ラモーヌさんとアルダンさんの姉妹の間に挟まれたメジロに転生してしまったお話 作:雅媛
ラモーヌ姉さまは無事阪神ジュニアステークスを勝利しました。
余裕だった、とは言いませんが2着のダイナムエルフさんを3バ身でぶっちぎっていますから完全勝利でしょう。
一度の負けを踏まえさらに強くなったラモーヌ姉さまは圧倒的でした。そう思っていましたが……
「姉さま、お疲れ様です」
「ええ、ありがとうマーリン。さすがGⅠ、すごかったわね」
「そんなにちがいましたか?」
GⅠとなると服装も勝負服になりますし、観客も圧倒的に増えますから華やかな雰囲気になるのは確かです。ですがラモーヌ姉さまがそんな見た目の華やかさで感動するわけがありません。きっと違う何かを感じていたはずです。
「ええ、だれもが自分が一番だと信じていた。誰もが勝ちを目指していた。恐怖も、渇望も、愛も、欲望も、すべてが混ざり合ってレースを作り上げていた」
うっとりした表情でラモーヌ姉さまが語ります。あまりに妖艶でボクも思わず息をのみました。
「本当に、レースは素晴らしいわ」
ラモーヌ姉さまはとても楽しそうでした。
一方ルドルフの方はというと、天皇賞秋での負けを引きずることなく、ジャパンカップ、有馬記念と勝利しました。
強いな、ルドルフ。誰もがそう思ったでしょう。ボクもそう思いました。来年は海外転戦をすると聞いています。シリウスさんが一足先に海外をめぐっていますから、その情報も使って海外でガンバるのでしょう。
「でもそれはないでしょう……」
「? 好評だと思うのだが」
クリスマスパーティで、ルドルフはどこで仕入れたかわからないですが、クリスマスツリーの仮装をしてきました。
学園のクリスマスパーティなので、生徒会長であるルドルフが参加するのは当然でしょう。その時にクリスマスっぽい格好をしてくるのもよくある話です。ボクもミニスカサンタにされましたし。でも、ルドルフのクリスマスツリー衣装はいったい何なのでしょう。というかどこで手に入れたのでしょう。
「ルドルフ変な格好!!!」
「シービーさんもなんでトナカイの着ぐるみなんですか」
ミスターシービーさんも、トナカイ風の前身タイツに赤い鼻を衝けているので滑稽さはそこそこのものです。まあ、ルドルフのクリスマスツリーよりはましですが……
一人だけサンタの格好だとボクだけ気合い入れすぎてるみたいでいやなんですけど……
「さて、それでは行こうか」
「え? どこへ?」
「クリスマス記念特別、トレセン学園2400m生徒会レースだ」
「何それ聞いてない」
「仮装レースの一つだ。そんなに気張らなくてもいいだろう」
何もボクは聞いていなかったが、どうやらルドルフとシービーさんと走らなければならないようです。生徒会特別ならほかのメンバーも参加してほしいのですが、三冠ウマ娘二人に気おされてか、みんな遠慮してしまいました。
正直ボクも遠慮したいのですが、なぜかルドルフもシービーさんも逃がしてくれません。
「生徒会副会長の務めだよ」
「やーだー!!」
いや、単純にレースするだけならいいんです。デビュー前のウマ娘が三冠ウマ娘に負けるなんて普通のことですから、せいぜい頑張ってぼろ負けすればいいだけです。
だが、このクリスマスツリールドルフとトナカイシービーさんに負けるのは正直どうなのだろうと思います。二人ともすごい走りにくそうな格好だし、一方でボクの方はというとミニスカサンタ衣装だから走りにくい要素が全くありません。せいぜいスカートの中が丸見えで走り続ける羽目になるぐらいです。
恥ずかしがっている振りをするのも一瞬考えましたが、普段の格好から考えてもそんなの一切通用しないでしょう。
つまり、中身は三冠ウマ娘だがクソ雑魚な格好をしている二人とガチレースです。二人ともお互いに負けたくないと思っているから格好なりに絶対ガチで走ってくるのは容易に想像できます。ですが、こんな仮装の二人にぼろ負けしても笑っていられるほどボクのプライドも低くないんですよね。
シービーさんに引きずられて、学園内のトレーニングコースに移動すると、ゲートも電飾で飾られてクリスマスバージョンになっていました。その電飾でまぶしいゲートに拒否権なく押し込まれます。
コースの外からは多くの生徒が観戦しているのが見えます。ボクも腹をくくる必要がありました。
覚悟を決めてレースに意識を切り替えます。調子は悪くありません。靴も走れるようにできていますからレースには問題ないでしょう。
少し間が開いた後、ゲートが開きレースがスタートしました。
二人とも衣装のハンデがあるからガチンコ勝負する選択肢もないわけではないですが、そのハンデがあっても三冠ウマ娘は脅威ですので一つ策を練ることにします。
まずはペースを落としてシービーさんに並びます。そしてシービーさんがボクを意識したタイミングでペースを上げていきます。煽られてペースを上げていくシービーさんはどんどん速くなっていきます。ふざけた格好でも圧倒的な速さです。
そのまますぐに先行していたルドルフにシービーさんは並びました。
シービーさんといえば天衣無縫の追込みが有名です。どんな位置からでも、それこそ京都のコーナー前からでもスパートできる長い末脚を特徴とする追込みを指しますが一つ欠点があるのではないかと予想していました。
一度ペースを上げるとペースを落とすのが苦手、ということです。三冠ウマ娘ですから、すべてのレースを確認しましたがペースを落とすというのは失速しているとき以外見たことがありませんでした。
案の定ボクのペースにつられてくれたシービーさんは、やばい速度のままルドルフに並びます。そしてルドルフはルドルフで、それに気づいて競り始めました。
すさまじい速度でカッとんでいく二人ですが、さすがに速すぎるでしょう。二人とも3000mを走るスタミナがあるといっても、2000m以上スパートはできないはずです。自分のペースを崩さずに走っていきます。
1600m越えたあたりではかなり遠くなっていた二人の背中も、第三コーナーに入ると急激に失速し始めます。それがさらに進み第四コーナーを抜けたあたりになると、完全にばてていました。
三冠ウマ娘とは信じられないような遅い速度で、スタミナが枯渇しながらもお互い意地で走っている二人をボクは直線で追い抜きました。衣装のマイナスの影響もあって、最後のほう全然走れていなかった二人にボクを差し返す余裕は残っていないようでした。
こうしてボクは、三冠ウマ娘二人に勝ったデビュー前ウマ娘として微妙に学園内で有名になりました。
ハンデのおかげに決まっていますが、結果がすべてを物語ってしまったようです。
ちなみに負けたのが悔しかったらしい二人に後日再戦を挑まれてボクはコテンパンに負けました。
【挿絵表示】
サンタマーリン
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