

 ラモーヌ姉さまがボクの胸部を見ます。その胸部は豊満でした。身長はそろそろ止まりそうですが、女性らしい体型への成長はまだ続いてしまってます。邪魔ですし確かに減らしたいんですけどね。今回ので少し減ってるかなぁ…… 減ってるといいなぁ。

 そんな儚い叶わぬ希望は置いておいて、姉さまの調整は順調です。普段以上に走れる状況にテンションが上がっているぐらいです。レースジャンキーですからね。怪我をしない程度にセーブしてもらう方が大変なぐらいです。

 

 なんにしろ、ジュニア級ですが最上位クラスのラモーヌ姉さまに、デビュー前のボクが付き合うのはしんどすぎるんです。もう一本とか無理なので、自分だけで走ってきてほしいですが、寂しがり屋の姉さまは併走じゃないと嫌だと駄々をこねるので、どうしようもありません。

 でも誰か、代わりに併走してくれる人いないかなぁ……

 

「がんばっているね」

「るどるふぅ…… ボクの代わりに姉さまと併走してぇ」

「ふむ、1本ぐらいなら構わないよ」

 

 ジャパンカップに向けて調整を重ねているルドルフが偶然通りかかったので、代わりを依頼したら快く引き受けてくれました。ボクはノソノソとトレーナーたちの集まる場所へと移動します。

 まずはルドルフの担当である東条トレーナーにご挨拶するべきでしょう。

 

「おハナさん、ルドルフとの併走、ありがとうございます」

「……マーリンが近くにくると、温度が上がるわね」

「え?」

「体温が高いせいかしら。今日は寒いからちょうどいいわね」

「そ、そうですか」

「併走は礼を言われるほどではないわ。ラモーヌにいろいろやられたからルドルフもいろいろ思うところがあるみたいだし」

「あははー」

 

 天皇賞秋の件はラモーヌ姉さまが動いていましたが、ボクがギャロップさんに情報を教えていたのも確かです。どれほど役に立ったかはわかりませんが、ボクも敗戦の原因の一端を担っているでしょう。

 何となくボクの周りに人が集まってきます。寒いからでしょうか。暖房じゃないんですがもともと暑がりでとにかく今も暑くてしょうがないので、周りの空気が少しあったかくなっているのかもしれません。

 

 ラモーヌ姉さまとルドルフの併走は、やはりルドルフの方に分があります。経験差に年齢差もありますからね。とはいえちゃんと併走になっています。ルドルフ相手だと併走相手にも困るみたいな話を聞きますから、それについていけるラモーヌ姉さまも十分すごいです。

 

「そういえば、あなたはいつごろデビューするの?」

「ふえ?」

「マーリン自身はいつデビューするの? 来年の頭? それとも1年遅れで来年のジュニアから?」

「え? ボクデビューするの?」

「なんで本人が考えていないのよ」

 

 ラモーヌ姉さまの同級生とはいえ年齢的には一つ下ですから、来年のジュニア級に参戦するとか、さらにもう1年ぐらい遅らせるという選択肢もあるでしょう。

 ですがボクは自分が走るというイメージを全く持っていませんでした。

 

「そもそも担当トレーナー居ないですし」

「自分でやってもいいし、同期の可児君や奈瀬さんに頼んだっていいじゃない。ほかにも知り合いのトレーナーで引き受けてくれそうな相手もいるでしょう?」

「まあいますが……」

 

 それこそ頼めば東条トレーナーだって引き受けてくれるかもしれません。

 ですがどうしても自分が走るイメージがまるでできていませんでした。あくまでトレーナーに専念するつもりでしたから。

 

「デビュー前であれだけ走れるんだから、かなりいいところに行けると思うんだけどね」

「それはどうでしょうね」

 

 ボク自身が自分の欠点を理解しています。姉さま流に言えばボクはレースを愛していません。多分ボクが好きなのは、姉さまみたいに頑張って走るウマ娘です。だからトレーナーができても自分が走るのはイメージできないのでしょう。まあ何となくデビューぐらいはできそうですけどね……

 

 そんな話をしていると姉さまたちの併走が終わったようです。

 

「これからジャパンカップまで、併走相手に苦労してるのよ。ラモーヌが付き合ってくれると助かるわ」

「ぜひぜひ。絞るためにも多分毎日走ってますから、都合がいいときに声をかけてください」

 

 そんな言葉を交わして東条トレーナーと別れました。

 ボクのことかぁ。そんなことを考えます。来年姉さまはティアラ三冠に挑みますし、妹のアルダンも入学してきます。アルダンの方は王子様的なトレーナーさんを夢見ていますからボクが担当することはないでしょうが、それでもいろいろ世話を焼くことになるでしょう。というか世話をしたいです。

 そうすると自分のデビューなど余計イメージがつかないわけですが……

 

 ひとまず目の前のトレーニングと姉さまの次のレースのことを考えましょう。

 いくつも余計なことを考えている余裕はないですし。

 

 タオルとドリンクをもって、ボクは姉さまのところへと向かうのでした。





【挿絵表示】

体操着マーリン。露出が足りないのですごい暑くてムワムワしてる。

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どうするマーリンちゃん

  • トレーナー業で一杯いっぱいでしょ
  • 試しにデビューしてみる
  • 生徒会からURAを牛耳ることを考える
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